[277]ある槍騎士の逃走の話<sage>2007/08/24(金) 01:32:50 ID:gOqklHQN
[278]ある槍騎士の逃走の話<sage>2007/08/24(金) 01:34:28 ID:gOqklHQN
[280]ある槍騎士の逃走の話<sage>2007/08/24(金) 01:36:08 ID:gOqklHQN
[281]ある槍騎士の逃走の話<sage>2007/08/24(金) 01:38:33 ID:gOqklHQN
[282]ある槍騎士の逃走の話<sage>2007/08/24(金) 01:40:13 ID:gOqklHQN
[283]ある槍騎士の逃走の話<sage>2007/08/24(金) 01:42:27 ID:gOqklHQN
[285]ある槍騎士の逃走の話<sage>2007/08/24(金) 01:44:51 ID:gOqklHQN
[286]ある槍騎士の逃走の話<sage>2007/08/24(金) 01:47:16 ID:gOqklHQN

レリックとおぼしき反応を得て出動した機動六課。
下水道を舞台にガジェットとの戦闘があったが無事に勝利し、
目的物を確保し隊舎に帰ってきた。


機動六課隊舎会議室。
今回確保したロストロギアが会議室中央に置かれている。
「ふぅん…これなん?どうやらレリックやなさそうやけど…」
六課前線メンバーとシャーリーの前に置かれているのは黄色いダイヤモンドカットの結晶。
赤い宝石の形態をとる事が多いレリックとは外見上は大きく違っている。
「うん。今ユーノ君に調べてもらってるんだよね?シャーリー」
「ええ。でも正体不明のロストロギアって怖いですね…」
眉を顰めて呟くシャーリーに答えるのはフェイトだ。
「まぁ、キャロが厳重に封印してくれてるし…あ、そういえばエリオは?」
「エリオ君ならガジェットとの戦闘で足を滑らせて下水道に落ちちゃって…
 今はシャワー室でシャワーを浴びてる筈ですよ?」
「クキュー」
「じゃ、とにかく今はユーノ君待ちやね。せやけど……これ、綺麗やなぁ……」
うっとりとロストロギアを眺めながら呟くはやて。
色調は単なる黄色であるが光の角度により時折虹色を放つそれは女性陣を誘惑するには充分だった。
「ホントそうですよね……」
ついついスバルが手を伸ばした。当然ティアナから激しいツッコミが入る。
「馬鹿!何やってんの!」
振り下ろした拳はスバルの脳天に見事に入った。
前のめりになるスバル。
「あ」
「あ」
指先が封印に触れた。全員が身構える。
シグナムとヴィータがはやてを庇うように立ち上がった。
が、何の変化も無く…………彼女達は胸を撫で下ろす。


次の瞬間、会議室が光に包まれた。



機動六課隊舎シャワー室。
現在使っているのはエリオ一人だ。
それもその筈、通常勤務の時間帯でありエリオも
本来ならばシャワーなど浴びてる場合では無いのだが
下水にどっぷりつかってしまった為に一度体を洗ってくるように命じられた。
「……そんなに臭ってたのかな……」
水にぬれた体を臭ってみるが別段変な匂いはしない。
先程はいつもなら寄り添ってくる筈のフリードが
ヘリの中で思い切り自分から離れていたのが結構ショックだった。
「……さて、と……」
シャワー室を出て、体についた水滴をタオルでぬぐい、
純白のブリーフを手に取った。
エリオ本人はトランクスがいいのだが何故かフェイトが許可してくれずにブリーフのままだ。
少し釈然としない気持ちを抱えながら足を通そうとしたその瞬間、
シャワー室の扉が開けられた。
誰かが入ってきたのかなと視線をやったその先には……

何故か頬を真っ赤にそめたフェイトが立っていた。

エリオの思考はフリーズした。当然動作もフリーズし、
片足をブリーフに通そうとしたポーズのまま硬直している。
絶妙に見えそうで見えないのでモザイク無しでオーケーだ。
「…………エリオ………」
呟くフェイト。頬が紅潮しているばかりか目は潤んでいるわよだれはたれているわで
エリオは事態こそ全く把握出来なかったが危機的状況である事は察した。
何かがおかしい。
男性用のシャワー室にフェイトが堂々と入ってくる事がまずおかしい。
しかも熱烈な視線をエリオの体に注いでいるという普段のフェイトからはあり得ない状況だ。
「……エリオ…………しよ?」
するとは何をだろうか?エリオはフリーズした思考をようやく解凍すると
とにかくまずは服を着るべきだとブリーフを足に通そうとして
『sonic move!』
背後に立ったフェイトに腕の動きを止められた。
「もう……。するんだよ?服は着なくていいでしょ?」
息が荒い。エリオではなくフェイトのが、だ。
エリオの中の危機評価ゲージが76%を表示した。
どれくらい危機的状況かというとガジェット三型数体を一度に相手するくらいヤバいという評価だ。
つぅっと、エリオの体をフェイトの指が這い回る。
「ね?久しぶりだから……八回くらい大丈夫だよね?」
危機評価ゲージ100%に到達。
シャワー室に絹を裂くような悲鳴が響き渡った。

機動六課隊舎廊下。
エリオはそこをほぼ裸同然の恰好で走っていた。
何とかフェイトの魔の手から逃れたが当然まともに服を着る時間が与えてもらえる筈も無く、
かろうじて掴んだタオルで股間を隠しながらの疾走だ。
と、廊下の先に別の人が立てる足音を聞いた。
(まずっ!こんな恰好見られたら……!)
慌てて周囲を見回すと赤い扉と青い扉があった。
反射的に赤い扉を開け、中に入り、背で扉を閉める。
とりあえず一安心だ。脱力して座り込もうとし、そこで気付く。

正面にシグナムがいた。

一瞬終わったと思った。
だが、シグナムはあれはあれで話せば解ってくれる人物だ。
(模擬戦も頼んだら快く受けてくれたし……)
とにかく、諦めては駄目だ。何とかこの状況を説明しようとして口を開き―――
「その恰好は…………」
驚愕に表情を染めるシグナム。エリオの心が折れそうになる。
だが
「そ、そうか…そういう事か……」
何かを納得したように頷くシグナムにエリオの心は救われた。
「さ、流石シグナムさん!」
思わず賞賛の言葉が口をついて出る。エリオの恰好を見るだけで状況を把握してくれたらしい。
ベルカの騎士の洞察力に憧れ、こんな騎士になりたいと心底エリオは思った。
タオル一丁で私室に押しかけた少年を見ても変質者と疑わない、そんな騎士に。
しかし、エリオの憧れは次の瞬間打ち砕かれた。
「き、勤務時間中だというのに……しょ、しょうがないやつだ……」
しゅるりと音をたて、シグナムのネクタイが解かれたのだ。
「ま、待ちきれなかったのか……そ、そうか……私はまだ飽きられてなかったのだな?」
嬉しそうに独り言を呟きながら、するすると服を脱いでいくシグナム。
慌ててエリオがシグナムに声をかける。
「シグナムさんっ!?何で服脱いでるんですかっ!?」
ピタリとシグナムの動きが止まる。同時にエリオの行動も停止。
数秒間、まるで時が停止したように過した。
次に動き出したのはシグナムだった。何かを納得したようにエリオに歩み寄る。

「今日は着たままなのか?
 だ、だが前は服にかけたせいで洗濯や言い訳が大変だったのだぞ?」

口調も表情も一見困っているふうだがその下の期待を全然隠せていない。
エリオは、肉体年齢10歳(実年齢はもっと低い)にして
『人と人は解り合えない』という事を理解した。


どうやら逃げ出した方が良さそうだ。
シグナムに背を向け、ドアノブに手をかける。
背後から響く悲痛な声。
「なっ!?いってしまうのかっ!?私を置いてっ!?」
「行くも何もそもそも状況がよく解らないんですがっ!!!」
「私に飽きたのかっ!?ほ、ほら!ぱいずりというのもお前が言うから練習したんだぞっ!?
 それにこの二週間自分でだってしてないんだぞっ!?まだ焦らすというのかっ!?
 ……も、もう限界なんだ……はやく私のココを埋めてくれ……」
今振り返ったら色々な意味で終わると悟ったエリオはそのままドアを開けた。
はやてがいた。
そしてドアを閉めた。
(…………終わったああああああああああああああっ!!!
 僕の局員生活これで終わったああああああああああっ!!!)
ドアを開けた先には機動六課の部隊長、つまりこの部隊の総責任者である八神はやてがいたのだ。
バッチリ見られた。背後のシグナムまでも。
エリオは背後を見てはいないがきっと見られたら非常にマズい恰好をしている筈だ。
当然ドアを叩く音と声。
「エリオ君っ!?ここ開けて!!!」
一瞬逡巡したがここまで来たらどう足掻いても無駄だと悟り、大人しくドアを開けた。
はやてに顔を合わせられるワケも無く、伏された視線ははやての足元だ。
と、そこで気付く。
はやての足元で散る水滴がある事に。
視線を上げた。
そこには、ぼろぼろと大粒の涙をこぼす八神はやての瞳があった。
「――――うそつきぃ……」
「……は?」


「――――――エリオくんのうそつきぃ……!
 わたしのものやて……だれにもとられへんてゆうたのにぃ……!!!」


泣き崩れるはやて。エリオは事態についていけず、股間を隠すタオルを落としそうになる。
今日何度目かも解らない思考のエターナルコフィン。
(いやいやいやいやいや!エターナルじゃ駄目だって!)
流石に耐性が出来たのか、即座に現実に戻ってくる。
ここでわざわざ現実に戻ってくるところが律儀な少年である。
「あ、主はやて!これは違うのです!私はエリオの犬でしかないのですからっ!」
背後から響くシグナムの声。どうやらフォローのつもりらしい。
当然フォローになるわけが無いが。

「ちょっと黙ってて下さい!」
少し振り向き、怒鳴る事でシグナムを黙らせる。
顔をはやてに向ける寸前、視界の端のシグナムが何故か嬉しそうな表情だった事など気にしない。
「八神部隊長……落ち着いて……」
必死になだめようとするが
「ちゃうやんっ!はやてさんやんっ!」
はやてはまるで幼児のようにかぶりをふってこちらの話を聞く気配は一切無い。
いつかどこかのエリオならばここでキスのひとつでもしてはやてを落ち着かせるところだが
このエリオの選択肢にそんなものはあり得ない。
エリオは諦めた。そしてあるひとつの決断をした。
(……そ、そうか……これ、悪い夢なんだ……
 きっと僕は今日の戦闘で撃墜されて……目を閉じれば医務室の天井が……)
現実逃避である。
そっと目を閉じ……


唇に違和感。
ついで口を開かれる感触。
口内に侵入してくる熱く、柔らかい何か。
慌てて目を開くと、そこにはドアップになったヴィータの顔があった。
悲鳴が前と後ろから響く。シグナムとはやての声だ。
ヴィータの肩に手をかけ、引き離す。
当然タオルがはらりと落ちる。
黄色い悲鳴が前と後ろから響く。シグナムとはやての声だ。
「ど、どうだ?上手くなったろ?」
「…………えっと……何してるんですか?」
「あ、あれ?違うのか?目をつぶってたら合図だからキスしていいんじゃねぇのか?」
「……誰がそんな事言ってたんですか」
「お前だよっ!―――うああっ!?し、シグナム!お前なんて恰好してんだっ!?」
「ヴィータもなんっ!?エリオくんのうそつきぃぃぃ……」
「え、エリオ……そうか……お前にとっては私は女の中のひとりでしか無かったのか……
 それでもいい!いやむしろそれがイイっ!!!」
エリオはようやく把握した。これが現実である事とどうしようもない事を。
選択肢はここに留まり事態の解決をはかるか、逃げ出すか、ふたつにひとつだ。
騎士とは挑むものである。
例えそれが絶望的な状況、否、例えそれが絶望でしかなくとも。
彼は……フルチンにも関わらず、退かず臆さず前を見た。
そして叫ぶ。
「あの!僕の話を聞い―――――」


「エェェェェエリオオオオオオォォォっっ!!!」

ある人物がそこに来た。
来てしまった。
その人物とは黒き衣を身にまとった雷神である。
不機嫌を帯電させたフェイト。顔を真っ赤にしたヴィータ。
泣き崩れるはやて。そし何故か盛り上がってひとりでしてしまっているシグナム。
その四人がエリオの前にいる。
想像して欲しい。この光景を。

(あ、もう無理だコレ)

流石に彼の心が折れた。叫ぶ。
「ストラーダっ!!!」
どこからか飛んでくる彼の相棒。
まるで○の槍の様に飛んできたそれを恰好良くキャッチしたエリオ(全裸)は
更に叫んだ。
「逃げるよっ!」
『jawohl!Sonic Move!』
速度を得た彼は廊下を駆け抜ける。
彼の十歳とは思えないストラーダは当然ブランブランしたがそんな事に構っている場合ではない。
一目散に逃げ出した。




『このロストロギアなんだけど』
「なぁに?ユンユン♪」
『あぁ!二回目のユン♪で小首傾げるのが畜生カワイイなぁ!
 はっ!違う違う!今そんな場合じゃなくて!えっと…………なのは、聞いてる?』
「違うよぉ……なのなのだよ?ユゥンユン♪」
『………………(どうやらモニター前で悶え苦しんでるらしい)
 ……っと……その……続けるよ?(どうやら復帰したらしい)
 どうやらパラレルワールドからその人物の性格を召喚するっていう効果があるらしくて……』
「むぅ〜〜そんなツマンナイ話いいから!ユンユン次はいつ会えるの?」
『い、今すぐっ!今すぐ転送で君の元へ―――!!!』



「馬鹿っ!どこ触ってんのよっ!」
「え〜〜?そんな事言わせたいの?」
「ひぁっ!?そ、そうじゃなく―――――はぁんっ!」
「正解は……ティアの一番よわいトコ♪」
「ちょっ!何でそんなに上手――――ふああぁぁっ!?
 ヴァイスさ―――ひはぁぁっ!!!」


ようやく自室へと辿り着いたエリオは、扉を開けた。
そして部屋の中に入り、扉を閉め、厳重に鍵を締めた後に
更にふと脳裏に閃いた結界魔法で完璧に封鎖する。
そこまでして、完璧に外界と部屋を遮断した上でストラーダから手を離し、
ようやくエリオは自分のベッドへと身を投げた。
「クキュ」
声がした。色々な事がありすぎて疑心暗鬼全開のエリオだがそれに怯えない。
視線を上げると枕元には彼の予想通り、フリードがいた。
安堵の溜息をつき、フリードの頭へと手を伸ばす。
今日は色々な事がありすぎて少年の心はボロボロだ。ぬくもりを求めたとしてもしょうがない。
ベッドの上で仰向けになると裸の胸にフリードを抱きこんだ。
「フリード……聞いてくれる?」
「キュー?」
滔々と少年は今日あった事を竜に語った。
小さな守護竜は時折相槌をいれながら少年の話に耳を傾ける。
全てを語り終えた後で、少年は天井を仰ぎ見た。
「はは……フリード……疲れちゃったよ僕……もう、ゴールしてもいいよね……?」
「クキュルー!」
フリードがいきなり羽をばたつかせた。どうやら励ましてくれているらしい。
その事がエリオにはとてつもなく嬉しかった。
嬉しかったのだ。
だから次の言葉が唇から滑り出ても少年の過失ではない。


「ありがとう……もう、僕にはフリードしかいないよ……」


突然エリオの胸に抱かれたフリードから光が放たれた。
そして聞いた事の無い声が響く。
「嬉しいナ!その言葉をくれるのをずっと待ってたんだナ!」
胸に抱いた筈のフリードが消え、そこに何故か5歳くらいの水色の髪の少女がいた。
ちなみに全裸である。ぺったんである事にどこか安心したエリオ。
「ありがとうエリオ!ボクを選んでくれて!ずっとずっと待ってたんだナ!」
その少女は嬉しそうに目を細めるとエリオの胸に顔をすり寄せた。
エリオの記憶にはこんな少女はいない。
と、いうか少女もエリオも全裸だ。
ようやくエリオは自分がすべき行動を思いついた。
驚く事である。

「うああああああああああああああああああああっ!!!!?」
いきなりの叫びに驚く少女は耳に両手をあてた。そして言う。
「ど、どうしたのかナ?」
「うあああああ誰だよ君っ!?」
「誰って……あ、解らないかナ?フリードなんだナ♪」
「フリードは竜だよっ!!!」
「竜とかの魔法的高等生物は当然魔法を使えるんだナ。変身魔法なんて朝飯前なんだナ」
「フリードってオスの名前じゃないのっ!?」
「竜に性別は無いんだナ。ただ……」
「……ただ?」

「女の子の方がエリオのお嫁さんになれてボク的に嬉しいからボクは女の子なんだナ♪」

次の瞬間、エリオの部屋のドアが吹き飛んだ。
「ふりいぃどぉぉ……」
響くのは、地獄の底に住む悪鬼の声。
その筈だ。
その悪鬼が桃色の髪をしていたり、ピンクの可愛らしい防護服に身を包んでいたり、
キャロにそっくりだったが心優しいあの少女がこんな声を出す筈が無い。
「ご主人!今更無駄なんだナ!ボクはさっきエリオに選んでもらったんだナ!」
「ふりいぃどぉ…おまえ。おれ。ころす!ころす!ころす!」
ホラ、会話が出来てない。これがキャロの筈が無い。
その事に安心したエリオは、床のストラーダに命じた。
「はははははは set up!」
『Stand by!』
誰もが望んだエリオきゅんの変身シーン全裸verが展開され、
次の瞬間には凛々しく防護服を纏ったエリオがベッドの上にいた。
もう少年の心はバキバキに折れている。というか砕け散っている。
目の前の妖怪をキャロと認めてしまったら初恋さえ砕けてしまいそうだ。
だから、ここでエリオに立ち向かうという選択肢はありえなかった。
立ち向かう為には正面にある何かを認めてしまわねばならないのだから。
「―――――行こうストラーダ!ここじゃないどこかに!!!」
『Dusen!』
窓ガラスを突き破って槍騎士は空へと旅立った。






機動六課管制室。
そこでロングアーチを指揮しているのはシャーリーである。
「フフフフフ素晴らしい!何と言うカオス!この部隊、間違い無く駄目駄目です!」
そう嬉しそうに叫びながら各所の映像を記録している。
ここも間違いなくカオスであった。

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目次:ある槍騎士の逃走の話・目次
著者:一階の名無し

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