[16] 再び機動6課の休日 その2 sage 2007/12/05(水) 14:34:22 ID:tx59le5u
[17] 再び機動6課の休日 その2 sage 2007/12/05(水) 14:35:02 ID:tx59le5u

「予定時刻20分前……無事着いたな」
 遊園地の駐車場に到着したシグナムが運転席からフェイトにそう告げた。
「うん、ありがとう」
 一方、答えたフェイトは助手席に乗っている訳だが、経緯としてはこうだ。
 最初、フェイトは無意識で自分で車のキーを持って車に乗ろうとしたが、いざ運転席を空けてその事態に気がついた。
 子供だとペダルに足が届かず、車の運転が不可能だと言う事である事を……。
 泣く泣くはやての部屋に戻り事情を話して、代わりにシグナムに車を運転してもらう事となった訳だ。
「時にテスタロッサ……送った見返りと言うのも何だが、いくつか頼み事をしても構わないだろうか?」
「うん、別に良いけど?」
「まずは遊園地のお土産にヴィータの気に入りそうな物があれば適当に買ってきて欲しい、無論代金は後で払う」
 少々恥ずかしそうな口調で話すシグナムに対し、フェイトは嬉しそうに答える。
「それぐらいならお安い御用だよ」
「それと……もう一つの頼みなんだが……」
 今度は口調が途切れるほど恥ずかしいのか、顔が真っ赤になり今までフェイトに向けていた目線も外すシグナム。
「どうしたの? シグナム」
「その……だな。あ、頭を……撫でさせて欲しい」
 それは予想外の答えだったが、それでもフェイトは気にせず笑顔で答える。
「そのぐらい別にお願いする必要も無いよ。いつでもどうぞ」
 そのまま助手席から、横に乗り上げる形でシグナムの横へ顔を出す。
「あ、ああ……それでは遠慮なく」
 体格差と体勢の都合上どうしてもフェイトがシグナムに対して上目遣いになり、それが原因で更に顔を赤くしたシグナムが優しくフェイトの頭を撫でた。
「し、シグナム……すっごい顔緩んでる」
 先ほどの以外な発言中や頭を撫でる直前より更に変貌したシグナムを見て、流石にフェイトも一言発せられずには居られなかった。
「……っは! すまん、つい取り乱したようだ」
 我を取り戻したかのように冷静な表情へと戻る。
「私だけになら良いんだけど……はやてとかに見られたら、また遊ばれそうなぐらい凄かったよ?」
「肝に銘じておこう」
 続いて苦い思い出を彷彿させるフェイトの発言でよりいっそう顔が引き締まる。
「む、目的の2人が来たようだ。後は任せたぞ、テスタロッサ」
「あ、うん。行ってくるね」
 いつものように車のドアを開ける動作をするが、やはり子供の体格で片手の力では動かないらしく、構えなおして両手でドアを開ける。
「テスタロッサ。最後に聞き忘れたが帰りはどうするつもりだ?」
 フェイトが助手席側から車を出て、運転席側に回り込む途中にシグナムが窓を開けて質問をする。
「そうだね……必要になったらそっちに連絡する形で良いかな?」
「心得た。それでは上手くやるんだぞ」
 お互い手を振って別れの挨拶後、シグナムが乗った車が駐車場から去る。
「よし、ちょっと後ろの別の列から入れば簡単にはバレないよね」
 後方からエリオとキャロの姿を確認しながら入場ゲートへ並ぶ。
「入場人数を教えて下さい」
 どうやらフェイトがチケットを買う順番になったようで、カウンター越しに係員がアナウンスで呼びかける。
「えっと、大人一枚で」
「大人? ……保護者の方の分ですか?」
 係員がフェイトの付近を見回すが、それらしき大人は見当たらない様子で答える。
「あっ! ええと、すいません。子供一枚で……」
 車の時と同様に、自分が子供の姿であると言う事を忘れてしまっているハプニングであった。
 
「エリオ君、これなんかどうかな?」
「良いね。でもこっちとかもどうだろう?」
 エリオとキャロの2人は何種類かのアトラクションを回った後、お土産屋に寄っていた。
 無論、子供姿のフェイトも少し離れたお土産屋でヴィータへ渡すぬいぐるみを物色しながら見守っている。
 2人の道中はこれと言った事件も無く、なんら問題は無かったのだが……。

「お娘ちゃん、迷子かい?」
「迷子センターの行き方を教えましょうか?」
「おじさんと一緒にあれ乗らないかい?」
 など、フェイトだけ大人に話しかけられると毎度こんな事を言われる訳だ。
 流石にアトラクションにも行かず、1人でふらふらと誰かを追うように動き回る子供を見たら十中八九迷子だと思うだろう。
 この辺はある意味失策だったのかもしれないと、やや後悔するフェイト。
 だが、エリオをキャロにバレずに見守る事が出来る点ではやはり正解だと思っていた。
 そう思っている間に、2人がお土産屋を出た。
 続いて向かった先は噴水のある休憩所。
 ジュースを買ってベンチに座り、少々休憩と言った所か。
 フェイトもそれに習い、ジュースを買って2人を後方から見れる位置でベンチに腰を下ろした。
「ふう……今の所は問題無し、ついでにはやてに連絡しておこうかな」
 ポシェットを空け、通信機を取り出そうとするが……。
「あ、あれ……? まさか、無くした!?」
 車を出る直前までは確かに持っている事を確認したはず。
 それ以降、最後にポシェットを明けたのはさっきジュースを買った辺り。
 だとすれば自動販売機か露天の近くに落ちているはず。
 そう確信して、一目散に先ほどジュースを買った付近を探すが……。
「どうしよう……本当に見つからない」
 自販機の回り、付近の花壇や露天。
 いくら探しても出てこない。
「は、早く使用停止にした方が良いかな……それとも他に何か方法無いかな」
 四つんばいで地面を見ながら、慌てふためきつつ付近をうろつくフェイト。
「何かお探し物ですか?」
 聞き覚えのある声。
「え? エリっ……!」
 振り向いた瞬間、とっさにその名前が口から出そうになったが、慌てて口を塞いだ。
 どうやら落し物を探している様子がよほど目立っていたらしく、ついにエリオとキャロの目についてしまったようだ。



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目次:再び機動6課の休日
著者:39スレ641

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