[353] 名無しさん@ピンキー sage 2007/12/10(月) 14:24:31 ID:mW+57hTb
[354] 再び機動6課の休日 その3 sage 2007/12/10(月) 14:25:14 ID:mW+57hTb

「どうかしました?」
「あ、うん。ちょっと襟が汚れちゃって……」
 少々強引な逃れ方であったがエリオの方は納得してくれたようだ。
「ええと。僕らでよければお手伝いしますけど?」
「だ、大丈夫だよ。ちょっと携帯電話落としちゃっただけだから……」
 このフェイトの素直さは長所でもあり、短所でもあるだろう。
 もちろん今回の件に関しては短所である訳だが。
「大変じゃないですか! キャロ、一緒に手伝おう!」
「うん! それじゃあ私達はどこら辺を探せば良いかな?」
 避ける所か、見事に手伝わせてしまっていた。
「あ、その前にお名前教えていただけませんか? 僕の名前はエリオ。そしてこの子がキャロ」
 礼儀正しい2人挨拶によって更なる問題に発展する。
 そう、もし呼ばれた時の偽名なんて考えてる訳も無く、即席で名前を決める必要があったからだ。
「え、ええと……私の名は……プレ……セア」
 嘘を捻り出している動作が見え見えの挙動の挙句、危うく自分の前の母親の名前を出し掛けたが、ギリギリでその名前を偽装することに成功した。
「プレセアさんですか……解りました。僕らは別の場所を探してみますね」
 一瞬、何かを考えているような様子で言葉を止めたエリオであったが、その内容は口にせず携帯電話ことフェイトの通信機の捜索を開始する。

「うーん……、見つかりませんね」
「エリオ君、プレセアさん。こっちもダメだったよ」
 2人の協力も空しく、徒労の結果となってしまった。
「そうだ、プレセアさんの電話を鳴らしてみると言うのはどうですか?」
 突如新たな作戦を思いついたエリオにフェイトは首を縦に振った」
「そうだね、近くにあるなら音を出せば解るかも。私の番号は……」
 あっさりと電話番号をエリオに伝えるフェイトだが、この地点ではまだ問題があることに気がついていなかった。
「あれ? これってフェイトさんの番号だ」
 エリオが自分の通信機兼携帯電話を見て首をかしげる。
「間違じゃないよ。これフェイトさんの番号だよ」
 キャロも自分の端末をエリオに見せ互いを見比べる。
 そう……フェイトが自分を偽装していると言う事を忘れ、そっくりそのまま自分の番号を教えてしまったため、番号の参照により偽装がばれてしまうと言った問題であった。
「そ、それは……ね。フェイト……お、お姉ちゃんが私に……貸してくれた奴なんだ」
 さっきの偽名と言い今回の番号の件と言いあからさまに怪しすぎるが、それに対しキャロがこんな質問をする。
「ええと、それじゃあプレセアさんってフェイトさんの親戚とか?」
「あ、うっ……うん。フェイトお姉ちゃんは私の従姉……なのかな?」
 慣れない嘘を続け、かなり窮地に立たされているフェイトだが、キャロが納得したように手のひらを叩く。
「だからプレセアさんはフェイトさんに似てるんだね」
「そうか、だから端末もプレセアさんに渡したと言う訳か……」
 エリオも素直に相づちを打ち、怪しい嘘もすっかり通ってしまった。
 今回ばかりは素直すぎる2人に感謝したフェイトであった。

 そして、肝心のフェイトの端末については……。
「まさか露天の人が預かってくれてたなんて夢にも思いませんでしたね」
「でも良かったよね。誰かに盗まれたりしちゃ大変だもん」
「うん、2人とも本当にありがとう」
 端末を呼び出した瞬間、3人から1番近くにあった露天から呼び出し音が発せられ、その在り処が解ったと言う結果であった。
 露天の人も、客足が落ち着いたら落し物センターに届け出る予定だったらしいので、実はそれほど深刻な状況ではなく一安心と言った所か。
「どういたしまして。所で、プレセアさんはこれからどうする予定ですか?」
「あ……」
 3人で再びベンチで休憩後、再びエリオから難題を押し付けられる。
 そう、フェイトの目的は2人を遠くからでも良いからばれずに見守る事。
 こうして会ってしまうと、一回分かれて見守ろうにもばれてしまう確率が格段に上がってしまう。
「もし……良かったら一緒にアトラクション回りませんか?」
 大方予想していた内容であったが、その言葉はキャロの口から告げられる。
 こうなってしまってはこれが最善の選択かもしれない。
 都合の良い事にこちらの正体は完全にはばれていない、だとすれば逆に良い結果なのかもしれない。
「わっ、私で良ければ……一緒に行っても、良い……かな?」
 なんと言えば良いのか、改めてこう言うと気恥ずかしくフェイトはもじもじしながら目線を泳がせ、2人向かってこう言った。
「喜んで。さぁ、行きましょう」
 ベンチから降りたエリオとキャロに手招きされ、それに続くフェイト。
 2人とも良い子に成長していて、まさに感無量であった。
 
「いやぁー。ずいぶんと回りましたね」
 時は夕暮れ。
 辺り一面が朱色に染まってくる時間帯。
 疲れたような口ぶりのエリオであったが、笑顔の混じったその表情を伺えば、まだまだ遊べる様子だ。
「うん、楽しかったね」
 その笑顔がフェイトにも移る。
 結局ライトニング隊の年少組とアトラクションを回ったわけだが、フェイト側も疲労の色は無かった。
 それも子供になったおかげかと思うほど、歩き回っても普段より疲れないのだ。
 なのは意外とこう言う風に遊び歩くのも久々だったが、これはこれで非常に面白く有意義な1日だった。
 だが、道中なのはと歩くときと同じようにエリオとキャロの手を握ったり、腕を組んで歩いたりもしたのだが、エリオだけは途中でそれを意図的に避けたように感じたのが唯一心残りなフェイトであった。
「……それにしてもキャロ、遅いな」
「トイレにしてはずいぶんと時間がかかってるみたいだね……連絡してみたらどうかな?」
「そうですね、ちょっと連絡を……っと!?」
 エリオが端末を自分の手に持った直後にそれが鳴り響く。
「もしもし……うん……うん。そんな所まで行ってたんだ……それじゃあその付近で待ってて、今行くから」
 キャロから着たであろう電話を受け、用件を聞き終えたエリオがベンチから立ち上がる。
「プレセアさん、すいません。ちょっとキャロが迷ったらしいんで迎えに行ってきます」
「うん、解ったよ。私はここで待ってるから何かあったらこっちに連絡入れるかここに戻って来て」
 フェイトの素早い判断にエリオが敬礼をする。
「はい、フェイ……じゃない、プレセアさん。行ってきます」
 どうにも喋り方が戦闘中に近い口調で喋っていたせいか、エリオもつられてフェイトに命令されてる感じを思い出したのか、はたまた正体がばれていたのだろうか。
 咄嗟の判断で仕事の喋り方をしてしまったフェイトが、エリオの飛び出した後に1人で考え込んでいた。

「結構待ってるけど……2人とも大丈夫かな……」
 真っ赤に染まっていた遊園地の影が次第に大きく、そして広がってきた。
 アトラクションの一部は一部ライトアップしており、まもなく日が落ちる。
 そろそろ夜だと思ったその時、現地点でフェイトが1番感知したくない魔力を感知した。
「近くに……居る?」
 この雰囲気は見間違う事など絶対無い、親友のデバイスの待機状態の魔力なのだから……!」
「フェイト……ちゃん?」
 その声がまさに真後ろから聞こえて来た。
 考え込んでる間に見つけられたらしい。
 どうしよう、この状態でばれてエリオとキャロに見られたらきっと嫌われてしまうに違いない!
 ……そうだ、知らないふりをしてそのまま立ち去ろう。
 エリオと待ち合わせしたベンチには相手が去ってから戻ればなんらも問題は無い。
 ベンチから立ち上がり歩き出そうとするが……。
「えっ? あっ……」
 立ち上がった直後、何者かに袖を掴まれていた。
「フェイトマ……マ?」
 子供になったフェイトよりも頭一つ小さい金髪の子供、ヴィヴィオの姿だった。


前へ 次へ
目次:再び機動6課の休日
著者:39スレ641

コメントをかく


「http://」を含む投稿は禁止されています。

利用規約をご確認のうえご記入下さい

メンバーのみ編集できます