[508]続々・ある少年とある少女の話 case FTH <sage>2007/07/11(水) 05:06:51 ID:t/xinVPU
[509]続々・ある少年とある少女の話 case FTH <sage>2007/07/11(水) 05:09:39 ID:t/xinVPU
[510]続々・ある少年とある少女の話 case FTH <sage>2007/07/11(水) 05:11:42 ID:t/xinVPU
[511]続々・ある少年とある少女の話 case FTH <sage>2007/07/11(水) 05:13:17 ID:t/xinVPU
[512]続々・ある少年とある少女の話 case FTH <sage>2007/07/11(水) 05:16:52 ID:t/xinVPU
[513]続々・ある少年とある少女の話 case FTH <sage>2007/07/11(水) 05:19:48 ID:t/xinVPU
[514]続々・ある少年とある少女の話 case FTH <sage>2007/07/11(水) 05:21:34 ID:t/xinVPU

訓練終了後、キャロとフェイトの二人は仲良くシャワーを浴びていた。
本来なら個人用のスペースに別れるところだが
キャロが髪をひとりで洗えないのでひとつの区切りに二人が一緒に入っている。
フェイトがまず自分の頭を洗い終わった所であった。
(うわっ…すごいなぁ…)
間近でそれを見ていたキャロはそう思う。
泡が胸の谷間をすべり落ちていく光景はまだ少女のキャロにとっても充分扇情的だった。
改めてフェイトの肢体を眺める。張りのある肌を玉となった水がすべり落ちている。
艶やかな金の髪は今は濡れて光を放ちはしないがその繊細さは充分に感じられた。
ツン!と擬音が聞こえるくらいに上を向いた乳房。
それは一見固そうに見えるが実はとても柔らかい事をキャロは知っている。
そして胸から脇腹にいたる曲線美はそこらの彫像などでは全く敵わない
見事な黄金率を再現していた。
赤ちゃんのおしりを桃みたいといってかぶりつく人がいると聞いた事があるが
キャロは今ならその心境が理解できる。かぶりつきたくなるおしりは存在する。
だって今目の前にあるのだから。
ふともも、にのうで、ふくらはぎ、鎖骨、くるぶし、
そんな何気ない所でさえ全て『女』の『色気』を感じさせる。
どこぞの吸血鬼なら執事を賞賛する程の完全な女性の姿が目の前にあった。
(…私は…)
見下ろす。ふたつの突起と足が見えた。ちょっと膝を折りそうになるが何とか耐える。
「ハイ、キャロの番だよ?」
そういってシャンプーを適量手に取るフェイト。
キャロはきゅっと目を瞑ってフェイトに任せた。
優しく髪を洗われる感触はいくら少しのこそばゆさもあるがしかし至福の時でもある。
暫く泡の音だけがシャワー室を支配した。
「…………ねぇ、キャロ?」
「はい」
「キャロはエリオの事好きかな?」
いきなりの質問にキャロの心臓が跳ね上がる。
「すっ好きっ!?」
「それとも嫌い?」
「いえっ!あの……………………………………………その、格好いいと思います」
か細い声だが確かに言えた。顔はお湯で温まっている事もあるが
主にそれ以外の理由で桜色に染まっている。
「そっか…」
シャワーから水が降り注いできた。
キャロは目を一層固く閉じ、いつまでたっても慣れない時間に体を強張らせる。
手串で髪をすいて泡を洗い落としながら、フェイトが告げる。
「私もね?エリオの事が好きなんだ。
 キャロと同じ意味で。……ううん、もしかしたらもっと深い意味で」
シャワーが終わった。
「だからね…勝負!エリオに選んでもらえるよう私は頑張るから
 ………覚悟してね?」
それだけ告げてシャワー室を出て行くフェイト。
キャロはシャワーが終わった事に軽く身震いをする。
そういえばシャワー中にフェイトが何か言ってた事を思い出した。
回想する。
『私もね?エリオの事が好きなんだ。
 キャロと同じ意味で。……ううん、もしかしたらもっと深い意味で』
『だからね…勝負!エリオに選んでもらえるよう私は頑張るから
 ……覚悟してね?』
シャワー室に少女の悲鳴が響き渡った。

機動六課隊舎食堂。
美味しそうなスープが目の前で湯気を上げるなか、キャロは絶望していた。
先程の言葉を反芻する。
最初は聞き間違いかと思い、着替え中に確認したら同じ言葉を言われた。
頬をつねってみる。全く望んでないが痛みを感じた。つまり夢でもない。
口から出るのは溜息ばかり。
戦況は絶望的だ。何しろ、相手はあのフェイトなのだ。
女性としての外見的魅力は言わずもがな、
更に性格も素晴らしい事も嫌という程理解している。
横のテーブルでヴィヴィオやなのはと食事をしているフェイトをちらりと見てみる。
あぁ、横顔も美しい。むしろ360°全方位から見ても美しく見えない角度が存在しない。
フェイトがモデルならばどんなヘタレカメラマンでも素晴らしい写真集が作れる、
そんな次元の美人なのだ。
街を一緒に歩いている時に人々が思わず振り返っていて誇らしくなった美貌が
今はただただ恨めしい。
今度はちらりとエリオを確認する。少年は目の前のチキンライスと格闘中だ。
唇をケチャップで汚す様が微笑ましいが、
キャロは彼が時々ひどく大人びた表情を見せる事も知っている。
必死な表情で何度か抱きとめてもらった事もある。
色んな彼を見てきた。だが…それで満足出来るわけではない。
むしろ、彼の違う一面を見れば見るほどその思いは強くなった。
諦められるか?答えはNOだ。
(…………負けない……!)
もう一度思う。戦況は絶望的だ。だが勝機は決して0ではない。
ならば挑むだけだ。そこに譲れないものがあるのだから。

ティアナとの会話がひと段落したスバルが次の話題を探す。
と、脳裏に閃くものがあったのでそれを素直に口に出した。
「あ、そーいえばさぁ、エリオのタイプってどんな子?」
咀嚼しかけのチキンライスが宙を舞う。勿論エリオが噴きだしたものだ。
咄嗟に横を向いたので誰にも命中はしなったが。
「うわっ!汚いわねぇっ!」
ティアナの当然の抗議は無視され、エリオが叫ぶ。
「と、突然何なんですかっ!?タイプってっ!?」
視線を戻すとそこにはいやらしい笑みを浮かべたスバル。
「いや、これだけ女の人に囲まれてるとエリオくらいでも
 色々あったりするんだろーかなーと思って
 例えば…私達の中じゃ一番誰が好き?」
ニヤニヤ、そんな擬音が聞こえるような笑み。
(しまったっ!)
気付くと、ティアナも同じ笑みを浮かべてこちらを伺っているし、
先程盛大に噴き出したせいで食堂はシンと静まり返っている。
助けを求めてあたりを見回すと何故かキャロとフェイトがエリオをガン見していた。
唯一ヴィヴィオだけがニコニコと目の前の料理を征服し続けている。

四面楚歌、絶対絶命。
どうやら答えざるを得ない状況に立たされた事を少年は悟った。
いや、まだだ。自分には相棒がいた。小声で打開策を求める。
(ストラーダっ!)
『主よ。騎士たるもの、窮地に頼るのは己の力のみでなければなりません』
(いや!もっともらしい事言ってるけどこの状況は!)
『幸運を』
(あぁ!逃げたなコンチクショウ!)
相棒にも逃げられた。
セカンドモードを使い出してから随分つれなくなったなと思う。
それともコレが本性なのだろうか?
少年はまだ10歳である。
ませている事が多い女の子ならまだしも、男の子だ。
本来なら同性の友人らと遊ぶのが何より楽しい年代であり、
彼も恋愛などにはまだ全く興味が無かった。
だが、既に食堂全体がエリオの回答を待ち望んでいる。
この空気を無視できる程少年の神経は太くなかった。
とにかく少年はこの場を納める為に身近な相手から検討を始める。
(フェイトさんって答えたら…いや、駄目だ!マザコン認定されるのがオチだ!
 キャロ…これも使えない…からかわれる事にはかわりないし第一キャロに迷惑がかかる。
 …他の人は…もっと駄目か。からかわれるだけならいいけど
 真面目にとられてフラれたら精神的にイタすぎる……!)
エリオは考える。静寂が重圧となって彼の両の肩にのしかかった。
その時。彼に天使が囁く。
(いた!ひとりだけ!誰が聞いても冗談だって解る相手が!)


「ヴィヴィオですよ」
食堂の空気が一気にしらける。
あーもー何だよつまんないわねーとか無責任な発言が
あちこちで飛び交ったがエリオは気にしない。
と、そこでいきなり重いものが落ちる音がふたつ食堂内に響いた。
「キャロっ!?どうしたのっ!?」
「フェイトちゃんっ!?」
エリオが音の発生源に目をやるとそこにはスープの皿に顔面を叩き込んだキャロがいた。
隣のテーブルではくしくもフェイトが全く同じ姿勢で硬直している。
エリオとなのはがスープ皿からキャロとフェイトの顔を引き上げた。
「………ホントに……?」
キャロが濁った瞳でエリオを見て呟くが、エリオはキャロの顔を紙で拭く事に必死である。
フェイトのスープ皿は既に空になっていたのでそちらのテーブルでは
同じような光景は繰り広げられなかった。
ようやく自分の名前があがった事に気付き、
ヴィヴィオがスプーンを口から離してなのはに視線を向ける。
「フェイトちゃん?大丈夫っ?…あ、ヴィヴィオ、どうしたの?」
「あのね。さっきなんでなまえよばれたの?」
「エリオがヴィヴィオの事好きなんだって」
それを聞いてヴィヴィオがエリオの方を向く。
口の周りに色々つけた状態でともすれば汚いとも見えるが
彼女の容姿のおかげで全てが愛嬌に変わっている。
エリオとヴィヴィオの視線があった。
ヴィヴィオは考える。エリオは最近よく遊んでくれている相手だ。
優しいし、本を読んでくれるし、だっこしてくれる。
それらを思い返して、ヴィヴィオは満面の笑みを浮かべ、告げる。

「おにいちゃん、だいすきー!」
エリオもその笑みにはにかみながら微笑み返す。
その光景はとても暖かいものであり――――――

食堂内にまた音がふたつ響き渡った。

少女はベッドで考える。
食堂での件は確かにショックだった。
だが、考えてみれば同時に大きなヒントでもあったのだ。
正攻法で言っても勝ち目は無い。
フェイトにあって自分にないもの、それを最大限に利用する。
「おにいちゃん」
そうつぶやき、意識を手放す。今夜はいい夢が見られそうだ。



次の日の朝の訓練。
キャロが何かを言いたそうにしているのを察したエリオは声をかける。
「キャロ、どうしたの?」
どう切り出そうと迷っていたが獲物の方からのこのこやって来た。
キャロはその事態に思わずガッツポーズをしそうになるがぐっとこらえ、
少しふしめがちにして儚げなイメージを演出する。
「あっ!?え、エリオ君!?…あのね?そのね?
 私…結構長い間ひとりで暮らしてたから…ヴィヴィオを見てうらやましかったの…
 何か、家族っていいなぁって思って」
「うん、僕も…それはわかるよ…」
かかった。餌に食いついた。
「それでね?それで…エリオ君がいやならいいんだけど…
 私達って保護者がフェイトさんで家族みたいなものでしょ?
 だから…だから……今度から『お兄ちゃん』って呼んでいいかなっ!?」
伏し目がちだった目を上げ、エリオの目を正面から見据える。
両手は胸の前で拳をつくり必死さをアピール。
完璧な仕事ぶりだ。キャロは後で自分にご褒美のケーキをあげようと決めた。
エリオの頬が桜色に染まる。恥ずかしいのだろう。
だが、彼がとても優しい事をキャロは知っている。
彼の天秤は自分の羞恥心と誰かの想いをかけた場合、必ず―――
「う、うん…キャロがいいなら……」
誰かの想いに傾くのだ。
卑怯だとは解っていた。だが、それ以上に嬉しかった。
顔を真っ赤に染める程恥ずかしいのにそれでもキャロの意思を尊重してくれたのだから。
「ありがとう!『お兄ちゃん』!」
そう叫んで抱きつく。エリオは反射的に抱きとめた。
「うわっ!?キャロっ!?流石にこれは…」
エリオが照れから離れようとし、

「―――キャロ?何してるのかな?」

空気が凍る。少なくともエリオは固まった。
いつものフェイトの声だ。だが、そこにこめられているものがいつもと違う。
既に数回戦場に立っている若き騎士見習いはそれが何か知っていた。
(……殺気?……フェイトさんが?)
「あ、フェイトさん!おはようございます!」
キャロがフェイトに挨拶をする。エリオの腕の中で。
「おはよう、キャロ。で、それは?」
「?…それって何ですか?」
小首を傾げるキャロ。だがフェイトは確信していた。
キャロがこちらの意図を完全に把握した上で無視している事を。
「な・ん・で!エリオに抱きついてるのかな?」
エリオの手前、笑顔は崩さないよう努力した。
エリオはその笑顔の裏に隠された真意に気付いてマジビビリしてるので
全く無駄な努力であったが。
「何でって…エリオは私の『お兄ちゃん』ですから♪」
満面の笑み。
フェイトは愕然とする。
午前の訓練で、キャロがエリオの手を離す事は一度も無かった。

機動六課隊舎廊下。
フェイトは自室に向かいながら先程の光景を反芻する。
エリオに抱きつくキャロ。エリオも満更ではない様子だった。
だが、所詮は妹としての関係だ。
自分とクロノの関係を思い出す。

『…お兄ちゃん』
『フェ、フェイト!?』

『……あのね…私ひとりで髪洗えないから洗ってくれないかな?』
『フェイトっ!?いや…僕は男で…フェイトは女の子だから…』
『…お兄ちゃん…駄目?』
『ハハハしょうがないな』

『あれ?クロノ、こんな夜遅くにどうしたの?』
『……フェイト…僕は…僕はっ!』
『駄目だよクロノっ!?私達家族なんだよっ!?駄目っ!お兄ちゃ――――』

非常にまずい気がしてきた。
対抗策を必死に探す。

『エリオ…お兄ちゃんって呼んでいいかな?』
『は?』
『お兄ちゃん♪』
『(急いで医務室に通信を繋ぎ)シャマルさん大変ですっ!フェイトさんが錯乱してますっ!』

駄目だ。明らかに頭がおかしい人にしか思われない。
何しろ自分の方が9歳も年上なのだ。
(―――待って!…そう…私が年上なのがいけないんだ…)
きびすを返し、ある場所へと向かう。
廊下に響くのはフェイトの靴が立てる音のみ。
フェイトは思う。
自分がある程度容姿が整っている事は知っている。
自身が大恋愛結婚だったリンディ提督がすべて断ってくれているが、
お見合い話が年に三十件以上申し込まれているらしいのだ。
いくらにぶくてもそれなりに自分の魅力には気付いている。
だが、駄目だ。
はやてに『ええチチしとんな〜ぐへへへへへへ』と揉みしだかれた胸も
なのはに『本当に綺麗だね…』と褒められた長い金の髪もある。
だが、エリオには届かないのだ。
類まれなる魔法の才能も、執務官という地位も、
自分がもてる魅力というものを全て束ねても…
足りないのだ。
エリオを振り向かせるには。
思う。

(私に足りないもの…それは!
 ロリ分ペド度かわいげ儚さ妹属性従順さ!)

そして何より
(――――――――若さが足りない!!!)

そしてフェイトはある部屋の前にたどりついた。
そこは保管庫。件のロストロギアが保管されている。
「フェイトちゃん…あかんよ…」
ドアの開閉パネルに手を伸ばした矢先に響く声。
振り向くとそこにははやてがいた。
「フェイトちゃんが何考えとるんか解ってるつもりや。
 せやけどそれはしたらあかんよ」
冷静…というか冷たい声だ。フェイトは思わず叫ぶ。
「はやてにはわからない!
 相手が年上だからちゃんと可愛い女の子って見られてるはやてには!」
はやては冷静にフェイトの瞳を見続けていた。
そこからフェイトが本気だという事も悟った。
暫く押し黙り…口を開く。決定的な言葉を。
「……ならフェイトちゃんには私の気持ちがわかるん?」
告げる。

「ゲンヤさんのがもうあんまり固うならへんのを悩んでる
 私の気持ちが解るっていうんっ!?」

今度はフェイトが押し黙った。何がとは聞かない。ナニに決まっている。
「それは………」
かける言葉が全く思い浮かばない。実際のところかなり深刻な問題だ。
はやてが動く。胸のペンダントを握り込んでフェイトに対して身構えた。
「でも…それさえあれば何とかなるかも知れへんのよ…
 だから…それは私のもんや!」
フェイトもバルディッシュを取り出す。
「私だって…私だってこれがないと…!」




「二人とも…ちょっと頭冷やそっか?」
廊下を桃色の光の柱が突き抜けた。

機動六課隊舎医務室。
目を覚ましたフェイトが最初に目にした光景は
自分を心配そうに覗き込むエリオの顔だった。
「フェイトさん!…よかったぁ…貧血で倒れたってシャマルさんから連絡があって…」
「……エリオ…」
久しぶりの撃墜に体が重い。起き上がろうとは思わなかった。
「今日は一日中安静にしておくように、だそうです。
 それで、僕が看護を任されたので何かあったら何でも言って下さいね?」
(………シャマル………ありがとう!!!)

隣のベッドに眠るはやての枕元には
『シャマル印の特濃!1000倍マカビンビンXXX』が置かれていたそうです。


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目次:ある少年とある少女の話
著者:一階の名無し

このページへのコメント

フェイトさんちょww クーガー降・臨!!

0
Posted by T.Y 2010年07月18日(日) 20:25:43 返信

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