果実的境界線上の愛麻衣

マキシシングル「秘密ドールズ」は、やはり、タイトル曲の「秘密ドールズ」が、メッセージ性が大きいものとしてよく取り上げられるが、カップリング曲である「果実的ボーダーライン」の方も、考察を進めていくと、なかなかに興味深いメッセージが潜んでいる事に気付かされる。

実は私も、初めてこの曲を聴いた時には、特に歌詞カードに書かれた歌詞以上の意味を感じないまま、A面側の特徴のありすぎるカップリング曲と比べてライトなイメージの、爽やかな、聴きやすい、普通のラブソングと感じていた。

私は、その後も引き続き、二人のらぶらぶな情報を集めたりしていたのだが、ある程度、出会った頃の二人の様子を踏まえたタイミングで、この曲を聴き直した時に、私は、不意に胸が詰まる思いを覚えた。


この曲は、冒頭から、シンプルでアコースティックな伴奏をバックに、麻衣ちゃんと愛ちゃんが一節ずつ歌い合う形で進んでいく。

それは、波が、寄せては引き、引いては寄せる情景や、時計の振り子・ブランコなどが、一定の間隔で右・左・右・左と揺れる様子を思い起こさせる大変気持ちのいい空間なのだが、その中で二人が交互に歌う歌詞には、明らかに単なる歌詞以外のものが織り込まれていたように思えて来たからだ。


例えば1番の冒頭には、こんな歌詞がある。
>少しだけ悩み告げていい?
>こんな自分でもいとおしく
>想ってくれるひとが あらわれるかな

二人の出会いは、アニメ「ワンダバスタイル」の共演者として。お互いに人見知りする二人だけど、思い切って麻衣ちゃんが最終回のアフレコの後で声をかけたのが始まり、と、このサイトでも引用したあるインタビューで語っているが、その後にはすぐ、相談に乗ってもらっている記述がある。

(ちなみに、「こんな自分でも」のくだりは、二人の出会いからすれば「人見知りな自分でも〜」と解釈するのが自然だろうが、「女の子を好きになる自分」と解釈してみるのも一興だろう。)

一方、2番の冒頭は、
>ときめきの始まり 時間はいらないと思うのよ
>瞬間だった 心ふるえ立ちすくむ私
>美しい物を見た時だけの 衝撃にも似てる感じ
>何も知らぬ雫が瞳を濡らす

これは明らかに一目惚れを表現した歌詞だが、実際に仲良くなり始めた二人は、すぐに、麻衣ちゃんの所属していたユニットグループのメンバーを嫉妬させるほどの、らぶらぶな(食べさせ合いっこするような)状態になっていた、とするイベントレポートがある。ちなみにこのタイミングは、さっきも出て来た「ワンダバスタイル」の、打ち上げ。

また、二人はそれぞれ別の場所でだが、好みの女の子のタイプは?、というような質問に対し、「とにかく可愛い子」「ちょっと中性的な魅力を持っている人」などと答えた事がある。
外見と内面を含めて、愛ちゃんのチャームポイントは誰でもまず可愛らしさを挙げるだろうし、麻衣ちゃんは、あの通りのハンサムガール※の側面も持つ。(※女性としてはもちろん、男性と考えてみても十分魅力的な人という、ある小説での表現)
つまり、出会った二人は、お互いの理想像に非常に近かったように思われる訳だが、これはもう、一目惚れ状態になるのが自然な筋書きというものだろう。


>いつまでも手を ぎゅっとぎゅっと離さずに
>いつまでも手を 痛い程につないでて

おねがい☆ツインズ以降、二人が仲良く手を繋いでいるシーンはよく見かけるが、中でも、セーラー服姿でステージに登場してから引くまでの間、ずっと手を繋ぎ続けていたという複数のイベントのレポートがある。出退場時ぐらいはともかく、ずっと手を繋いでいて、という演出指示はどこか考えにくく、これは二人がキャラクターに姿を借りて、ある種の愛情を確認し合っているように見える。


>不思議なその笑顔 悪戯で耳へと口づけを
>私は果実? やめてそんな・・・驚いて止まる
>ふざけながらまた歩き出した
>知らないふりして話すのね
>胸の鼓動いまだに早過ぎるのに

そう考えていくと、この一節にも、ファンの知らない部分で、対応する、何か、らぶらぶなプレイがあったのではないかと勘繰りたくなる。
何しろ二人の身長差は7センチなので、並んで立つと、麻衣ちゃんの口の高さには、ちゃんと愛ちゃんの耳がくるのだ(笑)。

二人が交換しあったプレゼントの一つはピアス、とくっつけるのは、さすがに深読みし過ぎか。


>いつからが恋? 熱い熱い予感
>いつからの恋  憂う夢の調べ

>どこまでも恋?きっときっと答えなの
>どこまでも恋 出会う為に生まれたの

てっきり、よくある男女のラブソングだと思っていた私だが、ここまで来ると、誰と誰がしている恋の事を歌おうとしているのか、その隠れたメッセージ性を疑いたくなる。
というか、ここまでの部分は、偶然や、私の考え過ぎなのだろうか。作詞者は二人の楽曲やアルバムに深く関る、ブレインと言っても過言ではない人物であるから、私には単なる偶然とは思えない。


それはともかく、詩は、あくまでも、曲に登場する二人を、恋し合う二人と位置付けている。ここにタイトルの「果実的ボーダーライン」を加味すると、それは、「恋人未満か、恋人同士かの境界線(=ボーダーライン)上にいる果実たち」となるのではないかと思う。


>どこまでが蜜 甘い甘いふたり
>どこまでは蜜 落ちる果物でしょう

登場人物が二人とも女性である事を想起させる表現はあるが、逆に異性を差す言葉は歌詞の中には見つからない事から、女性+女性の恋と取るこの見解は外れていないはずだ。

このまま、1番、2番、リピート後にそれぞれある、各歌詞の最後の部分の意味を取りにいってみると、


>わからないままでも いい事かもね
>はっきりしても辛くなる

二人は、お互いの関係をどう思っているのか、それを人に説明する時には、どんな言葉を使うのだろうか。過不足の生じない単語は、存在していないように思われる。


>わからないままでは 足りなくなって
>はっきりしてと目で聞くの
>悲劇じゃないと私待ってるの・・・

とは言え、はっきりした形が欲しくなる時もある。否定されるとは思えないけど、それは一人で出せる結論じゃない・・・そんな感じだろうか?


>わからないままなら わからなくても
>気持ちはずっと変わらない
>だから切なさにさえ酔ってみる・・・酔ってみる

1番の最後が「わからないままでいい」、しかし2番では「わからないと不安」、としてきた流れを再度戻すように、曲の最後がこの歌詞で終わっている、一つのハッピーエンドなのは、「無理に形にしなくていいのよ、そこ(境界線上)がいちばん楽しい所なのだから、そのままずっと一緒に居なさい」、という畑亜貴さんの祝福のようにも感じられたり。


曲の方は、1番、2番とも、状況描写が続いた前半からサビの部分に移るあたりで、歌い方も、交互に歌う掛け合いから、ほとんどの部分で二人が声を重ねて歌うユニゾン主体に変わっている。

よくアニメのセリフを完璧に重ねてみせる二人だが、ここでも素晴らしいコンビネーションを見せている。
若干声質の違う二人の声が、デュエット、それぞれのソロ、またデュエット、と、フレーズごとに何度入れ代わっても、違和感のようなものが感じられず、一つに溶け合っているように聞こえるのは、やはり二人がそうありたい、と意識して歌っているから、ではないだろうかと思えた。


で、こういう歌い方は、例えば、世の中の恋人同士なら皆できるのか、と言えば、もちろんそれは無いと思うわけですよ。

だからこのサイト的には、麻衣ちゃんと愛ちゃんは、友達以上、恋人以上、と位置付けたい訳なのですが・・・。


果実的ボーダーライン
作詞 畑亜貴 作編曲 岡ナオキ LANTIS LACM-4263 より

日差しの影は私たちの前で揺れながら
触れてるような肩先へと降りそそぐ

少しだけ悩み告げていい?
こんな自分でもいとおしく
想ってくれるひとが あらわれるかな

不思議なその笑顔 悪戯で耳へと口づけを
私は果実? やめてそんな・・・驚いて止まる

ふざけながらまた歩き出した
知らないふりして話すのね
胸の鼓動いまだに早過ぎるのに

※1
いつからが恋? 熱い熱い予感
いつからの恋  憂う夢の調べ
いつまでも手を ぎゅっとぎゅっと離さずに
いつまでも手を 痛い程につないでて

わからないままでも いい事かもね
はっきりしても辛くなる
だから切なさに酔ってみる・・・酔ってみる


ときめきの始まり 時間はいらないと思うのよ
瞬間だった 心ふるえ立ちすくむ私

美しい物を見た時だけの 衝撃にも似てる感じ
何も知らぬ雫が瞳を濡らす

※2
どこまでが蜜 甘い甘いふたり
どこまでは蜜 落ちる果物でしょう
どこまでも恋?きっときっと答えなの
どこまでも恋 出会う為に生まれたの

わからないままでは 足りなくなって
はっきりしてと目で聞くの
悲劇じゃないと私待ってるの・・・

※1※2

わからないままなら わからなくても
気持ちはずっと変わらない
だから切なさにさえ酔ってみる・・・酔ってみる
2006年10月12日(木) 00:25:47 Modified by rttbl




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