秘密ドールズを読む

5月24日に発売されたCD、アニメ「ストロベリーパニック」ED曲の「秘密ドールズ」。

既にTV放送の際にEDとして実写PVが放映されており、ここに出演しているのが麻衣ちゃん&愛ちゃんという訳なのだが、二人で歌を歌っているシーン以外に多数のイメージカットが使用されており、そのラストシーンは二人のキスシーンを想像させる寸止めカットとなっていた。

声優雑誌のインタビュー記事を見ると、早い段階から曲がCD化される際にDVDが付属する事が決まっており、その内容を「続きが見たい人はこれで」とアナウンスしていたため、その寸止めシーンのギリギリさも相まって「完全なキスシーンは存在している」ことを思わせていた。

そして発売日。CDに付録のDVDには、煽り文句通りの「禁断の百合」シーンが収録されていた。


PV自体は、1コーラス目が、ほぼTVのEDと同様のもの。ただ、いわゆる「寸止め」カットには行かず2コーラス目へと繋がる。2番ではTVのEDにはない追加カットをいくつか挟みながら進み、その後に続く間奏が終わりると、リフレインのパートに入ったところで、これも初見の抱擁シーンが現れる。

寸止めとして有名になったシーンと同じ衣装、アングルで、ゆっくりと腕を回し合い、相手の肩に頭を預け合って、二人の距離が一度ゼロになる。安らかな表情で慈しみ合うシーンだ。

その後、一旦、体を離して改めて見つめ合ってから、麻衣ちゃんが愛ちゃんの頬に手を当ててリードを始める、お馴染みのキス直前の「寸止め」シーンに繋がっていく訳だが、寸止めは寸止めとして健在である。(ただ放送版のようにフェードアウトせず、カット編集で切られている。)

だが、ここで安心?してはいけない。一旦、ゴスロリ衣装でのデュエット歌唱シーンを挟んだ数秒後。寸止めの延長線上である事が確実な、衝撃のシーンが現れる。

寸止めシーンの直後だけあって、始まりは、近付いていく二人の上唇、下唇が順に振れ合うところから。
ついにキスを見せてしまう二人のインパクトは大きいが、この後さらに刺激的な展開が待っている。

軽く触れ合ったあと、より強く結びつこうとして更に顔を突き出そうとする麻衣ちゃん、それを受けて、顔を大きく傾け最も深く触れ合える所を探す愛ちゃん。

初めてDVDを見る者が唖然としている内にもシーンは続いていく。

次のシーンに変わっても、澄んだ表情でお互いに目を閉じキスを続けたままの二人。

二人は少しだけ姿勢を変えようと少しづつゆっくりと顔を動かしていくが、目を閉じたままお互いに離れないように口を押しつけ合って動きを合わせている所が、可愛らしくもあり、また艶めかしく、観る者の興奮を誘う。

あの麻衣ちゃんが! あの愛ちゃんが! 触れ合うだけのような幕切れを予想していた者への、この情熱的なキスの破壊力は大き過ぎる。


このように、PVには、一般的に考えて意外と言えるシーンが入っていた訳だが、百合アニメとは言っても、TVアニメの主題歌PVで、本当にここまでの演技が要求されるだろうか。当然ながら、それには、PV自体を紐解いてみる必要がある。

しかし、制作側の方には大変失礼な事ながら、このタイミングで、一体何人がストーリー仕立てのPVの本質を理解できるんだろう、と思う。残念ながら、少なくとも私には、ただ数回見ただけで理解できるものではなかった。

一つには、多数のシチュエーションから成り立つイメージカットが目まぐるしく交差する作りになっている点がある。シーンの一部からメッセージ性を考え始めても、単純な流れではないようなので考察が進まない。

中で動いている女性二人に目や心を奪われる事もあろう。こういう衣装、表情、演技をする二人は、このPV以外でお目にかからない訳で、それも夢のようなシーンまで見せてくれるのだ。


そう言っていては何も始まらないし、外に応援を求めようとしても、このPVの解説をしているようなサイトに巡り合うことは出来なかったので、何とか独自にチャレンジしてみよう。私は、麻衣ちゃんと愛ちゃんの発するメッセージが知りたいのだから。



PVの主要キーワードらしきものとして、「鉄格子」がある。鉄格子のはまった扉ごしに二人が見える場面が何回も出て来るのだが、格子の両側に二人を分かつという使い方ではないので、「別離」ではなく、ここは「閉塞」を示すと取るのが適当と思う。

めまぐるしく入れ替わるPVの各シーンは、おおむね4つのグループに分ける事が可能で、それらは最終的に、二人の衣装が、黒い衣装のシーンと、白い衣装のシーンの2つに大別できる。

ここでは、思い付きにより、黒い衣装の部分を現実、白い衣装の部分を現実ではない精神的な空間として解釈してみる。

つまり、階段をバックにゴスロリ衣装で二人で歌っているシーンと、中盤以降に出て来る、各々一人で物憂げに映っているシーンを現実側と読む。

逆に、白いマタニティドレスのような衣装を着ている部分、これは、鉄格子越しに二人が見え隠れするシーンもそうだし、冒頭から繰り返し現れる、麻衣ちゃんが愛ちゃんのお腹に頭を置く形で寝ながら、わずかな口パクのような感じで歌っているシーンが該当するが、どこか現実離れしたイメージがあるので、これを二人の心と心が触れ合っている架空の空間とする。それと衣装が同じであるから、抱擁シーンや口付けもこちらという事になる。


以上をPVの各シーンに私が大雑把に当てはめて行けば、こんなストーリーが出来上がる。



想い合う二人は、寄り添って手を繋ぎ、今日も歌う。(歌唱)

二人の心は、まるで楽園のような場所に寝転がる仲の良い天使の姉妹のように穏やかで通じ合っている。(寝ている状態)

だが、やがて二人は気付いてしまう。今の自分達の心のいる場所は、実は楽園などではなく、どこにも出口の無い檻の中だったということに。(鉄格子)

そして、心が檻から逃れるためには、いま握り合っている手を離さなければならない、という事に。


手を離し、一人と一人になった二人。しかし、目はいつまでもお互いの影を探し続け、心は悲鳴を上げ続ける。(ソロ、鉄格子)

できない。やっぱりできない。

離れるぐらいなら、この檻の中でいい。(ソロ)


離れるべきだったのに、今までよりも結びついてしまう心。(抱擁)

もう離れない。もう離さない。(口付け)

より強く。より深く。


そして今日も私達は指を絡め、罪深い関係を続ける。(歌唱〜ラスト)



私の感性では、こういう感じになった訳だが、この場合、確かに、触れ合うだけのキスシーンでは弱く、できれば本気で、心同士が離れたくない、という表現をして貰いたい一番の山場だ。

つまり、ストーリー上のこの部分に、二人の深いキスは不可欠、という結論になる。


私のPV解釈の得点は低いだろうが、私からは二人のキスに最高の点数を差し上げたいと思う。

足りないところなんて全然無い。強い想いに溢れ、それでいて可憐だったと思う。

無論、一人じゃ出来ないこと。そして、多分、この二人だから出来たこと。出合われてから永く深く培われて来たはずの、お二人のコンビネーションに拍手を贈りたい。

で、ちょっと「らぶらぶ」のスパイスが入ってたりすると、ふたり萌えの立場としては嬉しいんですが(笑)。などと書く私は、多分、仲良しの二人が、計算通りの演技になりました、みたいなコメントをするところは見たくないんだと思う。

麻衣ちゃんは、つい、やっちゃった、愛ちゃんは、愛の結晶です、と言っていたよね。ごちそうさま。すごく気持ちがこもっていたと思うよ。


全体を通しての印象も変らない。振りを付けながら歌っている時の鋭い表情。寝転びながら歌っている時の澄んだ表情。そして、独特の雰囲気とスピード感を持っていた歌。もう全てが最高でした。


ただ。最初は、みんな一点に目を奪われ、びっくりすると思うし、その中で冷静に意味を取りに行く人は案外少ないような気がする。
だから誤解を受け易いプロジェクトという言い方ができるように思うのだけど、そんな中で頑張った二人は本物だと思う。まだ色々と誤解している私で良ければ引き続き応援させて頂きたい。
また、今回の作品が、よりお二人の絆を深めるものであって欲しいと切に願う。


各シーンには、まだまだメッセージ性が隠れていて、見逃していたり誤解しているところがたくさんあると思う。気付けばまた加筆したい。
2006年05月31日(水) 18:08:25 Modified by rttbl




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