外国語を聞き取るために

そもそもなぜ英語(や日本語以外の外国語)は難しく感じる?

実際問題、日本人(以下、日本語を母語とした人と同意)にとって、日本語以外の外国語は難しく感じるのではなく難しいものです。
人間が言語を習得する課程はかなり長期間に及び、語彙面での成長をも含めるならばその期間は一生と言っても過言ではありません。
そのため、無意識の内に聞き取り、発音、語彙の記憶をしている幼少期をすっ飛ばす教育、つまり日本人にとっての英語のように母語ではない言語を習得するにはある程度理論的に勉強する必要があるのです。

例えば日本の(少し前の世代の)英語教育はよく近代ヨーロッパ(主にイギリスやドイツ)のラテン語教育を元に構成されていたと言われます。
ヨーロッパ人にとってラテン語とは私たち日本人にとって古典日本語や中国古文に相当するもので、非常に合理的にその教育方法が構築されています。日本人でも英語は苦手でも古典の授業は得意という人も多いですよね。それは日本語の知識が十分な日本語話者にとって理論的で合理的な教育方法であるからなのです。古典の授業が苦手という人は大方現代国語の授業も苦手なことが、これを証明しています。

では、そのヨーロッパのラテン語教育を元に作られた日本の英語教育ははたして合理的だったのでしょうか。
残念ながら、あまりそうとは言えなかったようです。ただここはその教育方法について是非を問うページではありませんので、割愛しましょう。
要点は、どうしてかつての英語教育が合理的ではなかったかということで、音、特に聞くことに重点を置いていなかったということが大きな問題なのです。
世界中のほとんどの言語は(手話や一部の死語を除いて)音を持っています。当たり前ですね、言語は人が話すものなのですから。
ラテン語は近代ヨーロッパでは既に母語としての話者はいませんでした。このことはことに関してはある種の柔軟性をラテン語教育にもたらしていたのです。
つまりこの教育で重要なのはラテン語を読む、声に出して覚えることであり、聞くことではありませんでした。その証拠にイギリスでは英語風の発音、フランスではフランス語風、ドイツではドイツ語風、イタリアではいわゆる教会式発音といったように、どう考えても相手に理解してもらうために発音をしていたとは思えませんよね。

なぜ聞くことに重点が置かれなかったのでしょうか。それはラテン語がヨーロッパ語の母と呼ばれることと深く関係しています。
現在、私たち日本人がイメージするヨーロッパ、つまり中央ヨーロッパや西、北ヨーロッパで話されている言葉は大きく分けて二つのグループに属します。いわゆるゲルマン語派とイタリック語派です。たとえば英語、ドイツ語、スウェーデン語などはゲルマン語派、イタリア語、フランス語、スペイン語などはイタリック語派に含まれます。
これらは二つの別グループとはいえ、どちらもより大きな分類でインド・ヨーロッパ語族と部類され、元々は同じ言語から派生したと考えられています。そのため語彙や発音などに似た部分が多く、また覚えるべき文法もよく似ています。
ラテン語はかつて全ヨーロッパを支配したローマ帝国を建国したラテン人が話していた言葉です。ローマ帝国による長い支配は、ヨーロッパの言語事情にも深く関係し、その地域地域の言葉にラテン語的な音や語彙を残し、さらには全ヨーロッパの共通語としてラテン語はその地位を築き上げていきました。これがラテン語はヨーロッパ語の母と言われる所以です。
時代は下り、ローマ帝国が滅ても、ヨーロッパではラテン語は知識人の共通語としての地位を揺るがせず(本当の上流階級に属す人にとってはむしろギリシア語が共通語であったようですが)、やがて論文や著作は全てラテン語で書くというのが常識になります。
そう、これです。この書き言葉として残った言語というのが、聞くことに重点を置かなかった最大の理由なのです。

つまり私たち日本人が外国語を学ぶには、極論的に言えばかつての学校の英語教育と違うことをしなければいけないのです。

(※ここまで長々と書いてきてアレですが、現在の学校の英語教育は以前より聞くことの比重が高いです。ですので現在小中高のどれかの学生さんはこの見出しを読まなくてよかったわけです^^ サーセンwwwwww)

つまり大切なのは

ずばり聞くことです。そして実際に発音することも重要です。

聞くってどうやって?

あなたが今使っているインターネットという便利すぎる道具は、驚くべきことに世界中とつながっています。
あなたがDJとなって世界中に突撃し、外国人の知り合いを作るのがこのラジオ的には最高の方法なのですが、その前に準備が必要というシャイなあなたにもとっておきの方法がちゃんとあります。
例えば英語を聞きたいならBBCのLearning Englishというページで、ニュースの内容を読みながら聞くことができ、非常に有益だと思います。
またBBC以外でも外国の公共放送のラジオまたはテレビ局ではこのようなテキストの読み上げを実施しており、この方法で世界の言語をマスターすることも夢ではありません。

参考リンク

BBC(イギリスの国営放送): Learning English
世界標準のBBCイングリッシュ、容認発音を学ぶならここ。

RFI(フランスの国営放送): Infos en français facile
日本人があこがれてやまないフランス語。

NHK(日本ヒキコモリ協会日本の公共放送): NHK WORLD Daily News
英語、アラビア語、中国語、フランス語、韓国語、ロシア語、ポルトガル語、スペイン語の八ヶ国語(!)に対応。

などなど(追加よろしくお願いします。)

話すには?

まずあなたが発音記号(IPA)を読めないなら、ぜひ読めるようになってください
おそらく、ほとんどの人が身近に自分が学びたい言語のネイティブがいないでしょうから、発音記号が読めるということは、非常に重要です。

Googleで発音記号を検索

発音記号と言っても体系はいくつかありますので、ここからはIPAを標準とします。


まず必要なのは外国語は日本語ではないという認識です。あたりまえですか?
いえ、意外にも、この認識が足りない人が残念ながら多いのです。

たとえばあなたは、『なんで英語はこんなに母音が多いんだ?』や『どうしてLとRを区別するんだ?』とか思ったことはありませんか。残念ですが、そう思った時点で外国語は日本語ではないという認識が足りません。
実際は、英語は母音が多いのではなく、母音として区別する音の数が多いのであって、日本語はその数が少ないのです。多くの言語でLとRを区別するのは日本語が区別しない言語なのです。
このように、日本語を基準として考えると、外国語とは奇妙なものばかりに思えます。もしまったく奇妙に思えなかったら、その言語はきっと日本語ですよ。

では敵を知る前に味方を知りましょう。外国語(主に英語、ヨーロッパ諸語)と比べた日本語の特徴は何でしょう?
まず母音体系が非常にあいまいなことがあげられます。日本語の母音はよく五種類だといわれます。あ(a)、い(i)、う(u)、え(e)、お(o)と、いわゆる五十音の基礎にもなっていることからもわかりますね。
しかしそれは字母、つまり文字上(音素上)での数に過ぎません。音声学で定義されている母音は、単音だけでも二十八種類ありますが、日本語は(日本語話者は)それを全てではありませんが、大まかに五つに分けているにすぎません。実際に観察すると、話者によって発音が違うことはよくあります。このことは、実は外国語を学ぶ上で障害になりやすいことが多く、また意識しないと修正できない重要なことです。

前述のように英語と日本語では母音を区別する、しないというだけで、あたかも母音のが違うかのように思えるほど差があります。



(以下作成ちゅ!...)
2007年08月10日(金) 11:39:54 Modified by ID:7zKEehCW3Q




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