「はるまこ」（春香×真 百合10スレ555）
最終更新：ID:OqHhyNoAkQ 2009年12月05日(土) 11:12:27履歴
東京都某所
既に一月も半ばを過ぎ、正月休みなど記憶の遥か彼方に消え去ってしまったかのよ
うに日々の営みに勤しむ通行人の群れの中、一人の少女が往来に立ち並ぶ雑居ビルの
一角の見上げ立っていた。
雑居ビルの一角――たるき亭ビルに居を構える芸能事務所・７６５プロ所属のアイ
ドル天海春香である。
道行く人々から投げかけられる好奇の視線を気にもせず、春香はビルを見上げなが
ら切なげなため息を漏らしたり、顔を赤くしたり、何かを決心したような表情をした
りと、可愛らしい百面相を繰り返していた。
「はぁ……いつまでも、こんな所で考えてちゃダメだよね 」
何かを諦めたように呟く。もうかれこれ三十分ちかくこうしているのだ。心配気な
視線を送ってくる近くのコンビニの顔なじみのオバチャンもそろそろ不審に思うだろ
うし、いい加減事務所の誰かと鉢合わせしてもおかしくないのだ。
「覚悟を決めろ私。 いつも通り。 いつも通りの私でいくんだ 」
そう決意を固め、一歩を踏み出そうとした瞬間
「はるるん、おっはー。 事務所の前で突っ立って何してんの？」
後ろからの声に、心臓が跳ね上がった。慌てて振り返ると、いつもの悪戯っ子めい
た笑みの双海亜美がいた。
「うぇっ！？ あ、亜美？！ な、何でも無いよ！ それよりも、うん、おはよー」
あたふたと挨拶を返す。傍から見ていると怪しいことこの上ないが、亜美は特に気
にした風もなく続けた。
「んじゃ、事務所いこ？」
絶妙のタイミングで決意を挫かれた春香は、もはや抵抗する気力も無く、亜美の後ろ
についてビルに近づいていった。
ドアを閉め、高鳴る胸の鼓動に急かされるように春香は事務所の中を見渡した。
――いた。
艶やかな黒髪に元気いっぱいにぴょこんと跳ねる二本のアホ毛。お馴染みのジャー
ジ姿に包まれた小柄な少女。７６５プロの王子様系アイドル、菊地真その人である。
「……はぅ」
瞬間、顔が火照った。真の姿を認めた途端に体中の血管が沸騰し、心臓がオーバー
ヒートを起こしたような錯覚を覚えた。
動かしようのない事実を自らの体に叩きつけられ、春香は自分の気持ちの全て肯定
した。
――私、やっぱり真の事が好きなんだ。
切っ掛けは覚えていない。初めてあった時から、真の顔を見るとドキドキした気持
ちにはなった。だが、それは中性的、王子様と言われる、真の凛々しい容姿に対して
であったはずだ。
ただ漠然とカッコイイなとか、そういった物に憧れを持つ女の子特有の当たり前の
感情であって、恋愛感情とは全くの別物であったはずだ。
それがいつからか、そんな真に胸の高鳴りを覚え、次第に心惹かれていった。
自分は真を男として見ているのではないか？ そう思ったこともあった。ファンの
女の子の中には、真に理想の王子様像を投影しているような子もいる。始まりはそう
いったファンの子と同じであったかもしれない。しかし、今はそうでは無いと断言で
きる。
素顔の真――時折見せる女の子らしい仕草、本当に嬉しそうな向日葵のような笑顔、
�猴�想の自分�瓩鯡椹悗靴洞�回りしてしまうおっちょこちょいな所。
そんな真の全てが、今は愛おしい。この気持ちは�猯�愛感情�瓩覆鵑世藩�解できる。
だから、もう私は迷わない。
春香は真のところに向かった。覚悟は完了、後は攻めるのみ、だ。
「真ー！ おは――」
「真、おはよう」
渾身の第一歩を遮られ、思わずずっこけた。
「あ、千早。 おはよう！」
顔を上げると、別の方向から千早がやってきた。恨めしげな視線を千早に向けるが
デスクの陰に倒れているせいで気づく様子は無い。
「昨日のダンスレッスンのことなんだけど――あれは――で――」
「うーん、やっぱ――で――じゃないかな？ あと、――なんて――」
楽しげに会話を始める二人を見て、モヤモヤとしたものが胸中に渦巻き始めた。嫉
妬だ。こんな、何のへんてつもない会話にすら、親友にすら嫉妬を抱いてしまう。
「むー」
そんな内心であっても、唇を尖らせ拗ねるくらいしかしないのが春香の可愛いなの
かもしれない。しかし――
「ふふ。 じゃあ、明日のマンツーマン自主訓練もよろしくね 」
「へへっ、おまかせあれ 」
看過出来ない単語に、芝居がかった一礼をする真の腕を春香は無意識のうちに立ち
上がり掴んでいた。
自主訓練？ マンツーマン？ 二人っきり？
「あれ、春香？」
「春香、どうしたの？」
不思議そうな視線を向ける二人に構わず、春香は早口でまくし立てた。
「えっとあのね千早ちゃんごめんね明日は私と予定があるの真ってば忘れるなんてひ
どいよーそういうことだからレッスンは別の日にしてもらえるかなあそうそうプロデ
ューサーさんが私たちの事よんでるみたいだからいそいでいかないとそういうわけだ
から千早ちゃんほんとにごめんねー！！！」
嵐のような一方的なトークを終えると、春香は真を掴んだまま台風のように過ぎ去
っていった。千早は事態が飲み込めず、ただ立ちつくすしか出来なかった。
「ちょっと春香！ 春香、落ち着いてってば、てゆうか止まってよぉ！」
普段の春香からは想像もできないようなパワーで、ビルの中を引っ張り回されなが
ら真は叫んだ。千早と同じで、真も何が何だかさっぱりわからないのだ。
そして、かんじんの春香は
(うぅ……つい勢いでやっちゃったけど、何て説明しよう？ 千早ちゃんにも何て言お
う？ どうしよう、それにあれじゃあ結局二人が自主訓練やめる事にはならないし、
でも訓練邪魔するのってほんとは二人に悪いし、うぅぅぅぅ)
自分のしでかした事で、更にテンパっていた。勿論、真の声も聞こえていない。
「助けてぇ、プロデューサ〜〜！」
真の助けを求める声がビルに響き渡った。
春香の恋もトラブルも、まだ始まったばかり。
既に一月も半ばを過ぎ、正月休みなど記憶の遥か彼方に消え去ってしまったかのよ
うに日々の営みに勤しむ通行人の群れの中、一人の少女が往来に立ち並ぶ雑居ビルの
一角の見上げ立っていた。
雑居ビルの一角――たるき亭ビルに居を構える芸能事務所・７６５プロ所属のアイ
ドル天海春香である。
道行く人々から投げかけられる好奇の視線を気にもせず、春香はビルを見上げなが
ら切なげなため息を漏らしたり、顔を赤くしたり、何かを決心したような表情をした
りと、可愛らしい百面相を繰り返していた。
「はぁ……いつまでも、こんな所で考えてちゃダメだよね 」
何かを諦めたように呟く。もうかれこれ三十分ちかくこうしているのだ。心配気な
視線を送ってくる近くのコンビニの顔なじみのオバチャンもそろそろ不審に思うだろ
うし、いい加減事務所の誰かと鉢合わせしてもおかしくないのだ。
「覚悟を決めろ私。 いつも通り。 いつも通りの私でいくんだ 」
そう決意を固め、一歩を踏み出そうとした瞬間
「はるるん、おっはー。 事務所の前で突っ立って何してんの？」
後ろからの声に、心臓が跳ね上がった。慌てて振り返ると、いつもの悪戯っ子めい
た笑みの双海亜美がいた。
「うぇっ！？ あ、亜美？！ な、何でも無いよ！ それよりも、うん、おはよー」
あたふたと挨拶を返す。傍から見ていると怪しいことこの上ないが、亜美は特に気
にした風もなく続けた。
「んじゃ、事務所いこ？」
絶妙のタイミングで決意を挫かれた春香は、もはや抵抗する気力も無く、亜美の後ろ
についてビルに近づいていった。
ドアを閉め、高鳴る胸の鼓動に急かされるように春香は事務所の中を見渡した。
――いた。
艶やかな黒髪に元気いっぱいにぴょこんと跳ねる二本のアホ毛。お馴染みのジャー
ジ姿に包まれた小柄な少女。７６５プロの王子様系アイドル、菊地真その人である。
「……はぅ」
瞬間、顔が火照った。真の姿を認めた途端に体中の血管が沸騰し、心臓がオーバー
ヒートを起こしたような錯覚を覚えた。
動かしようのない事実を自らの体に叩きつけられ、春香は自分の気持ちの全て肯定
した。
――私、やっぱり真の事が好きなんだ。
切っ掛けは覚えていない。初めてあった時から、真の顔を見るとドキドキした気持
ちにはなった。だが、それは中性的、王子様と言われる、真の凛々しい容姿に対して
であったはずだ。
ただ漠然とカッコイイなとか、そういった物に憧れを持つ女の子特有の当たり前の
感情であって、恋愛感情とは全くの別物であったはずだ。
それがいつからか、そんな真に胸の高鳴りを覚え、次第に心惹かれていった。
自分は真を男として見ているのではないか？ そう思ったこともあった。ファンの
女の子の中には、真に理想の王子様像を投影しているような子もいる。始まりはそう
いったファンの子と同じであったかもしれない。しかし、今はそうでは無いと断言で
きる。
素顔の真――時折見せる女の子らしい仕草、本当に嬉しそうな向日葵のような笑顔、
�猴�想の自分�瓩鯡椹悗靴洞�回りしてしまうおっちょこちょいな所。
そんな真の全てが、今は愛おしい。この気持ちは�猯�愛感情�瓩覆鵑世藩�解できる。
だから、もう私は迷わない。
春香は真のところに向かった。覚悟は完了、後は攻めるのみ、だ。
「真ー！ おは――」
「真、おはよう」
渾身の第一歩を遮られ、思わずずっこけた。
「あ、千早。 おはよう！」
顔を上げると、別の方向から千早がやってきた。恨めしげな視線を千早に向けるが
デスクの陰に倒れているせいで気づく様子は無い。
「昨日のダンスレッスンのことなんだけど――あれは――で――」
「うーん、やっぱ――で――じゃないかな？ あと、――なんて――」
楽しげに会話を始める二人を見て、モヤモヤとしたものが胸中に渦巻き始めた。嫉
妬だ。こんな、何のへんてつもない会話にすら、親友にすら嫉妬を抱いてしまう。
「むー」
そんな内心であっても、唇を尖らせ拗ねるくらいしかしないのが春香の可愛いなの
かもしれない。しかし――
「ふふ。 じゃあ、明日のマンツーマン自主訓練もよろしくね 」
「へへっ、おまかせあれ 」
看過出来ない単語に、芝居がかった一礼をする真の腕を春香は無意識のうちに立ち
上がり掴んでいた。
自主訓練？ マンツーマン？ 二人っきり？
「あれ、春香？」
「春香、どうしたの？」
不思議そうな視線を向ける二人に構わず、春香は早口でまくし立てた。
「えっとあのね千早ちゃんごめんね明日は私と予定があるの真ってば忘れるなんてひ
どいよーそういうことだからレッスンは別の日にしてもらえるかなあそうそうプロデ
ューサーさんが私たちの事よんでるみたいだからいそいでいかないとそういうわけだ
から千早ちゃんほんとにごめんねー！！！」
嵐のような一方的なトークを終えると、春香は真を掴んだまま台風のように過ぎ去
っていった。千早は事態が飲み込めず、ただ立ちつくすしか出来なかった。
「ちょっと春香！ 春香、落ち着いてってば、てゆうか止まってよぉ！」
普段の春香からは想像もできないようなパワーで、ビルの中を引っ張り回されなが
ら真は叫んだ。千早と同じで、真も何が何だかさっぱりわからないのだ。
そして、かんじんの春香は
(うぅ……つい勢いでやっちゃったけど、何て説明しよう？ 千早ちゃんにも何て言お
う？ どうしよう、それにあれじゃあ結局二人が自主訓練やめる事にはならないし、
でも訓練邪魔するのってほんとは二人に悪いし、うぅぅぅぅ)
自分のしでかした事で、更にテンパっていた。勿論、真の声も聞こえていない。
「助けてぇ、プロデューサ〜〜！」
真の助けを求める声がビルに響き渡った。
春香の恋もトラブルも、まだ始まったばかり。
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