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「…ねえプロデューサーさん、言いたいことがあるの」

雨。

「ミキね、すっごくすっごく考えたの」

土砂降りの雨。

「こんな気持ちになるの…はじめてなんだよ、わかるよね?」

雷。

「あなたが好きです、付き合ってください」

再び雷。

「ごめん、美希。俺は春香と…もう」

トタン屋根に落ちる、雫の音。

「…」

雨の音。

「…そっか…それじゃあね、プロデューサーさん…」
「美希…」

彼が手を伸ばしても美希はその手を掴まない。
離れていく、彼女の影。

「お〜と〜うさんっ!」


ごっつんと頭を殴られ、目覚めるプロデューサー。
頭上にはエプロン姿の彼の妻にして元アイドル、天海春香。

「いってて…何すんだよ」
「だって、おとうさん、うなされてたし、早くしないと時間だし」
「そっか、俺も今日から『お父さん』か」

春香は自分の現役時代のプロデューサーである彼と結婚し、妊娠していた。
それが分かったのが、つい昨日。
そんなわけで、「おとうさん」を夫の新たな呼び名としている春香であった。

「遅刻癖があると、子供に移っちゃうぞ、おとうさん」
「へいへい、わかりましたよっと…」
「朝ご飯は作ってるからね」

おたまをぐるんと回して得意げに笑う春香。
ああ、そのおたまで頭を殴られたのか、春香にしては力が強いと思ったと彼は気づいた。


着替えて食卓に着くと、朝のニュースの時間が同時に訪れる。
彼は職業柄、ワイドショー風味のニュースを朝からつけることにしている。

『765プロの星井美希が、謎の仕事全面キャンセルをしてから1か月になります。
また男遊びに興じているのかとネット上を中心に話題になっています』

「美希…大丈夫かな」
「春香も心配なのか?」
「そりゃ、私だって現役時代は美希と一緒に仕事してたし。
それに、美希って精神的に強い方だと思ってたから。
みんなが負けて落ち込んでた時に一人だけ頑張ろって励ましたりして」
「…確かにな」
「それに、最近言われてる“悪女”の話だって美希がそんなことするとは思えないし」

新聞に出ている週刊誌の大見出し。
連日出ている“男を弄ぶ悪女”の記事。
それが美希の現在の異名だった。
何でも、ここ二年ほど、様々な男性と交際し、一夜を共にしては
一方的に切り捨てていたというのだ。
もっとも、週刊誌やワイドショーが言う芸能人の情報は信憑性が薄く、
今や765プロどころか芸能界最高のアイドル歌手とまで称される彼女が
男を弄ぶような真似はしていないだろうというのがファンを中心にした
一般的な見解であった。

「そうだな」
「ほんっと、最近の芸能記者さんはゴシップばっかりだよね。
私の時は悪徳さんとかが色々やってたみたいだけどそれくらいだったし、
どうかしてると思うな」
「珍しく語るじゃないか」
「だって、美希は離れてたって今も仲間だもの。
美希がこれで傷ついて休んでたとしたら、私だって胸が苦しいよ」

春香は知らなかった。美希の傷の一因が、どれほどかはともかく、少なくとも
かなりの比率を…目の前の夫が占めていることに。

「そろそろ時間だな…行ってくる」
「あれ、今日は早いねえ」
「いや、まあ、ちょっとね」
「そっか、行ってらっしゃい、おとうさん」

春香に行ってきますのキスをして彼は家を出た。


多くのアイドルやその候補生の面倒を見ている彼だが、
現状の星井美希については情報が掴めない。
ただひとつ、彼が分かっているのは
美希が想像以上に精神的に打たれ弱いということだ。
それは、彼が今朝の夢で見た―美希ではなく、春香を選んだあの日に、
彼女が見せた表情で知った。
その日以来美希は女性マネージャーに
最低限の仕事のケアをしてもらうだけでプロデューサーを付けてはいない。
春香は、彼女のこの行動を美希が自立した、
それだけだと思っているし、彼からこのことは聞いていない。
ただ、彼自身も週刊誌が現在伝えるような状況に、
美希が立たされていないことだけは信じたかった。


午後六時ごろ、彼の仕事が終わる。
春香は今でこそ専業主婦だが、現役時代はトップアイドルだった。
今の美希はダウンロードランキング首位を常に保っているが、
当時の春香と比べると劣るかもしれないと言われるほどだ。
そこまで春香を導いた彼は仕事面でだいぶ楽をさせてもらっているのだ。
帰り際にいつも寄る少し遠くの駅の喫茶店でジャズを聴きながらコーヒーを飲む。
用が済んで店の外に出ると、その時。
すると、金髪のロングヘアの女性が文房具店に入っていくのが見えた。
まさかと思い、その店に入る。
ふらふらと歩いていたその女性は立ち止まって何かを眺めている。
間違いない。

「美希?」

プラスチック製のものが落ちるような音がする。
彼女が眺めていたものを落としたのだろうか。

「誰?」

彼女は振り向きながら落としたものを背中で隠した。

「美希のプロデューサーだった、俺だけど」
「ああ、なんだ。プロデューサーさんかぁ…記者さんかと思っちゃった」

にっこり笑った彼女を見て、彼は昔のままだと安堵した。

「とりあえず、記者さんに見つからないうちに、ミキのうちに来て」


彼女の家は、売れている割に、つつましやかだった。
あくまで、割に、ではあったが。
赤いソファの上で美希が彼に話しかける。

「なんで、こんなとこに来たの?」
「いつもここらの喫茶店でコーヒー飲むんだ」
「ふ〜ん、じゃあこの辺にはあんまし来ない方がいいよ」
「なんでだよ?」
「たまに、記者さんがここ辺りに来てミキを狙ってるの。
あ、プロデューサーさんがミキと浮気してるよ〜、な〜んて思われちゃうかもね」

あははっと無邪気に笑う美希。

「そう、そのことなんだけどさ」
「何?」

彼女の目つきが変わった。
プロデュースしていたときには見せたことのない、冷たい眼差し。

「言いにくいことだろうけど」
「何、早く言ってよ」

苛立ちを見せている彼女の声。

「いつものあのゴシップ記事、本当なのか?
いろんな男と美希が付き合ってたってやつ」
「もしホントなら、どうなの?」

急に笑顔になった美希に驚く彼。

「ってことは…」

彼が嘘なのか、と胸をなでおろそうとした表情を見て彼女は言った。

「ぜ〜んぶホント。ミキはアクジョだよ」
「!!」
「別にプロデューサーさんにフラれたからじゃないよ。
だけど、あの後、ミキはいろんな人と付き合ったの。
告白してくる人みんなとお付き合いすれば、いつかは両思いになってもいい人ができる…。
そんな風に思ってた」
「それは違う…」

言いかける彼を遮って美希は叫んだ。

「分かってるよ!ミキと付き合った人はみんなカラダ目的で、
ホントはミキのことこれっぽちも見てなかった!
でも何度もやり直せばいつかは上手くいく、そう思ってた。
バカな話だよね…。気づいた時にはミキは、“アクジョ”になってたの」
「美希…すまない」
「なんでプロデューサーさんが謝るの?!バカだったのはミキだよ?!
プロデューサーさんは可哀そうな娘だなって思ってくれればそれでいいの!」

彼女が立ち上がって叫んだ。

「それとも、春香と別れて、ミキともっかいヨリを戻してくれるの?!
同情するぐらいならそれくらいしてよ!」

それは、タブーの言葉。沈黙が流れる。

「美希…お前…」
「あ…ご、ごめん。やだな、もう無理って自分で決めたのに、まだ諦めてないなんてほんとミキって…」
「バカバカバカバカ自分のことを言わないでくれ。こっちが辛い」
「…そうだね、ちょっとジギャクしすぎたかも」
「明日から、仕事、出な。きっといろんなことも忘れて打ち込めるはずだ」
「その方がいいのは、分かってるよ。でも、なんか怖いんだよね。
周りに何か言われるかもしれないし」
「今逃げている方がよっぽどなんか言われるぞ」
「…うん」

うつむく美希を見て彼は言葉を放つ。

「美希」
「何?」
「辛いなら、抱くぞ」
「で、でも、プロデューサーさんには」
「今夜だけなら、大丈夫だ」
「でも、ミキがそのことで脅しかけちゃうかもしんないよ?」
「美希はそんなことしないだろ」
「えへへ、ありがと、じゃあ一緒にシャワー入ろ?」
「…ああ」


携帯で「今夜は遅くなる」と春香に伝えたプロデューサーは
シャワールームで、濡れた身体の美希と抱き締めあった。
唾と垂れ流しになっているシャワーの水が接吻する互いの口の中を潤していく。
別れたあの頃よりもおそらく豊満になっているであろう胸と、乳首が擦れる。
お互いの吐息が水の滴る音をかき消してやや広めのシャワールームに響く。

「はぁ…はぁ…カラダ…あらわ…なきゃ」

突然、彼が石鹸をスポンジに包み彼女の身体に擦り付けてきた。

「思う存分、可愛がるから」
「やっ…やぁ…おっぱい…ばっかし…」

乳首がスポンジに擦れて左右に動く。
苦い味になった美希の身体を舐めていく彼。

「や…そこ…そって…ない…から…」
「胸じゃないとこを攻めてるのに美希はわがままだな」

彼女の茶色の陰毛に石鹸の泡がこびり付いている。
壁に背中を押しつけて悶える彼女に久々に興奮という感情を呼び起こす彼。

「…まんぞく…できた?」
「美希こそどうなんだ」
「ミキはプロデューサーさんといるだけで満足なの…」

あの頃の美希にはない、虚ろな表情で彼女は言った。


シャワールームから出ると、なかば無理やり美希にベッドに押し倒された彼。

「まだ、体拭いてないのにいいのか」
「ベッドがあわあわのぬれぬれでいいと思うな」

もう一度キスをする。
シーツが湿っているため、独特の音が舌を絡める音に混ざっていく。
その時。

「美希…さっきから、リストバンドずっとしてるのか?」
「え?こ、これはね…」

背中に回された腕の妙な感触に気付いた彼。
戸惑う美希。

「そ、そう!外し忘れちゃったんだよ!だから…続けよ?」
「なんか…あるんだろ?」
「何もない!何もないよ!」

美希は叫んでリストバンドを抑える。

「さっき、文房具屋で見てたの…」
「やだ、外さないで!」

激しく抵抗する彼女を抑えて、リストバンドをめくり取る。
そこには、剃刀か何かで付けられた、無数の切り傷。

「…みられたく…なかったのに」

小さくしゃくりあげる美希。
精一杯の強がりで彼に接していた。
何もかも打ち明けても、これだけは隠したかった。

「辛かったんだな…」
「辛いんじゃないよ」

涙声で美希が言った。

「全部、ホントは今日でオワリのはずだったの。
今まで、何度も終わらせようとしたけどやっぱり、痛いの怖くて。失敗しちゃって。
だから、なるべく切れるカッターを、探してた」
「美希、どんなことがあっても絶対に命だけは大切にしてくれ」
「でも、今のミキってどう思われてるの?
アクジョとか色々言われて嫌われてるかもしれないよ?
もういらない娘なのかも…」
「何言ってんだ。日本中のファンが美希を必要としてる。
性的な目だけじゃなくて、本当の美希が好きだと思ってる」
「じゃあ、今…今だけでいいの、ミキを本気で、抱いて」
「ああ、さっきよりも可愛がるよ」
「ううん、まずはミキがやる」

シーツに身体を這わせて美希は彼の肉棒を胸に挟む。
咥えた先端を上手に舐める彼女は間違いなく、行為慣れしていた。

「ごめん…ね…じゅぷ…みき…けがれ…じゅぷぷ…ちゃってて」
「無理して…喋んな…ヤバい、気持ちいいよ、美希」

流れ出る白濁液を尚も舐めていく。
咳一つせず、軽く苦笑いする彼女。
そっと彼の突き立ったままの肉棒に秘所を寄せていく。

「まだ挿れないでね。ゆっくり、ゆっくりだよ」

シャワーの水か、愛液か。いずれかにしても濡れた陰毛が肉棒に絡む。
秘所に辿る筋が、亀頭を銜え込むぎりぎりでもどかしいまでに滑らかに触れ合う。

「んっ…んんっ…やぁうっ!とんじゃい…そっ…」

硬さを増す雄と柔らかさを増す雌。
美希がゆっくりと腰を落とす。

「んっくぅ〜…ふぅぅあぁぁ!」

秘所で肉棒を銜えたまま、美希が大きく倒れこんで三度目のキスをした。
お互いの腰が小刻みに動いて髪も、脚も絡み合う。
傷ついた美希の腕を彼は握りながら、体を同化させた。


「今夜は、ありがとね」
「こっちこそ、やるだけやって逃げるようで悪いな」
「別にいいよ。それと、ミキ、明日から仕事にちゃんと出るから」
「その気になったのか」
「うん。リクツじゃなくて、ミキはアイドルしてこそミキだから。
付き合ってなくても、プロデューサーさんも、春香も、ミキを見てる」
「何にせよ、吹っ切れたなら、良かったよ」

扉を開けると、土砂降りの雨が降っていた。

「やっべ、傘、忘れた」
「傘ならそこにあるの、あげる。
残って雨宿りしてくれるなら、ミキはそれでもいいけど」
「…帰るよ」

笑いながら、傘を取った。
扉の前で彼を見送る半ズボンにTシャツ姿の美希。

「美希、じゃあな」
「うん、もう会わないね」
「互いの意志ではな。でも、ひょっこり会うさ。今日みたいに」
「そうだよね。あ、そうだ」
「何だい?」
「明日、テレビ、見てて。ミキ、歌うから!」

雷の音と美希の声が同時に聞こえて、あの頃の情景が思い出された。


次の日。

「昨日はホントに遅かったね。今日は大丈夫?」

朝、春香がテレビをつけて彼に言った。

「ああ、もうしばらく、遅くなるこたないよ」
「もう、体には気を付けてよ〜」

『みんな〜、ミキだよ〜!元気にしてた?!』

テレビから聞こえる声に二人が振り向く。

『もうミキ、休まない!どこにも行かない!ミキはミキらしく、生き続けるから!』

「美希、復帰したんだ!良かった〜」
「美希…良かったな」

彼女の「生き続ける」という言葉が誰に向けられたものか、それは彼だけが知っている。
そして、これからも知られないだろうし、知られる必要もない。

「春香、そろそろ子供の名前、考えないか?」
「えっ?!っと見せかけてもう私が考えてあるんですよこれがっ!」
「おぉ!何だ、どんな名前だ?!」

そして、こちらでは新たな命が、「生きる」。

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