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>475-476(片想いする美希)に触発





ホントは、美希さんがちらってこっち見たの、気づいてました。
でも気づいたことがわかったら、わたしのフンイキで伊織ちゃんが気づいちゃって、「二人のお話」が
「3人のお話」になっちゃうって思って、いっしょうけんめい伊織ちゃんの目を見てたんです。
美希さんが実は寝てないのって、今日が初めてじゃないのも知ってるんです。ちょっと前から美希さんは、
伊織ちゃんが近くにいるときはうまく寝られないんです。

「それでね伊織ちゃん、そしたら長介が」
「まったく、あんたんちはいつも楽しそうでいいわね」

目を大きく開けると、ふだん見えないところもちょっとだけ感じることができるから、わたしはいつも以上に
伊織ちゃんに近づいて、いつも以上に目を見開いて、いつもみたいなお話にいっしょうけんめいになって。
なんか、胸がちくちくってします。
美希さんのこと、キライなわけじゃないのに、3人でお話するのもとっても楽しいって知ってるのに、
今夜はどうしてか美希さんが起きてこないようにって、心の奥の方で思ってるのがわかるんです。

「ええ〜?わたし、そんなにヘンかなあ」
「そ、そこまで変なわけじゃないわよ、でも私にさせてくれたらもっと可愛くまとめられるんじゃないかって、
それだけなんだからね」

服の話でも髪型の話でも、そのたびにわたしの心が美希さんの方を向きそうになって、そうならないように
ってますます目を大きく開けて、伊織ちゃんの話に引っ張られてるフリをして。
胸のちくちくはますます大きく痛くなって。
わたし、いやな子になっちゃったのかな、そんなのいやだな、って思うもう片方で、それでも美希さんが
起きてきませんようにって思ってて。なんでこんなふうになってるのか全然わからなくて。

478 名前:戸惑うやよい2/2[sage] 投稿日:2013/11/29(金) 18:56:48.17 ID:PIS4zCH1 [2/2]
そのうち鼻の奥がツンってして、顔はにっこにこなのに自分が泣きそうになってるのに気づいて、あ、あ、
こんなのダメかも、って……思った、そのとき。

「ねえ」
「きゃっ」
「ふわぁ?」

わたしと伊織ちゃんの顔の間に、急に美希さんの顔が割り込んできて。

「……は」

あーあ、伊織ちゃん、とられちゃった、って思って。
でも、でも。

「はわあ、びっくりしましたぁ!美希さん起きてたんですかぁ」

でも、……なんだか、すっごく、ホッとして。

「なに?」
「伊織……ちゃん」

美希さんが普段と違う呼び方したときに、驚いたふりして体を後ろにずらしました。
伊織ちゃんも美希さんに気を取られて、わたしのことには気づかなかったみたいです。

「なによ」
「別に、呼んでみただけ、なの」
「はぁ?」

美希さんがちらってこっち見て。
わたしは拍子抜けしたみたいな顔のまま、笑ってみせて。
美希さんがちっちゃく息をはいたのを見て、わたしもふぅってなって。

「冗談なの!言ってみただけだよ!で〜こちゃん!」
「冗談なのはでこちゃんの方でしょ!って、のっかってくるなーっ!」

笑いながら伊織ちゃんを押し倒す美希さんをながめながら、やっぱりわたしたち、このほうがいいかなーって思って。

「あっ、ふたりとも楽しそうです!わたしも混ぜてくださいっ!」
「あはっ。OKなの、カモンやよい!」
「うっうー、いぇいっ!」
「えっやよいなに考えて、ちょっまっ、きゃーっ?」

わたしも笑いながら、その上に覆いかぶさりました。
3人がずっと、こんな風にいられるようにって思いながら。
わたしたちがずっと、笑っていられるようにって思いながら。

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