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もう冷え込んできたし、冬服を着なきゃいけない時期かなぁとは思いながら、
結局衣替えもまだだし大丈夫だろうと着込まずにいたんだけれど。
「…寒い」
早く暖かい室内に入りたいところだけど、今日は千早ちゃんと地方へのお仕事で、
この駅までプロデューサーさんが車で迎えに来てくれることになっているから、
しばらく待っていないといけない。
私は少しでも寒さを和らげようと、自分を抱くように腕をまわして
身を縮こまらせながらプロデューサーさん達を待つことにした。
「春香?」
しばらくの間、すっかり冬らしい装いに身を包んだ人波を眺めながら待っていると、
不意に後ろから声を掛けられ振り返ってみると怪訝そうな表情を浮かべた千早ちゃんがいた。
「あ、千早ちゃん。おはよう」
「えぇ、おはよう春香」
笑顔で挨拶をしたけれど、千早ちゃんの表情は変わらない。
不思議に思って首を傾げると、遠慮がちに彼女は口を開いた。
「あの…春香…寒くないの?」
言われてやっと納得して、そして苦笑いした。
トレンチコートにマフラーを巻いて冬支度を済ませている千早ちゃんに対して私はタートルネック1枚、
疑問に思って当然のことだった。
「えーと…おうち出た時にはこれで良かったんだけど…あはは」
頬っぺたを指で掻きながら遠回しに肯定すると、
千早ちゃんはちょっと目を見開いてから私の手を取ってぐい、と引っ張る。
「当然よ、駅ビルにコートを買いにいきましょう。それじゃあ風邪をひくわ」
「ま、待ってよ千早ちゃん!プロデューサーさんがもうすぐ来るかも知れないし、待たせちゃ悪いよ!」
「プロデューサーなんかより自分の心配をしなさい、ほら」
「で、でも…」
頑なに留まろうとする私に、千早ちゃんが不満そうな顔を向ける。
それを見てえへへ、とまた苦笑いして誤魔化そうとすると私を一瞥して、
諦めたようにため息をついた千早ちゃんは私の後ろに回り込んできた。
「千早ちゃん?」
意図が分からなくて振り返ろうとすると、
急に抱き寄せられて彼女の着ているトレンチコートの中に包まれた。
「こんなに冷たくなって…本当に風邪をひいたらどうするの、皆に迷惑がかかるのよ」
背後からの声と共に私の手に千早ちゃんの手が重なって、首筋にもなにかが触れた。
きっと千早ちゃんの頭だろう。
「うん、ごめんなさい」
背中からも伝わる温もりに安心して、
そちらに少し体重を預けると重なっていた手がぎゅっと優しく抱きしめてくれた。
「…なにより、私が困るの」
耳元でぽつりと呟かれた言葉がくすぐったい。
「プロデューサーさんが来たら、訳を話してから買いに行かせて貰うね」
頭を彼女の頭に寄せながらそう言うと、
千早ちゃんは何も言わずに私の頬っぺたに自分の頬っぺたをすり寄せて応えてきた。

彼女を困らせることはしたくないし、それはきっと私も寂しい。
だけれど、今はもう少しだけ彼女の温もりに甘えていたい。
これは、迷惑でも困らせることでもないよね。千早ちゃん。

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