最終更新:ID:fxlEAsWgLQ 2010年06月23日(水) 00:10:50履歴
「ほらほら、やよい。
ちゃんと付いてこないとはぐれちゃうよ?」
そう言って、春香さんは私の手をそっと握ってくれた。
私がしたくても出来ないことを、春香さんはいつでも簡単にやってのける。
こうやって、春香さんの地元の縁日のお祭りに誘ってくれるし、手だって繋いでくれる。
「えへへ、何だかこうやって手をつないで歩いていると本当の姉妹みたいだね」
そう言って春香さんが笑う。
私はいつもしているように――妹の顔で、元気よく笑い返す。
「うん、そう言ってもらえると嬉しいなぁ。
私も昔、その浴衣が大好きだったんだ。
それを着てね、この縁日に来るのが子供の頃、毎年毎年楽しみだったんだよ。
前の日は興奮して眠れなくなっちゃうくらい」
今私が着ている浴衣、それを昔春香さんが着ていたというだけで、特別なものに思える。
この夕闇の参道も、この屋台とキラキラ光る白熱灯の列も、春香さんが昔見たものと同じなのだろうか。
その全てが昨日の夜、眠れずに布団の中思い描いていたものより、ずっと、ずっと素敵だった。
「やよいも?
実は私も今日のこと前から楽しみにしてたんだ」
どうしよう、どうしよう。
どうして春香さんはそんな風に私を簡単に嬉しくさせてしまうんだろう。
寝不足の頭がますますボーっとしてしまうじゃないですか。
「今日が晴れでよかったなぁ」
星空を仰ぐ、春香さんの白い首筋に胸の鼓動が早くなる。
浴衣を着た春香さんは、いつものリボンを外していて、大人の人みたい。
苦手だよ、なんて言っていたのに、メイクもすっごく上手。
帯にさした団扇。
綺麗なかんざし。
子どもの私とは全然違う。
「あはは、ありがとう。
やよいの浴衣姿も可愛いよ。
きっと、やよいは大きくなったら、すっごく綺麗な人になるんだろうね」
本当に春香さんが言う通りになるのか、私には分からない。
でもそうなったらいいなと思う。
だって、その時は春香さんの隣に妹じゃなく、もっと違った形で立てるかもしれないから。
縁日の雑踏の中を、春香さんに手を引かれて歩きながらそんなことを考える。
「ねえ、かき氷食べない?」
かき氷屋さんの前で足を止めて、春香さんが色とりどりのシロップを指さした。
イチゴにオレンジ、レモンにメロンにブルーハワイ。
コーラやカルピス、ピーチやグレープのシロップなんてものもある。
「やよいは何にする?」
少しだけ迷ったけれど、今食べるならこれだ。
私の注文を聞いて、屋台のおじさんが「サービスだよ」と私の一番好きな色をたっぷりかき氷にかけてくれた。
一口ほおばると、甘くて冷たいイチゴの味が口いっぱいに広がる。
「うーん、やよいがそれなら……」
どんな反応をするのかな、と少しだけ期待してちらりと隣を見たものの、春香さんはシロップを選ぶのに夢中。
「よし!じゃあ、これを試してみようかな」
結局、春香さんがニコニコ顔で選んだのは、私じゃなくて亜美達の色だった。
ブルーハワイじゃなかっただけマシなのかな。
そうやって落ち込みそうになる心をなんとかして励ます。
甘いけど冷たい。
イチゴ味のかき氷は春香さんみたい。
「いやー!やっぱり夏はかき氷だよね!」
機嫌よさそうにシャクシャクとスプーンのスコップで氷の山を春香さんが掘り返す。
私もそれに頷きながら、同じようにスプーンを口に運ぶ。
少しだけ、拗ねてみたけれど、やっぱり火照った体にかき氷の涼しさは気持ちいい。
「あたっ、あたた……ううぅ、キーーンと来たぁ」
うぬぬ……なんて呻きながら、頭を押さえる春香さんを見ていると、可笑しくて自然と笑顔が零れる。
急いで食べるからですよ、と言おうと思ったら、今度は私もキーーン。
「ふっふっふ、人の不幸を笑うからだよ。
って、あた、あいたたた……」
もう、春香さんたら。
3つも年上のはずなのに、時々春香さんはまるで亜美や真美みたいな子どものようになる。
お姉さんみたいなのに、子ども。
子どもみたいなのに、お姉さん。
春香さんは不思議。
ほら、今だってどこか嬉しそう。
「ねえねえ、やよい。
ちょっとそのかき氷もらってもいい?」
そんなイタズラっ子みたいな顔で言われたら断れるはずないじゃないですか。
いいですよ、と笑いながら、半分ほどになったかき氷を渡す。
「えへへ、見てて見てて」
私のイチゴのかき氷を受け取ると、春香さんはペロリと舌を出した。
うわっ、まっ黄色。
当然のことだけど、私の舌も同じなんだろうなぁ。
「ほほへね、ほのはひ氷(ほおひ)を食(は)べるろれ?」
春香さん、春香さん。
舌を出したままじゃ何を言っているのか分かりませんよ。
呆れる私の目の前で、春香さんはおもむろに、大きくスプーンですくったかき氷をポイポイポイと自分の口に放り込んだ。
あう……私と違って、間接キスだなんて少しも意識しないんですね。
「すると!!」
てーれってれー、とどこかで聞いたメロディーを口ずさんでから、春香さんがもう一度舌を出した。
「ね、『やよい色』」
ペロリと出された舌は、なるほどイチゴとレモンのシロップでオレンジに変っている。
きっと、かき氷屋さんのシロップを見た時からこのことを考えていたのだろう。
やっぱり春香さんは不思議。
こうやって簡単に私を嬉しくさせてしまう。
「ほらほら、やよいもやってみてよ」
そう言って、春香さんがニコニコと自分のレモン味のかき氷を渡してくる。
春香さんが口にした、と言うのは正直心が惹かれたが、私はそれを断った。
「むむむ、いいじゃん。
一緒にやよい色の舌になろうよ〜」
まるで酔っ払った人のようにウキウキとした顔で、春香さんがオレンジ色の舌を出したまま、私に後ろから抱きついてくる。
背中に当たる柔らかい感触と首筋にかかる吐息で、私の体温が一気に上がった。
「ほらほら、あーーん♪」
とスプーンを差し出す春香さんの腕をかいくぐり、私はくるりと春香さんの方を向く。
そして、熱くなる頬を自覚しながら、イチゴ味のかき氷で真っ赤にそまった舌を見せて、勢いよくあっかんべーをする。
「私は春香さんの色以外に染まるつもりはありませんから」
言ってやったぞ、という満足感でいっぱいの私に、春香さんは一本取られたなんて言いたそうな顔をして、
「本当だ、顔まで真っ赤」
と笑った。
終わり
ちなみにいおはるだと、
春香が練乳がけのイチゴ味を食べて、ピンク色になった舌を伊織に見せる
→「ほら伊織色に染まったよ」
→伊織が真っ赤になって「何バカなこと言ってるのよ」
→「伊織だって」「何よ?」
→「ほら、ほっぺが私色に染まってる」
→にゃんにゃん
みきりつだと
「せっかくミキがメロンにしたのに。
レモンだなんて、律子はKYなの」
「あら、レモンだっていいじゃない。
私レモン色好きよ?」
「ぶー、だってミキの色はライム色だもん」
(そっと美希の髪を撫でて)
「ほら、貴女の髪の色じゃない」
→照れる美希が「やっぱりライム色じゃなきゃイヤだよ」
→「でもライム色なんてさっきの店になかったじゃない」
→「ないなら作ればいいんだよ」「なにそれこわい」
→レモン(黄色)+メロン(緑色)=黄緑
→べろちゅー
→にゃんにゃん
ってのを妄想してましたw
ちゃんと付いてこないとはぐれちゃうよ?」
そう言って、春香さんは私の手をそっと握ってくれた。
私がしたくても出来ないことを、春香さんはいつでも簡単にやってのける。
こうやって、春香さんの地元の縁日のお祭りに誘ってくれるし、手だって繋いでくれる。
「えへへ、何だかこうやって手をつないで歩いていると本当の姉妹みたいだね」
そう言って春香さんが笑う。
私はいつもしているように――妹の顔で、元気よく笑い返す。
「うん、そう言ってもらえると嬉しいなぁ。
私も昔、その浴衣が大好きだったんだ。
それを着てね、この縁日に来るのが子供の頃、毎年毎年楽しみだったんだよ。
前の日は興奮して眠れなくなっちゃうくらい」
今私が着ている浴衣、それを昔春香さんが着ていたというだけで、特別なものに思える。
この夕闇の参道も、この屋台とキラキラ光る白熱灯の列も、春香さんが昔見たものと同じなのだろうか。
その全てが昨日の夜、眠れずに布団の中思い描いていたものより、ずっと、ずっと素敵だった。
「やよいも?
実は私も今日のこと前から楽しみにしてたんだ」
どうしよう、どうしよう。
どうして春香さんはそんな風に私を簡単に嬉しくさせてしまうんだろう。
寝不足の頭がますますボーっとしてしまうじゃないですか。
「今日が晴れでよかったなぁ」
星空を仰ぐ、春香さんの白い首筋に胸の鼓動が早くなる。
浴衣を着た春香さんは、いつものリボンを外していて、大人の人みたい。
苦手だよ、なんて言っていたのに、メイクもすっごく上手。
帯にさした団扇。
綺麗なかんざし。
子どもの私とは全然違う。
「あはは、ありがとう。
やよいの浴衣姿も可愛いよ。
きっと、やよいは大きくなったら、すっごく綺麗な人になるんだろうね」
本当に春香さんが言う通りになるのか、私には分からない。
でもそうなったらいいなと思う。
だって、その時は春香さんの隣に妹じゃなく、もっと違った形で立てるかもしれないから。
縁日の雑踏の中を、春香さんに手を引かれて歩きながらそんなことを考える。
「ねえ、かき氷食べない?」
かき氷屋さんの前で足を止めて、春香さんが色とりどりのシロップを指さした。
イチゴにオレンジ、レモンにメロンにブルーハワイ。
コーラやカルピス、ピーチやグレープのシロップなんてものもある。
「やよいは何にする?」
少しだけ迷ったけれど、今食べるならこれだ。
私の注文を聞いて、屋台のおじさんが「サービスだよ」と私の一番好きな色をたっぷりかき氷にかけてくれた。
一口ほおばると、甘くて冷たいイチゴの味が口いっぱいに広がる。
「うーん、やよいがそれなら……」
どんな反応をするのかな、と少しだけ期待してちらりと隣を見たものの、春香さんはシロップを選ぶのに夢中。
「よし!じゃあ、これを試してみようかな」
結局、春香さんがニコニコ顔で選んだのは、私じゃなくて亜美達の色だった。
ブルーハワイじゃなかっただけマシなのかな。
そうやって落ち込みそうになる心をなんとかして励ます。
甘いけど冷たい。
イチゴ味のかき氷は春香さんみたい。
「いやー!やっぱり夏はかき氷だよね!」
機嫌よさそうにシャクシャクとスプーンのスコップで氷の山を春香さんが掘り返す。
私もそれに頷きながら、同じようにスプーンを口に運ぶ。
少しだけ、拗ねてみたけれど、やっぱり火照った体にかき氷の涼しさは気持ちいい。
「あたっ、あたた……ううぅ、キーーンと来たぁ」
うぬぬ……なんて呻きながら、頭を押さえる春香さんを見ていると、可笑しくて自然と笑顔が零れる。
急いで食べるからですよ、と言おうと思ったら、今度は私もキーーン。
「ふっふっふ、人の不幸を笑うからだよ。
って、あた、あいたたた……」
もう、春香さんたら。
3つも年上のはずなのに、時々春香さんはまるで亜美や真美みたいな子どものようになる。
お姉さんみたいなのに、子ども。
子どもみたいなのに、お姉さん。
春香さんは不思議。
ほら、今だってどこか嬉しそう。
「ねえねえ、やよい。
ちょっとそのかき氷もらってもいい?」
そんなイタズラっ子みたいな顔で言われたら断れるはずないじゃないですか。
いいですよ、と笑いながら、半分ほどになったかき氷を渡す。
「えへへ、見てて見てて」
私のイチゴのかき氷を受け取ると、春香さんはペロリと舌を出した。
うわっ、まっ黄色。
当然のことだけど、私の舌も同じなんだろうなぁ。
「ほほへね、ほのはひ氷(ほおひ)を食(は)べるろれ?」
春香さん、春香さん。
舌を出したままじゃ何を言っているのか分かりませんよ。
呆れる私の目の前で、春香さんはおもむろに、大きくスプーンですくったかき氷をポイポイポイと自分の口に放り込んだ。
あう……私と違って、間接キスだなんて少しも意識しないんですね。
「すると!!」
てーれってれー、とどこかで聞いたメロディーを口ずさんでから、春香さんがもう一度舌を出した。
「ね、『やよい色』」
ペロリと出された舌は、なるほどイチゴとレモンのシロップでオレンジに変っている。
きっと、かき氷屋さんのシロップを見た時からこのことを考えていたのだろう。
やっぱり春香さんは不思議。
こうやって簡単に私を嬉しくさせてしまう。
「ほらほら、やよいもやってみてよ」
そう言って、春香さんがニコニコと自分のレモン味のかき氷を渡してくる。
春香さんが口にした、と言うのは正直心が惹かれたが、私はそれを断った。
「むむむ、いいじゃん。
一緒にやよい色の舌になろうよ〜」
まるで酔っ払った人のようにウキウキとした顔で、春香さんがオレンジ色の舌を出したまま、私に後ろから抱きついてくる。
背中に当たる柔らかい感触と首筋にかかる吐息で、私の体温が一気に上がった。
「ほらほら、あーーん♪」
とスプーンを差し出す春香さんの腕をかいくぐり、私はくるりと春香さんの方を向く。
そして、熱くなる頬を自覚しながら、イチゴ味のかき氷で真っ赤にそまった舌を見せて、勢いよくあっかんべーをする。
「私は春香さんの色以外に染まるつもりはありませんから」
言ってやったぞ、という満足感でいっぱいの私に、春香さんは一本取られたなんて言いたそうな顔をして、
「本当だ、顔まで真っ赤」
と笑った。
終わり
>600でティンと来て、みきりつかはるいお用にゆっくりと温めていたネタを >711に微妙に脳内ハックされてしまったので(笑)真っ青になり、カッとなって急遽やよはるにしてみた。いやー、スレの皆は紳士力が高いからネタかぶりが怖い怖いw
ちなみにいおはるだと、
春香が練乳がけのイチゴ味を食べて、ピンク色になった舌を伊織に見せる
→「ほら伊織色に染まったよ」
→伊織が真っ赤になって「何バカなこと言ってるのよ」
→「伊織だって」「何よ?」
→「ほら、ほっぺが私色に染まってる」
→にゃんにゃん
みきりつだと
「せっかくミキがメロンにしたのに。
レモンだなんて、律子はKYなの」
「あら、レモンだっていいじゃない。
私レモン色好きよ?」
「ぶー、だってミキの色はライム色だもん」
(そっと美希の髪を撫でて)
「ほら、貴女の髪の色じゃない」
→照れる美希が「やっぱりライム色じゃなきゃイヤだよ」
→「でもライム色なんてさっきの店になかったじゃない」
→「ないなら作ればいいんだよ」「なにそれこわい」
→レモン(黄色)+メロン(緑色)=黄緑
→べろちゅー
→にゃんにゃん
ってのを妄想してましたw
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