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「うわぁ……」
朝一番に事務所に入った律子の第一声である。
泊りで仕事をしていた小鳥がオフィスで寝ていた。
これだけ書けば普通の光景に見えるが、それではこの光景の異常さをとても書き尽くしたとは言えない。
まず、小鳥は全裸であった。あるいは、全身を縛ってる荒縄や目隠しを服としたならば全裸では無いかも知れないが、隠すべき所が全く隠れて無いと言う意味では全裸と言って差し支えないだろう。
本来ならば、この時点で暴行事件かと警察に連絡するべきなのだろうが、机に数本置いてある空の酒瓶や
「だ、誰かきてるぅ、一人ででこんな事してる悪い事務員見られちゃうぅ……」
などと恍惚した様子でのたまっている小鳥を見ていればそんな気は欠片も無くなってしまう。
仮に通報したとしても確実に事件性は無く、事務所が恥をかくだけだろう。
ついでに言えば、床や壁など部屋の所々に謎の液体がついている。
いや、小鳥の様子を見ればその液体がは何なのかは容易に想像がつくが、律子の知識の中ではいかなる理由でそれが天井につくのか理解できないし、したくも無い。
と、言う訳で状況をより性格に説明するならば酒に酔った小鳥が自分自身を縛って自慰に耽り、放心状態になっていたと言う事である。
「と、とりあえず小鳥さんをこっちの世界に引き戻さないとね!うん!」
余りの光景に暫くの間呆然としていた律子であったが、他の人が来る前に小鳥をまともな状態に戻さないと社会的に抹殺されてしまう事を思い出し、とりあえず小鳥に声を掛ける事にする。
「小鳥さん、小鳥さーん!こっちの世界に戻って来て下さーい!」
「ふあぁ……その声は……律子さん?」
「そうです、律子です。意識ははっきりして来ましたか?」
「ええ、なんとか……ひゃうっ!」
意識が現実世界に戻った小鳥が無意識に体を動かそうとすると同時に嬌声が漏れる。
「小鳥さんっ!?」
「ああ、ノリで自分を縛ったら出られなくなったんだわ……」
「一体何やってるんですかあなたは……」
「なんとか抜けようともがけばもがくほど縄が食い込んで最後には動くだけでイキそうだったわ!」
「自慢げに言わないで下さい!」
「でも見つけてくれたのが律子さんでよかったわ、他の人に見つかってたらその瞬間から事務所一の変態になってしまうもの。」
「心配しなくても私の中では世界一の変態ですよ」
「あら、言葉責めしてくれるの?その気ならお姉さん頑張っちゃうわよ♪」
「はぁ……とりあえずその縄を外しますよ」
律子は完全に呆れた様子でため息をつく。ここまで酷いケースは流石に無かったが
上半身や下半身を露出した状態の小鳥を発見したのは一度や二度では無かったのである。
「うーん……この縄、結び目がグチャグチャで解けそうに無いですからナイフで切っちゃいますね?」
「ナイフ?いくら私がマゾ気質でも血を見るようなプレイはちょっと……」
「何を言ってるんですかあなたは!」
そう言いながら律子は小鳥を四つんばいの体勢にひっくり返す。
背中側にある手首を上に向けてそこの縄を切る算段なのだが、小鳥を動かす間にも縄が小鳥を容赦なく責め続ける。
また、罰のつもりか未だに目隠しを外していない事も小鳥の神経を過敏にさせているのかもしれない。
「ひゃうっ、律子さ……ひぃん!」
「小鳥さん、じっとしてないと本当に血を見る事になりますよ?」
小鳥の声には極力反応しないようにして律子は工具箱から取り出したナイフで手首の縄を切って行く。
「……はいっ、これで手が動くはずです。後は自分で解けますよね?」
律子が言うが早いか小鳥は緩くなった縄を一気に振り払い、その手で目隠しを外す。
「んーっ、一晩振りの自由は気持ち良いわぁ! やっぱりノリで一人緊縛プレイとかする物じゃ無いわね!」
「一体どういうノリになったらそんな事を考えつくんですか……」
「聞きたい?」
「謹んで辞退させて頂きます」
ちなみに、縄を解いて目隠しを外した小鳥は現在正真正銘の全裸であり、現役アイドルに全く見劣りしないその肢体には赤々と縄の痕が残っている。
「小鳥さん、そういえば服は何処ですか?」
「それが、アレがそうなんだけど……」
バツが悪そうに小鳥が指をさした先には事務服と私服の2着があったが、いずれも何かは理解したくも無い謎の液体でびちゃびちゃになってしまっている。
「小鳥さんも大人なんですからもう少し後先を考えましょうよ……」
「真夜中のテンションって怖いわぁ〜」
「誤魔化さない!」
「すいません……」
律子の威圧感に負けたか、小鳥は全裸のままで正座を始める。
「まあ、あの服を着る訳には行きませんし、今日は私の事務服を貸してあげますよ」
「え、良いんですか?」
「ええ、(身長的に)少し小さいと思いますけど多分着れるはずですよ?」
「私って(体重的に)キツくなるほど律子さんと差があったかしら…もしかして私太った!?」
「別に体型に問題は無いと思いますけど……とりあえず取って来ますね。」
そうして律子は自分の事務服を取りに行き戻ってきたのだが……
「でも、容赦なく締め付ける事務服が現役アイドルと只の事務員の差を思い知らせてくれる
 緊縛プレイと考えれば……イイっ、イイわっ!!」
5分と部屋を離れていない筈なのに何があったか大洪水が起こっている、何処で起こっているかは察して欲しい。
そんな惨状を見て律子は事務服と一緒に持ってきたハリセンを容赦なく振り回す。
「何をやっとるかアンタはーっ!!!」
「はっ、私は何を!」
スッパーン!と気持ちよく響いたハリセンで小鳥は我に帰る。
「全く……私の服を汚したら承知しませんよっ!」
「善処します……律子さんの事務服と……サラシですか?」
「ええ、サラシです、小鳥さんに合うブラはすぐには見つからないでしょうから」
「上はコレで良いとして下は……まさかノーパン!?」
「話は最後まで聞く!」
小鳥が妄想の世界に入る前に本日2回目のハリセンの音が響き渡る。
「下の方は今からコンビニか何かで買ってきますから妄想は止めて下さい!
 あんまり妄想が過ぎる様なら下着じゃなくておむつを買ってきますよ!」
「おむつ!律子さんが赤ちゃんプレイ好きだったなんて……
 一見普通の同僚として働いてるように見えて、下の世話すら依存する絶対服従の関係を……」
「いいから黙れっ!!!」
本日三回目のハリセンがその日一番の冴えを見せて響き渡った。
「とりあえず、下着を買ってくる間に服を着て床や壁を拭いて置いて下さいね?」
「はい、ちゃんと掃除しておきます……」
いつでもハリセンを振り下ろせるように構えている効果か、やっとまともに話しが進んで行く。
「それじゃあ行ってきます、ちゃんと掃除をしておいて下さいね?」
「お願いしますね、律子さん。」
そうして律子は事務所を出て近くのコンビニへ向かって行く。
その道中で律子はふと考える、音無小鳥ははっきり言って変態である。
普段は下ネタに理解のあるお姉さん位で通しているが、偶然自慰の現場を目撃して以来、律子に対しては開き直って遠慮なく本性を表す事にしたらしい。
性に関しては極端に奥手である律子にとっては最悪の相性であると言って良いだろう。
本来ならば最初に自慰を目撃した時点で完全に縁を切っていただろう。そう、本来ならば。
絶対に許せないはずの相手に対して何故か延々世話を焼いてしまっている自分。
今の律子はそんな矛盾した自分が一番情けなく、許せないでいるのである。
自分の思考と矛盾した行動をとってしまう理由が分かってるから。
そして、分かっていても決してそれを認めたく無いから。
「なんであんな人を好きになっちゃったかなぁ、私は……」
律子の呟きは誰にも聞こえる事無く、木枯らしに流されていった。(終)

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