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「雪歩・・・」

「真ちゃん・・・」

薄暗い部屋の中、一通りの行為を終えた僕達はそのままベッドへと倒れこんだ。
こういう事をするのも、もう何度目になるのだろうか。
僕と雪歩は同時期にアイドルデビューして、それからずっと一緒だった。
短いようで長いような、長いようで短いような、そんな時間を二人でずっと過ごしてきた。

「ねえ、真ちゃん?」

「どうしたの、雪歩?」

「私達・・・これからもずっと一緒だよね・・・?」

雪歩の問いに僕は笑顔で答えた。

「勿論だよ、雪歩」

そして、僕達はそのまま眠りについた。
明日も仕事なので夜更かしする訳にはいかない。


「うう〜ん・・・」

強い陽射しの中、目が覚める。
隣を見ると、既に雪歩はいなかった。
何か違和感を感じたが、寝惚けた頭はそこまで回らなかった。

「先に事務所行っちゃったのかな?」

着替えや準備を済ませて僕も家を出る。
いつもなら雪歩はこういう時、僕を置いて先に出る事なんてなかったはず。
けれど、雪歩も何か事情があって先に家を出たのだろう。
自分を納得させながら少し駆け足で事務所へ向かう。

「おはようございまーす!」

勢いよく事務所の扉を開ける。
事務所に入って一番最初に目で雪歩を探した。
そして、ちゃんと雪歩がいた事を確認できて思わず安心してしまう。

「おはよう、雪歩。もう、先に出るんなら起こしてほしかったのに」

「ごめんね、真ちゃん、あんまり気持ちよさそうに寝てたから・・・」

いつも通りの会話。いつも通りの朝。
だけど・・・。

「雪・・・歩・・・?」

「どうしたの、真ちゃん?」

どうしてだろう、何かが違う。
目の前にいるのは確かに雪歩なはず。
なのに、何故か別人のような感じすらする。
それも完全に別人という訳ではなく、どこかから感じる些細な違和感。

「君は・・・誰だ・・・!?」

「えっ、どうしたの、真ちゃん?私は私、雪歩だよ?」

「嘘だッ!」

思わず声を荒げてしまい、その声にビクッとする雪歩。
見れば見るほど雪歩でしかない。
なのに、どうしてこうも違和感を拭いきれないのか。

「君は・・・雪歩じゃない・・・。何かが違うんだ・・・」

「真ちゃ・・・」

雪歩が僕に手を伸ばしてくる。
僕は思わず、その手を強く弾いてしまった。

「・・・・・・!」

「あ・・・」

その瞬間、それまで困惑気味だった雪歩の目に涙が溜まっていくのが見えた。

「真ちゃん・・・酷い・・・」

そう言って、雪歩は顔を両手で覆い泣き出してしまった。
僕と雪歩は長い付き合いだったので何度も喧嘩をし、その度に泣かせてしまった事もあった。
けれど、今は違う。
僕が一方的に酷い態度を取って雪歩を泣かせてしまった。

「ごめん・・・雪・・・」

罪悪感は感じる。
それでも、どうしても僕は目の前の雪歩を雪歩と感じる事ができなかった。

その時だった。

最初は目の錯覚かと思った。

雪歩の体が少しずつ消えているのが目に入った。

「ゆ、雪歩!?」

思わず雪歩に手を伸ばす。
しかし、触れる事すら出来ずに雪歩の姿は消えてしまった。

「うわあああああああああっ!!!」



気が付くと、ベッドの上だった。
まだ外は暗く、自分の家のベッドだと気付くのに時間はかからなかった。


「夢・・・?」

ふと、隣を見ると横になっている雪歩がいる。
雪歩がいる事に安心して、それと同時に涙が出てくる。

「どうして、僕は・・・」

その時、微かな音が耳に入った。
泣き声だ。

「どうしたの・・・雪歩・・・?」

横にいる雪歩に声をかける。
振り向いた雪歩の顔は夢の中と同じ泣き顔だった。

「真・・・ちゃん・・・!」

雪歩は起き上がり、僕に抱きついてきた。

「大丈夫、雪歩・・・?」

「ごめんね・・・真ちゃん・・・すごく怖い夢を見たの・・・」

「怖い夢・・・?」

「うん・・・。夢の中に真ちゃんが出てきたんだけど・・・その真ちゃんが・・・私の顔を見て・・・」

「・・・・・・・」

「お前は雪歩じゃない・・・って・・・。なんでそんな事言うのかわからなくて・・・」

「雪歩・・・ゴメン・・・」

一度は止まったはずの涙が溢れてくる。
そんな僕を見た雪歩は心配そうに声をかけてくる。

「真ちゃんが謝る事じゃないよ、私が勝手にそんな夢を見ただけで・・・」

「でも・・・僕は・・・」

僕の泣いている姿を見て、雪歩もまた泣き出して・・・。
二人で長い間、ずっと泣いていた。
陽が登る頃、やっと涙が収まって二人でベッドに腰をかける。

「ねえ、真ちゃん。昨晩の質問覚えてる?」

「うん、僕達がずっと一緒にいれるか、ってやつ」

「うん・・・あの時真ちゃんはああ言ってくれたけど・・・でも・・・」

雪歩が言いたい事はわかる。
僕も本当はわかっていたのかもしれない。
どんなものにも「永遠」という事はないのだと。
あの夢はそんな不安が見せたものなのかもしれない。
変わっていく事に対する不安の・・・。

「僕も雪歩もこれから少しずつ変わっていくんだと思う。そして、変わったその先で僕達が一緒にいれるかどうかは正直わからない」

「うん・・・」

「それでも・・・まだ時間はあると思うんだ。だったら、その時間を大切にしようよ」

「真ちゃん・・・」

そう言うと、雪歩はまた涙ぐんだ。
だけど、これはきっと悲しみの涙じゃない。
そう受け取ってもいいのだと思う。

「雪歩・・・」

僕は雪歩の目を見つめる。

夢の中で言えなかった言葉。

夢の中で聞けなかった言葉。


「雪歩はずっと雪歩のままだよ」

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