当wikiは年齢制限のあるページです。未成年の方は閲覧をご遠慮下さい。

「ねえ千早、次からボクの分のご飯も1人前にして欲しいんだけど」
「どうして?真はダンスが中心でよく身体も動かすし、太ったようには見えないけれど」
「そうじゃなくて、よく考えたら恥ずかしいじゃないか。よその家でガツガツご飯を食べる女の子って」
「よくわからないけど、真がそうしたいなら構わないわ」
「うん、よろしく頼むよ」

真が私の部屋で夕飯を食べるようになってから二ヶ月程になる。
最初は終電を逃した真に夕飯を食べさせ、泊めただけだった。
それ以来真は私の料理が気に入ったらしく、頻繁に夕飯を食べていくようになった。
一緒に過ごす時間が増えた私達はいつからか深い仲になり、一夜を共にすることも珍しくなくなった。
そんな関係になって今更恥ずかしいも何もあったものではないと思うのだが、真が望むなら次からは真の分も1人前にしよう。
…でも今までの半分になってお腹空かないかしら?


**

階段をドタドタと上がってくる足音が聞こえる。
近所迷惑だからといくら言っても聞かない。
真に言わせれば、ここに来るのが楽しみで仕方ないかららしい。
足音が止むとすぐインターホンが鳴る。
私はいちいち確認もせずにドアを開ける。
真以外にこの部屋を訪れる人はいないのだから。
「いらっしゃい、真。今日からお望み通り1人前よ」


「ごちそうさま。いやー、やっぱり千早の料理はおいしいなぁ」
「そう言ってくれるのは嬉しいけど、これくらいなら割と誰でも出来ると思うのだけど」
「ボクが出来ないの知ってるじゃないか」
「真は別よ。『心を込める』っていうのは力いっぱいやることじゃないのよ」
「う、厳しいなぁ」
真は犬みたいだ。
今みたいにシュンとした時の表情とか、
「でも、この前のカレーはそれなりに良かったわ。具材の大きさはバラバラだったけれど」
「ホント!?へへっ、あのカレー実はちょっと自信あったんだよね」
ちょっとしたフォローですぐ喜ぶ所とか。


「真、今日はその…泊まっていく?」
「う、うん、明日はオフだしそうさせてもらおうかな」
すっかりお馴染みになった“意志確認”だけど、未だに緊張してしまう。
「じゃあ、私は洗いものするからお風呂に入ってて」
「いや、ごちそうになったしボクが洗うよ」
「お皿を割らなくなったらお願いするわね」
「…お風呂先入るね」


私がお風呂から上がると、真はもうベッドに入っていた。
無言で真の隣に潜りこむ。
1人用のベッドだから、2人で入ると互いの肌が触れ合う。
それが嬉しいので、真が来るようになってもこのベッドは替えていない。

真と目が合うと、どちらからともなくキスをする。

私達の行為はキスから始まる。
最初は唇が触れ合う程度に、段々と互いの舌を奪い合うように。
2人の唾液が完全に混じり合った頃になると、手が互いの身体を求め始める。
今日も私の手が真の首から胸へ、胸からお腹へと下りていく。
お腹からさらにその下に差し掛かろうとしたその時、

ギュルルル〜…
気の抜けた音が鳴り響いた。

「…」
「はは、ごめん、やっぱ1人前じゃ足りないみたい」
「…」
「あーあ、いつも通り食べとけば良かった。こっちの方がよっぽど恥ずかしいよ」
「…ぷっ」
「千早?」
「あは、あははははっ!」
「な、何もそんなに笑わなくたっていいじゃないか」
「ごめんなさい、でもこんな時にそんな間抜けな音…駄目、我慢できない」
思い切りツボにはまった私はしばらく笑い続けた。
決まりの悪い顔をして笑う真は、やっぱり犬みたい。
すっかり雰囲気が壊れてしまい、今日はもう何もせずただ寝ることにした。
笑いすぎて少し拗ねてしまった真の機嫌を直すのに時間がかかった。
こういう所も愛らしい。

**

階段をドタドタと上がってくる足音が聞こえる。
近所迷惑だからといくら言っても聞かない。
困った犬ねと苦笑しながら、足音が止むと同時に扉を開ける。
インターホンを押そうとしていた真が驚いた顔をする。
そんな真の表情を見て満足した私は、
「お帰りなさい、真。今日からまた2人前よ」
そう言って真を部屋に迎えるのだった。

コメントをかく


「http://」を含む投稿は禁止されています。

利用規約をご確認のうえご記入下さい

どなたでも編集できます

メンバー募集!