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「……でね、……なんだけど、って千早おねーちゃん聞いてる?」
「え?ああ、聞いてるわよ」

実はほとんど聞いてない。
世間では同一人物で通せてしまうくらい似ている双子だが、長く同じ事務所にいると、顔を見なくてもなんとなく違いが分かってくるものだ。
今話しかけているのは、亜美の方。

私は次の仕事まで少し時間が空いていたので、事務所のソファでコーヒーを飲みながら、ドラマの台本を読んでいた。
765プロのアイドル全員が参加するCD-BOXの特典DVDに収録されるもので、近々撮影が始まることになっている。
亜美は何で居るのかよく分からないが、さっきまであちこちうろつきながら、音無さんや他のスタッフと他愛もない話をしていた。
まあ、いつもの光景だ。日によってそれが真美だったり二人一緒だったりはするが。
その亜美が、いつのまにか私の隣に座って話しかけていたらしい。
大体この子たちの話は、私にはよく分からないゲームや漫画の話題とか、新作ものまね披露だったりと、要するにどうでもいい内容が多いので、私は台本から顔を上げずに適当に聞き流していた。

「千早おねーちゃんとりっちゃんてさ、」
「うん」
「週に何回くらいしてるの?」
「ぶっっっっ!!」

何を言い出すのだこの子は。
驚きのあまりコーヒーを噴き出してしまった。私としたことが。
急いでテーブルの上にあったティッシュを取り、飛び散ったコーヒーを拭く。
勢いで少し鼻に入ってしまった。痛い。
しかし、悪魔の双子の片割れの前で、これ以上無様な姿を晒すわけにはいかない。
口元を拭く振りをして、さりげなく鼻を押さえ我慢する。

「千早おねーちゃんきったなーい」
「な、何回とかは特に決まってなくて、基本的にはオフの前とかだけど雰囲気次第で……ってそうじゃなくて!」

危ない。動揺のあまりマジレスしてしまうところだった。

「そうなの?一緒に住んでるんだから、ちょくちょくやってるのかと思った」
「ヤってるとか言わない!!」

全くはしたない。
そもそもこういうのは愛し合う二人の間の秘め事であって、他人に言うべきではないかと。

「ちょっとした空き時間とかにさ」
「それは無理でしょ!?」

そんな気軽にするものなの?
それは、私だって愛を育む時間はもっとほしいけど、やっぱりムードというものがあるし。
少なくとも真昼間とか、自宅以外の場所では、どうかと思うし。
あ、でもホテルならアリなのかしら?
顔が知られてるからそういう類のホテルは駄目だけど、ちゃんとしたホテルなら……。

「千早おねーちゃん?」
「え、ええ?」
「亜美たちこないだミキミキに付き合ってもらってやったんだけどさ〜」
「ヤっちゃったの!?美希も!?」
「なーんかしっくりこなかったんだよね、ぎこちないっていうかさ」
「当たり前でしょ!あなたたちが自由自在だったら世の中おかしいわよ!」
「それにミキミキすぐ寝ちゃうし」
「そ、それは失礼ね……」
「でしょー」

というかちょっと待って。頭がついていかない。
この場合の『付き合ってもらう』は恋人になる、という意味ではないわよね。
いわゆる行きずりの関係?それも何か違う気がするのだけれど。
しかも『亜美たち』ってことは真美も入れて三人で?

「そんな高度なことを……」
「やっぱ相手してもらうならはるるんとかの方がいいかな?ケーケンホーフだし」
「春香、そうだったの……」

私の知らない間に色々経験してたのね。
少しショックだけれど、かなりショックだけれど、私は春香が選んだ道を信じるわ。
何があっても私は春香の親友のつもりだから。
それと、今度相談させて。テクニックとか。

「りっちゃんもその気にさせるのうまそうだよね」
「そうね、やっぱりリードしてもらうことが多いけど、時々は私からもゴニョゴニョ……(ポッ)」
「んでも千早おねーちゃん上手だってりっちゃん言ってたよ?」
「!?!?!?」
「仕込みがいがあるって」
「何喋ってんの律子おおおおおおお!!!」
「呼んだ?」
「あ、りっちゃんやっほー」
「ちょちょちょちょ律子あなた子供になんてこと吹き込んで」
「あら、台本読んでたの?」
「うん、でねー、亜美も真美もイマイチ役に入りきれないから、
 みんな本読みどうしてんのかなーと思って、千早おねーちゃんに聞いてたんだ」
「ふへ!?」
「入りきるも何も、あんたたち本人役じゃない」
「チッチッチ、亜美たちだってプロのプライドというものがあるのだよ。
 って千早おねーちゃんどしたの?」
「……本読み……そう、本読みのことだったの……アハ、ハハハ……」

その後、亜美の追及を逃れられるわけもなく私の勘違いは白日の元に晒され、『千早おねーちゃんムッツリスケベ説』が瞬く間に765プロ全員に知れ渡った。
ええ、それはもうすごい勢いで。
そして、萩原さんが「千早ちゃん、お互いがんばろうね!」と謎の連帯感を発揮したり、
美希が「いくらミキでもHの最中に寝たりしないの。ね、春香?」と唐突にカミングアウトして、春香が二次災害に巻き込まれたり、ボイスレコーダー片手に取材に来た音無さんが律子に叩き出されたりしていたらしいが、過去最大級のスパイラルに陥っていた私はよく覚えていない。
どうやって機嫌を直したかは、律子だけが知っている。

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