当wikiは年齢制限のあるページです。未成年の方は閲覧をご遠慮下さい。

私はよく同じ夢を見た

私は籠の中に入っている白い鳥

そんな私を籠から無理矢理出し、私を傷つける何か

いつしか白い体は赤く染まり、白かった鳥は自分が白い事すら忘れていた



薄暗い部屋の中、私達は抱き合っていた。
当然のように行われる営み。
少し違うところといえば、私も相手も女性だというところか。
それでも、私達の業界では特別珍しい事でもなく、私自身も何度も経験してきた。
特に今私が抱いている相手、雪歩とは何度このような事を行ったのかもはや覚えていない。

「律子さん・・・もっと・・・」

雪歩が潤んだ目で私を見つめ懇願する。
この目を見る度、後悔や罪悪感、それをも上回る快感が私の中を駆け巡る。
私は雪歩の事が好きでこのような行為をするのは楽しい。
だけど、何故か・・・一抹の虚しさが残っていた。
それを掻き消すかのように私は雪歩に口付けをする。

「可愛いわよ雪歩・・・」

「律子さん・・・嬉しいです・・・」


----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

私と雪歩が出会ったのは1年前。
私がアイドルデビューしてから1年程が経った時だった。
だけど、その時の私はアイドルとしての情熱を失いかけていた。
芸能界は華やかなだけではなく、黒い汚れた部分もある。
アイドルデビューする前から覚悟はしていたつもりだったが、いざ自分がそういう場に立たされると辛いものがあった。
そんな時、私は上からの指示で雪歩とデュオユニットを組む事となった。

「は、はじめまして、萩原雪歩です!よ、よろしくお願いします!」


緊張してるのが一目でわかる程に縮こまっていた雪歩。
アイドルデビューして間もないらしいので当然といえば当然だろう。
そんな雪歩に私は上辺だけの笑顔で雪歩に言葉を交わす。

「よろしくね、萩原さん」

「は、はい、秋月さん!」

同じユニットになるとはいえ、必要以上に馴れ合うつもりはなかった。
何より当時の私は雪歩を嫌っていた、というより憎んでいた。
なんでこんなのがアイドルになれたんだろう、と失礼極まりない事を本気で思っていた。
きっとこの可愛さだけでこの世界を生き抜いてきたのだろう、と。

けれど、雪歩と共に活動していく内に少しずつ雪歩の事を理解する事ができた。
気弱で泣き虫で不器用で・・・だけど、どこか芯が強い彼女。
決して可愛いだけでなくしっかりとした想いを持って、アイドル活動をしている事も。
そんな雪歩に対して、私は憎しみを抱く事はなくなった。
そして、二人でこのユニットを大きくしていきたい、と思うようになった。
雪歩をサポートする事で私の中で誇らしげな達成感が生まれ、雪歩にサポートされる事で雪歩の成長を喜ぶ事ができた。
この時期が私がアイドル活動をしている中で一番楽しかった時期だったかもしれない。
その中で私は少しずつ雪歩の事を好きになっていった。


「お疲れ様、雪歩」

ある日、仕事を終えた私達は楽屋で一息ついていた。
この頃には名前で呼び合う関係になっていた。

「お疲れ様です、律子さん」

「しかし、毎日大変よね。まぁ、それだけ仕事があるって事で感謝しなくちゃいけないんだけどね。
  でも、雪歩大変じゃない?」

「えぇ、確かに大変ですけど・・・。でも、律子さんと一緒だから頑張れます」

そう言って微笑む雪歩の顔を見て、思わずドキッとする。
雪歩からしてみれば、何の気もなしに出てきた言葉だったのだろう。
けれど、私にとっては嬉しすぎる一言だった。
思わず顔がにやけそうになるのを自分でも感じ、慌てて平静を保つ。

「そ、そういう風に言ってもらえると私も嬉しいわ」

「私・・・本当に律子さんとユニットを組む事ができてよかったです。
  私一人だったら、きっと途中でつまづいていたかもしれません」


「雪歩・・・」

「律子さんは大変じゃありませんでした?その・・・私なんかとユニットを組んで」

「そんな事ないわ、私も雪歩とユニットを組んでから毎日が楽しいわよ。
  正直、一人でアイドル活動している時の方がよっぽど大変だったわ」

そう言いながら、アイドルデビューしたての頃を思い出す。
あの頃は私にとって地獄だった。
頼れる人もおらず、仕事を得るためにと自らの肉体を捧げた事もあった。
その相手が男性じゃなかったのは幸か不幸か今でもわからない。
あの夢をよく見るようになったのもその頃からだった。
思えば、かつて雪歩に対して抱いていた憎しみはある種の羨望だったのかもしれない。
汚れずにいる事ができた雪歩への。

「だから、私は雪歩と二人で活動できて嬉しかった。
  アイドル、というのがこんなに楽しくてやり甲斐があるって思えるようになった。
  ありがとう、雪歩」

「律子さんがそう言ってくれるなんて・・・私・・・」

照れて顔を赤らめる雪歩の顔を見て私の顔まで赤くなってきた。
それと同時に胸の奥に一つの感情が沸き上がっていた。
何度も浮かび上がり、その度に抑えようとした想い。
けれど、それももう限界らしい。

「キャッ!ど、どうしたんですか、律子さん!」


気が付くと、私は無意識的に雪歩を押し倒していたらしい。
何か言っているらしい雪歩の口をキスで塞ぐ。

「ん、んんーっ!!」

口を離すと、雪歩は何が起こったのかわからないような呆然とした顔をしていた。
先程まで普通に談笑していた同姓相手にキスをされたのだから、無理もない。
私はそんな雪歩を無視して服を脱がせようとする。
涙ぐみながら脅えた表情の雪歩は私を止めようと必死で私に問いかけてくる。

「律子さん・・・っ!な、なんでこんな事を・・・」


「ごめん・・・ごめんね、雪歩・・・」

私はまるでうわ言の様に雪歩に謝り続けた。
その手を止める事なく。
この日、私達の関係は一つの終わりを迎えた。




----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------


「律子さん、どうしたんですか?」

ふと気が付くと、私はベッドの中にいた。
昔の事を思い出している内にどうやら少し呆けていたらしい。
隣に裸の雪歩がいて、私自身も裸だった事で先程までの状況を思い出す。

「あぁ、ごめん、雪歩。ちょっと考え事しててね」


あの日、私は雪歩に嫌われたと思った。
けれど、雪歩は前以上に私に懐くようになった。
そして、あれから何度も私達は肌を重ね合わせた。
今では雪歩の方から求めてくる程に。

「律子さん・・・もう一回・・・してくれます?」

何かを期待するかのような目。
あの時、脅えた目をしていた雪歩とはもはや別人だった。

「いいわよ、少し休んだらね」

「えへへ、大好きですよ、律子さん!」


私は雪歩の純真なところが好きだった。
だから、私は雪歩に汚れないでいてほしかった。
いつかの私のように。
けれど、その私自身が雪歩を汚してしまったのかもしれない。

「ねえ、雪歩、知ってる?」

「はい?」

「地球が回ってるなんて事実を知らなくても朝も夜も来るって事」

「なんですか、それ?」

「ううん、なんでもないわ・・・」






今でもまだあの夢を見る

白い鳥が傷付き赤く染まるあの夢を

ただ一つ違うのは私は鳥ではなく鳥を傷つけるものになっているという事だけだった

コメントをかく


「http://」を含む投稿は禁止されています。

利用規約をご確認のうえご記入下さい

どなたでも編集できます

メンバー募集!