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「私、思うの」

僕の隣でそうあずささんが言った。

「なんで真ちゃんが私の運命の人じゃないのかな〜って」

あずささんは僕を見ていた。
僕もあずささんを見ていた。

そして僕は――

 ・
 ・
 ・

ある時――

体調が悪いのか。あずささんがふらふらと
倒れそうになった。
僕は彼女を抱きしめて支えてあげた。
ぐったりと僕に体重を乗せる彼女。

僕を包むやわらかい
誰とも違う大人の香水と、
ふんわりとしたシャンプーの匂い。
僕の胸の中が安堵にもにた空気に満たされて、、

でも――、それは僕に足りない、
僕が憧れてどれだけ欲しても
手にすることができない女性らしさ、柔らかさを
感じて、なんだか胸に重い棘が刺さったような、
とても苦しい気持ちになった。

その時から僕は彼女を避けるようになった。
理由は分かってる。
彼女への憧れ、、
――いや、それ以上の感情が芽生えるかもしれない
ことが怖かったから。
だけど、
避けてるつもりでも、相変わらず彼女は僕の
傍にいて、、
そして僕はその彼女のドジを見過ごすわけには
いけなくて。。

ある日、また彼女の具合が悪そうだったから
ソファまで座らせた。
その時、とたん彼女が僕の肩に頭を預けたから、
僕は動けなくなってしまった。

「やっぱり真ちゃんの肩がいいな〜。とっても落ち着く」

彼女の息が首筋にかかる。
魅力的、というより魅惑的な彼女の吐息に心臓が
高鳴るのを抑えられなかった。
呼吸を1つするのにも神経を使ってしまう。

時計の針の音だけが妙に耳をうつ。
どれだけの時間そうしていただろう。

「ごめんね」

ふと、彼女が口を開いた。

「本当は体調悪いのは嘘。今までもね、ほんとは別に
体調が悪かったわけじゃないの」

ぎゅっと頬を僕にすり寄せる。

「真ちゃんとこうして一緒にいたかったの」

彼女は何を言おうとしてるのだろう?
胸の中で期待と不安が入り混じる。
「私、思うの」

僕の腕に絡んだ彼女の腕が強くなる。

「なんで真ちゃんが私の運命の人じゃないのかな〜って」

心臓がますます高まる。一度唾を呑んで慎重に言葉を
選ぼうとする。

「それは僕が女の子だからですよ。だから僕は
運命の 人には――」
「違う。男とか女とかは関係ない。最近真ちゃんが
私を避けてるのが分かるから」

……言葉が、継げなかった。

「真ちゃんはこんなに素敵で優しくて、
私は真ちゃんが大好きなのに」

僕は、ここで、彼女の想いに対して、引くべきなのか、
進むべきなのか。。
――引いてどうなる?
――進んでどうなる?
僕は確かにあずささんに惹かれているところはある。
だけどそれがどういうものなのか。僕の求めるものと
彼女と求めるもの――。
ダメだ。混乱して思考が纏まらない。いや、これは、
きっと、冷静に考えても、纏まらない。。
纏まらないけど――

「運命の人って、1人なのかな?」

そういう僕にあざささんはきょとんとする。

「僕にとってあずささんは運命の人だと思う。もちろん他の
事務所のみんなも、これからもずっと一緒に大切な時間を
共有する運命の人だって。だから――それじゃ、ダメ、かな?
だから僕は――」

あずささんの一指し指が僕の唇に触れる。

「大事な部分をうまく誤魔化して。真ちゃんってずるいな〜」

あずささんの声が少し柔らかい。少し緊張が解けたような感じ。

「それにやっぱりかっこいい。ほんとにみんなの王子様ね」
「かっこいいって言わないでよ。僕がそう言われるのを嫌がる
のを知ってるくせに」

僕は苦笑いする。

「避けててごめん。でも別に嫌いになったわけじゃないよ。
むしろ逆だったんだ。
だからこれからも、あずささんがくじけそうになった時、
辛そうな時、 いつでも僕が肩を貸すよ。
あざさんの本当の運命の人が現れるまで」
「もし現れなかったら?」
「現れますよ。あざささんはとっても素敵な女性だから」
「真ちゃん」
「何ですか?」
「やっぱり真ちゃんが大好きだな〜」

彼女がにっこり微笑む。
そんな彼女の顔を見ながら、僕は肩にかかる彼女の
重さを心地よく感じていた。

[END]

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