最終更新:ID:6wa4zFU9Zw 2009年01月13日(火) 22:38:14履歴
あずさと真は午後の事務所で二人きりの時間を過ごしていた。
二人きりの時間、といっても甘い空気が漂っているわけでもなく、社長は出張、小鳥は買い出しにと出かけてしまったため事実上ただの留守番である。
他の所属アイドル達はそれぞれ仕事やレッスンへと向かった。
「せっかくのオフだったのにごめんなさいね。留守番なんか頼んじゃって。」
小鳥はそう言っていたが、特に予定もなかった(というより習慣なのか、いつの間にか事務所へと向かっていた)ので2人とも快諾した。
あずさは特に何をするでもなくいつもの柔らかな表情を浮かべてソファーに座っているだけである。真はその隣で雑誌を読んでいた。
「あずささん、オフの日にまでなんで事務所に来てるんですか?じゃあどうしてボクもここにいるんだって話ですけど。」
「うーん…。ここに来たら真ちゃんがいるかなーって思ったからかしら。そうしたらやっぱり。」
あはは。暇なことバレバレだったってことですか。そういって真はけらけらと笑った。
「にしてもボクがここにいそうだからって理由おかしくありません?休みの日にまでボクの顔を見に来ることないと思いますよ。他になにかあるんじゃないですか?例えば…」
プロデューサー、と口に出そうとしたがなぜかなかなか言葉が続かない。その口ごもる様子を見てあずさが続けていった。
「おかしくないと思うわ〜。好きな人の顔はいつまでも見ていたいものよ?私、真ちゃんのこと大好きですから。」
かぁっと顔が赤くなる。心音が隣のあずさにまで聞こえるんじゃないかというほど高くなる。
しかし表情は変えずに、またそんなことを言う、という非難を目線で送る。この動揺を知られてしまったら彼女の思うつぼである。ここまではいつもの二人のやり取りであった。
だがあずさがさらに続ける。
「それじゃあ、真ちゃんは休日にまで私の顔を見たくないってことかしら〜?」
「な、なにいってるんですか。そんな…そんなの」
ずるい。そう言われてしまったら答えようがないじゃないか。ボクだって本当はボクが事務所にいればあずささんもくるんじゃないかって思って来たんだ。
でもそんなの言えるわけない。
そう真が自分自身の真意を知られずにどうやってあずさに伝えようと考えているうちに彼女がまくしたててくる。
「ううっ…。私はこんなに真ちゃんのこと好きなのに、真ちゃんは私の顔なんて見たくないっていうのね〜。」
言い終わった後後悔した。真の瞳にはうっすらと涙が浮かんでいた。めったに人前では泣かない彼女が泣くということはよほどなことが無い限りありえない。
真は表面的にみえる快活な部分とは正反対に内面は非常に繊細だ。彼女を形成している根本的な部分はほんの少し傷つけてしまえば簡単に崩れてしまうほど脆い。
あずさはその部分を見抜いていた数少ない人物の一人であり触れないようにしていたのだが、うっかり立ち入ってはならない部分に触れてしまったようである。
「ごっ…ごめんなさいね?いじわるするつもりはなかったの。もうこんなこと二度といわないから!女の子どうしなのに好きだなんて言われても困るだけだってわかってるのに私ったら!」
「そうじゃないんです!ボクはボクのことも、あずささんのこともわからないんです!ほんとは好きな人がいるのに、ボクのこと好きだ好きだって言ってからかってるだけだったら、ボク、どうすればいいのか…」
震える声で、ぽつぽつとあずさに対する正直な気持ちを吐き出していく
「あずささん、運命の人を探すためにアイドルになったんですよね…。そのひとがみつかったらボクを放ってどこかにいっちゃいそうで…。そのことを考えてたらボク、悲しいのか、おこってるんだかよくわかんなくて胸の中がぐるぐるして気持ち悪くて…。」
真はあずさに友情以外で惹かれつつあったが、その感情の正体に気づいていないのも確かでありそれが真の混乱の原因となっていた。
吐き出される素直な感情をあずさはうん、うんと頷き頭を優しく撫でながら受けとめる。
「うん、もういいのよ。運命の人はもう探さなくていいの。」
「…えっ?」
あずさは優しく微笑んで
「見つかったのよ。もうとっくに。私たちが出会った日に見つかっていたの。」
「ボクらが出会った日…やっぱりプロデューサーのことを…」
「真ちゃんが私の運命の人だったのよ。」
ふたりが家路についたころには外はもう真っ暗であった。彼女らのプロデューサーがふたりを家まで送ろうとしたのだが
「だいじょうぶです。それに、なんとなく歩いて帰りたいです。」
「そうか…気をつけて帰るんだぞ」
そう言って真の泣いて赤く染まった頬には何も聞かずに事務所から見送った。小鳥はなぜか興奮した様子でふたりを見ていたが、話を聞かれていたかもしれないだなんて恐ろしいことを真はあまり考えたくなかった。
とりあえず今日は真を泣きやませるので終わってしまい、真の抱く感情は恋なんじゃないのか?という核心部分には触れずに終わってしまった。
そのほうがいい、焦ることはないとあずさは思っていた。真の自分のあり方に悩む様子もなにもかも、すべて愛しい。そう言えば怒らせてしまうということは容易に想像できるので口には出さないが。
「あ、あずささん今なんか変なこと考えてたんじゃないですか?」
「な、なにも変なこと考えてないわよお?でも、今日は真ちゃんがいろいろ話してくれてうれしかったなぁ。」
「…今日のことは忘れてくださいね?」
「どうしようかしら〜?忘れられないと思うけどー。」
「あああああ!だめですよ!おねがいですから誰にも言わないでくださいね!」
「ええ、私と真ちゃんだけのひみつ、ね。」
真は困惑と恥ずかしさの入り混じった表情をしていたが、心底満足した様子で笑うあずさにつられて微笑んだ。
「ああもう…ボクが、ボクもあずささんのこと好きだってことはあずささんだけの秘密ですよ?」
そうつぶやいた言葉は夜の澄んだ空気の中に溶けていった。
二人きりの時間、といっても甘い空気が漂っているわけでもなく、社長は出張、小鳥は買い出しにと出かけてしまったため事実上ただの留守番である。
他の所属アイドル達はそれぞれ仕事やレッスンへと向かった。
「せっかくのオフだったのにごめんなさいね。留守番なんか頼んじゃって。」
小鳥はそう言っていたが、特に予定もなかった(というより習慣なのか、いつの間にか事務所へと向かっていた)ので2人とも快諾した。
あずさは特に何をするでもなくいつもの柔らかな表情を浮かべてソファーに座っているだけである。真はその隣で雑誌を読んでいた。
「あずささん、オフの日にまでなんで事務所に来てるんですか?じゃあどうしてボクもここにいるんだって話ですけど。」
「うーん…。ここに来たら真ちゃんがいるかなーって思ったからかしら。そうしたらやっぱり。」
あはは。暇なことバレバレだったってことですか。そういって真はけらけらと笑った。
「にしてもボクがここにいそうだからって理由おかしくありません?休みの日にまでボクの顔を見に来ることないと思いますよ。他になにかあるんじゃないですか?例えば…」
プロデューサー、と口に出そうとしたがなぜかなかなか言葉が続かない。その口ごもる様子を見てあずさが続けていった。
「おかしくないと思うわ〜。好きな人の顔はいつまでも見ていたいものよ?私、真ちゃんのこと大好きですから。」
かぁっと顔が赤くなる。心音が隣のあずさにまで聞こえるんじゃないかというほど高くなる。
しかし表情は変えずに、またそんなことを言う、という非難を目線で送る。この動揺を知られてしまったら彼女の思うつぼである。ここまではいつもの二人のやり取りであった。
だがあずさがさらに続ける。
「それじゃあ、真ちゃんは休日にまで私の顔を見たくないってことかしら〜?」
「な、なにいってるんですか。そんな…そんなの」
ずるい。そう言われてしまったら答えようがないじゃないか。ボクだって本当はボクが事務所にいればあずささんもくるんじゃないかって思って来たんだ。
でもそんなの言えるわけない。
そう真が自分自身の真意を知られずにどうやってあずさに伝えようと考えているうちに彼女がまくしたててくる。
「ううっ…。私はこんなに真ちゃんのこと好きなのに、真ちゃんは私の顔なんて見たくないっていうのね〜。」
言い終わった後後悔した。真の瞳にはうっすらと涙が浮かんでいた。めったに人前では泣かない彼女が泣くということはよほどなことが無い限りありえない。
真は表面的にみえる快活な部分とは正反対に内面は非常に繊細だ。彼女を形成している根本的な部分はほんの少し傷つけてしまえば簡単に崩れてしまうほど脆い。
あずさはその部分を見抜いていた数少ない人物の一人であり触れないようにしていたのだが、うっかり立ち入ってはならない部分に触れてしまったようである。
「ごっ…ごめんなさいね?いじわるするつもりはなかったの。もうこんなこと二度といわないから!女の子どうしなのに好きだなんて言われても困るだけだってわかってるのに私ったら!」
「そうじゃないんです!ボクはボクのことも、あずささんのこともわからないんです!ほんとは好きな人がいるのに、ボクのこと好きだ好きだって言ってからかってるだけだったら、ボク、どうすればいいのか…」
震える声で、ぽつぽつとあずさに対する正直な気持ちを吐き出していく
「あずささん、運命の人を探すためにアイドルになったんですよね…。そのひとがみつかったらボクを放ってどこかにいっちゃいそうで…。そのことを考えてたらボク、悲しいのか、おこってるんだかよくわかんなくて胸の中がぐるぐるして気持ち悪くて…。」
真はあずさに友情以外で惹かれつつあったが、その感情の正体に気づいていないのも確かでありそれが真の混乱の原因となっていた。
吐き出される素直な感情をあずさはうん、うんと頷き頭を優しく撫でながら受けとめる。
「うん、もういいのよ。運命の人はもう探さなくていいの。」
「…えっ?」
あずさは優しく微笑んで
「見つかったのよ。もうとっくに。私たちが出会った日に見つかっていたの。」
「ボクらが出会った日…やっぱりプロデューサーのことを…」
「真ちゃんが私の運命の人だったのよ。」
ふたりが家路についたころには外はもう真っ暗であった。彼女らのプロデューサーがふたりを家まで送ろうとしたのだが
「だいじょうぶです。それに、なんとなく歩いて帰りたいです。」
「そうか…気をつけて帰るんだぞ」
そう言って真の泣いて赤く染まった頬には何も聞かずに事務所から見送った。小鳥はなぜか興奮した様子でふたりを見ていたが、話を聞かれていたかもしれないだなんて恐ろしいことを真はあまり考えたくなかった。
いつもの帰り道、いつものようにふたりで並んで歩く。「はぁ…なんか今日はいろいろおかしなこと言ってごめんなさい。…なんかはずかしいなあ。」
とりあえず今日は真を泣きやませるので終わってしまい、真の抱く感情は恋なんじゃないのか?という核心部分には触れずに終わってしまった。
そのほうがいい、焦ることはないとあずさは思っていた。真の自分のあり方に悩む様子もなにもかも、すべて愛しい。そう言えば怒らせてしまうということは容易に想像できるので口には出さないが。
「あ、あずささん今なんか変なこと考えてたんじゃないですか?」
「な、なにも変なこと考えてないわよお?でも、今日は真ちゃんがいろいろ話してくれてうれしかったなぁ。」
「…今日のことは忘れてくださいね?」
「どうしようかしら〜?忘れられないと思うけどー。」
「あああああ!だめですよ!おねがいですから誰にも言わないでくださいね!」
「ええ、私と真ちゃんだけのひみつ、ね。」
真は困惑と恥ずかしさの入り混じった表情をしていたが、心底満足した様子で笑うあずさにつられて微笑んだ。
「ああもう…ボクが、ボクもあずささんのこと好きだってことはあずささんだけの秘密ですよ?」
そうつぶやいた言葉は夜の澄んだ空気の中に溶けていった。
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