当wikiは年齢制限のあるページです。未成年の方は閲覧をご遠慮下さい。

「ふぅ・・・たまに帰ってきたっていうのに、休む暇もないわ〜・・・」
765プロのとある空き会議室。100%のオレンジジュースをすすると、ストローに色が付いていく。
もうじきAランクアイドルともなると、ゆっくりできる時間も限られてきてしまう。
(そう言えば・・・最近会えないわね・・・)
とある女の子の元気一杯な顔が頭に浮かぶ。ナイショで付き合い始めてからもう半年は経ってしまっただろうか。
ごく一部の事務員以外には、私達の関係はただの友達同士・・・に写っていると思う。そう信じたい。
そんな風に昔を思い出していると、ドアの外からパタパタとした足音が聞こえてくる。
もしかして・・・と思った瞬間、扉が勢い良く開き、足音の主が私へ一直線に走り寄って来た。
「いーおりちゃんっ」
ソファに座っている私の背後から、やよいが抱きついてくる。いつもの、あの甘い香りが私の鼻をくすぐった。
綻んでしまいそうな顔をなんとかいつも通りに保ち、私はやよいに微笑みかけた。
「や、やよい・・・!久しぶり・・・ね」
「えへへ〜・・・1ヶ月ぶりだね。会いたかった〜♪」
顔の横から、すりすりと頬ずりをしてくるやよい。・・・気を抜いたら上り詰めてしまいそうだ。
そしてそそくさとソファに座っていた私の隣に移動してくる。よっぽど楽しみだったんだろうか・・
そんな彼女は私に再開の喜びに浸る暇さえ与えてくれないようだった。
「あのさ、伊織ちゃん・・・」
「ちゅー・・・しよ?」
恥ずかし紛れに飲んでいたオレンジジュースを吹き出しそうになってしまう。
「ななななななな、何言ってるのよいきなり!」
「だって〜・・・最近会えなかったから、伊織ちゃんパワーが足りないかなーって」
「そうは言っても、こんなとこで・・・誰か来たらどうするのよ!」
「大丈夫!さっき小鳥さんからね・・・」
『久しぶりなんでしょ?じゃぁ思いっきりイチャイチャして来なさい!』
『この部屋は会議中ってことにしとくから、しばらく誰も入ってこないわ。』
『それじゃごゆっくり。ウフフ・・・』
(あ・・・あの事務員・・・)
そう、ごく一部にしか知られていない私達の関係だが・・・そのごく一部が曲者であった。
なにかにつけて私達を二人きりにさせようとするのだ。もちろん、ちょっぴりだけ感謝はしているが・・・
「だから〜・・・ね?ちゅー・・・しよ?」
やよいの切なそうな顔が私の肩に乗っかる。
そんな目をされたら、かろうじて残していた理性が陥落してしまう・・・
「で、でも・・・あんまり会社でこういうことはしないようにしようって・・・」
「ん〜・・・」
目を閉じ、赤みを帯びた頬で唇を突き出してくるやよい。もうすっかり"その気"のようだ。
ぐんぐんとその可愛らしい顔を私に接近させてくる。
「話聞いてるの、やよい!?だから・・・」
「・・・伊織ちゃんが、欲しいな」
そうやよいが呟いた瞬間、プツンと自分の中の何かが切れた音がした・・・

「えへへ〜・・・伊織ちゃんといっぱいちゅーしちゃった〜♪」
その後・・・私とやよいはソファの上で寄り添って座っていた。
「もう・・・何そんなに嬉しそうにしてるのよ」
「だってだって、嬉しいんだもんっ。えへへ〜・・・」
私の肩に頭を預け、ひたすらすりすりと身を寄せてくる。ああ、どうしてこの子はこんなに人を魅了するのだろう・・・
それにしても、今日はよっぽど何かが溜まってしまっていたのだろうか・・・ふと心配にすらなってきてしまった。
「次・・・会えるの、また久しぶりになっちゃうかな?」
「そう・・・かもね。」
幸せ一杯だったやよいの顔にほんの少しだけ寂しさが写る。
私だけじゃない。彼女も今着々と人気を増していっている。
そんな二人がまた二人きりで会える確率は決して高く無いだろう。
「えへへ・・・でも大丈夫! また次もちゅーしてもらうから!」
「な、なにバカなこと言ってるのよ・・・会社でするのはこれが最後なんだからね?」
「次はまた私の家に来なさい。この伊織ちゃんが精一杯おもてなししちゃんだから!」
一瞬の影は、すぐに太陽に変わる。それと同時に私もいつも通りの調子を取り戻していた。
そう・・・お互いに、この心の絆がある限り・・・私達は頑張っていける。
トップアイドルの道はそう遠くない・・・そんな自信が、私を包んだ。

「ふふ・・・ご馳走様でした♪ピヨピヨ」
その後・・・すれ違った事務員の言葉を聞いて、私はその日一番の溜息を付いたのだった。

コメントをかく


「http://」を含む投稿は禁止されています。

利用規約をご確認のうえご記入下さい

どなたでも編集できます

メンバー募集!