当wikiは年齢制限のあるページです。未成年の方は閲覧をご遠慮下さい。

「・・・ふぅ・・・」

千早、誰もいない事務所の会議室で、一人、ため息をついている。
春香、赤いバラを手に歌を歌いながらドアを開けて入ってくる。

「♪ひゃくまんぼんの、バ〜ラのは〜な〜を〜」
「は、春香!?あ、こ、この会議室、使うんですか?」
「ううん。いいよ千早ちゃん、気にしないで。別に仕事しに来た訳じゃないから。それより千早ちゃん、どうしたの?溜め息なんて吐いて」
「・・・い、いえ、何も・・・」
「ふぅん?・・・そっかぁ。これがマリッジブルーってやつなんだ」
「まっ、マリッジブルー!?」

千早、声を裏返らせて立ち上がる。

「あれ、違うの?」
「違うも何も・・・いったいどうして、どこから、そんな発想が出てくるのかと」
「え?だって千早ちゃん、結婚するんでしょう?」
「けっこん?だ、誰が、そんなもの!?」
「千早ちゃんと、プロデューサーさんが。だって、もう事務所中の噂になってるよ」
「ど、どうしてそんな噂が・・・」
「うーん、やっぱり、あれじゃないかなぁ」

<回想シーン>

千早、事務所のキッチンスペースでエプロンを着け、鍋をかき混ぜている。

「♪おっかしなお菓子がふふんふ〜ん ありそでなさそでふふんふ〜ん」

千早、ふと視線を感じて振り向く。

「・・・ひうっ!」

真っ青な顔で凍り付いて立ちつくす、雪歩と目が合う。
雪歩、首を傾げる千早の前で、震えながら目に涙を浮かべて首をぶんぶんと振る。

「雪歩・・・なにをしているの?」
「ご、ごめんなさいっ!見てませんっ、聞いてませんっ!私、なにも知りませんっ!!」
「・・・?」

あずさ、雪歩に気付いて近寄ってくる。

「あら〜?雪歩ちゃん、どうしたの?」
「・・・あ、あずささ〜んっ!」

雪歩、あずさの胸にしがみついて泣き出す。
あずさ、首を傾げたままの千早の方へ向き、うなずく。

「あらあら、まぁまぁ。なるほど〜、そういうことだったの〜」

<回想終了>

「・・・ええと・・・それで、つまり、・・・何を言いたいの?春香」
「プロデューサーさんに、チョコを作ってたんでしょ?もう事務所中の、噂だよ♪」
「だっ・・・誰がそんなでたらめを・・・!」
「そうなの?でも、だって、・・・千早ちゃん、他にあげる人がいるの?」
「えっ?・・・わ、私の事より、春香はどうなんですか?」
「私?私は、まだそういうの、ちょっと早いかなぁ、なんて。お世話になってるお礼に、プロデューサーさんには渡したけど」
「そう・・・そうよね」
「あ、やっぱり怪しいなぁ?千早ちゃん、いま、ほっとしたでしょ?」
「そ、そんなことはないかと。春香の気のせいです」
「ふんふん。私と千早ちゃんの仲なんだし、別に照れなくてもいいじゃない。・・・チョコ、渡したいんでしょ?」
「春香と、私の・・・はい。・・・渡したい、・・・です」
「そうこなくっちゃ。素直が一番!じゃあ私がプロデューサーさんの役やったげるから、練習してみない?」
「れ、練習!?」
「うん。それじゃ、まず挨拶からね」

千早、うなずいて軽く会釈。

「おはようございます、春・・・プロデューサー」
「おはよう、千早。なかなか素敵な服だね」
「春香・・・プロデューサーこそ、とってもかわいらしい服で」
「あ、えへへ〜。わかる?昨日買ったばかりなの♪」
「ああ、なるほど。どうりで、ここに値札が・・・」
「えっ!?うそ!ほんとだ、980円、おつとめ品、って・・・ちがーう!おつとめ品って、どこにつとめてるのよ千早ちゃん!」
「え?え?765プロ・・・では?」
「そうじゃないでしょ!・・・続けるからね。千早、今日も君の髪、なめらかでとても輝いているよ」
「春香こそ・・・そのリボン、とても素敵です」
「ありがと♪・・・じゃなくて!私じゃなくてプロデューサーさん!プロデューサーさんをほめるの!」
「ご、ごめんなさい・・・」

春香、額に手を当ててため息。

「もう。それじゃ、プロデューサーさんにチョコなんて渡せないじゃない、千早ちゃん」
「わ、私はプロデューサーに渡したいわけでは・・・」
「え?じゃあ、誰に渡すの?ひょっとして、社長さん?」
「い、いえ・・・まさか」
「じゃあ、誰なの?」
「そ、それは・・・その・・・」

春香、千早に顔を寄せて、こそこそとささやく。

「誰にも、絶対に言わないから。私だけに教えて?千早ちゃん」
「は、春香・・・」

千早、ごくりとつばを飲み込む。

「・・・くっ。ぜ、絶対に誰にも言わないと、約束してくれますか?」
「もっちろん!」
「じゃあ、そ、その・・・」

千早、リボンでラッピングされたチョコを取り出して、うつむいたまま春香に差し出す。
春香、ベッドの上で飛び起きる。窓から差し込む朝日に、思わず顔をしかめる。

「・・・夢?そっかぁ、そうだよね。あは、あはは・・・」

上半身を起こしぎこちなく笑う春香の隣で、シーツがもぞもぞと動く。

「・・・え」
「あ、春香、おはよう」

千早、頬を染めて横になったままシーツで顔の半分を隠す。

「・・・うはぁ」
それはきっと、開けてはならない、パンドラの箱だったのでしょう・・・
会議室の向こうに眠る、怪しい世界
以下略

コメントをかく


「http://」を含む投稿は禁止されています。

利用規約をご確認のうえご記入下さい

どなたでも編集できます

メンバー募集!