最終更新:ID:Q6r8l70OQg 2011年11月16日(水) 20:58:56履歴
「うん…うん、大丈夫。じゃあね、お母さん」
お母さんへの電話が終わり、携帯をポケットにしまうとすぐに千早ちゃんが駆け寄ってきました。
「あの…春香。大丈夫だった?…今週も、私の家に来て、くれる?」
千早ちゃんが私の手をぎゅっと握って、不安げに私の顔を覗き込んでいます。
…千早ちゃんの手、ふるえてる。
痛いくらいに強く握られた手の平からは、かたかたと小刻みにふるえが伝わってきます。
じっと私の目を覗き込んでいる千早ちゃんは、今にも泣き出しそうな表情をしていました。
「うん、大丈夫だよ千早ちゃん。日曜までなら…きゃっ」
いきなり何かが体に何かがぶつかってきて、危うく転びそうになります。
そしてきれいな長い髪の毛がふわさ、と目の前を覆い隠しました。
「春香っ、春香ぁ…また来てくれるのね、嬉しい…春香ぁ…」
千早ちゃんです。何度も私の名前を呟きながら私の体にぴったりと抱きついています。
「…うん、また一緒にいられるんだね。私もとっても嬉しいよ、千早ちゃん」
千早ちゃんの髪の毛をそっと撫でながらそう言うと、千早ちゃんはますます強く抱きしめてきました。
事務所からそう遠くない千早ちゃんのマンション。
そこに着くまで、千早ちゃんは絶対に手を離してくれません。
ラッシュ時の駅のホームでも、人気の無い路地裏を通る時も。
買い物をして帰る時はさすがに手は自由にしてくれますが、
その代わりに店から出たとたんにもっと強く私の手を握ってきます。
「ねぇねぇ、千早ちゃんっ、今日はお鍋にしようよっお鍋!」
「春香はこの頃いつもお鍋なのね…先週もそれだった気が」
「えー?先週はキムチ鍋、今週は石狩鍋だよ?別物だと思うけどなぁ」
こんな風に他愛の無いおしゃべりをしていると、少しだけ千早ちゃんの手の力が緩みます。
そんな時は千早ちゃんもにこにこ笑ってくれて、とても幸せな気持ちになれるんです。
…でも、すぐに千早ちゃんはまた手の力を強めて私の手を握り直してしまいます。
そんな時の千早ちゃんは決まってこう言うのです。
「…春香、もうすぐ私の家だから。手、離さないでね…お願い…」
片腕だけじゃなくて、もう片方の腕も私の腕に回して。
まるで私にしがみ付くようにして千早ちゃんはエレベーターに乗ります。
そしてそのまま私が千早ちゃんの渡してくれた鍵で、扉を開きます。
「よいしょっ、と…うう〜重いよぉ〜…千早ちゃん半分持ってぇ〜…」
…あれ?すぐ近くにいる、と言うより密着しているはずの千早ちゃんから返事がありません。
「千早ちゃん?」
千早ちゃんは何も言いません。ただ私の腕にしがみ付いて…私の首筋に顔を近づけていました。
「春香…春香はいい匂いがするのね…それに暖かくてとてもいい気持ち…」
ぺろり、と生暖かい舌の感触とぞわわっと全身に広がるくすぐったい刺激。
胸にも千早ちゃんの手が触れてきます。
握っていなかった方の手は服の上からでもわかるくらい冷たくなっていました。
「ち、千早ちゃんっ…ここじゃダメだよ、ね?」
私がそう言っても千早ちゃんはもう止まりませんでした。
ぷちぷちと胸のボタンが外されて、下に着ていたセーターの襟から冷たい手が潜り込んできます。
「ひゃうっ…だめ、だめぇっ、千早ちゃんっ」
スーパーのビニール袋が玄関のタイルの上に落ちて、がさがさと音を立てています。
「春香、春香ぁ…本当にここに居るのね、私と一緒に居てくれるのね…春香ぁ、春香ぁっ!」
しゃけは生ものだし早く冷蔵庫に入れないと。
千早ちゃんに玄関の床の上に押し倒された時、私はそんなことを考えていました。
「んぅっ、ちゅっ、くちゅっ」
千早ちゃん。私のとっても大切な友達です。
千早ちゃんはよく怖いとか冷たそうとか言われるけどそれはとんでもない誤解で、本当はとても優しい女の子です。
「ぷぁっ…ん、春香あ…上手く、出来たかしら?」
でも、とても傷つきやすくて、一人で悩んじゃうことがよくあって。
だから千早ちゃんが私に悩みを打ち明けてくれた時は、本当は嬉しかったんです。
絶対に千早ちゃんの力になろうって、張り切ってました。
「はぁっ、はぁっ…千早ちゃあん…あうっ!?」
私、千早ちゃんの力になれてるのかな?あの日、千早ちゃんは「寂しい」と言って泣きました。
春香がいつでも隣に居てほしいって泣きました。
「これならっ、あっ…春香もっ、私と、気持ちよくっ…なれるっ、からぁっ…あんっ」
これで、いいのかな?千早ちゃんはもう寂しくないんだよね?
そう考えてみても、だんだんと頭の中が白くなってきてまともに答えが出せなくなっていきます。
やっぱりおバカさんなのかなぁ、私。
「あっ、ちはやちゃっ…!だめぇ、くるっくるぅっ!…あっ、やあああっ!」
「はるかっ、はるかぁっ…あっ、いっしょに…くぅううっ!…」
###
行為を終えた後、春香はそのまま気を失ったかの様に眠りに落ちてしまった。
私は胸と下着をはだけたままの彼女を風呂場に運び綺麗にした後にパジャマを着せてベッドに寝かせた。
同じベッドの中では春香の呼吸、体温が直に感じられる。
「春香…」
ごめんね、突然あんなことをして。びっくりしたでしょう?
彼女の寝顔にそっと手を添える。春香は少しだけむずがる動作をした後、また寝息を立て始めた。
今、春香がここに居る。私と一緒の部屋に。それだけで私の心は満たされていく気がした。
帰るのが苦痛な位だったこの部屋も今は幸せに満ちている。
きっと春香は私というパズルから抜け落ちたピースなのだ。春香がいなければ私は成立しない。それ位大事な存在。
どうして私と彼女は今まで別々に別れていたんだろう?こうして一緒にいられるのが一番幸せなのに。
私は春香に寄りそうと胎児の様に体を丸めた。
「ん…あったかい…」
春香。私の魂の半分。絶対に離れないでね。ずっと一緒だよ。
彼女におやすみのキスをしようとした瞬間、いきなり部屋に電子のメロディが流れ出した。
「GO MY WAY」。春香のお気に入りだ。
「着信?誰から…」
私は眠る体制に入った頭を叩き起こしながらふらふらと部屋の隅にある春香のバッグへと歩み寄った。
「…765プロ?どうしたのかしらこんな時間に」
予定の変更でもあったのだろうか?頭をかしげながら電話に出る。
「あ、はい如月ですが…」
『あれ、千早ちゃん?何で春香ちゃんの携帯に出てるの?』
『えー!はるるんの携帯なのに?なんか怪しいですなー亜美?』
『そーですなー真美?』
萩原さんの声だ。それに亜美や真美の声が後ろで聞こえる。
「いえ、春香が特別に歌の練習をしたいと言うものだから、私が付き合ってるのよ。今春香は練習中だから…」
自分でも驚くくらいにするすると嘘が出てくる。何故だろう、今はとにかくこの会話を早く切り上げてしまいたい。
『へぇ〜春香ちゃん頑張ってるんだね。う〜ん、やっぱり悪いかなぁ…』
どんな要件なのだろう。場合によっては私の嘘が露呈してしまうかもしれない。
「今言ってくれれば春香に伝えることは出来るわ。あと30分かそこらでレッスンルームから出てくるだろうし…」
『あ、千早ちゃんありがとう…えーとね、今度の日曜に春香ちゃんの家にみんなでお邪魔してもいいですかってお話。
いつも春香ちゃんにはお世話になってるし…
あ、千早ちゃんも行くよね!みんなでお菓子とか持ち寄って…』
『ゲームも忘れちゃダメだぜい、ゆきぴょん!ほらほら初回特典のネク○モーフフィギア!』
『あとあと、イタズラグッズも〜!ほーれ犬男ー!』
『いやあああああ!!しまって、しまってぇえええええ!!!』
電話の向こうでは萩原さんの悲鳴が響き、亜美や真美が走り回っている音がする。
だけど私の頭に残ったのは「春香の家に遊びに行く」と言う一言。
それだけが頭の中でぐるぐるとまわり続けていた。
…駄目。それだけは駄目。春香といつでも一緒にいたい。春香の居場所はここの筈だ。
『ち、千早ちゃああん…た、頼んだよぉ…『(# 圭) ンヴウッ!!『いやああああああ!!!ここで始めないでええええ!!!』
通話を切り、着信履歴を開く。さっきの通話記録は…あった。パスワードは…これでよし、削除、と。
私は何をしているのだろう。事務所の仲間に嘘を付き、春香を欺くなんて。
でも、駄目だった。止まらなかった。なんと醜い存在なのだろうか、私は。
春香は、こんな私を嫌うだろうか?私はベッドに入り、春香の寝顔をじっと見つめた。
…嫌わないよね?きっと許してくれるよね?
春香はいつだって私を受け入れてくるから…ねぇそうでしょう?
「おやすみなさい、春香」
私は春香にもう一度おやすみのキスをし直すと部屋の明かりを消した。
おわり。
お母さんへの電話が終わり、携帯をポケットにしまうとすぐに千早ちゃんが駆け寄ってきました。
「あの…春香。大丈夫だった?…今週も、私の家に来て、くれる?」
千早ちゃんが私の手をぎゅっと握って、不安げに私の顔を覗き込んでいます。
…千早ちゃんの手、ふるえてる。
痛いくらいに強く握られた手の平からは、かたかたと小刻みにふるえが伝わってきます。
じっと私の目を覗き込んでいる千早ちゃんは、今にも泣き出しそうな表情をしていました。
「うん、大丈夫だよ千早ちゃん。日曜までなら…きゃっ」
いきなり何かが体に何かがぶつかってきて、危うく転びそうになります。
そしてきれいな長い髪の毛がふわさ、と目の前を覆い隠しました。
「春香っ、春香ぁ…また来てくれるのね、嬉しい…春香ぁ…」
千早ちゃんです。何度も私の名前を呟きながら私の体にぴったりと抱きついています。
「…うん、また一緒にいられるんだね。私もとっても嬉しいよ、千早ちゃん」
千早ちゃんの髪の毛をそっと撫でながらそう言うと、千早ちゃんはますます強く抱きしめてきました。
事務所からそう遠くない千早ちゃんのマンション。
そこに着くまで、千早ちゃんは絶対に手を離してくれません。
ラッシュ時の駅のホームでも、人気の無い路地裏を通る時も。
買い物をして帰る時はさすがに手は自由にしてくれますが、
その代わりに店から出たとたんにもっと強く私の手を握ってきます。
「ねぇねぇ、千早ちゃんっ、今日はお鍋にしようよっお鍋!」
「春香はこの頃いつもお鍋なのね…先週もそれだった気が」
「えー?先週はキムチ鍋、今週は石狩鍋だよ?別物だと思うけどなぁ」
こんな風に他愛の無いおしゃべりをしていると、少しだけ千早ちゃんの手の力が緩みます。
そんな時は千早ちゃんもにこにこ笑ってくれて、とても幸せな気持ちになれるんです。
…でも、すぐに千早ちゃんはまた手の力を強めて私の手を握り直してしまいます。
そんな時の千早ちゃんは決まってこう言うのです。
「…春香、もうすぐ私の家だから。手、離さないでね…お願い…」
片腕だけじゃなくて、もう片方の腕も私の腕に回して。
まるで私にしがみ付くようにして千早ちゃんはエレベーターに乗ります。
そしてそのまま私が千早ちゃんの渡してくれた鍵で、扉を開きます。
「よいしょっ、と…うう〜重いよぉ〜…千早ちゃん半分持ってぇ〜…」
…あれ?すぐ近くにいる、と言うより密着しているはずの千早ちゃんから返事がありません。
「千早ちゃん?」
千早ちゃんは何も言いません。ただ私の腕にしがみ付いて…私の首筋に顔を近づけていました。
「春香…春香はいい匂いがするのね…それに暖かくてとてもいい気持ち…」
ぺろり、と生暖かい舌の感触とぞわわっと全身に広がるくすぐったい刺激。
胸にも千早ちゃんの手が触れてきます。
握っていなかった方の手は服の上からでもわかるくらい冷たくなっていました。
「ち、千早ちゃんっ…ここじゃダメだよ、ね?」
私がそう言っても千早ちゃんはもう止まりませんでした。
ぷちぷちと胸のボタンが外されて、下に着ていたセーターの襟から冷たい手が潜り込んできます。
「ひゃうっ…だめ、だめぇっ、千早ちゃんっ」
スーパーのビニール袋が玄関のタイルの上に落ちて、がさがさと音を立てています。
「春香、春香ぁ…本当にここに居るのね、私と一緒に居てくれるのね…春香ぁ、春香ぁっ!」
しゃけは生ものだし早く冷蔵庫に入れないと。
千早ちゃんに玄関の床の上に押し倒された時、私はそんなことを考えていました。
「んぅっ、ちゅっ、くちゅっ」
千早ちゃん。私のとっても大切な友達です。
千早ちゃんはよく怖いとか冷たそうとか言われるけどそれはとんでもない誤解で、本当はとても優しい女の子です。
「ぷぁっ…ん、春香あ…上手く、出来たかしら?」
でも、とても傷つきやすくて、一人で悩んじゃうことがよくあって。
だから千早ちゃんが私に悩みを打ち明けてくれた時は、本当は嬉しかったんです。
絶対に千早ちゃんの力になろうって、張り切ってました。
「はぁっ、はぁっ…千早ちゃあん…あうっ!?」
私、千早ちゃんの力になれてるのかな?あの日、千早ちゃんは「寂しい」と言って泣きました。
春香がいつでも隣に居てほしいって泣きました。
「これならっ、あっ…春香もっ、私と、気持ちよくっ…なれるっ、からぁっ…あんっ」
これで、いいのかな?千早ちゃんはもう寂しくないんだよね?
そう考えてみても、だんだんと頭の中が白くなってきてまともに答えが出せなくなっていきます。
やっぱりおバカさんなのかなぁ、私。
「あっ、ちはやちゃっ…!だめぇ、くるっくるぅっ!…あっ、やあああっ!」
「はるかっ、はるかぁっ…あっ、いっしょに…くぅううっ!…」
###
行為を終えた後、春香はそのまま気を失ったかの様に眠りに落ちてしまった。
私は胸と下着をはだけたままの彼女を風呂場に運び綺麗にした後にパジャマを着せてベッドに寝かせた。
同じベッドの中では春香の呼吸、体温が直に感じられる。
「春香…」
ごめんね、突然あんなことをして。びっくりしたでしょう?
彼女の寝顔にそっと手を添える。春香は少しだけむずがる動作をした後、また寝息を立て始めた。
今、春香がここに居る。私と一緒の部屋に。それだけで私の心は満たされていく気がした。
帰るのが苦痛な位だったこの部屋も今は幸せに満ちている。
きっと春香は私というパズルから抜け落ちたピースなのだ。春香がいなければ私は成立しない。それ位大事な存在。
どうして私と彼女は今まで別々に別れていたんだろう?こうして一緒にいられるのが一番幸せなのに。
私は春香に寄りそうと胎児の様に体を丸めた。
「ん…あったかい…」
春香。私の魂の半分。絶対に離れないでね。ずっと一緒だよ。
彼女におやすみのキスをしようとした瞬間、いきなり部屋に電子のメロディが流れ出した。
「GO MY WAY」。春香のお気に入りだ。
「着信?誰から…」
私は眠る体制に入った頭を叩き起こしながらふらふらと部屋の隅にある春香のバッグへと歩み寄った。
「…765プロ?どうしたのかしらこんな時間に」
予定の変更でもあったのだろうか?頭をかしげながら電話に出る。
「あ、はい如月ですが…」
『あれ、千早ちゃん?何で春香ちゃんの携帯に出てるの?』
『えー!はるるんの携帯なのに?なんか怪しいですなー亜美?』
『そーですなー真美?』
萩原さんの声だ。それに亜美や真美の声が後ろで聞こえる。
「いえ、春香が特別に歌の練習をしたいと言うものだから、私が付き合ってるのよ。今春香は練習中だから…」
自分でも驚くくらいにするすると嘘が出てくる。何故だろう、今はとにかくこの会話を早く切り上げてしまいたい。
『へぇ〜春香ちゃん頑張ってるんだね。う〜ん、やっぱり悪いかなぁ…』
どんな要件なのだろう。場合によっては私の嘘が露呈してしまうかもしれない。
「今言ってくれれば春香に伝えることは出来るわ。あと30分かそこらでレッスンルームから出てくるだろうし…」
『あ、千早ちゃんありがとう…えーとね、今度の日曜に春香ちゃんの家にみんなでお邪魔してもいいですかってお話。
いつも春香ちゃんにはお世話になってるし…
あ、千早ちゃんも行くよね!みんなでお菓子とか持ち寄って…』
『ゲームも忘れちゃダメだぜい、ゆきぴょん!ほらほら初回特典のネク○モーフフィギア!』
『あとあと、イタズラグッズも〜!ほーれ犬男ー!』
『いやあああああ!!しまって、しまってぇえええええ!!!』
電話の向こうでは萩原さんの悲鳴が響き、亜美や真美が走り回っている音がする。
だけど私の頭に残ったのは「春香の家に遊びに行く」と言う一言。
それだけが頭の中でぐるぐるとまわり続けていた。
…駄目。それだけは駄目。春香といつでも一緒にいたい。春香の居場所はここの筈だ。
『ち、千早ちゃああん…た、頼んだよぉ…『(# 圭) ンヴウッ!!『いやああああああ!!!ここで始めないでええええ!!!』
通話を切り、着信履歴を開く。さっきの通話記録は…あった。パスワードは…これでよし、削除、と。
私は何をしているのだろう。事務所の仲間に嘘を付き、春香を欺くなんて。
でも、駄目だった。止まらなかった。なんと醜い存在なのだろうか、私は。
春香は、こんな私を嫌うだろうか?私はベッドに入り、春香の寝顔をじっと見つめた。
…嫌わないよね?きっと許してくれるよね?
春香はいつだって私を受け入れてくるから…ねぇそうでしょう?
「おやすみなさい、春香」
私は春香にもう一度おやすみのキスをし直すと部屋の明かりを消した。
おわり。
タグ
コメントをかく