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 私の名前は音無小鳥、うら若い765プロの事務員です。
 いきなりですけど、今度DSでアイマスのゲームが出るらしいですねえ。まあ、皆さんは当然既知だとは思いますが。
 ヒロインの三分の一が男の子という、かつてないギャルゲーに仕上がりそうなこの作品ですが……実はなんと、このわた小鳥さんもプロデュースできるんです!
 いやあ、素晴らしいですね、素敵ですね。とうとう765プロ随一の癒し系キャラたる私と、いちゃいちゃできる日がこようとは。感無量ですね皆さん!
 もちろん、お触りタッチも実装してありますよ! 少女らにはない、淫靡で艶やかな肢体……仮想の両手でどんどん触れちゃってください! きゃー!
 っていう夢を先日見ました。

 季節は夏――。寒さの厳しい冬を乗り越え、花粉舞い散る春と決別し、訪れたるは猛暑の辛い蒸し蒸す夏。ホント、生きるのって大変です。
 しかし、夏はまだまだ過ごしやすい方だと思います。部屋に籠ってガンガンに空調を効かせれば、むしろ上着を着て調度いいくらいですからねえ。
 こういうとき、自分の仕事が事務で本当に良かったって思います。面倒と思う雑務も、お外で働く方々からすれば屁の様なものでしょう。ビバ文明の利器!
 ということで、私は今日も今日とてディスプレイと睨めっこです。人は自分を慰めるとき、上か下のどちらかと自分を対比するといいますが、私は断然下ですね、ええ。
「あの、なにか飲み物とか、出しましょうか?」
「……結構だぞ」
「そ、そうですか」
 思考をあちこちへと彷徨わせながらも、私の意識の大半は視界の端に映る一人の少女に釘付けられています。961プロに所属する、彼女は我那覇響ちゃんです。
 というのも、彼女は昼過ぎごろ唐突にここを訪れ、「プロデューサーを待たせてほしいんだ」と私に告げると、是非も聞かず仏頂面で隅のソファーに陣取ってしまったのです。
 それきり、彼女は怒りや焦りに似た感情をない交ぜにした複雑な面持ちで、じいと机を睨みつけています。触れれば切れそうな雰囲気が、容赦なく私の胃壁を削ります。
 私と彼女の親交はほとんどありません。時々雑誌やテレビなんかで見かける程度で、実際に相対するのもこれが初めてです。ですから、どう対応すればいいのやら。
 意志の強そうな釣り目は怒りでより鋭さを増し、ともすれば視殺されてしまいそうなほどです。可愛らしいポニーテールも、柔らかそうな体つきも、今は触れ難い空気を発散しています。
 ――ああ。どうぞ他所でやってほしいものです。プロデューサーさんと何があったのかは知りませんが、皆が出払う昼過ぎの一人快適な時間を侵さないで欲しいです……。
「響ちゃん……は、どうしてここに?」
「……」
「よ、よかったら聞かせていただけると……なんて、はは」
 じろりと細められた目を向けられて、私は咄嗟に視線を逸らして曖昧な笑みを浮かべました。一周りも若い女の子に凄まれて怯える私は、いわゆる小動物系ですね。
 彼女は視線を机に戻すと、結局何も言わず腕を組み、元通り。事務員に話す舌など持たぬということなのでしょうか。間を置くこと肝要也ということなのでしょうか。
 私はふう、と彼女に聞こえない大きさで嘆息し、席を立って給湯室へ向かいました。空気が乾燥しているので、喉が渇いてしまって。え? いえ、別に逃げるわけでは……。
「うわっ」
 給湯室の扉を開けると、途端にもわりとした生暖かい空気が漂ってきました。手狭な給湯室。窓もなく、空調もなく、締め切っていたせいでまさに蒸し風呂状態です。
 しかも、何故か雑巾やらモップやらが散乱しています。思うにおそらく誰かが飲み物をこぼし、それの掃除をした後そのままほっぽり出していったのでしょう。
 まったくと呟きながら私はそれらを拾い上げ、適当にぽいぽいと給湯室の外に放りました。部屋の外にあった棚に上手くモップが立てかかり、よし、と一人悦に入ったりして。
「……あのさ」
 鼻歌交じりにコーヒーメーカーに挽き豆を入れていると、不意に声をかけられました。ひゃっ、なんて可愛らしい悲鳴を上げながら振り返ると、扉の外に響ちゃんが佇んでいました。
「ど、どうしました?」
「えっと、やっぱなんか飲み物欲しいな、って思って」
「あ、あぁ……」
 彼女は少し気まずげに言うと、はははと苦笑しました。先程までの刺々しい雰囲気は失せ、歳相応の可愛らしい少女に幾分か戻っています。少し落ち着いてきたのでしょうか。
「冷えたものがいいですか? 今からコーヒー淹れますけど、どうします?」
「うーん、冷たいのがいいよ」
「冷蔵庫になにかあると思いますから、好きなのをどうぞ」
 ちょいちょいと中に手招きすると、彼女は頷き、後ろ手に扉を閉めて素直に入ってきました。警戒を解いてくれたのかしらと考えましたが、思うにただ喉が渇いただけなのでしょう。
 給湯室は、四人も入れば満員になってしまう程に窮屈です。なのに冷蔵庫は部屋の奥にあるで、私たちはお互い体を細めて狭い通路をすれ違いました。彼女が冷蔵庫を開けます。
「これ、もらってもいいかな?」
「どうぞどうぞ」
 彼女はペットボトルの清涼飲料水を手に持っていました。誰が買ってきたものかは知りませんが、まあいいでしょう。私のじゃないですしね。構いやしませんよ。
 ありがとう、と彼女は一礼し、ぐいと一気にそれを呷りました。よほど喉が渇いていたのか、一息でそれを飲み干してしまいます。彼女は私の視線に気づくと、照れくさそうに破顔して――ガタンッ!
「わっ!?」
 その時、不意に何かがドアにぶつかる音が外から聞こえてきました。突然のことに私も彼女も似たような悲鳴を上げ、ドアを注視します。なんだか、嫌な予感が頭をよぎりました。
 先に動いたのは響ちゃんでした。彼女はおそるおそるノブに手を掛け、力をこめて押しました。しかし、動きません。がたがたと揺すってみますが、びくともしません。こ、これは……。
「あ、開かないぞ?」
 不安げな面持ちでこちらを振り返り、響ちゃんが助けを求めるように言いました。私はそれを受けてドアに近づき、同じようにノブを回して扉を押しました。が、やはり動きません。
 何かが突っかかっているのでしょう、どうやら閉じ込められたようです。さっさと諦めて溜息をつく私を押しのけて、響ちゃんは更にドアを揺さぶります。が、女の子の力ではどうにもなりません。
 もしかしたら、先程外に放ったモップが原因かもしれません。賢明な方なら予兆に感づけたかもしれませんが、私は愚かにも気付かず、あんなことを……え? いや、本当ですって。
「うう……困ったぞ」
「困りましたねえ」
「一体、なんで開かなくなったんだ?」
「なんででしょう」
 自分の責任かもしれない、などとは当然告げず、彼女に同調して眉根を寄せます。これで体よく午後の仕事をさぼれるなあと考えた私は、イケナイ女の子ですかね、うふふ。
 響ちゃんは苦い顔をしたまま、うーと唸って頭を抱えています。そんな彼女に私は「とにかく落ち着きましょう」と年長者の余裕を示し、しかし無視されて悲しくなりました。
「くそっ……こんなことしてる場合じゃないのに」
「響ちゃん、なにか急ぎの用事だったんですか?」
 私がそう問いかけると、彼女は少し考え、ふいとそっぽを向いて答えてくれませんでした。再びドアと格闘を始めますが、徒労にしかなりません。私はぐでりと床に腰を下ろし、そんな彼女を眺めます。
 しばらく経って、結局響ちゃんも私と同じように床に座り込んでしまいました。彼女の額には汗が滲み、喘ぐような浅い呼吸を繰り返しています。……とにかく暑いんです、この部屋。
 そういえば空調が無かったんだと今更に思い出し、これなら仕事してた方がましだな!と私は顔をしかめました。上着のベストを脱ぎ、汗でじんわりと湿ったブラウスの襟元をぱたぱたと扇ぎます。
「響ちゃんも上着、脱いではどうです?」
「……そうだなあ」
 彼女は淡い水色の長袖を上に羽織り、中には白いタンクトップを着ています。下は上と合わせた寒色のミニスカートで、そこから延びる艶やかな生足の先には、サンダルが引っ掛けられています。
 私の言葉に促され、彼女が上着を脱ぎます。腕を上げると、タンクトップの大きく開いた脇の部分からネズミ色のスポーツブラが覗きました。……あそこに、たっぷりと柔肉が詰まっているのですね。
「なにさ?」
「え? い、いえ、何でもないですよ」
 じろじろと眺めていたのを見咎められ、私は慌てて誤魔化しました。響ちゃんは胡坐をかいて座りなおすと、はあと嘆息して項垂れてしまいました。沖縄生まれも、このサウナはさすがに辛いようです。
 私も同じように、ぐでりと頭を下げます。あまりの暑さに、彼女の短いスカートから伸びるせっかくのパンチラ生足も頭に焼き付けることができません。重症です。室温、40度近いかもしれません……。
 台所と食器棚に挟まれた、一メートルと少しの程狭い空間に二人。考え方によっては素敵シチュエーションですが、呼吸をしているだけで汗が滲む今、テンションも下降の一途を辿っています。
「喉……喉渇いた……」
「……蛇口をひねれば、水がいくらでも出てきますよ」
「あ、そうか」
 頭も茹るこの暑さ。響ちゃんはここが給湯室であることをようやく思い出したのか、がばと立ち上がるとシンクに張り付き、勢いよく蛇口をひねりました。景気よく水が溢れだします。
「……お湯だ」
 しかし流れ出てくる水道水は、ほんのり人肌程度には暖かくなっているようです。響ちゃんはそれを手で受けながら、苦い顔をしています。……こっちを見られても、私のせいではないですよ。
 彼女は気を取り直すとシンクに乗り出して蛇口の下に顔を持っていき、思い切ってがぶがぶと飲み始めました。背に腹は代えられないと考えたのでしょうか、いやはや豪気なことをするものです。
 前傾姿勢になったせいで、白い下着と肌があられもなく全て見えてしまっています。ぷりんとしたお尻は若々しく重力に逆い、綺麗な曲線を描いていました。え? そんな、別に羨ましくなんて……。
 ぐでんと横になってしばらく眼福を楽しんでいると、彼女はぷはあと蛇口から離れ、腕で顔を拭いました。結構な量を飲んだのでしょう、下腹が少しぽこりとなってしまっています。
「なんだか喉がイガイガするぞ」
「……カルキのせいでしょう。あんまり喉にはよろしくないですよ、水道水」
「そうなのか?」
 そうなのです。多分。でも、水道水を一気飲みすると喉が痛くなったりしません? いやまあ、硬水軟水だなんだのの関係かもしれませんが、そんなことはウィキペディアでも見てください……。
「……というかお姉さん、大丈夫か? 死にそうな顔してるぞ? 白目が……」
「平気ですよ……。ただ、HDDは一緒に火葬してくださいね……」
「何言ってんだ!? ま、待ってろ、今水を飲ませてやるからな!」
 私の顔を見た響ちゃんがわたわたと慌てはじめ、再び蛇口をひねってコーヒーカップにお湯を汲み始めました。たしかに意識が朦朧とし始めてはいましたが……そんなに慌てなくても。
 彼女は完全に脱力しきった私の体を仰向けに寝かせると、水を浸したタオルを額に乗せてくれました。しばらく出しっぱなしにしたことで、冷水が出てきたのでしょう。差し出された水を口に含みます。
 ほうと息を吐くと、彼女も同じように肩を落としました。……私、結構ヤバかったのかもしれませんね。いやはや、普段文明の利器に頼りきりだと、こういうときに生死の境を……あ、私だけですか。
「それで、響ちゃんはどうして事務所に?」
 水分補給を済ませ、額には濡れタオル。ブラウスの前もがばと肌蹴いてようやく人心地ついた私は、幾分か戻ってきた気力を元に響ちゃんに話しかけました。
「……貴音のことで、ちょっとさ」
 狭い通路に隣り合って座りつつも、肩が触れない程度の距離。お互い手持無沙汰だったせいか、彼女は一拍置いてから、ぽつりと本題を話してくれました。
 貴音ちゃんといえば、彼女と同じ事務所のアイドルでしたっけ。たしか冬頃にそんなような子と一悶着起こしてしまったような気がしますが、記憶にございません。全然ございません。
「そういえば、お姉さんは何て名前なんだ? 自分は我那覇響っていうんだ」
 彼女が、私の顔を覗き込んで聞きます。そういえば、今の今までお互い自己紹介をしていないのに気が付きました。名札の付いたベストは、先程脱いでしまっていたんでした。
「音無小鳥です。気軽に小鳥さんって呼んでくださいね」
「小鳥、小鳥さんかあ。可愛いけど、変な名前だなあ」
「……ははは」
 けらけらと楽しそうに笑う、今の彼女が素のようです。先程までの怒りの形相は、件の貴音ちゃん云々の事案がよほど腹に据えかねていたからなのでしょう。
 私は乾いた笑いで失礼な発言を流し、はふ、と溜息をつきます。大分落ち着いてはきましたが、未だ蒸されてしまっているのには変わりありません。換気扇を回しましたが、無意味ですね。
 よたよたと這うようにして、私は冷蔵庫に向かいました。ついさっき飲んだ水は既に汗と消費され、喉はとうにカラカラ。中を覗くも、しかし1リットルのペットボトルが一本しかありませんでした。
「自分も喉渇いたぞー……。でも、それ音無って書いたふせんが貼ってあったから、小鳥さんのだろ?」
「……よければ、飲みます?」
「え、いいのか? いやあ、小鳥さん結構いい人だぞ!」
「でも、あまり飲みすぎると、トイレが近くなってしまうかも」
「大丈夫さ。どうせ汗で出ちゃうだろうし」
 私にしては珍しい躊躇いの言葉を、響ちゃんはからっとした笑顔で払いのけてしまいました。……薬効も、汗で流れ出るといいですね。そんなことを考えながら、ペットボトルを渡します。 
 こくこくと気持ちよさそうに喉を鳴らす彼女を前に、私に何ができましょう。ごめんなさいねと内心ほくそ笑みながら、私はよっこいせと立ち上がり、蛇口をひねります。……お湯だ。
「それで、貴音ちゃんがどうしたんです?」
「うーん……話してもいいのかな。小鳥さん、765プロの人だし」
「大丈夫です。私、口は堅い方ですよ。小鳥ですから、くちばし付きなんです」
「ははっ、つまんないな!」
 響ちゃんは天真爛漫な子ですね。こんな状況ながらも自分を見失わない所は、流石アイドルというべきでしょうか。私は鼻の頭を若干引くつかせながら、後で絶対に泣かせてやろうと誓いました。
 彼女は笑いの余韻を引いたまま俯くと、すっと目を細めました。会って間もない人間に話をするのは、やはり躊躇われるのでしょう。無理に話さなくても、と私が声を掛けようとすると、彼女は顔を上げました。
「小鳥さん親切だから、話すぞ。でも、他の人に言いふらしちゃダメだぞ? ……貴音が困るからさ」
「言いませんよ。大丈夫です」
「……じゃあ、話すぞ」
 響ちゃんは言いつつも表情を陰らせると、前置きに大きく溜息を吐きました。辛そうに俯く彼女の横顔が泣きだしそうに見えたのは、気のせいでしょうか。
「貴音がな、この前いきなり、765プロに移籍しようかと思ってるって言い出したんだ」
 彼女はしかめた顔で、そう言いました。まったく意想外な話だったので、私は思わず面食らって反応が遅れました。実は喧嘩してさ、ぐらいの話だと考えていたのですが。
「え、うちにですか」
 思わず聞き返すと、響ちゃんは頷きます。彼女がここへきて最初に言った言葉は、たしか「プロデューサーを待たせてほしい」だったのを思い出して、私は思わず眉間に指をやりました。
 彼、女の子をたぶらかすのはそろそろ自重してほしいものです。痴情のもつれ的に考えて。まったく。――自重と痴情。上手くありません? これは中々に……あ、すみません。
「最近、765プロ……あいつが、貴音のまわりをちょろちょろしてるのには気付いてたんだ。でも、貴音も嫌そうにはしてなかったから、まあいいかって」
「はあ……」
「今思えば、たぶんあの時から何か吹き込んでたんだと思う。貴音は世間知らずだからきっと、ころっと騙されちゃったんだぞ」
「あー……」
「あいつは変態だって社長が言ってた。だから、こう……き、キスとかしたりして、誑かしてるんだ。そうに違いないんだぞ!」
 響ちゃんは憤激を顕わにぐっと拳を握りしめ、意気込んで立ち上がりました。怒りが漲っているのはわかりますが、あまり体温を上げないでください。暑いです……。
 スカートをくいくいと引っ張って座るよう促すと、彼女はごめんと謝り、男らしく胡坐をかいて座りました。そして足首を手で掴むと、ぴんと背筋を這り、イライラと体を揺すりはじめます。
「でも、プロデューサーさんは多分、色仕掛けなんかはしてないと思いますよ」
「なんでそんなことがわかるのさ!」
「だって彼、真面目で鈍感ですから。色んな子から好かれてるのに、節操無く手を出しているなんて聞きませんし」
「……でも、あいつが貴音をなびかせてるのは、事実だぞ」
 まあ確かに。今は方法の是非を問うているわけではありませんしね。響ちゃんにとっては、貴音ちゃんがいなくなってしまうかもしれない、ということがなにより重大なのでしょう。
「響ちゃんは、貴音ちゃんとは仲が良いんですか?」
「……自分は親友だと思ってる」
「ははあ」
 プロデューサーが貴音ちゃんを引き抜いてしまうと、友人と離れ離れになってしまう。うちとしては戦力が増えるとありがたいのですが、響ちゃんは冗談じゃないでしょう。
 話が見えてきましたね。つまり、貴音ちゃんはプロデューサーにうちへ勧誘されて心惑い、響ちゃんはそんなの嫌だと、プロデューサーの胸倉を掴みにここへ来たわけですか。
 私は腕を組み、なるほどと頷いてみせました。それにしても、いやはや素晴らしい行動力の持ち主です。よほど貴音ちゃんを慕っているのか、プロデューサーが気に入らないのか。どっちもですか。 
「……自分はさ、東京に来てアイドルやる為に、家出してきたんだ」
 ぽつりと漏らした言葉が身の上話だと気づくのに、数瞬を要しました。話はこれで終わりだとばかり思っていたので、遅い返答を返す前に、彼女が話を続けます。
「アイドルやりたいんだって言ったら……反対されてさ。それでかっとなって一人でこっちに来て、たまたま黒井社長にスカウトされたのさ」
「そうなんですか……」
「うん。……貴音とは、そこで知り合ったんだぞ。初めは、なんか気取った感じで、嫌な奴かなって思ってたんだけどさ」
 響ちゃん曰く、実際の四条貴音は、とても心優しい人物だったのだとか。アイドルとしてはライバル関係にありながらも、徐々に交友を深める中で、互いを親友と称するに至ったと。
 日々の他愛のない話を交えつつ、響ちゃんはは四条貴音という人物が、どれほど自分の支えになってくれたかという話を訥々と聞かせてくれました。嬉しそうな語り口が、かえって哀切を招きます。
「思うように歌えなくて落ち込んでた時とかさ……他の皆は知らんぷりだったけど、貴音だけは慰めてくれたんだ。練習に付き合いましょう、なんて言ってくれてさ」
 彼女の所属するプロダクションは、孤高を標榜するような方が社長を務めるところだったと記憶しています。助けあおう、という意思は、本来ならなかったはずなのでしょう。
 ――辛そうに顔を歪ませて座り込む彼女に、貴音ちゃんが柔らかい髪を揺らしながら歩み寄り、微笑みを浮かべて手を差し出す。そんな情景を思い浮かべるのは、労無いことでした。
「一緒にペットの散歩にも行ったよ。休みの日に、買い物に付き合ってもらったりして……服屋に寄って、貴音に色々着せて楽しんだりさ。貴音、ばれないかって冷や汗かいてたなあ」
「……」
「ご飯食べて、家に上げてもらって、一緒にお風呂入って、同じベッドで寝てさ。朝目を覚ましたら、貴音がもう起きてて……おはようございます、って。……お姉ちゃんが出来たみたいで、嬉しかった」
 彼女の語る思い出は優しい出来事に溢れ、まるで恋人との蜜月のようです。相手を親友と認め、心を許して接していたのは、響ちゃんの方だけというわけではないようです。
 それだけに、自分を置いて他のプロダクションに移りたいという告白は、響ちゃんにとって相当にショックだったのでしょう。こうして、単身ここへ乗り込んでくるほどに。
 喋りながら徐々に頭を垂らしていく響ちゃんの横顔は、見ている方が辛くなってしまいそうなほどに傷ついていました。――上京したての彼女は、こんな顔をしていたのでしょうか。
「なんでこうなったんだ? あんなに一緒だったのに……ずっと二人で、頑張っていけると思ってたんだぞ……」
「響ちゃん……」
「うう……貴音ぇ……」
 響ちゃんは細い腕で目を擦ると、ず、と鼻をすすりました。ただの子供の喧嘩程度の話だろうと高をくくっていた私は、事の深刻さに思わず掛ける言葉を失ってしまいました。
 彼女は本質的に寂しがり屋なのでしょう。それなのに、意地を張って家出して、たった一人東京などに来てしまって……。知人の一人もいない都会は、孤独をより浮き彫りにします。
 それでも、あえて孤高を強いる961プロに入ったのは、おそらく家族を残してきた自分を肯定するためという意味もあったのでしょう。自分で選んだ孤独な道を、社長の教えで補強するために。
 しかし、やはり響ちゃんは独りには耐えられなかったのでしょうね。手を差し伸べてくれた貴音ちゃんに、ともすれば愛情のような気持ちを抱いています。言いかえれば、依存ともいえる程に。
 響ちゃんはまだまだ、家族の庇護が必要な子供です。孤独だなんだと気取るには、あまりに幼すぎます。寂しい寂しいと泣きながら噛みつきにきたこの子を、どうすべきなのか……。
「ん……それにしても、貴音ちゃんは酷い子ですね」
「……え?」
「響ちゃんの話を聞いて、そう思いましたよ。こんなに悲しんでる響ちゃんを置いて行っちゃうなんて、最低です。あんまりです」
 私はシャツの襟元をぱたぱたとしながら、貴音ちゃんを揶揄するような言葉を吐きました。響ちゃんは私の顔を呆けて眺め、しかしすぐに眉根を寄せると、怒りの形相を顕わにしました。
「た、貴音は最低なんかじゃない! 悪いのは765プロだぞ!」
「でも、判断するのは貴音ちゃんじゃないですか。貴音ちゃんは結局のところ、親友の響ちゃんを置いて、好きな人の所に行きたがってるんでしょう?」
「そ、それは……」
「酷い子ですよ。自分のことしか考えてないじゃないですか」
 私の連ねた言葉に気勢をそがれ、響ちゃんは複雑な表情で押し黙ってしまいました。……なんで私がこんなことをと思いつつも、これも年長者の務めか、と肩を落とします。
 響ちゃんからすれば、私の言葉は確かに事実です。大切な友人をなじる様な語調に反射的に反感を覚えても、貴音ちゃんが彼女を置いていこうとしているのは、事実なのですから。
 自分のことしか……と、響ちゃんは私の言葉を反芻しています。それからしばらく難しい顔をして考え込み、はたと気づいて顔をしかめました。俯いたまま、彼女は言います。
「……ううん。自分のことしか考えてないのは、自分だって同じなんだ……」
 彼女は眉根を寄せると、苦い顔で俯きました。――伊達に自立して、単身アイドル業をやっているだけありませんね、響ちゃん。彼女は私の言わんとするところを、すぐに理解してくれます。
 貴音ちゃんが情無く行ってしまおうとするのも、響ちゃんが手段を選ばず引き留めようとするのも、結局は同じ。自分勝手な行動でしかありません。どちらも、相手のことを考えていません。
「確かにその通りです。……でも私は、友達ってそんなものね、とも思うんです」
 深刻な表情のまま沈んでいってしまいそうな響ちゃんに、私はそう言い置きました。彼女もまた友人の気持ちを顧みず、自分の想いにしたがっていたのは事実です。
 ですが、人は他人の為、友人の孤独を癒す為に生きているのではありません。だから自分本位は詮ないことですし、誰にも言えることなのです。責められるいわれは、ありません。
 重要なのは、どう折り合いをつけるかだと私は思います。気持ちにどこかで妥協点を見つけ、互いに最善でなくとも、相手を失うよりはまし。そんなものじゃないでしょうか。
 私のセリフに、響ちゃんがこちらに顔を向けました。室温のせいか少し上気した表情は、私の目にどこか脆く儚げに映ります。我那覇響は、アイドルですが少女です。
「響ちゃんは、貴音ちゃんとお話はしたんでしょう?」
「……したぞ」
「でも、お互い肝心なところを譲らないから、響ちゃんはこうしてここに来たんですよね?」
 貴音ちゃんが相手ですから、お互いが声を荒げることはなかったのでしょう。自責と、理解されない苛立ちとで俯く貴音ちゃんに、感情の高ぶるままに響ちゃんが熱を吹きかける。
 そしてそのまま、目も合わせることなく気まずいままに喧嘩別れ。大体そんな感じなんだろうと私は当たりをつけ、言葉を返さない響ちゃんの横顔に、確信を深めました。
「結局、どちらもが折れるしかないんですよ。片方に無理を強いると、それまでになってしまいます。お互いが納得できる妥協点を見つけて、友情というものは維持されていくんです」
「で、でも」
「このまま響ちゃんが貴音ちゃんの移籍を絶対に許さないという姿勢を崩さないなら、友情は壊れた挙句、貴音ちゃんとは離別することになってしまうかもしれません」
「そんな……」
「逆の立場だったらと、考えてみてください」
 響ちゃんの顔がどんどん泣き顔に崩れていきそうになるので、私はなんだか悪いことをしている気分になってきます。いつもいつも損な役回りばっかですね私。
 考えてみれば、響ちゃんに取れる行動は二つしかありません。貴音ちゃんの移籍を好意的に受け止めるか、はたまた嫌だと駄々をこねるか。選択肢は、譲歩するかしないか。
 だからこそ、独断でこんな勝手をする前に、もう一度しっかりと貴音ちゃんと意見を交わすべきなのです。相手の言い分と望みを、理解しようとすべきです。
「……でも、本当はそこまで心配することもないと思いますけどね。きっと、貴音ちゃんも今頃、響ちゃんと同じように悩んでいるはずですから」
「……自分と同じように?」
「そうです。どうしたら、響ちゃんを傷つけずに済むのか。やっぱり、移籍は諦めるべきなのではないか。そんなことを思い悩んでいるはずです」
 友情より恋をと、極端に視界を狭める女の子は確かに多いです。でも、響ちゃんが姉と親友と慕う貴音ちゃんは、あくまで利己的な行動の身を取る人間とはおよそ対極にあるのでしょう。
 そもそも二人の関係も、貴音ちゃんが差し出した手から始まったのですから。だから、彼女は繋いだ手を振り払っていくようなことを、きっとしないはずです。……多分ですけど。
「それに、仮に貴音ちゃんが移籍してしまったとしても、お二方の友情が即座に消えてしまうわけではないでしょう?」
「……」
「そりゃあこれまで通りとはいかないかも知れませんが……。まあ、なんにせよ、大切なのは許し合う心ですよ。」
 私はセリフをそう結んで、話を切り上げました。あまりぐだぐだと説教を続けるのは趣味ではありませんし、言ってあげるべきことは全て伝えられたように思います。
 手団扇で顔を扇ぎ、相変わらない暑さに溜息をつきながら、やはりまだ深刻な表情で考え込んでいる響ちゃんに目を向けます。――許せと言われても、それは同時に移籍を認めろということです。
 そう簡単に、わかったぞとは言い難いでしょうね。出来ることなら貴音ちゃんが移籍を辞めてくれることが、彼女にとっての最善なのですから。葛藤は当然のことです。
 なんにせよ、とにかくもう一度話すことが先決です。お互いが疎遠になってしまう前に、腹を据えて気持ちを伝える必要があります。閉じ込められている場合ではないとは、彼女の談です。
「……小鳥さんの言う通りだぞ。やっぱり、こんなことする前に、もう一回貴音と話そうと――」
 響ちゃんは顔をあげ、決意を込めた眼差しで私を見据えながらそう言いかけて、不自然な部分で言葉を切りました。ぴくりと目元が引くついたのを、私は見逃しませんでした。
「どうしました?」
「え? いや、別になんでもないんだぞ……」
「おしっこですか?」
「ち、ちが」
 顔を引きつらせる響ちゃんの反応に、私の両手がかたかたと震え始めました。テンション上がってきた!って感じですね。脱水症状の走りという可能性も否めませんが。
 ふふふ。慌てて私から顔を背ける彼女の反応に、ようやっと私も愉快になってきました。小鳥さんは説教なんかしてないで、他人の危機と焦燥を煽って楽しまないとですよね。
 響ちゃんは下唇を軽く噛んで、眉間に細く皺をよせています。スカートから伸びている足はいつの間にかぴんと伸ばされ、内股になっています。
「本当になんでもないんですか? 流石に水分を取り過ぎたのではないのですか?」
「う……別に、そんなこと……」
「我慢できますか、出来ないでしょう? 助けを待ちますか、待てないでしょう? どうしましょう、いえどうしてくれよう?」
「な、なんで急に元気だぞ」
 思わず腰を上げてにじり寄ると、その分だけ彼女も身を引きます。這って後ずさる少女と追い追われ、とうとう部屋の出口に響ちゃんの背中がとんとぶつかりました。
 先ほどまでのお話で、体の熱も引いたのでしょう。赤らんでいた顔も肌色を取り戻し、しかし流れる汗の量はそのままです。彼女は怯えたような表情で、私の顔を上目遣いに見やってきます。
 周囲に威圧的な空気を発散していた、つい半刻程前の彼女とはとても同じ人物には思えません。こういう時折見せる弱さ脆さが、母性を擽るのでしょう。……違うか。ははは。
 私は彼女の伸ばされた足の上にのしかかり、肌色を晒している太ももに両手をぺたりと這わせました。やあぁ、と漏れ出した少女の悲鳴が、背筋をぞぞぞと泡立てます
「な、なにするのさ小鳥さん!」
「よいではないか、よいではないか」
「い、いいわけ……」
 さわさわと撫で回す、彼女の太ももは少し日に焼けつつもきめ細やかで、手にすべすべと滑らかな肌触りです。ああ、たまりません。興奮してきました。息も上がってきました。
 少し調子に乗ってスカートの中にも手を滑り込ませると、響ちゃんは咄嗟に私の手首を握って侵攻を押し止めました。しかしまくれ上がったスカートは、その奥の純白を覗かせます。
「ほら、あまり堪えてると体に悪いですよ。水を飲みすぎるからこういうことになるのです。私は止めてあげたのに、忠告を聞かないから」
「が、我慢するさ!」
「無理です」
「い、いや……大丈夫だぞ」
「いつ出られるかわからない密室の中、意地を張って我慢して、耐えきれず、もし……。そうなったとき、茹ったこの空間にあなたの香りが充満することになるんですよ?」
 響ちゃんは私の言葉に顔を青ざめさせました。思春期の多感なこの時期、もし失禁などしようものならトラウマものです。挙句、しばらく素敵な匂いで肺を一杯にすることになれば、きっと立ち直れません。
 いやまあ、私はどちらかと言えば歓迎しますけどね? 可愛らしい女の子の嬉し恥ずかしお漏らし失禁、最高じゃないですか。ここにきて、私のテンションは最高潮です。
 私はしな垂れかかるように、彼女に体を密着させました。押し倒し、腰の辺りに腕を回して抱きついて首元に顔を寄せます。お互いにべたつく肌が吸いつき、微かに匂う汗の香りがたまりません。
「こ、小鳥さん……! ひゃっ!」
 ちゅ、と鎖骨に吸いつくと、響ちゃんは上ずった声を上げます。ともすれば喘ぎ声のようにも聞こえる高い少女の声に、私の理性も家出してしまいます。暑ささえも、もはや気になりません。
「響ちゃん、響ちゃん」
「こ、小鳥さん、やめてほしいんだぞ……」
 目を瞑って顔をそむけようとする響ちゃん。私は、汗で張り付いた彼女の前髪を掻きあげてやり、少し熱を孕んだ額をぺろりと舐めあげて差し上げました。
 傍から見れば完全に襲い襲われ百合の園、といった様相ですが、私は誰も見ていないのをいいことに更に手を……え? いや、30までは女子でしょう。何を言うのです。
 そして私は彼女の腰にまわした腕を少し持ち上げ、自身と彼女の下腹を押しあわせました。強く密着させると、んんっ、と苦しそうな声が響ちゃんの口からこぼれます。
 目を血走らせる私が怖くなってきたのか、彼女はやめてやめてと、か細い声で泣くような懇願をしてきます。ですがそれは、私フィルターが「もっと」という言葉に変換してくれました。
「響ちゃん、安心してください。ここは給湯室ですよ。お小水を捨てるには困らない場所ですから」
「で、でも」
「でももへちまも。それとも、そのまま漏らして下着やスカートを汚した挙句、私と一緒に自分のものの匂いを楽しみたいんですか?」
 床に押し倒した彼女の頬を両手で挟み、視線を釘付けにして責めるような口調で問いただします。もうすぐ誰かしら戻ってくるだろうことや、今も開けている換気扇のことは言いません。
 響ちゃんは困った顔のまま目を伏せ、泣きそうな顔で黙り込んでしまいました。確かに後者は彼女としても避けたい選択肢でしょうが、ここで処理するというのも、中々嫌なものです。
 しばらく答えは出ないでしょう。彼女の顔を解放し、私はそこではたと気づきました。着ていたタンクトップが少しはだけ、少し視線を下げれば可愛らしいおへそが覗いています。
 そこに手を伸ばし、お腹の肉に指を差し入れました。鍛えているとはいえ女の子。柔らかい腹筋に柔らかく指が埋まり、響ちゃんは下腹を圧迫されて苦しそうにやめてと哀願してきました。
「……わ、わかったぞ……。確かに、このままずっと我慢するのは無理さ……」
「わかっていただけましたか」
「で、でも! 絶対自分が、その……用を足してるところは、見ちゃだめなんだぞ!」
「無理です」
「え、ええ……」
 私は間髪入れずにそう返すと、早速彼女のスカートに手を伸ばし、一気に引き下ろしました。一瞬の出来事に何をされたのかわからなかったのか、一拍置いて、彼女が悲鳴を上げました。
「ほら、下着も」
「な、何でそうなるのさ! や、やあっ!」
 はぎ取ったスカートを部屋の奥に投げ捨てながら、私は既に下着に手をかけていました。そのまま引き下げようとしますが、響ちゃんが腕を掴んでそれを止めます。
 私は咄嗟に、先程まで彼女の羽織っていた上着に手を伸ばしました。そした力任せに響ちゃんの体をうつ伏せにひっくり返し、両腕を一纏めに縛りあげてやります。
「ひ、ひっ……」
 響ちゃんが喉を引くつかせ、私から逃げ出そうと這って出口へ向かおうと蠢きます。私はその姿を嗜虐的な眼差しで眺め、足首を掴み、ぐいと自分に引き寄せました。
 ぺちんとお尻を叩いて、再び仰向けにします。そして膝小僧に手を置き、そのままするすると太股を撫でながら足の付け根にまで進みます。抵抗も受けず、私は下着を引っ掴みました。
 そしてゆっくりと時間をかけながら、めくり取るように脱がしてやります。もはや彼女の哀願も悲鳴も耳に入りません。極度の興奮で私の頭は完全に茹ってしまっています。
「おお……眼福眼福」
 グラビアの撮影のせいか、海へ遊びに行ったのか。パンティラインに沿っての日焼けと白い肌のコントラストが艶めかしく、その先には恥毛が茂っています。ごくごく薄いそれに、笑みを浮かべます。
 私は彼女の太ももの上に腰を落とし、その恥丘に手を添えました。ふにふにと柔らかいそれはどれだけ触り続けても飽きそうになく、しかし懇願され、適当なところでやめにしてあげます。
「おしっこ、私が手伝ってあげますからね」
 はあはあと息も荒く口元を凶悪に歪める私に何を思ったのか、響ちゃんは黙りこくり、きつく目を瞑ってそっぽを向いています。抵抗しない方がいいと悟ったのでしょうか、好都合です。
 私は恥丘の上、少しはってしまった下腹に再び目を付けました。優しく撫でる様に手を伸ばし、さわさわとうごめかせます。膀胱のある、腰骨の隣辺りを優しく押しこみます。
「は、ああ……! こ、小鳥さん、でちゃうぞ……!」
「すみません、ちょっと手が滑っちゃいました」
「っ……」
 非難がましい目で睨みつけられ、私は肩をすくめました。下半身丸出しの状態で怒ったって、ぜーんぜん怖くありません。調子ノリノリの私は、更に悪戯を続けます。
 私は太股の上から離れ、再び彼女の膝に手を置きました。しかし今度はそのまま力をこめ、がばと股を大きく開かせます。御開帳、御開帳です、うふふ……。
「や、やだぞ! それだけはっ……!」
「大丈夫ですよう、何にもしませんってば。……じっとしてれば」
「……」
 悔しそうな顔で顔をそむけた響ちゃんに、私は満面の笑みを送りました。広げさせた股の間に体を割り込ませ、私の膝の上に彼女の腰を乗りあげさせます。
 目の前に、彼女の秘所が晒されました。いわゆるまんぐり返しの状態にして、そっと陰唇に触れると、それはやや汗ばんで湿っていました。濡れているわけではないでしょう。
 私は二本の指で大陰唇を押し広げで、中身をのぞきます。そして顔をそっと近づけ、秘孔の少し上、尿道に舌を伸ばしました。蒸れた香りと汗の味を感じます。
「う、ううっ……。き、汚いぞ、小鳥さん……」
 もう辛抱堪りません。興奮するままにちろちろと少女の尿道を舐めまわします。コリっとした感触を楽しみ、軽く吸い上げてみたりもします。
 響ちゃんの呻く声が聞こえてきますが、私はやめてあげません。べろべろと穴から尿道、クリトリスまでを一気に舐めあげ、それを何度も繰り返します。
 しばらく犬のようになめ続けていると、汗とは違う味の滑る液体が分泌されてきました。視線を下げればアナルもひくついていて、響ちゃんは浅ましくも気持ち良くなってしまったみたいですねえ。
 ちゅ、ちゅ、と優しく尿道にキスをします。下腹に手をやってマッサージし、放尿を促します。響ちゃんは必死に唇を噛みしめてこらえていましたが、元々限界も近かったせいか、我慢できるはずもありません。
「……くっ、あ、ああっ、出ちゃう、出ちゃうぞ小鳥さん!」
 お尻がぴくぴくと震え始め、彼女が悲鳴のような声を上げました。そこで私は大口を開けて秘所に吸いつき、尿道を唇で挟んで強く吸い上げてあげます。
 ぴゅ、と液体が漏れ出しました。とうとう堪え切れなくなったのでしょう、見上げれば、彼女の顔も真っ赤になっています。このまま飲んでしまおうと、私は行為を続けます。
 しかし尿が溢れたのは一瞬だけのことで、すぐに止まってしまいました。響ちゃんが歯を食いしばり、目尻に涙を溜めて我慢したようです。汗も拭き出し、流れ滴っています。
「も、もう……お願いだから、やめてほしいんだぞ……」
 懇願され、顔を離しました。口元を拭ってふうと息を吐き、だらりと脱力する彼女を眺めます。秘所は真っ赤に充血し、唾液と愛液、そして少しの尿でしとどに濡れています。
 上気した顔で喘ぎ、焦点の合わない目で天井を見やる響ちゃん。肩の辺りまでタンクトップはまくれ上がり、スポーツブラには乳首が浮き、汗で濃褐色に濡れています。
 ぐったりとした彼女は、とても扇情的でした。浅い呼吸に動く艶やかな唇に、思わずキスしたくなってしまいます。貴音ちゃん、こんなこをすてていくなんて とんでもない!
「我慢はよくないっていったんですけどねえ」
 私は立ち上がり、息も絶え絶えな響ちゃんの背後に回りました。そして上半身を起こしてやり、胸で受け止めます。響ちゃんの安堵の溜息が聞こえましたが……まだまだやめませんよ?
「な、なに……」
 胸で彼女を体で支えたまま、太ももに腕を伸ばします。そしてうんせと持ち上げて、ぐいと下半身をシンクに突き出させました。いわゆる乱れ牡丹ですね。立ってますけど。
「ほら、ここに出しちゃってください」
「や、やだ……」
「嫌じゃありませんよう。じゃあ、私の口に出しますか?」
 彼女のポニーテールがふるふると横に動き、私の顔を擽ります。じゃあ早くしましょうねと、耳元で言い聞かせるように告げると、彼女は頭を垂れてしまいました。
 弱り切った響ちゃんは借りてきた猫のように大人しいです。肉付きのいい体も意外なほどに軽く、彼女の体は私に柔らかく預けられています。くたりとした姿は、写真に収めたいほどです。
 しかし響ちゃんは、中々放尿しようとはしません。痺れを切らした私は、赤く火照った耳に顔を近づけ、ぺろりと舐めあげてやりました。はむはむと唇で咀嚼すると、彼女の体がびくりと震えます。
「あ、あああ……」
 とどめにふう、と耳に息を吹きかけると、響ちゃんは愛らしい断末魔をあげ、とうとう股の間から黄金水を漏らしてしまいました。勢いづいて放たれるそれが、シンクを叩きます。
 ぱたぱたと垂れ流されるお小水。周りの熱気を纏ってふわりと香る彼女の匂い。上から覗き込む響ちゃんの表情は、羞恥と呆然で何とも愛らしいものになっていました。
 止めることもできず全て放たれたおしっこは、最後にぴゅっと残りを放って締めとなりました。はふ、とやや満足げな溜息を私は聞き洩らさず、指摘すると彼女は顔を赤らめました。
「気持ち良かったですか?」
「……酷いんだぞ、小鳥さん……」
「そもそも、響ちゃんが催すのがいけないんじゃないですか。私のせいにしたってダメですよう?」
「……うう」
 響ちゃんを台所の上に降ろしてから、自分のことを棚に上げた指摘で責任逃れをします。響ちゃんは何か言いたげな顔で私を上目使いに見やりましたが、結局口をつぐみました。
 私は傍らにあった布巾を手に取り、水道水で尿を流すついでに湿らせ、よく絞ってから彼女の秘所に宛がいました。ぴくりと反応するのが楽しくて、念入りに拭き取ってあげます。
 汗や尿、粘液などをしっかりと落としてから、足を取って下着を穿かせます。彼女は台所からゆっくりと降りると、嘆息しながら私に背を向け、ふりふりと縛められた腕を揺らせました。
「ほどいて欲しいぞ。……小鳥さん、アドバイスしてくれていい人だって、思ったのに」
「今は思ってくれてないんですか?」
「そ、それは……。って、なに触ってんのさ!」
 抱きつくよう後ろから腕を回し、タンクトップの脇から手を突っ込んで胸を鷲掴みにします。スポーツブラはしっとりと暖かく、柔らかく手に吸いつくようなおっぱいの感触がたまりません。
 危難も去って少し元気になったのか、響ちゃんはぎゃんぎゃんと文句を言い始めました。私は仕方ないねと体を離し、腕を縛っていた上着を解いて差し上げました。
「……これ以上何かされないうちに、早く外に出たいぞ……」
「ところで生乳見たいです」
「だ、誰かー! 誰かー!」
 響ちゃんは私から離れると、慌てて服を着込み始めました。失礼ですねと的外れな憤慨に頬を膨らませていると、彼女の助けを呼ぶ声に呼応したのか、扉の外で物音がしました。
「……誰かいらっしゃるのですか?」
「た、貴音ぇ!」
「響? 響なのですか!?」
 響ちゃんのそうだぞー、という声に、貴音ちゃんがぱたぱたとスリッパを鳴らして近づいてきます。閉じこめられて約一時間。惜しい気もしますが、これでようやく解放の運びとなりました。
「そんなことがあったのですか……」
 外に出て事情を話すと、貴音ちゃんは表情を複雑に歪めて、困ったような顔で何となく頷きました。笑えばいいのか驚けばいいのか、当事者以外にはまったく微妙なところです。
 貴音ちゃんは当初、乱れた着衣の私たちを見て目を見開き、そして何か思いだしたのか顔を赤らめ、しかしそんなはずはと首を振り、結局何も言わずに普段通りのお澄まし顔に戻りました。
 響ちゃんもなにか言いたげな顔を私に向けていたので、わかってますよと目配せしてあげました。結果、しばらく三人固まって沈黙するという、妙な空気が出来あがってしまいました。
「し、小用があって立ち寄らせていただいたのですが、まさかこんなことになっていたとは。気がつけてよかったです」
 そんな空気を払拭するように、貴音ちゃんが話題を戻しました。彼女はモップを手に持っていたので、どうやらやはりそれが扉を塞いでしまっていたようでした。てへっ、失敗失敗。
 モップ? と響ちゃんが顎に手を添えて思案顔になります。覚えのない原因に彼女はこちらを振り返ってきましたが、私は目を逸らします。まあ、そんなことより、とにかく体を休めましょう? 
「それもそうさ。……でも、ホント良かったぞ。あの中、凄く暑くてさ」
「そのようですわね。ここにいても、蒸された空気が漂ってきますから」
「あ゛ー……涼しいぞ……」
 響ちゃんは上着を脱ぎ払うと、貴音ちゃんから差し出された冷えたお茶を片手にソファーに溶けだしました。冷ませば固まるのが世の理ですが、この時ばかりは逆ですね。
 私も同じように貴音ちゃんに飲み物を受け取り、響ちゃんの隣によっこいせと腰掛けました。滴っている汗をタオルで拭い、体を冷やす前にシャワーを浴びるべきかなと内心で考えます。
「……ところで、お二人って喧嘩していたのでは?」
 なんとなく笑顔で会話をしている二人に、横目でぼそりと指摘してあげました。彼女らもあえてそのことを意識から外していたのか、びくりと震えると似たような動作で俯き、目を伏しました。
 はっきりさせるなら、今が良いでしょう。時間が経てば経つほど、気まずさというのは加速度的に増していくものです。エッチな小鳥さんは人生経験豊富ですから、その辺詳しいですよ……。
「そのことなのですが……響」
 先に言葉を発したのは貴音ちゃんでした。まあ、そもそもの原因は彼女にあるので、順当でしょう。響ちゃんは頭を垂れたまま、こくりと頷くだけです。
「私、移籍をするのは、やはり止めることにしました」
「え……な、なんでさ!」
「恋……というには至らない稚拙なものですが、やはり盲目的だったのは否めません。私は、本当に大切なものを見失ってしまっていたようです」
 貴音ちゃんは整った顔に微笑みを浮かべ、申し訳なさそうに言葉を連ねました。やっぱり優しい子だなと、私はソファーの端で彼女らを邪魔しないよう小さくなりながら、そう思いました。
 しかし、本当に大切なものと、大切な親友から改めて称された当の響ちゃんは、浮かない顔をしています。ぱくぱくと口を遊ばせて、何かを言いあぐねているようです。
 その視線を辿り、貴音ちゃんの横顔に眼を向けます。彼女の表情には、どこか諦念やのようなものが見て取れます。響ちゃんへの新愛にほとんど隠れ、いや、自分の意思で隠しているのですね。
 やっぱり無理しているんです。自分の恋より友情を大切にする、まだ十八だというのになんと出来た子でしょう。十歳程年上のお姉さんは、同じ状況になったら多分……いえ、なりませんけど。
「貴音……自分も、貴音のこと大好きだぞ。だから今、凄く嬉しい」
「……はい。ですからこれからも二人、共に――」
「でもさ!」
 ふわりと浮かぶ笑顔を押しとめて、響ちゃんが言葉を続けました。しかし、すぐには言葉が出てこないのか、眉根を寄せ、唇を引き結んでいます。貴音ちゃんはそんな彼女を、ただ見つめていました。
「でも……大好きだからこそ、貴音には幸せになってほしいんだ。自分のせいでその機会がなくなっちゃうのは……やっぱり、嫌なんだぞ」
 自身の想いに後ろ髪をひかれながらも、響ちゃんは頭を振って言葉を紡ぎます。彼女も彼女で、本当に友達思いですね。私なら、下剤を嫌がる子供みたく駄々をこねて……すいません、無粋でした。
「響は……それで良いのですか?」
「……うん」
「本当に?」
 慰めるような貴音ちゃんの優しい口調に堪えていたものが溢れてきたのか、響ちゃんの顔は泣き顔に崩れていきました。目尻が下がり、下唇を噛みしめ、鼻の頭がぴくぴくと震えています。
 誰が見ても、全然良く思ってはいないだろうことを容易に悟れます。しかし響ちゃんは零れそうになる涙を必死でこらえ、鼻をすすってなんとか平静を保とうと頑張っています。
 貴音ちゃんはそんな彼女をしばらく見つめ、ふと、こちらに視線を向けてきました。なにかを問いかけるような瞳に、私はこくりと頷いてみせます。これは、響ちゃんの成長です。
「ありがとうございます、響」
 貴音ちゃんはそれ以上追及することなく、響ちゃんに笑顔を向けました。なりふり構わない手段に出るほど移籍を嫌がっていた彼女の、変化。精一杯の譲歩。
 それをしっかりと汲み取ってあげられるのが、貴音ちゃんの貴音ちゃんたる所以なのでしょう。響ちゃんをして親友と言わしめる、心優しい人物の包容力を目の当たりにしました。
 言葉もなく、ただただ感謝の言葉に頷くだけの響ちゃんを、貴音ちゃんは背中に腕を回してひしと抱きしめました。突然の抱擁に、泡を食ったように響ちゃんが慌てて腕の中でもがきます。
「き、汚いぞ! 自分、いっぱい汗を――」
「大切な友人の、惜別の涙。汚いと感じる道理が、何処にありましょう?」
「……貴音ぇ……」
 とうとう堪え切れなくなったのか、響ちゃんも構わず貴音ちゃんの背中に腕を回し、ふたりはきつく抱きしめあいました。華やかな少女たちの友情に、思わず私も涙ぐんでしまいます。
「自分たちは、ずっと友達だからな」
「もちろんです。これからも、変わらず」
「……それと、自分を置いていくんだから、ちゃんと目的は果たすんだぞ」
「……善処しますわ」
 響ちゃんが胸に顔をうずめながら上目使いにそう言い、貴音ちゃんは苦笑しつつも是と答えました。こればかりは確約できないでしょうが、実現しなければ嘘です。
 一手返したといわんばかりに、ようやく響ちゃんにも笑顔が戻ってきました。今更に気恥ずかしそうな表情を浮かべると、最後にぎゅっと抱きしめてから、名残惜しそうに離れます。
 ともすればキスにも及びそうな甘々しい雰囲気に、私はもはや言葉もありません。……にわかに体がぽかぽかと暖かくなり、なんだか頭がぼんやりとしてきました。私の体が、ぽてりと横に倒れます。
「小鳥さんもありがとう。小鳥さんのおかげで、貴音と仲直りできたぞ」
「そうですか……よかったですね。ついでに響ちゃんも、我が社に来ませんか……」
「あー、その手もあるなあ……。というか、小鳥さんなんか、白目剥いてないか? 大丈夫か?」
「……ひ、響! タオルを濡らしてきてください! 急ぐのです!」
 もう若くないってことですかね、ははは。慌ただしく動き始めた二人を意識の端に、ぼんやりとそんなことを考えます。若い二人の気にあてられて……うう、いいなあ、若いっていいなあ。
「小鳥さん、白目剥いたまま泣き出したぞ! 死ぬのか!?」
「こ、氷を! い、いえ、温めた方が? だ、誰か、誰かいませんか!」
 調子乗ってはしゃいだ罰でしょうかね、これは……。頭痛まで起き始める中、私は「あの時響ちゃんのを飲んでれば若返ったのでは?」と一瞬考え、なるほどその手が!と新しい境地を開きました。
 ところで貴音ちゃん、本当にプロデューサーさんを狙ってるんでしょうかね? 確か彼、いまは千早ちゃんといい感じだったように思いますが……と伏線を投げ飛ばしてから、私は意識を手放しました――
 

 私の名前は音無小鳥、うら若い765プロの事務員です。
 いやあ……友情って、本当にいいものですね。東急ハンズとかに売ってませんかね? いくらでも出しますよ私。え? そういう意識だから……いえ、そんなことわかってますよ……うう……。

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