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「あーあ、後は…あれ……………だけかぁ…」
パタリと閉じられる雑誌の音と、溜息と共に出る雪歩の台詞

元々、アイドルをやれるだけあって容姿は並みを遥かに超える物があるのだが、気弱な性分の所為で今一つ自信が持てない
おまけに、容姿やスタイルに強力な魅力を携える女性達が身近に居るのだ。気に掛けるな…というのは少々無理な注文と言うものだろう
必然、女性誌等をこまめにチェックする事も多くなる ―――― そう、『バストアップ』

それは最早彼女にとって、もう一つの命題になりつつあった
最も、おおっぴらにバストアップの記事なぞ見て居る所を人に見られるのは、雪歩にとっては火の出る様な恥ずかしさなので
時間が有ると、空いている打ち合わせ室でコッソリと見る事が多かったのだが


「あれ? どうしたの、溜息なんか付いて?」
背後からの声

凛々しくボーイッシュな子が立っている。それを武器に目下人気急上昇を続ける765プロの一人 ―――― 『菊池 真』だった
当然の如く魅了されるファンには女性が圧倒的に多く、雪歩の目から見てもその事実は最もな話だと思う
しかし、それを売りにする事は、必ずしも彼女にとっての本意では無い事だとも知っているので、それに付いてはあまり触れない様にしていた

さてここで、ちょっと面白い話が一つ

実はこの2人、かなり仲が良い
気弱で引っ込み思案な雪歩と、持ち前の容姿から活動的で明るい真
まるで両極を成す組合わせにも係わらず、まず滅多な事で2人の諍う姿も見る事は無いし
いつぞやは口論の際にその原因から双子に『痴話喧嘩』と言われた程なのだ

おそらくだが、それは、真は雪歩に対して、雪歩は真に対して自分の求める姿をお互いに見ているからなのでは?と思う
お互いに求めている物を持っているからこそ、認め、憧れ、敬意を払い、そしてそれが為に、より繋がりが深まっていく
だから他のメンバーには簡単に言えない事も、お互いに言い合える。相談し合える…

言うなれば『親友』本来の姿が、彼女達のその関係に表れていた
それ程までに、この2人の仲は良かったのだ

「あ、真ちゃん…」
振り返ると、何処と無く力の無い微笑
「あ、あのね…真ちゃんだから、言うんだけど…、その…私、胸ひんそーだから、どうやったらあずささん達みたいに大きくなれるのかなぁ…って…」
「い、いや…ゆ、雪歩は、そんなにひんそーじゃ無いと思うよ」
微妙な引きつり笑いが真の顔に浮かぶ
( ゆ、雪歩がひんそーなら、ボ、ボクの立場は一体… )
真はルックスこそ非常に独特な魅力が有るのだが、強いて上げるとすると、その胸の大きさが唯一の泣き所だろう
「そ、そうかなぁ…?」
「そうだよ! 大体…律子さんやあずささんが大きすぎるんだ! おまけに、美希…ちゅ、中学生の癖に…ゆるさん!」
拳を握ってプルプルさせながら、何故か少し涙目になる
「だ、だめだよ、真ちゃん。 陰で悪口なんか言っちゃ…」
「あ、ああ…ゴ、ゴメン…。………く、くそぉ…、ボクもやかん牛乳飲もうかなぁ…」
と、涙目が乾ききらぬまま、悔しそうにポツリと真
「え? 真ちゃん、何か言った…?」
「あ! い、いや! な、な、なんでも無いんだ!」
「…?」
あたふたと独り言を掻き消すように慌てる

不思議そうな表情の雪歩が、また少し落ち込んだ様な顔をして話し出し始めた
ただ今度は、もう一つ、何故か恥らった様な表情も浮かべて

「…それで、色々な雑誌とか見て、書いてるのを試して見たんだけど……今一つ効果が判らないし…
 というかぁ…それ以前に、全然効果が無いみたいなんで…クスン
 そ、それでね、後一つだけ残ってるのが有って……で、でもそれは自分じゃ出来ないし………ま、真ちゃんにしか、た、頼めないから…」

何時の間にか、雪歩の頬が少しづつ赤く染まっていく


『おっぱいは、人に揉まれると大きくなる』

なんと怪しげで、なんと魅力的な響きだろう
科学的な根拠もあやふやなのに、人を惹き付けて止まない響きを持つ言葉
正に『魔法の呪文』である

「だーっ! 何でそんな事信じてるの!?」
有ろう事か、雪歩の最後の砦はその『胸を他人に揉んで貰う』と言う物だった
「そんなの眉唾モノじゃ無いか!?」
「で、でも…ほら、こことか…」
しかも、その言葉に一ミリの疑いも持っていない。書かれている記事を指差して、一生懸命に真に説明する
「あー、もうっ! だから違うんだってばっ!」
「…え?」
「そんなの、面白半分のネタ話だよ! 全く…」
呆れた様に、真が言い放つ

「…う…うぅ……、ひ、酷い…グス…酷いよ、真ちゃん…」
ギョッとする真
「う、うわっ!? な、な、な、何で泣くの!?」
「だ、だってぇ…クスン……、これも…これもダメだったら、私……私…」
「わーっ! だ、だから泣かないで!」
「う…うぅ…クスン…。 だ、だって、私だって…皆や真ちゃんみたいに、スタイル良くなって……カッコよくなりたいんだもん…」
目尻に涙を浮かべ訴える様な口調で話す。その語気には切実な感情が、ありありと見えた
「あ…」

ふと、真が気付く。雪歩は、真剣なのだ

皆や真の様に、スタイルが見劣りしないならば少しは自分に自信が持てる。その自信が持てれば、又ちょっとでも先に進む事が出来る
そしてその道は最終的に雪歩が追い求める『強さ』へと繋がって行くからだ
だから、仮にそれが結果に繋がらなかったとしても、可能性が少しでも否定出来ない物なら
他人から見ればバカらしい藁にでも縋る様な話であっても、それは雪歩にとっては真剣に取り組むべき大事な対象なのだ

よく考えれば、当たり前の話だろう
幾ら同性で親友だと言っても、自分の胸を触って欲しいなど、おいそれとは言える物では無い
少なくとも、親友以上のもっと踏み込んだ関係ならば或いは…と言った内容だからだ
ましてや雪歩は、気の弱い女の子
親しい真とは言えその言葉を口に出すのに、『どれ程の勇気が彼女に必要だったか』『どれ程真剣に考えているのか』は想像するに難くない

「ゴ、ゴメン…、ボク、雪歩の気持ち…考えてなかった」
真の雰囲気が、自然柔らかな物に変わっていく
「そうだよね、雪歩は軽い気持ちでそんな事言ってるんじゃ無いんだよね…、友達だから…ボクだから頼めるんだよね
 うん、協力するよ…、はは…ちょ、ちょっと恥ずかしいけど。」
照れた笑いが、真の顔に浮かんだ
勿論、これからの行為に対する物も有る。だが一番の理由は、雪歩の真剣さを理解出来なかった事に対しての自分を恥ずる自嘲からの物だった
「ま…真ちゃん」
その真の表情を見て、心底嬉しそうに雪歩が笑った

「よし、なら……そこのソファに横になって」
「はい」
静かに雪歩が横になる。次いで真がその上に跨ると、上半身を手で支えるように片手を付く

「い、行くよ…雪歩?」
「…う、うん」
問い掛けに雪歩が首を縦に振り、目を瞑った

手を伸し、恐る恐る触れる
同時に伝わってくる、着衣越しでもしっかりとした女性を感じさせるボリュームの、柔らかな双丘の感触
一瞬身体を震わせ彼女が反応を見せる。だが、痛さを与えている様では無さそうだ

それを確めると、そっと優しく撫でる様に力を込め始めていく


「ふぅ……ハァッ……、………んっ………ふぁ…」

部屋の中に、雪歩の可愛らしい吐息だけが漏れ響く
刺激を受ける度に顔が僅かでは有るが歪み、指を咥え声を押し殺そうとする。まるで何かに抗う様に
その顔は紅潮し、肌はほんのりと薄桃色に染まってしっとりと汗ばんでいた
おまけに彼女の吐息は、微かに甘さを匂わせている

「…んっ!」
「あ、ご、ゴメン! い、痛かった…?」
ピクンと体が揺れるのを見て、慌てて声を掛ける
「う、ううん…違うの…、じ、自分でも…あんまり触る事…無いから…。だ、大丈夫…続けて………ね?」
何とも言えない雰囲気に包まれ、息の上がった様な口調で真に告げる

雪歩が見せるその表情は、痛覚による表情とは全く違った物だった

無論、今迄に一度も見た事のない、自分でも浮かべた事の無い表情
だが、その表情がどう言う意味合いを持つか朧げながら真は悟った
その顔が、本能に何かを訴えて来ていたからだ。つまり本能的なモノに立脚する表情なのだ…と
もう数年もすれば、大人の女性として見せる事が有るだろう、その顔

そう、それは女性が見せる…いや、少女の中に潜む『性』が見せる顔だった

もし仮に、貴方が男であってこの雪歩の前に居るとしよう
果たして貴方は、理性を保ち続ける事が出来るだろうか?

敢えて先に言わせて貰うなら、それは無理とだけ言っておこう
今の表情の彼女を眼前にして衝動に抗える男が居るならば、その場で男を辞めた方がいい
それ程までに、清楚と淫靡、少女と『性』が同居する、ある種の魔力を秘めた魅惑的な表情だったからだ

「ど…どうした…の?」
「あ、い、いや…」
「なら…つ、続けて…真ちゃん…」
( うわー…、なんだか雪歩、凄く綺麗っていうか何て言うか……………………で、でもさ、コレ、このまま続けたら……なんかマズくない?
  な、何かボクまでヘンな気になっちゃいそうだよ… )
流石に同性と言えども、その顔を見て平静を保ち続けるのは厳しそうである
「…真ちゃん?」
雪歩の問に、ハッと我に返る真
「あ、うと…、い、いや、雪歩、こ、これで止めよう!? ね!? 今日が初めてだろ? だからさ…」
「そ…そんなぁ…、折角、真ちゃんにしてもらえるチャンスだったのに…」
傍から聞いてるだけなら、とんでもない会話にしか聞えない
しかも雪歩の顔には、微妙に物欲しそうな表情が浮かんでいる

「あ……、じゃ、じゃあ…今度は、こっちを…」
「えっ!? えぇえええっ!? 」
「片方だけだと…そ、その…大きさが、おかしくなっちゃうから…」
( も、もう片方もするの!? そりゃヤバイって! 絶対ヤバイよ! ………って、雪歩ぉぉおぉお!? そ、それ、何なんだよぉおお!? )
良く見れば、なんと何時の間にか雪歩の胸元が肌けて、下着がチラホラと顔を覗かせている

「ちょ、な、なんで服肌けてるんだよ!?」
「え? だって、ホンとは…ちょ、直接って書いて有るし…でも恥ずかしいから、今度は、し、下着から…」
雪歩が赤らんだ顔で、触られていた手と反対の手を取り自分の胸に引き寄せていく
「わぁあっ! そ、そんなの無理だxt(ry  あっ!? ゆ、雪歩、ダメっ…!!」

「う、うわっ!?」
「きゃっ!」
その拍子に、真がバランスを崩してドサリと雪歩に身体を重ねる
「あたた…。 バ、バカ! 危ないだろ!? 怪我でもしたらどうするんだ!?」
「ふぇええ…、ご、ごめんなさいですぅ…
 …じゃ、じゃあ…改めて…、お願い………真ちゃん」
と、今度は熱っぽく哀願する様な表情

先程から続く雪歩らしからぬ暴走(?)は、どうやら、初めて受ける性の熱気に翻弄されている為の様である

( あーあ…、収まるまで仕方ない…のかなぁ…? トホホ…こんな事なら、安請け合い…するんじゃ無かったよ…… )
半ば諦めた様な表情で、真が深い溜息を付いた


『何時も終わりは、突然に』

実にドラマチックな表現だ
そして、それは例外無く、2人にとっても当然のお約束事の様に舞い降りる

 ――――――――――――――――――――――――

唐突にバタンと大きな音を立てて、打ち合わせ室の扉が開く。それと共に、意気揚々と資料を抱えて中に入ってくるP
「さあて…んじゃ、あずささんと千早呼んでくるか! Voはトップクラスだから、このユニット絶対いけr(ry」

入ると同時に、その目に飛び込んできた眼前の光景に対し、動きがピタリと止まる
続いて、抱えていた資料がパサリパサリと床に落ちる音

重なりあったまま硬直して動けない2人

「…や、ヤ、ヤア…、い、いや…その……………ス、すミマセンデシタ… ふ、フ2人が…そう……だったトハ………
 お、俺ハ…俺は、何モ見て、い、イ、ないカラ…あ、あん、安心してクダサイ…」
壊れたロボットの様な乾いた声でPが言う。奇妙な動きで後ずさり、パタリと閉まる扉の向こうにその姿を消して行きながら

束の間訪れる、静寂

「…い…いま、ぷ、プロデュー…?」
「…う、うん…プ、プロデューサー……だった……」
顔を見合わせる2人。半ば無意識の様に、お互いを指差し合いそして自分を指差す

「……ひゃっ、ひゃぁぁああぁああぁぁああぁ!? えぇえぇええええええええ!?」
「うっ、うわぁぁあああぁあぁ!? ち、違うんですっ、違うんです! プロデューサー!! 待って下さいよぉー、プロデューサーぁぁあああ!!」


765プロ ―――― そこは、アイドルにとって自由に羽ばたける最後の楽園
貴方も魅力的な彼女達を、是非、プロデュースして見ませんか?


バッド・コミニュケーション(?) & グッド・リレーション(?)



作者:百合4スレ229

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