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「PV撮影で水着ってのは聞いてたからそれは良いのよ、でもね、なんでもうアイドル辞めてPになったわたしまで水着なのよ…」
「仕方ないわよ律子、なんでも監督さんのたっての希望らしいし」

 季節は秋風も身に沁みる頃だけど、屋内のシティリゾートは外の季節と一切関係なく南国模様。
ただまあ、私の心境は盛大に秋風が吹いてるどころか、下手すると木枯らしが吹きそうなほどでとてもリゾートって気分じゃない。

「それに、先方の話だと律子も乗り気で請けてくれたって言ってたけど?」
「あぁ……次から仕事請けるときはもっとちゃんと確認しよう……」
「ふふ、律子って普段はしっかりしてるのに時々ちょっと抜けてるのよね」
「むぅ、今回に関してはぐうの音も出てきません……」
「あ、ほら撮影始まるみたいよ、行きましょ」

 スタッフに声をかけられた千早が休憩用のチェアから腰を上げる。

(以前なら「歌の仕事以外したくありません!」ってけんもほろろだったのが、この手の仕事請けてくれるだけでも良いのかしらねぇ……)

 ――にしても

「ここしばらくデスクワークばっかりで体動かしてないのに、水着姿晒すとか一体何の罰ゲームなのよ……はぁ」

 重くなる一方の私の気分を他所に、仕事自体は順調に片付いていって一度休憩を挟むことに。

「お疲れ様、律子」
「千早もお疲れ様。あれだけ泳がされても息が上がってないあたり流石ね……」
「ふふふっ、これでも毎日トレーニングしてますから、秋月プロデューサー」
「わたしはすっかり運動不足でもうダメだわ。明日は筋肉痛かしら……」
「じゃあ、お疲れの律子に何か甘いものでも買ってくるわ。そこで休んでて」
「あー、ダメよ千早、アイドルに買い物に行かせてPが休んでるとか何言われるか分からないわよ
 千早はそこに座って待ってて、ついでにスタッフさんにも愛想振りまいてくるから。で、何が良い?」
「えっと、ソフトクリーム……とか。ダメ、かしら?」

 何が恥ずかしいのか千早の語尾が小さくなる。その照れた顔が年相応の女の子してて実に可愛い。

「分かった、ちょっと待ってて」

 ソフトクリームをスタッフさん達にも挨拶がてら配りに行ったのだが、作業やらで忙しいスタッフも多いのか
私と千早が食べるにはちょっと多い数が私の手元に残ってしまった。仕方ないのでどうにか片付ける方法を考えつつ千早のところに戻る。

「ごめん、おまたせ。はいこれ、ご要望のソフトクリーム」
「お帰りなさい律子、ありがとう、早速いただくわね」

 言うが早いか、千早は受け取ったソフトクリームをけっこうなスピードで食べ始める。
そこはもうちょっと女の子らしく少しずつ舐めるとかしたらいいだろうに、擬音で言うなら『パクパク』って調子で
1個目のソフトクリームをあっさり食べきってしまった。

 千早の視線がコーンスタンドに残っているソフトクリームに向けられる。

「わたしはそんなに食べられないし、千早、食べたかったらどうぞ?」
「え、あ、その、それじゃあ……」

 頬を染めながら千早が2つ目のソフトクリームに手を伸ばす。

「えっと、これはね、やっぱりあれだけ動くと糖分が必要になるというか、その」
「気にしなくて良いのに。女の子ってのはおよそ甘いものには目がないって相場が決まってるんだから」
「うぅ……でも、やっぱり子供っぽくないかしら……?」
「もー、千早はもっと子供っぽいところを見せるくらいでちょうど良いのよ。ほら、気にしないで食べる食べる!」
「それじゃあ、いただきます」

 そう言って嬉しそうに2個目のソフトクリームを口に運ぶ。
今度はさっきほどの勢いはないけど、一口ずつとても幸せそうに食べている。そんな千早を見てたら私もお腹がすいてきて
買ってきたソフトクリームに手を伸ばす。
 疲れた体に甘いものが嬉しい。
疲れた体の隅々に糖分がいきわたるように、ちょっと行儀が悪いけどデッキチェアに肢体を投げ出して寝そべってアイスを舐める。

「んー、これはこれで悪くなかったわねぇ……」

 まだ仕事中だというのは分かっているけれど、南国を再現した空気にどうしても気が緩んでしまう。
私の気を緩ませた南国の空気は、私の手の中のソフトクリームも溶かしはじめていて。

 溶けたクリームが胸の辺りにたれて、その一瞬の冷たさに緩んでいた気が覚醒した私は――

 自分が傍目にかなりまずい状態に置かれていることにやっと気がついた。

「あの、千早?なんでそんなところにいるのかしら……?」

 どうにか問い掛けた私のほとんど目の前に千早が居た。
デッキチェアに寝そべった私に覆いかぶさるように、私の太ももの上に千早が跨って私の胸の辺りを見下ろしている。

「うふふっ、律子、動かないでね」
「ヘ?ちょっと千早何する、ひゃぅっ!」

 千早の舌が私の胸にたれたクリームを舐めすくう。ざらりとした舌が胸を舐める感触が心地よい感覚を伴って肌を粟立たせる。
胸のクリームを丹念に舐めとった千早の舌が、そのままゆっくり鎖骨を経由して首筋から最後は私のあご先を這って、唇の端に滑ってきて離れた。

「〜〜〜っ!……ぁ、う……ち、ちはやぁ……」
「ふふっ、ご馳走様、律子」
「いきなり何するのよもぅ、あんなところ、もし他の人に見られたら……」
「大丈夫、ここはちょうどどこからも死角になってるのは確認済みだから」
「それにしたって、何もこんなところであんなことっ」
「律子、さっき私のこと子供っぽいところを見せた方が良いって言ったでしょ?だから、いたずらしてみたの」

 私の顔のすぐ前で千早が悪戯っぽく笑う。千早の長くて綺麗な髪が私の視界から千早以外を遮断してしまう。

「千早……」

 千早の髪から香るほのかなシャンプーの香りが私を包みこんで――


 
 その後、休憩後の撮影も至って順調に終了し、着替えも済ませて挨拶回りも終え帰り支度をはじめた私を監督が手招きして呼び止めた。

「やー、律っちゃん今日はほんとお疲れさん。久しぶりに満足の行く仕事ができて気分が良いわー」
「ありがとうございます。今後もぜひよろしくお願いします」
「おう、やっぱりいい仕事するにはいい被写体が居ないとな!で、だ。話は変わるんだが……」

 人目を憚る話をするといわんばかりに監督が声をひそめて顔を近づけ、私に何か薄い物を手渡してくる。
手渡されたそれを確認した私は真っ赤になった後、真っ青になった。そこにはさっきの私と千早が写っていたのだ。

「いやいや、そんな深刻な顔しないで良いって。それを表に出すほど俺は仁義を弁えてないわけじゃないぜ」
「だ、だって、これ!いやその、これはあの、あぅ」
「だから慌てなくていいってのよ。俺としちゃあまりにグッとくる被写体が居たんでついカメラにおさめちまったんだが
 本人達に黙って隠し撮りしちまったのは変わらんからな。そんなのを表に出したら俺の名が廃るってもんだ
 でもな、こいつは俺の撮った物の中でもかなりの自信作だ、埋もれさせちまうのも忍びない、そこでだな――」
「う、はい……」
「これは律っちゃんがもらってくれ、そうすりゃ八方丸く収まるだろ?」

 そう言って監督は親指を立ててニッと笑った。ラテン男もかくやってほどの暑苦しいウインクまで添えて……



 帰りの車に待たせていた千早が、中々戻ってこなかった私を心配して車を降りて迎えてくれる。

「どうしたの律子?何かトラブルでもあったの?」
「んーん、大丈夫なにもないわ、むしろ監督さん喜んでたくらいよ」
「ならいいけど……でもやっぱり、律子なにか隠してない?」
「やっぱり千早には分かっちゃうか……えっとね、これ」

 できるだけさばさばとさっき渡された写真の一枚を千早に手渡す。

「こっ!これって……!あの、律子、これ、どうしよう!?」
「あー……監督さん、私たちが持ってろって。抜群の被写体だったけど隠し撮りは世に出せないから――って
 デジカメのメモリスティックも目の前で私に渡してくれたから、データを含め流出する心配はおそらく無し」
「そう……なの、なら、良かった……の、かしら?」

 さっきの私と同じように、千早が青くなったり赤くなったりしている。それを見ていたらなんだか笑えてきてしまった。

「今回は良かったけど、もう二度とこんな赤くなったり青くなったりしたくはないから、次からはもうちょっと……ね?」
「そう、ね。もうちょっと場所とか人目を考えないと……いけない、わよね」

 動き出した車の中、お互いに呟いて軽く指と視線を絡ませる。

「周りは……平気よね?」
「ええ、多分……」

 その後、車内の二つの影はゆっくり重なっていって――




「っと、これで良し!あとはこれをロダに上げて3ちゃんねるの765プロ百合スレに投下して、と……」
「…………なぁにやってるんですか、小鳥さん!て言うか、一体どこで見てたんですか!?」
「うわひゃあっ!り、律子さんに千早ちゃんっ!?これはね、あのね、って……え?」
「「あ……」」


 
*〆に困ったときの小鳥さん落ちは実に使いやすい、使いやすいだけに濫用はひかえないといかんなと自戒。

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