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・・・3週間後・・・
律子と伊織は誰もが知るトップアイドルへと成長していた。
千早もそれを追うように頑張っていた。

千早は律子に会えず、伊織に絡み取られようとしていた。
マネージャーは伊織と千早の関係は知らずに居た。
伊織は千早との関係を他の誰にも知られずに、律子との関係を確実に保っていた。
それだけ、伊織のカモフラージュは完璧だった。

(話さないといけないと思ってもう3週間・・・。忙しさもあったけどかまけてばかりは居られない・・・。)
律子は歌番組の収録中、真剣な顔付きになって考えていた。
「律子?どうしたの?」
隣に座っていた伊織は不思議そうに小声で聞いた。
「ごめんね。ちょっと考え事してた。」
片目を瞑って、目の前で軽く手を合わせながら律子は謝った。
「最近忙しいから、疲れているのかもね。今日もこの後別れちゃうけどしっかりね。」
「んふふっ、誰に言ってるの?」
悪戯っぽく言う伊織に少し微笑みながら律子は軽く頭を小突いた。
「お二人とも、本番ですけど・・・宜しいですか?」
そんなやり取りを見ていたADが気不味そうに聞く。
「はいはい、上手く撮ってよね。にひひっ♪」
「いつでもどうぞ。」
二人はそれぞれ返事をして、収録の本番が始まった。
(秋月さん、ここ最近考え事ばかり・・・。二人の関係は上手く行っている筈だし、仕事でのミスも無い。
他に何か気になる事があるのかしら・・・。)
スタジオの隅から見ているマネージャーは律子の様子を見て腕組みして考えていた。

「明後日はいよいよ【TOP×TOP】だ。これを越えて二人に続くんだ。」
「はいっ!」
プロデューサーが見守る厳しいレッスンの中、千早は元気良く返事をした。

「じゃあ、今日はこれで終りだ。明日はゆっくり休んで、明後日の朝事務所で待っているからな。」
「はぁ・・・はぁっ・・・あ、ありがとうございました・・・。」
流石の千早もばてていた。ただ、きちんと返事をして頭を下げた。去っていくプロデューサーの後ろ姿を見送っていた。
レッスン場から出て行くのを確認すると、その場にへたり込んだ。
「はあっ・・・はぁっ・・・。」
両腕を突いて、肩で息をしていた。濡れた長い髪の毛や鼻の先から汗が落ちていた。
少しして息が整うと立ち上がって、モップを持って来た。
(明後日は正念場・・・。)
千早は真剣な表情で床を拭いてからレッスン場を後にした。

夜のラジオ番組にゲスト出演していた伊織は、相変わらずの毒舌ぶりを発揮していた。
相手のDJはそれがお気に入りで二人でかなりの悪乗りをする感じで生番組は無事に終った。
「お疲れ様〜。いやあ、伊織ちゃん今夜も最高だったねえ。」
「にひひっ。貴方もナカナカのものよ。乗せ上手だし、アタシとトークの相性良いのよね。」
DJも伊織も笑いながら言い合っていた。
「また、ゲストで来てくれるかい?」
「そうね。楽しい仕事だし、こっちこそ呼んでよね。それじゃ、またねって事で。」
軽くウインクして答えた後、伊織はスタジオを出た。
「マネージャー、彼からのゲスト出演の依頼があったら宜しくね。」
外に出てすぐに近付いてくるマネージャーに声を掛ける。
「はい。今日はお疲れ様でした。明日は11時から秋月さんと二人で雑誌インタビューからスタートですね。」
声を掛けられたネージャーは答えながら明日のスケジュールを説明した。
「ありがと。ねえマネージャー・・・。」
「はい?」
伊織が上目遣いをしながら聞いてきたので、不思議に思いマネージャーは首を傾げながら見返した。
「私はこれで終りだけど、律子はまだ仕事あるのよね?」
「ええ、今夜は・・・24時近くまでありますね。」
伊織に聞かれたマネージャーはいつもの手帳を開けて、律子のスケジュールを確認しながら答える。

「何か最近考え事があるみたいだし、心配だから・・・。」
(なるほど、そういう事ですね・・・。)
「わかりました。私も正直、秋月さんの様子がおかしいのは心配ですから・・・。帰りはお一人で大丈夫ですか?」
伊織が手を合わせて途中まで言いかけると、マネージャーの方が察して切り出した。
「新堂に連絡して来て貰うわ。ゴメンネ、マネージャー残業になっちゃう・・・。」
伊織は答えた後、申し訳無さそうに言う。
「お気遣い無く。私は水瀬さんと秋月さんの専属マネージャーですからね。」
マネージャーは微笑みながら答える。
「それじゃあ、アタシは10時に事務所に行けば良いのよね?」
伊織は念押しして明日のスケジュールを聞いた。
「はい。では、また明日事務所でお会いしましょう。私は早速秋月さんの所に行きますね。それでは、失礼致します。」
マネージャーは頭を下げて伊織に背を向けた。
「うんっ、宜しくね。お先に。」
去っていくマネージャーに後ろから声を掛けた。
マネージャーは伊織の声が聞こえると、一旦止まってから少し振り向き軽く頭を下げて、また歩き出した。
(流石マネージャー。皆まで言わなくても分かってくれるもんね。)
伊織は姿が遠くなっていくマネージャーを感心しながら見送っていた。視界からマネージャーが消えると、携帯電話を取り出した。
「もしもし、アタシだけど。うん、今終ってね。律子が心配だから行って貰ったの。
うん、だから迎えに来てくれる。そう、前の場所まで送って。宜しく。」
伊織は携帯電話で新堂と話しながら、ラジオ局の廊下を歩いて行った。

「又、今日も・・・。自分から来てしまった・・・。」
千早は、マンションの部屋で椅子に座って突っ伏しながら呟いた。
(律子さんに会えない寂しさも無いといったら嘘になるけど、今は伊織さんにして貰うのが待ち遠しい・・・。
私、すっかり水瀬さんに・・・。)
♪〜♪〜
ビクッ
「あっ!?きゃっ!?。」
いきなり携帯が鳴って驚いて慌てた千早は携帯を取ろうとして、お手玉して落としそうになった。
「も、もしもし、き、如月です。」
相手の確認する間もなく慌てて出た。
「「な〜に、焦ってんのよ。」」
聞こえて来たのは、呆れたような伊織の声だった。
「水瀬さん・・・。」
「「アンタ食事はしたの?」」
伊織は気を取り直すように、聞いた。
「いえ、まだです。」
「「じゃあ、後30分位したらそっちに着くからいつも通り、デリバリーの人間行かせるわ。行ったら対応宜しくね。」」
「はい。」
千早の返事が終ると、向こうから携帯が切れた。
(伊織さんが来ると聞いてホッとして、期待している自分が居る・・・。)
千早は複雑な心境で、切れた携帯を眺めていた。

デザートを食べながら千早はチラチラと伊織を上目使いで見ていた。
(もうすぐ食べ終わる・・・。)
千早は伊織のデザートが残りわずかなのを見てソワソワしていた。
(全くしょうがないわね・・・。)
伊織はその様子を感じて少し呆れていたが、口元だけ少し歪んだ。
「千早・・・。」
「はいっ!」
千早は自分の名前を呼ばれると、嬉しそうに元気良く返事をする。
「アンタ、今日アイツのしごき受けて汗だくでしょ。先にシャワー浴びて来なさい。」
「え・・・でも・・・。」
伊織の素っ気無い言葉に、千早は切なそうな顔になってどもる。
「別にシャワーくらい一人で行けるでしょ?それとも、アタシと一緒に入りたいワケ?」
それまで全く千早の方を見なかった伊織が目を細めながら千早の目を見ながら言う。
「あの・・・出来れば・・・その・・・一緒に・・・。」
千早はまともに見返せずに居たが、少し赤くなってモジモジしながらチラチラと伊織を横目で見ておずおずと言う。
「全く、子供じゃないんだから。さっさと行って来なさいっての。」
「そんな・・・。」
ちょっと呆れてから怒った感じで突き放すように伊織が言うと、千早はショックを受けて切なそうに俯く。
(全くしょうがないわね・・・。)
「まあ、どうしてもって言うなら考えてやらない事も無いわよ。」
俯いた千早を見て仕方無さそうに伊織は呟く。
「えっ!?」
ストンと落とされた後に、また助けの言葉が入り驚いて千早は伊織を見た。
「聞こえなかったの?」
「い、いえ。是非一緒にお願いします。」
伊織は意地悪っぽく聞いたが、千早は嬉しそうな表情になって言った。
「じゃあ、食べ終わるまで大人しく待ってなさいよね。」
「分かりました。」
一緒に浴室に行ける事が分かった千早は、ソワソワする事無く大人しく伊織が食べ終わるのを待っていた。

食べ終わって、デリバリーの人間が食器を片付けて居なくなってから、伊織と千早は二人でバスルームの脱衣場に移動した。
「あら、今日は薄いピンクなのね。真ん中に可愛いリボンなんかつけちゃって。」
伊織は目ざとく千早の下着を見て言った。
「似合い・・・ますか?」
千早は恐る恐る聞いた。
「まあ、そこそこじゃないの。」
「ありがとうございます。」
今までの経験から伊織にしては褒め言葉なのを聞いて、千早は嬉しそうにお礼を言った。
「だけど・・・アンタの谷間の無いムネを強調してるわよね。そのリボン・・・。」
悪気は無かったのだが、伊織は何とも言えない顔をしながらボソッと呟いた。
「くっ・・・。」
(褒められて嬉しい反面・・・それも分かるだけに・・・。)
自爆したのを悟った千早は、一瞬悔しそうな顔になったが、誤魔化すように苦笑いしていた。
「伊織さんのは可愛いですね。」
「ん?そう?」
そう言う伊織の方は、斜めに少しだけフリルが付いているピンクのブラとパンティを着けていた。
「普通よ。普通。」
そう言いながらも、満更でもない様子だった。
少しして脱ぎ終わった二人は、浴室へと入って行った。
「今日は、ここじゃしないからね。」
「はい・・・。」
伊織の言葉にちょっと残念そうな顔をしながら千早は答えた。
「アイツにしごかれた後は、アンタでもへばる可能性あるんだから。
それに、明後日大事なオーディション控えてるんだから少しは自覚しなさいっての。」
伊織は千早の態度に呆れた風に言った。
「あ、そうですね。すいませんでした。」
千早は言われて自覚し直して謝った。

「あら?千早その足どうしたの?」
伊織はふと見た千早の足の色の変化に気が付いて聞いた。
「ああ、これですか?今日レッスン中に転んでしまって、ちょっとアザになったみたいですね。」
千早は全く気にしない感じで自分の足を見て答える。
「痛く・・・ないの?」
さっきまで呆れていた伊織だったが心配そうに聞く。
「打った時は痛かったですけど、大丈夫ですよ。」
「全く、アイツ鬼かってのよ!色は衣装や化粧で誤魔化せるけど、
そのせいで明後日のオーディション落ちたらアイツのせいなんだからっ!」
気遣うように言う千早の言葉を聞いたものの、伊織は憤慨してその場で怒鳴った。
「あの、本当に大丈夫ですから・・・。」
「うっさいわね!アンタは黙ってなさいよ!アイツただじゃおかないんだから!可愛い後輩を何だと思ってんのよ!」
なだめる千早だったが、伊織の怒りはヒートアップしていた。
「可愛い後輩・・・。」
(伊織さん・・・何だかんだ言ってかなり心配してくれている・・・。)
思わず怒りに任せて出た、伊織の心配している本音に千早はちょっとジーンと来ていた。
「当ったり前でしょ!って、何嬉しそうな顔してるのよ?」
怒りながらも、状況的に何を喜んでいるのか分からない伊織は不思議そうに聞いた。
「あ・・・いえ・・・別に・・・。」
千早は誤魔化すように手を顔の前でブンブンとしながら答えた。
「そう?まっ、良いわ。本当に痛くないのね?」
心配な伊織の方は、いつもなら突っ込んでいる所だが、しゃがみ込んで軽くアザになっている部分に触れる。
「んっ、痛っ・・・。」
千早はちょっと触れられただけだったが、思いの外痛かった。
(あれ?おかしいな・・・。痛い・・・。)
「あっ、ゴメンネ。って、痛いんじゃないの!
シャワー早めに切り上げて・・・確か打ち身って冷やさないと駄目だったわね・・・。」
謝った後、怒って、更に考え込むように伊織は言った。

「すいません・・・。さっきまで痛く無かったんですけれど・・・。」
「良いから、今は痛いんだし楽な体勢で洗ってなさい。」
謝る千早にそう言うが早いか、伊織は浴室を出て行ってしまった。
「伊織さん?」
千早は出て行ってしまった伊織の言動の真意が分からずに首を捻っていた。
ただ、立っているとズキズキし始めたので、言われた通り座って髪を洗っていた。
少しすると伊織がタオルにアイスノンを巻いて戻って来た。それを、足に巻くとズキズキし始めていた痛みが引いて行く。
「ぁ・・・。気持ち良い・・・。ありがとうございます。伊織さん・・・。」
千早は嬉しそうに伊織に言う。
「別に、お礼なんて良いわよ。アンタにはTOP×TOP如きで落ちてこけて欲しくないだけなんだから。
これだけ、やってあげたんだから明後日落ちたら承知しないっていうか、アイツが悪いんじゃないの・全く・・・。」
素直に嬉しそうにお礼を言われた伊織は照れ臭さを隠すように憎まれ口を叩いて誤魔化した。
「私、頑張りますから。プロデューサーは落ちたらと言う事で。」
「ま、まあ、アンタがそういうならそれで良いわ。」
(新堂にどうしたら良いか相談してたなんて言えるワケないし・・・。)
「?」
変に焦っている感じの伊織を見て、千早はキョトンとしていた。
「別に、アタシは良いから。気をつけて洗いなさい。後、痛かったら言いなさいよ・・・。」
「はい。」
素直じゃない伊織の態度に、千早は嬉しくもあり可笑しかったが、我慢して平静を装って静かに答えた。

シャワーを浴びた伊織と千早は髪を乾かしてから寝室に移動した。
伊織はその長い髪をストレートにしていた。それ以外、二人はバスタオルだけ身体に巻いた状態だった。
千早の足はアザの部分は、髪を乾かしている間に症状が良くなって、タオルに巻いたアイスノンは取っていた。
「電話でちゃんと{水瀬さん}って言えたじゃない。偉いわ。」
伊織はそう言いながら千早の頭を撫でる。
「ありがとうございます、伊織さん。」
少し照れながら嬉しそうに千早は答えた。
「何処で誰が聞いてるか分からないし、念には念を入れておかないとね。」
「はい・・・。」
千早は返事をしながらも、モノ欲しそうな顔をして、伊織を見る。
「な〜に?見てるだけじゃ分からないわよ?」
(分かりやすい顔しちゃって。)
伊織は千早の心理を見透かすような目で見ながら意地悪っぽく言う。
「・・・。伊織さん・・・。して下さい・・・。」
千早は照れ臭そうに赤くなりながら、呟くように言った。
「にひひっ、良く言えたわね。ご褒美にちゃんとシテあ・げ・る。」
「ぁ・・・。」
小悪魔のような笑みを浮かべながら発せられた伊織の言葉に、千早は恍惚とした表情になって伊織を見つめた。
「バスタオル取って・・・。」
「はい・・・。」
千早は伊織の言われるままに、身体を巻いていたバスタオルを取ってベッドの端に置く。
(私、期待して・・・ドキドキしてる・・・。)
自分の胸の高鳴りに一旦手を当てた後、千早は近付いてくる伊織を自然と受け入れるべく、いつの間にか両手を差し出していた。

(このスケジュールだと来月かな・・・。)
撮影現場の隅で律子は難しい顔をしながら、ノートパソコンを開いて千早と自分の会う為の飽き時間を見ていた。
「お疲れ様です。冷たいお水でも如何ですか?少しは気分が楽になると思いますよ。」
「ありがとう。」
横から差し出された、紙コップを受け取りながら誰かと思い律子は声のした方を見た。
「マ、マネージャー!?」
(何でここに!?)
「はい。」
驚く律子にマネージャーは返事をしながら微笑んだ。
「今日の仕事は終ったはずだし、それに、伊織は良いの?」
(自分でもかなり動揺してる・・・。)
律子は内心で焦りながらも、ノートパソコンの画面を上手く隠しながら聞いた。
「その水瀬さんから心配だからお願いと頼まれたのです。
朝の収録中も、今も難しい顔されているので私も心配でしたので参りました。
私で相談に乗れる事だったらおっしゃって下さい。その為のマネージャーですから。」
「ありがとう。でもこれは自分の事だから。」
律子はお礼を言いながらもはっきりと言い切った。
「そうおっしゃるのなら、構いません。今夜は最後までお付合いしますので、お仕事の方では何でもおっしゃって下さい。」
(私はともかく、水瀬さんも引き合いには出した。
これで水瀬さんに話が行かなかったら、プライベートな上に大事な話なのですね。)
マネージャーはそれ以上深く聞かずに、いつも通り微笑みながら言った。
「じゃあ、早速甘えちゃおうかな。」
(あっさり引き下がった・・・。)
律子は意外に思いながらも、今夜の仕事の話をし始めた。

「お疲れ様、今日はありがとう。やっぱりマネージャーが居るのと居ないのだとこんなに違うのね。」
(運転しているのがマネージャーだと、変に気を使わなくても済むし・・・。)
律子は車の後部座席にもたれながら言った。
「そうおっしゃって頂ければ、私も来た甲斐がありました。」
運転しているマネージャーは律子の言葉を聞いて嬉しそうに答えた。
「流石に最近のハードスケジュールで、疲れてるのもあったから本当に助かったわ。」
律子はメガネを外してから目を閉じながら言った。外したメガネのレンズを慣れた手つきで、目を閉じたまま拭いた。
(秋月さん、本当に疲れているのね・・・。本人の口から{疲れてる}なんて聞いたの初めて。)
「来週に入れば、丸一日休みがありますからそこまでは頑張りましょう。」
マネージャーは律子を気遣うように優しく言った。
「そうね。今日こういうの体験しちゃうと、何で伊織がマネージャーをべた褒めするのかとか、
プロデューサよりも一緒に居たがるか分かった気がする。」
(今日も色々あったけど居てくれたお陰で凄く助かっちゃったし・・・。)
レンズを拭き終わったメガネをかけ直して、苦笑いしながら実感を込めて律子は言った。
「うふふ、なにをおっしゃるんだか。私は水瀬さんだけのマネージャーではありませんよ。
秋月さんも、もっと私をこき使って下さい。」
「んふふっ、そうさせて貰うわ。」
二人は笑いながら、言い合った。
少しして、最寄りのマンションに到着した。
「明日は10時に事務所ですけれど、迎えに来ましょうか?水瀬さんはご自身でいらっしゃるとおっしゃっていたので。」
マネージャーは気遣う様に言う。

「ううん、それは大丈夫。わざわざマネージャーに来て貰う必要はないから。
その分、明日の仕事の打ち合わせをして貰った方が良いしね。」
「わかりました。他に何かありますか?私は事務所に戻りますけれど。」
「う〜ん・・・。」
マネージャーに言われて、律子は顎に手を当てて少し考えた。
(どうしようかな・・・。)
ちょっと、気不味い顔をして律子は唸る。
「雑用でも引き受けますよ。何でも遠慮しないでおっしゃって下さい。」
マネージャーは律子の気持ちを見透かすように言う。
「そうだったわね。じゃあ、ちょっと頼まれてくれるかな。」
(参ったな・・・。やっぱりこの人只者じゃないわよね。)
「はい、喜んで。何でしょう?」
マネージャーは少し渋そうに言う律子を気にせずに、嬉しそうに聞き返す。
「ちょっと離れてるけど、赤坂にあるマンションのバスルームに私のスペアのメガネが二つあるから
それを取って来て貰っても良いかな。明日の朝に渡して貰えれば良いから。」
律子はちょっと済まなそうに言う。
「赤坂だったら、そんなに離れていませんし、何より秋月さんのお願いですから断る理由はありませんよ。」
マネージャーは嫌な顔一つせず、逆に嬉しそうに答えた。
「それじゃあ、お願い。また、明日宜しくね。」
「はい、ゆっくり休んで下さいね。お休みなさい。」
挨拶してからノートパソコンの入ったバッグを持って、律子はマンションへと入って行った。
(秋月さん、やっぱり疲れてたのね。メガネのスペア忘れてた位に・・・。)
マネージャーの方は律子が完全にマンションに入るのを確認すると、車を発進させた。

「ぁ・・・いおりひゃん・・・。」
「な〜に?千早?」
呂律が回らなくなっている千早を見ながら、伊織は分かっているのに聞き返す。
「もっろぉ・・・ひれくらひゃい・・・。」
そういう千早の口は半開きになっていて、少しよだれが出ていた。
「明後日、TOP×TOPで受かったら考えてあげても良いかしら。にひひっ。」
「そんら〜・・・。」
千早は切なそうに言って、自分の右手を濡れた蕾に伸ばす。
くちゅぅ
「ふぁあ・・・。」
(自分でしても気持ち良い・・・。)
自分の行為でも、気持ち良くなる事は分かってはいたのだが・・・。
(でも、やっぱり、伊織さんにしてもらう方が・・・。)
ちゅぷっ、くりっ、くちゅっ、ぬちゅっ
「んふぅ・・・いおりひゃん・・・はぁ・・・切ないれすぅ・・・あぁんっ・・・。」
千早は自分の右手を蕾からクリに移動させて、左手を蕾に当てて弄りながら切なそうに呟く。
「自分で盛り上がってて何言ってんだか。ホント最初が嘘みたいよね。今じゃ、自分でしても気持ち良いんでしょ?」
「はひぃ・・・気持ち・・・良いんぅ・・・れすぅ・・・・。」
伊織の言葉に返事をしながら、千早は自分で弄り続けていた。部屋の中にいやらしい音が響いていた。
「じゃあ、私なんて必要ないじゃない。」
伊織は分かってて素っ気無く言う。
「そんらころぉ・・・ないれすぅ・・・。」
千早は伊織の言葉に、動きがぴたっと止まって驚いたように言う。
「だって、一人で気持ち良いんでしょ?アタシの出番なんて無いじゃないの。」
(そんな意地悪言わないで下さい・・・。)
「りぶんでするよりぃ・・・いおりひゃんに・・・されるほうが・・・気持ち・・・いいんれふぅ・・・。」
千早はそう思いながらも、潤んだ瞳で必死に言う。
「にひひっ♪」
(最初の方は、嫌々とか拒絶していたのに今ではすっかり快楽の虜よね。身体はでかいくせに胸は小さい。
いつもは真面目なのに今は・・・。)
伊織は少し笑いながら、そんな乱れた千早を冷静に見ていた。

「電気がついてる・・・。」
マネージャーは車から降りて、マンションから明かりが漏れているのを訝しげに見上げていた。
(秋月さんは絶対にありえない・・・。そうなると・・・水瀬さん?
別れた場所からいってここじゃないと思うけど・・・。でも可能性としてあるとしたら水瀬さんしかありえない・・・。)
考えを巡らせながら、マネージャーはエレベーターに乗っていた。
カチャッ・・・
(電気をつけたまま寝ているかもしれないから、静かにしないと・・・。)
マネージャーは静かに玄関のドアを開けた。
(あれ?これは水瀬さんの履いていたヒール・・・こっちのローファーは・・・確か・・・如月さんの?)
薄暗い照明の中、玄関の靴を見ながらマネージャーは首を捻った。
その後で、すぐに手帳を取り出して千早のスケジュールを見てみる。
(赤坂のレッスン場・・・。なるほど、二人で食事とかしていたのね。
如月さん明日は休みだけど、水瀬さんは仕事だからまだ話したりしている様だったら寝て貰わないと。)
合点が行ったマネージャーは先に律子から頼まれたメガネのスペアを探す為にバスルームに入った。
2個のメガネケースがすぐ目に入ったので、開けてみた。
(うん、二つともデザインは違うけど、一つは今日していたメガネと同じ。スペアに間違いないわね。)
中身を確認してから、二つのメガネケースをスーツのポケットにしまってから、明かりの漏れている寝室へと歩いて行った。

「!?」
少し開いた扉の向こうでは、マネージャーの想像を超えた光景が広がっていた。
(こ、これって・・・。)
思わず声が出そうになったが、何とか口を押さえて我慢した。
くちゅっ、にゅちゅっ、ぐちゅぅ、ぴちゅっ
「あっ・・・いおりひゃん・・・。きもち・・・んはぁっ・・・いぃ・・・れふぅ・・・うあっ・・・。」
扉に背を向けている千早から甘い声、そして、卑猥な音が漏れていた。その千早の体から見え隠れするように伊織の姿が見える。
(二人は・・・そういう関係だったの!?)
驚きでマネージャーはその光景に目が釘付けになっていた。
(はっ!?いけない・・・。見なかった事に・・・。)
すぐに我に帰って、その場から音を立てないように玄関へと向かった。
ただ、動揺していて、ヨロヨロしていた。靴を急いで履いて、そっと玄関から出て行った。
(秋月さんやプロデューサーはこの事実を知っているのかしら・・・。私は黙っているべきなのかしら・・・。)
マネージャーはエレベーターの中で複雑な心境になっていた。

「ほら、イキなさい。」
伊織はそう言って、千早のクリと右乳首を両手で捻り上げた。
キュキューーーッ!
「くひぃ、ひっぐぅぅぅうううーーーーー!!!!」
ビクビクッ
大きく二回痙攣して、千早は派手に行った。
「はぁ・・・はぁ・・・。」
(良かった・・・。)
千早は倒れ込んで荒い息をしながらも、満足した表情だった。
(マネージャー・・・見ちゃったわね・・・。)
伊織は目の前で倒れている千早と、アザになっている足を気遣って見ながら、目を細めていた。

・・・一週間後・・・
(やはり・・・プロデューサーには言うべきかしら・・・。)
マネージャーは乗っている車の中で厳しい顔付きになりながら考えていた。
「また今日も・・・。」
そう呟いてから、車の窓越しにマンションを見上げた。ここに誰も居ない筈の部屋に灯りが点っている。
この一週間、マネージャーは伊織と千早の二人の関係を裏付ける確認をするべく動いていた。
偶然であって欲しいと思っていたが、その思いは途中で脆くも崩れた。
(あれから、水瀬さんと秋月さんが一緒に泊まった夜以外は毎日・・・。)
この一週間のスケジュールを手帳で見ながら、苦笑いしていた。
「この事実を万が一ゴシップ記者にでもスクープされたら・・・。」
(如月さんは売り出し中の新人だけど、芸能界には居られなくなるだろうし、
人気絶頂の水瀬さんとはいえ誤魔化せるかどうか・・・。それに、秋月さんも・・・。)
呟いた後、顎に手を当ててそこまで考えてふと考えるのが止まる。
「・・・秋月さんはこの事実を知らない?」
自分に問い掛ける様にマネージャーは言った。
(知っているのに放置するとは思えないし・・・。私と同じように危険だという事は認識する筈・・・。
だけど、その秋月さんにすら気付かせない水瀬さん・・・。私だって気が付けたのは偶然。
あれが無ければ未だに気が付いていなかった・・・。)
いつもの伊織を思い浮べながら、その狡猾さに軽く溜息をついた。
「プロデューサーだけでなく、秋月さんにもどうするか考えないと・・・。
それぞれの仕事があるとはいえ、この事で変に亀裂が入って欲しくないし・・・。」
二人の仲が良い様子を思い浮べながら、マネージャーは苦笑いしていた。

食事が終わろうとしている時、千早は伊織をチラチラと見ていた。
「千早。」
「はいっ!」
静かに伊織が呼ぶと、嬉しそうに千早が返事をする。
「今日はね、新しい趣向を用意しようと思ってるの・・・。」
伊織はデザートの最後の一口をゆっくりと楽しんだ後、少し間が空いて静かに言う。
「新しい趣向・・・ですか?」
発言を焦れそうになって待っていた千早だったが、伊織の言葉の意味が分からず目をパチクリしながら不思議そうに聞き返す。
「そう・・・。勿論協力してくれるわよね?」
少しニッと笑いながら千早を見て聞いた。
「はい・・・。」
(何をするのか分からないけれど、その後にして貰える・・・。)
半信半疑だったが、その後のご褒美の事を考えて千早は答えた。
「良い返事ね。じゃあ、早速その打ち合わせね。にひひっ」
伊織はそう言って悪戯っぽく笑う。
「ぁ・・・はぃ・・・。」
(伊織さん・・・何をする気なのかしら・・・。)
返事をしたものの千早は少し不安になっていた。

〜♪〜♪
「あら・・・。」
(水瀬さんから!?)
掛かってきた携帯の相手先表示を見てマネージャーは驚いていた。それでも、すぐに冷静に戻って通話ボタンを押した。
「もしもし・・・。」
「「マネージャー、今まだ仕事中?」」
「いえ、少し前に終ってこれから帰ろうと思っていた所です。こんな時間にどうかなさいましたか?」
マネージャーは事務所の近くに居る風を装って答えた後、自然に聞き返した。
「「良かったら、これから打ち合わせしない?」」
「私は構いませんけれど、水瀬さん明日大丈夫ですか?」
(打ち合わせ?)
普通に答えながらもマネージャーは真意が分からずに内心では首を捻っていた。
「「その明日の事なのよ。」」
「分かりました。何処へ行けば良いですか?」
「「新宿のマンションなんだけど、メールで番地送れば何処だか分かるわよね?」」
「はい、それで分かります。メールを見させて頂いて、どの位掛かりそうかメール返信しで、すぐにそちらへ向かいます。」
「「はいはい、宜しくね。にひひっ。」」
いつも通りの返事が返って来て通話が切れた。
「普通の打ち合わせ・・・かな・・・。」
(でも、これは二人を問いただすチャンス・・・。)
切れた携帯画面を見ながら、マネージャーは厳しい表情になって呟いていた。
すぐに住所のメールが来て、目の前のマンションである事が分かった。
「移動はしない・・・か。」
事務所からのおよそかかるであろう時間を逆算して、すぐに返信をする。
そして、バックミラーで自分の顔を見直してから時間を合わせる為に車を発進させた。

ピンポーン!
「「はいはい。今開けるから上がって来て。」」
「はい。」
マンションの入口のインターホン越しに挨拶したマネージャーはスーツの襟を直しながらエレベーターに乗った。
(挙動不審だけは避けないと。自然に・・・自然に・・・。)
自分に言い聞かすように目を閉じながら何回か深呼吸する。少しして最寄り階についてエレバーターを下りた。
ピンポーン
部屋の目の前まで来てインターホンを鳴らす。
「はいは〜い。」
ガチャッ
すぐに玄関のドアが開いて伊織が顔を見せる。
「お待たせ致しました。」
「ううん、こっちこそ悪いわね、こんな時間に。しかも疲れてる所。」
「いえいえ、水瀬さんのお仕事の事ですし。」
嫌な顔一つせずに微笑みながら答えた。
「さあ、上がって。奥で早速打ち合わせしましょ。」
「はい。」
伊織はマネージャーの返事を聞くと先に奥の方へと歩き始める。
「お邪魔致します。」
マネージャーは自分のヒールを脱ぎながら靴を確かめる。
(如月さんの靴が無い・・・。帰らせたのかしら・・・。でも、終電は終ってるし・・・。タクシーかしら・・・。)
少し疑問に思いながらも、伊織の後を追った。
マネージャーの疑心は残っていたが、いざ仕事の話になると伊織もマネージャーも真面目になって話し合っていた。

「ふう、やっぱり話しておいて良かったわ。」
「そう言って頂けると嬉しいです。」
伊織の満足そうな言葉に、マネージャーは微笑んで嬉しそうに答えた。
「ふう、喉渇いちゃったわ。アタシはオレンジジュース飲むけど、マネージャーは何飲む?」
「お茶系か無ければ水で構いませんよ。」
「じゃあ、ちょっと取ってくるわね。」
そう言って、伊織は少し離れた冷蔵庫からオレンジジュースのビンと青い色をした綺麗なボトルを取り出した。
慣れた手つきで食器棚を開けるとグラスを二つ取り出して、それにオレンジジュースとボトルに入っている冷たい麦茶を注いだ。
そして、お盆に載せてから戻ってくる。
「すいません。ある場所が分かれば私がやるのですが・・・。」
マネージャーは申し訳無さそうに言う。
「良いのよ。はい、麦茶。」
そう言って、麦茶の入ったグラスを渡す。
「ありがとうございます。それでは早速頂きます。」
マネージャーは断りを入れてから、一口麦茶を飲んだ。伊織の方も座ってからオレンジジュースを飲む。

「あの・・・。」
「ん?」
メネージャーの言葉に伊織は不思議そうな顔になって見返す。
「少し聞き難いのですが、秋月さんの事で・・・。」
「律子?」
伊織はオレンジジュースのコップから口を離して不思議そうに聞き返す。
「はい。先週、水瀬さんに言われて現場に行った日ありましたよね。」
「うん。」
「あの日、物凄く考え込んでいる感じだったので私で良ければと言ったのですが、自分の事だからとおっしゃられて。
私には駄目でもプロデューサーか一番近い水瀬さんにはその事に付いて相談等しているかと気になっていたもので。」
少し困った表情でマネージャーは言う。その言葉にいつもの歯切れ良さは無かった。
「そうなんだ・・・。アタシは何も聞いてない。
確かに何か難しい顔してる時があったけど、聞いても何でもないって言われてたから・・・。
それに、最近マネージャーも傍に居るし近すぎて言えない事ってのもあるじゃない。
だから逆にマネージャーが何か知ってるのかなって思ってた・・・。」
(マネージャーも知らないんだ・・・。)
伊織の方も、答えた後ちょっとショックで俯いていた。
一時期ほどではないけれども、たまにではあったが、律子は難しい顔をして考え込む顔をしていた。
当然、それは伊織もマネージャーも心配していたがお互いに知らないと言う事実を知って、その場が沈黙した。

「いつもスケジュールを気にしていたので、何か大事な予定を考えているのかもしれません。」
「大事な予定?」
少ししてから発せられたマネージャーの言葉に、伊織は顔を上げて聞き返す。
「その内容は、先程確認し合った通り分かりませんが、
次の一日まるまるフリーになる辺りで大事な事を実行しようとしているのかもしれません。」
「それっていつなの?」
「二週間後ですね。」
「そっか・・・。律子があそこまで考え込む事・・・。」
(何なのかしら・・・。)
伊織の方は、考えてみたが想像が付かなかった。
「でも、逆にそれが過ぎてしまえば大丈夫だと思いますし、最低でも水瀬さんには事後報告が入りますよ。」
「・・・。」
(そう・・・かな・・・。)
伊織はそこで返事出来なかった。

「それと、水瀬さん・・・。」
「な・・・に・・・。」
マネージャーの顔を見た瞬間、物凄く真面目な顔をしていたので伊織は返事が途切れ途切れになった。
「如月さんとの件です・・・。」
(今話すしかない・・・。)
少し気圧されている伊織の様子を見ながら切り出した。
「千早がどうかしたの?」
(マネージャーから言って来るとは思わなかったケド、好都合だわ。)
内心ではそう思いながらも、とぼけて聞き返した。
「今の関係を止めて下さいとは言いません。
ただ、プロデューサーや秋月さんにはお話しなければならないと思っています。
これも万が一ゴシップ記者にでもスクープされたら水瀬さんだけでなく秋月さんも只では済みません。」
マネージャーは真剣に語る。
「まあ、そうね・・・。だけど、アイツにも律子にもマネージャーから言われたら困るの。」
伊織の表情が少し変わって、目を細めながら静かに言う。
「では、どうしろと?」
(最初はとぼけたけど、誤魔化そうとしない・・・。)
マネージャーは訝しげに思いながらも聞き返していた。
「そうね・・・まずは話せない状況になって貰おうかしら・・・。」
ガシッ!
「えっ!?」
伊織がそう言うと、急にマネージャーは後ろから押さえつけられる。思わず振り返るとそこには千早が居た。
「如月さん・・・・。隠れていたのねっ!」
「・・・。」
千早は何も答えずにただ、マネージャーを押さえつけていた。

「私をどうするつもりです。」
「どうせだから、仲間になって貰うの・・・。」
怒り気味のマネージャーに対して、少しにっと笑いながら伊織が答える。
「如月さん離しなさい・・・。」
伊織には聞こえないトーンの下がった低く小さな声でマネージャーはそのままの体勢で呟く。
「・・・。」
千早は答えなかった。ただ、押さえたままがその答えになっていた。
方タガタッ!
「えっ!?」
千早は急に動いたマネージャーとその力の凄さにあっけなく押さえていた手を放す形になってしまう。
マネージャーは素早い動きで千早の後ろに回って、遊んだ状態になっていた右手の方を取って後ろで取って軽く締め上げた。
「うぐっ・・・。」
千早は眉をしかめて、痛がった。
「マネージャー・・・アンタ一体・・・。」
流石に今の動きを見て伊織は驚く。
「女性マネージャーですが、何かあった時には対処しないといけませんからね。
護身術程度ですが武術の心得があります。如月さん、警告聞きませんでしたね・・・。」
伊織に足しての答えは普通だったが、今までに聞いた事の無い冷たく低いトーンの口調で千早の方に言った。
ビクッ!
(こ、恐い・・・。)
言われた千早は寒気がして声も出ずに一瞬震える。
「千早は悪くないの。アタシがやれって言っただけなのよ。マネージャー酷い事はしないでっ!」
「伊織さん・・・。」
(私を庇ってくれている・・・。)
必死に庇って言う伊織の言葉に千早は少しジーンとしていた。
「ふう、分かりました。ほら、向こうに行きなさい。」
そう言うと、マネージャーは千早を開放した。千早の方は逃げるように机の反対側に居る伊織の隣へ走って移動した。
体の大きな千早の方が、伊織の後ろに少し隠れるようにして恐る恐るマネージャーを見ていた。

「さあ、どうします。水瀬さん?」
「話し合うしかないでしょっ。」
マネージャーの言葉に半ば自棄気味に言うと伊織は椅子に座った。それに合わせて、千早もマネージャーも座る。
ゴクゴクゴク・・・
伊織は一気に残っていたオレンジジュースを飲み干す。それを見て、マネージャーも少し多めに麦茶を飲んだ。
「どうしようとしていたのか、正直に話して下さい。」
マネージャーはコップを置いた後、キッパリと言う。
「そうね、その麦茶飲み干してくれたら話すわ。」
さっきまでの自棄な伊織が、また、目を細めながら言う。
(まさかっ!)
メネージャーはハッとして、自分の口に指を突っ込もうとしたが、上げようとした腕が上がらない。
「ぅ・・・く・・・。」
話そうとしても、舌等も上手く動かず声を出すのが精一杯だった。
「にひひっ。一口しか飲んでくれないから効かなかったのよね。
それと、マネージャーがタフだったって事かしらね。ちゃんと、マネージャーの今の問いには答えてあげるわ。
ここじゃなくてベッドの上でね。千早、マネージャー運んで頂戴。」
「はい。」
千早はマネージャーを軽々とお姫様抱っこで抱えると、伊織について寝室へと移動して行った。

「千早、マネージャー寝かせて。」
伊織は寝室に先に入って電気をつけてから言った。
「はい。」
千早は返事をした後、大きなベッドの真ん中にそっとマネージャーを寝かせた。
伊織と千早はベッドを挟んで左右に分かれて椅子に座った。
「マネージャー・・・。そっちは答えられないだろうから聞いて頂戴。」
伊織は改まって言いながら軽く髪の毛をかきあげた。
「・・・。」
(聞きましょう・・・。)
マネージャーは何も言えなかったが、意を決してそのまま天井を見上げた。
「お察しの通り、私と千早はそういう関係なの。それだけじゃないわ。私と律子、千早と律子も・・・ね・・・。」
「・・・。」
千早は自分と律子の事を言われると、気不味そうに黙って俯いた。
「ぅ!?」
(そんな事って・・・!?この二人だけじゃなかったの・・・。)
マネージャーの方は伊織の言葉に驚いて思わず声が出る。
体が動かないので、伊織の方を向けなかったが嘘を言っているようにも聞こえなかった。
「それぞれの関係は最初内緒だったの。勿論さっきマネージャーが言った通り、ばれないようにしてきたわ。
アタシは全部知ってるの。律子やアイツに知られて居ないのはアタシと千早の関係・・・。
千早は私と律子の事は何となくわかっているだろうし、千早と律子の関係は私がマネージャーみたいに見ちゃったから。」
伊織は一旦切って何とも言えない顔になる。
「律子は私が全ての関係を知っている事を知らない。でもマネージャーに知られた。
良くあるドラマとかのパターンなら、アタシか千早がマネージャーを殺す、なんて展開もありよね・・・。」
「えっ!?」
「!?」
真顔で言う伊織の言葉に、千早もマネージャーも驚く。
(まさか・・・。)
千早は伊織の方を恐る恐るだったが、まじまじと見た。

「アタシはそういう血生臭いのはキライ。だから、マネージャーには仲間になって貰うの・・・。」
そこまで言って、伊織は表情が変わってニッと笑う。
「千早、マネージャー脱がせて。」
「はい・・・。」
(良かった・・・。)
一旦ホッとしたものの、さっきの出来事もあって、恐る恐る千早はマネージャーのスーツに手を伸ばす。
「こういう経験があるかどうか分からないけれど・・・。」
伊織はそう言いながら、自分の着ている物をその場で脱ぎ始める。
千早の方は慣れた手つきで、マネージャーのスーツの上着をあっさりと脱がせる。
白いシャツのボタンも丁寧に外していくと、ボリュームのある胸がブラに覆われて顔を見せた。
(マネージャー・・・着やせするんだ・・・予想より大きい・・・。)
千早の視線が胸に行って、ボタンを外す手が止まる。
「んっ?」
伊織は動きの止まった千早に気が付いて、脱ぐ手を止めた。
「パッと見た感じ、律子より大きいけどあずさよりは小さい・・・。
ケド全体的に凄く引き締まってるから大きく見えるのかもね。下着も大人よね・・・。」
マネージャーのブラは薄い水色だった。全体的に綺麗な花の刺繍がしてある。
「はっ!?」
伊織の言葉で我に返った千早は、マネージャーのシャツを脱がせる続きに入った。
(綺麗・・・。)
上着のスーツとシャツが肌蹴た状態になったマネージャーは、千早の目に変に色っぽく見えた。
「ほら、スカートも下ろさないと駄目でしょ。」
「は、はい。」
千早は慌てて、スカートに手を掛ける。手探りでジッパーを探すと、右の腰辺りにあるのが分かった。
ジーー
ジッパーを降ろしてから、スカートもゆっくりと下ろして行く。
肌色のパンスト越しに見えるパンティとその脚線美からくる艶っぽさは相当のものだった。
「くっ・・・。」
(悔しいけれど・・・その反面羨ましい・・・。)
千早は複雑な表情でマネージャーの下半身を見ながらスカートを抜き取った。

「この時点でも、物凄く良いプロポーションだって分かるわよね・・・。
悔しいけど・・・でも羨ましくもあるわね。律子よりも肉付きが良くて、あずさ程脂肪が付いてない・・・。
引き締まってて、豹みたい・・・。」
複雑な顔をしながら言っていた伊織だったが、途中からは生唾を飲んでいた。
「千早。アンタも脱ぎなさい。その間に、アタシはマネージャー完全に脱がすから。」
「はい。」
千早は、マネージャーのスカートをたたんで置いた後、自分の服を脱ぎ始めた。
「さあ、マネージャー・・・まずはブラからよ・・・。」
「・・・。」
(伊織さん・・・本気なのね・・・。)
伊織の言葉に、マネージャーは視界に入った伊織の顔を目だけで見返す。
既に裸になっている伊織は、ベッドの上に乗って横から布団とマネージャーの背中の間に右手を入れる。
慣れた手つきですぐにホックを外す。
(慣れてる・・・。)
マネージャーは驚いたけれど、さっきの話が満更嘘でない事が照明されたと思っていた。
ぷるんっ
ブラをそっと外すと、弾けんばかりにマネージャーの両胸が揺れる。
「綺麗で大きくて形の良い胸・・・乳輪も小さくて乳首も可愛い・・・。アイツに既に見られていたりして。」
恍惚とした表情で言いながら、最後は悪戯っぽく呟く。
むにゅぅ、くりっ
「!?ぅふぅ・・・。」
伊織に軽く掌で揉まれて、中指と親指で乳首を摘まれると、思わず声が漏れてしまう。
「にひひっ。薬の副作用もあるのかしらね・・・。随分と敏感になっているのかしら。
それとも・・・元々感じ易いのかしら・・・。」
マネージャーの反応を見て、伊織は悪戯っぽく笑いながら呟く。そして、胸から手を離して、下半身の方へ身体を向ける。
「パンストくらい良いわよね・・・。」
ビリビリビリ
伊織は股から大きく無造作にパンストを破る。
「変に脱がせるより卑猥かも知れないわね・・・。千早、パンティずらしながら、ね。」
「はい・・・。!?」
脱いでいる途中だったが、返事をしてマネージャーの股の部分を見ると、
パンストが破られてパンティがパンスト越しに中途半端に見え隠れしている状態だった。

ゴクッ・・・
その卑猥さに、千早は思わず生唾を飲んだ。
「千早は既にやる気満々みたいね・・・。大人の魅力にあてられたのかしら。
そういう、アタシもそうかもしれないわね・・・。」
そう言うと、伊織は再び移動してマネージャーの右横から顔を近づけて行く。
チュッ
伊織が優しくマネージャーの首筋にキスをする。
「マネージャー・・・気持ち良くしてあげる・・・。」
微笑みながら伊織はマネージャーに言う。
(水瀬さん・・・。お好きに・・・どうぞ・・・。)
マネージャーは少し微笑んでから目を閉じた。
「えっ!?」
(笑った!?)
伊織は意外そうな顔をして、マネージャーの顔を見直したが普通の顔に戻っていた。
「伊織さん・・・。脱ぎ終わりました。」
「千早・・・。良いわね?」
「はい。」
返事をした一糸まとわぬ姿になっている千早は、パンストの敗れたマネージャーの下着姿の下半身にゆっくりと近付いて行った。

れろ〜
「んぅ・・・。」
伊織がマネージャーの右耳を舐めると、ピクッと動く。
ツーー・・・ツーー
「ふ・・・ぁ・・・。」
(やだ・・・。)
千早が正面からしゃがみ込んで股を開かせる。
左太股の内側を膝の方から股の方へ舐めて行くと、マネージャーから甘い声が上がる。
自分の声に恥ずかしくなって、少し頬が赤くなる。
「ふ〜ん。腿弱いのかしら?」
伊織は少しニッと笑ってマネージャーに囁く様に言う。
ツーー
「くふ・・・ぅ・・・。」
(水瀬さん・・・上手・・・。)
言い終わった後に、伊織が首筋からゆっくり下へ舌を這わせて行く。背筋がゾクゾクしてマネージャーから更に声が漏れる。
「綺麗・・・。」
千早はマネージャーの下半身を見て、一旦這わせていた舌を離して呟く。
無意識の内に千早の指が両腿を撫でる。吸い付くような白い肌とは対照的にしなやかで適度な反発が指に返って来る。
(律子さんみたい・・・。いえ、律子さんとはまた違っていて凄い・・・。)
その感覚に律子を思い出すが、目の前のマネージャーの体に思わず千早は息を飲んでいた。
「千早・・・見惚れてる場合じゃないわよ。分からないでもないけどね。」
「はっ!?す、すいません。」
伊織に言われて千早は我に返って謝る。
「ホント・・・マネージャー罪作りな体つきしてるわ・・・。何人の相手を虜にしてきたんだか・・・。」
(律子とは違うんだけど・・・。)
千早に言ったものの、伊織もマネージャーの見事な体つきに律子の姿を重ねて、少なからず惹かれていた。

チュッ!
「んくっ!?」
(感じてる・・・。)
千早は優しくマネージャーの蕾にキスをする。マネージャーから漏れた声に少し興奮して恍惚とした表情になる。
はむっ
ぴくんっ
くちゅっ・・・ちゅぷっ・・・
「んぁ・・・ぁあ・・・。」
(如・月・・さ・・・ん・・・。)
千早はしっかりと両腿を抱え込んでマネージャーの蕾を丁寧に舐め始める。
はむっ、むにぃっ、むにゅっ
「っ!?」
その動きに合わせる様に伊織が後ろに回って、うなじ部分を咥えながら両方の胸を揉み上げる。
マネージャーは両方から来る感覚に目を見開く。
くちゅぅ、くちゅっ・・・むにゅ、もにゅっ・・・
「あぁ・・・んはぁ・・・ぁ・・・。」
千早はただひたすら丁寧にしつこくマネージャーの蕾を舐め続ける。
伊織の方は優しく、時に強く胸を揉む。
胸の形は余り変形し過ぎず柔らかいが、程よい弾力があった。マネージャーは二人の攻めに甘い声を我慢せずに上げ始めた。
「んっ・・・ちゅぷっ・・・マネージャー・・・アイツにも・・・れろぉ・・・こんな風に・・・ちゅっ・・・されたの?」
伊織はそう言いながらうなじと首筋を攻める。
くりっ、くりりっ、キュッ!
更に揉んでいた胸から余る程のボリュームの胸を掴んで、
右側の乳首を親指と人差し指で転がして、左側の乳首を親指と中指で軽く捻る。
「ぁ・・・そん・・・ふぁ・・・あんっ。」
答えようとしたマネージャーだったが、乳首を弄られて、艶っぽく喘ぐ。

れろぉ、くちゅっ、れろっ、くちゅぅ・・・トロッ・・・
「はっ・・・ぁふぅ・・・んっ・・・ぁあぁ。」
(マネージャー・・・感じてる・・・。)
丁寧に舐めている千早は、自分の唾液だけでなくマネージャーの蜜があふれていた事に気がつく。
それと同時にマネージャーの声も少し大きくなる。
「大人の女よね・・・アタシまで・・・声だけで興奮してきちゃう・・・。」
伊織はマネージャーの甘い声に当てられて、興奮したように言うと更に胸を激しく攻める。
キュキュッ!・・・クリリッ、もにゅ。むにぃっ
「みなぁっ・・・ひぅっ・・・ひゃぅ・・・。」
「千早・・・。一旦止めよ・・・。」
様子が見えない伊織からの言葉に黙って千早はその場で頷く。
ちゅくっ・・・れろぉっ・・・かりっ!
キュキュッ!
「ひぃっくぅっ!」
ぴくくっ
蕾を舐めていた千早は、不意にマネージャーのクリを噛んだ。
それに合わせるかのように伊織は両方の乳首を捻る。
マネージャーは一気に背筋から脳天に突き抜ける感覚に体を硬直させてイッた。
「はぁ・・・はぁ・・・。」
少し息を荒げてトロンとした目でマネージャーは天井を見上げていた。
「マネージャー・・・まだまだ・・・これからよ・・・。にひひっ。」
そんなマネージャーの耳元で、伊織は悪戯っぽく微笑みながら囁く様に言った。
千早は蜜と自分の唾液で艶かしく光っている蕾を恍惚とした表情で見つめていた。

「さあ、千早交代よ。」
「はい。」
伊織はそう言うと椅子の後ろからマネージャーの前に移動する。
千早の方は返事をして立ち上がりながら、伊織と入れ替わって椅子の後ろに回り込む。
「もう準備万端ってトコね。にひひっ。」
蜜で光っているマネージャーの蕾を見ると伊織は悪戯っぽく笑いながら、そこへ右手を伸ばして行った。
(綺麗なうなじ・・・。)
千早は後ろに回り込んでから首筋を見て少しうっとりしていた。
れろっ
「んくぅ・・・。」
おもむろに首筋を舐め始める。それに反応してマネージャーが声を上げる。
にゅぷぅっ
「ひゃうぅっ!?」
それと同時に伊織が右手の中指と薬指を濡れて熱くなった蕾の中へ沈めていく。
(あら、あっさり入ったわ。濡れ濡れで凄く熱い。しかも、指に絡み付いてくる・・・。)
にゅぷぷぷ・・・
伊織は自分の指から伝わってくる感覚を楽しみながら、どんどん奥へと指を沈めて行った。
「あぁぁ・・・。」
マネージャーは入ってくる感覚に仰け反りながら甘い声を上げる。
れろれろぉ
千早は仰け反るマネージャーの首筋から背中の中心をなぞるように背もたれギリギリまで舐めていく。
それにも反応して更にマネージャーはビクビクと体を振るわせる。
(後ろからでも胸があるのが分かる・・・。)
舐めるのを辞めてふと見るとボリュームのあるマネージャーの胸が背中から見え隠れして小刻みに揺れているのが分かった。
おもむろに手を伸ばして、その胸を手の中に収めようとする。
むにぃっ
「ひんっ!」
「・・・。」
(手で余る・・・。)
マネージャーの声がしたが、千早はそのボリュームに嫉妬を覚えていた。
むぎゅっ、ぎゅむっ
その怒りを表すように千早は強くマネージャーの胸を握るように揉みしだく。

キュキュッ
「あら、マネージャー胸も弱いんだ。咥え込んでいる指をこんなに締め付けちゃって。いやらしい。」
伊織はそう言って笑いながら、沈み込ませた指を少しずつ動かし始めた。
にゅるぅう
「ふぁあぁ。」
動かす指に反応してマネージャーは甘い声を上げる。
にゅぷっ、にゅちゅっ、もにゅっ、むにゅっ
「あっ・・ひゃっ・・・あんっ・・・。」
伊織の指と、その内に丁寧に揉む千早にマネージャーは小刻みに体を震わせながら甘い声を上げていた。
「あの・・・伊織さん・・・。私にも・・・その・・・。」
いつの間にか千早は胸を揉むのをやめて、
マネージャーの肩越しに伊織とそのいやらしく攻めている指を見てもの欲しそうな顔をしながら言った。
「ん?仕方ないわね。じゃあ、こっち来てマネージャーと重なって好きなようにして。」
「はいっ。」
伊織の言葉に嬉しそうに返事をすると、千早は正面に回ってくる。
その内腿の部分は既に自分の蜜が垂れて、膝くらいまでに達していた。
(ふ〜ん。攻める方でも感じるんだ。)
伊織はそう思いながら、千早を見ていた。
千早はマネージャーの腿の部分に乗っかってそのまま目の前にある豊満な胸に吸い付いた。
はむっ
「あんっ。」
マネージャーは甘い声を上げて軽く仰け反る。
ちゅぅっ、れろぉ、ちゅぅ〜。
千早は赤ん坊のように夢中でマネージャーの胸を吸ったり舐めたりしていた。

「行くわよ二人とも・・・。」
伊織はそういうと、目の前にあるマネージャーと千早の濡れた蕾にそれぞれ、中指と薬指を沈めていく。
「ひゃぁあっ!」
「んくぅっ。」
二人は大きく仰け反って声を上げる。
にゅにゅっ、にゅくっ、にゅぷぅっ
「あっ・・・ああっ・・・伊織さぁんっ・・・。」
「んくっ・・・ひゃっ・・・あぁ・・・。」
伊織の指のテクニックに二人は喘ぎ続ける。
(にひひっ、とどめよっ。)
にゅぷっ、くにくにっ、にゅにゅっ、くりりっ!
ニッと笑うと伊織は親指で二人のクリを一気にこねくり回す。
「ひゃぅぅうううーーーー!!!!」
「んんぅぅーーーーーー!!!」
ビクビクビクッ
二人は大きく声を上げ腰の辺りを痙攣させて派手にイった。
千早は力なく崩れるようにマネージャーにもたれ掛かって荒い息をしていた。
マネージャーの方は天井を見上げて余韻に浸るようにうつろな目をしていた。

最初の事が始まってから既に3時間が過ぎようとしていた。
椅子の回りは3人の蜜や唾液なんかで濡れていた。3人自体の体も誰のものかわからなかったがいやらしく濡れて光っていた。
「マネージャー・・・。アタシと千早のコトは律子には内緒、もちろんアイツにもね。
言ったらこの事バラスからね。そうしたらアンタはクビよ。」
伊織は真面目な顔になって言う。言われたマネージャーの方は息を整えながらそれを聞いていた。
「・・・。」
(マネージャーさん・・・律子さんみたいだった・・・。)
それを伊織の横で聞いている千早は、さっきまでの絡みを思い出して自分の両手を見ながら思っていた。
「それが水瀬さんと秋月さんの為になるのなら黙っていましょう。
しかし、そうでないのなら首になろうがスキャンダルになろうが私は構いません。」
さっきまでが嘘のように瞳に光が戻ってキッパリと言うマネージャー。
「アンタ・・・。本気で言ってるの!?」
急な変わりようもあったが、その台詞自体に驚いて伊織は聞き返す。
「はい。お忘れですか?大御所との件の時の事を。首が恐いならあんな事していませんよ。」
しっかり返事をしてから、にっこり微笑んでマネージャーは言う。
「・・・。」
伊織は思い出した後、無言になっていた。
「あの・・・。私は黙っていて欲しいです・・・。」
千早は黙っている伊織の代わりに懇願するように言う。
「悪いですが、貴方の意見を聞くつもりは全くありません。貴方が言うべきであり頼るべきはプロデューサーです。」
マネージャーは千早の方を向いてピシャッと切り捨てるように言う。
「くっ・・・。」
(私では伊織さんの力になれない・・・。)
千早は言い返せずに、悔しそうな顔をする。
「私はこの場で如月さんを殺す事が最善と水瀬さんがおっしゃるなら、それもいといません。」
伊織も今まで見たこともない冷たい目で千早を見ながら言う。
「ええっ!?」
「ひっ!」
流石にその言葉に伊織は驚いて目を丸くする。千早の方は短い悲鳴を上げて思わず後ずさる。

「アンタ・・・。」
伊織は複雑な顔をして呟く。
「私は水瀬さんと秋月さんの為なら鬼にでも悪魔にでもなりますし、なれますよ。」
はっきりと言い放って、千早を見ていた顔はどこへやら微笑みながら伊織を見る。
(今更なのかもしれないケド、スゴイ奴をマネージャーにしちゃったわね・・・。)
内心で冷や汗を掻きながら伊織はマネージャーを見ていた。
(こ・・・この人・・・恐い・・・。)
千早はマネージャーに戦慄を覚えて、その場で自分を抱えながら小刻みに震えていた。
「ふぅ、分かったわ。だけど千早をどうこうってのは無しね。それはアタシが許さないんだから。」
そう言うと、伊織は震えている千早を軽く抱き寄せて優しく頭を撫でた。
「伊織さん・・・。」
怯えていた千早は少し安心して、軽く伊織に抱きついた。
「水瀬さんがそうおっしゃるなら構いません。
ただ、私としてはいずれ秋月さんには知られる所となるでしょうから、秋月さんには出来るだけ早く話すべきだと思います。」
「そう・・・ね。律子には私から必ず話すわ。だから、黙ってて。後はアイツよね・・・。」
伊織は顎に手を当てて少し難しい表情になって言う。
「秋月さんの件は承知しました。プロデューサーには、3人で話し合った後でどうするかお決めになるのが良いと思います。」
「そうね、そうするわ。ホント、こんな時でも流石よね。」
ちょっと苦笑いしながら伊織は言う。
「後はそちらのお二人で居る所を何度も目撃されるのは良くないと思います。」
「どうしたら良いかしら?」
すっかりいつもの仕事をする時のようなやり取りになり始めていた。
「私が間に入りましょう。水瀬さんは私と一緒ならば誰にも怪しまれる事はありません。
如月さんは時間をずらして出て行って貰えば問題はないかと。
如月さんは秋月さんにはこの関係を話せない様ですから、秋月さんを呼んで一緒に出てくるのも一つの手かもしれません。」
「律子と千早が一緒にってのはアタシが嫌よっ!」
最初の方は頷いていた伊織だったが、最後の所を聞いて不機嫌そうに言う。
「別に長時間一緒に居る必要はありません。それなら水瀬さんも構わないでしょう?」
「アンタ・・・ホントにどこまで知ってるのよ・・・。」
微笑んで言うマネージャーに伊織はジト目になって呟く。

「失礼ですが、私は皆さんよりも年上ですし、それなりの経験もしてきていますからね。
こういうのは流石に初めてでしたけれど、3人のそれぞれの関係は大体分かっていましたし。」
「知ってて尚・・・。」
「それがマネージャーだと思っています。
ただ、今回に関して言えば水瀬さんの行動は合っていたかも知れません。
こうならなければ私は間違いなくプロデューサーに話していたでしょうからね。」
「ふう、危なかったワケね。」
伊織は苦笑いしていた。
「安心するのは早いかと。まだ分かりませんよ。これから次第だと思います。」
マネージャーがたしなめる様に言う。
「そう・・・よね。」
(律子とアイツ・・・まずは律子・・・か・・・。)
難しい顔になって伊織は目を閉じていた。
「とりあえず今日は、私と水瀬さんが先に出て、如月さんには後々出て頂きましょう。」
「良い千早?」
「はい。」
マネージャーと伊織の言葉に千早は小さな声で返事をした。
「ねえ、マネージャー。続きしてみる?」
伊織は冗談っぽいが妖しく笑いながら言う。
「どちらでも構いませんよ。今は水瀬さんが望むのなら・・・。」
マネージャーの方は冗談何だか本気なんだか分からない感じだったが、普通に微笑んで答えた。
「冗談よ。流石にアタシは疲れたわ。ホント、マネージャーはタフよね。」
「さあ、色々と忠実なだけかもしれませんよ?」
少し呆れた感じで言う伊織にちょっとだけ妖しく微笑んでマネージャーは答えた。
(この人は・・・プロデューサー以上に・・・分からない・・・。)
千早は困惑した感じで伊織越しにマネージャーを見ていた。

・・・5日後・・・
23:45
「お疲れ様でした。」
律子は歌番組の収録が終わってマネージャーに挨拶をした。
「お疲れ様でした。ようやくオフですね。ゆっくり休んで下さいね。」
マネージャーの方も挨拶を返してから、にこやかに微笑んだ。
「今夜はこっちに来てくれてありがとうね。だけど伊織の方は大丈夫かしら?」
お礼を言った後、少し心配そうに律子はメガネに手を当てながら呟いた。
「うふふ、さっき電話があってちょっと愚痴っていましたね。」
「あ〜あ。」
少し笑いながら答えるマネージャーの言葉に苦笑いしていた。
「秋月さんは楽屋で帰りの準備をしておいて下さい。私は簡単に打ち合わせをしてから迎えに参りますので。」
「うん、それじゃよろしくね。」
律子はそう言って軽く手を振ってから楽屋へと移動して行った。

帰りの準備がすぐに終わったので律子はマネージャーの事を待っていた。
♪〜
「ん?メール?」
律子は携帯を取り出して見てみた。
(伊織からね・・・何々・・・。)
「「仕事終わったかな?
お疲れ様、律子。明日オフだよね?良かったら明日の夜一緒に食事でもしない?」」
「う〜ん・・・。」
律子はちょっと悩んだ後、返信を打ち始めた。
「「ゴメンネ
明日はちょっと色々あって一日無理なのよ。明後日なら空いてるから明後日で良いかな?」」
打ち終わってすぐに送信ボタンを押した。

「あ、返って来た来た。」
伊織は嬉しそうに言いながら携帯を見る。
「え〜・・・。」
内容を読んで、がっかりしながら天井を見上げる。
(明日が話すチャンスだと思ったんだけど、延長ね・・・。)
何とも言えない顔をしながら、伊織は再びメールをを打ち始める。
「「OK!
明日は残念だけど、明後日は絶対に約束だからね。明日はゆっくり休んでね。
アタシは言うまでも無くマネージャーも疲れているんじゃないかって凄く心配してたから。
プロデューサーのせいでまだ仕事中の伊織からでした〜。」」
「お〜い・・。おいっ!伊織っ!」
打ち終わって送信ボタンを押した瞬間に後ろからプロデューサーの声が掛かった。
「な〜に?」
伊織は何事も無いかのように振り向く。
「あのなあ、仕事中にいきなり抜け出すなよ・・・。」
「1時間も時間がずれているのは誰のせいかしら〜?1時間あればもうとっくに終わっているわよね〜?」
呆れるように言うプロデューサーを伊織はジト目で見返しながら言う。
「ぐっ・・・。」
「あ〜あ、マネージャーだったらこんな事無いのになあ。」
詰まって言い返せないプロデューサーに追い討ちをかけるように付け足して言う。
「悪かったよ。飯でもおごるから機嫌直してくれよ。」
「最低でも五千円コースね。勿論経費じゃなくてアンタの自腹ね。」
「うぐっ、分かったよ。だから戻ってくれ。じゃないと仕事が終わるどころか進まない。」
「分かったワ。じゃあ、戻ってあげようかしら。」
そう言ってから伊織は立ち上がって、プロデューサーと一緒に撮影現場へと戻って行った。

「また、プロデューサー何かやっちゃったわね・・・。」
律子は返って来たメールを見て苦笑いしながら呟いていた。
「さて・・・と・・・。」
言い直すと、顔がきりっと引き締まる。そして、名前を選んで電話を掛けた。

♪〜♪〜
「んっ・・・。」
寝ていた千早は鳴った携帯で目を覚まして、電気をつけながら出た。
「もしもし、如月です。」
「「もしもし、秋月だけど・・・。」」
「!?」
千早は相手を確認していなかったのもあったが、相手が律子なのに驚いて眠気が吹き飛んだ。
「「ごめんね、寝てた?」」
「あ、はい。でも大丈夫ですよ。お仕事終わったんですか?」
「「うん、終わって今楽屋から掛けているの。
それでね、急で悪いんだけど、明日の午後スケジュール空いてるわよね。会えないかしら?」」
「えっ!?あっ、はいっ!」
(律子さんから会ってくれるなんて。)
千早は嬉しくて思わず返事をする声が弾んでいた。
「「そうしたら、また明日午後にこっちから電話入れるわね。」」
「わざわざすいません。」
千早は別途の中だったが、携帯を持ったまま恐縮して頭を下げていた。
「「良いのよ。こっちこそ休んでいる時にごめんなさいね。それじゃ、また明日。」」
「いえいえ、また明日に。お疲れ様でした。」
向こうが切れるのをまってから、自分の方を切った。
(律子さんと会うのは久しぶり。あの口調だと二人っきり。)
ちょっとにやけながら千早は布団に潜り込んで、再び眠りについた。

「これで、良し・・・と。」
律子は電話を切ってから、鏡に映る自分の姿を何となく見詰めた。
(私って・・・。)
何となく目の前にいる自分が別の人間に見えていた。

(秋月さんが明日、如月さんと会う・・・か・・・。)
マネージャーは控え室のドアに寄り掛かりながら天井を見詰めていた。

・・・次の日・・・

千早は午前中、レッスンに励んでいた。
「今日は随分と機嫌が良いんだな。何か良い事でもあったのか?」
いつも表情を変えない千早が楽しそうにしているのを見てプロデューサーは聞いた。
「えっ?あ、はい。」
突然声を掛けられて、いつもなら邪魔をしないように怒鳴る所だったが、千早は微笑みながら返事をした。
(こりゃよっぽど良い事があったんだな。まあ、機嫌が良いのは何よりだ。こっちもレッスンがやり易い。)
プロデューサーの方も上機嫌になっていた。
「よし、昼までみっちりしごいてやるからな。」
「はいっ!お願いします。」
プロデューサーに言われると、千早は再び真面目な表情に戻って返事をした。
「あ〜あ、何でアタシがあんな連中と暇つぶししなきゃならないワケ?」
伊織は移動中の車の後部座席にもたれ掛かりながら不機嫌そうに言った。
「水瀬さんも昔やっていたと思いますが、挨拶回りですよ。
その行き先になっているという事は水瀬さんも確実に芸能界の地位が上がってきたという事ですよ。」
「ふ〜ん・・・。まあ、そういう事なら無駄じゃないワケね。」
最初は不機嫌だった伊織は、マネージャーの言葉を聞いてから、満更でも無さそうにうさちゃんを抱き締めながら呟いた。
「無駄な事だったら、よほどの事でもない限りは私がキャンセルしていますよ。」
マネージャーは、機嫌の直った伊織をバックミラー越しに少し見ながら言った。
「まあ、そうよね。アイツと違ってマネージャーは頼りになるものね。昨日と違って今日は楽で良いワ。」
伊織は居ないプロデューサーの事を愚痴りながら、昨日の失態を思い出して何ともいえない顔をしていた。

「あの、水瀬さん。お聞かせしたい事があるのですが・・・。」
「ん?何?改まって・・・。」
声のトーンが低くなったマネージャーの言葉に、伊織も真面目な顔つきになって身を乗り出して座席の間から顔を出した。
「実は今日の午後、秋月さんが如月さんに会うようなのです。偶然楽屋で電話しているのを聞いてしまったもので。」
「ええっ!?」
(アタシとの食事を蹴って千早と・・・何で・・・。)
伊織はマネージャーの話を聞いて、驚いた跡に怒りが込み上げて来ていた。
「水瀬さん?どうしたんですか?」
伊織の様子がいきなり変わったのに気が付いたマネージャーは思わず聞いた。
「昨日アタシ、律子に今夜食事どうってメールしたの。そしたら断られたのよ。それで千早と約束してるだなんて・・・。」
うさちゃんをギュッと抱き締めて怒りをあらわにしながら伊織は言った。
「水瀬さんのお怒りは分かるのですが、嘘を吐いてでも如月さんと二人で話しをしようという事ですから、
きっと大事な事なんだと思います。その場面に水瀬さんを入れたくない程の事かと・・・。」
「・・・。」
(アタシを入れたくない話・・・。)
伊織は考えをめぐらせるように、その場で目を閉じた。
「水瀬さん。その体勢だと危険ですから、座席に戻って下さい。」
「はいはい、分かったわ。」
伊織はそのまま、後部座席にもたれ掛かった。
「今日の午後・・・か。」
その後、車内の天井を仰ぎ見ながら伊織はポツリと呟いた。
「この後は、お気に入りのラジオ番組に生出演ですから気分転換にはなると思いますよ。」
そう言ったマネージャーの声は伊織に届いていないようだった。

律子はお昼ご飯を済ませた後、アイスコーヒーの入ったグラスを無造作にかき回していた。
「・・・。」
(私さっきから何してるんだろう・・・。)
テーブルに突っ伏したままの格好ですっかり氷が溶け切っているのに気が付いて手を止めた。
「「本日のゲストは水瀬伊織ちゃんだ!」」
つけっ放しだったラジオから突然聞こえてきた名前に、思わずラジオのある方向を向いた。
「「は〜い。お・ま・た・せ。皆のスーパーアイドル水瀬伊織よ。ファンのみんな、ちゃんと聞いててくれてる〜?」」
いつも通りの元気な声が聞こえてくる。
「伊織・・・。ごめんね、嘘吐いて・・・。」
目の前に居ない伊織の代わりにラジオに向かって軽く呟いた。
「不味い!時間だわ。」
律子は慌てて支度をしてマンションを飛び出した。その動揺ぶりは、食器を片付けていない事が示していた。

(久しぶりに律子さんに会える・・・。それも二人きりで・・・。)
千早は一時間も早く待ち合わせの喫茶店で待っていた。待ち合わせ時間が近づく度に自分の腕時計を見てそわそわしていた。
カランカラン
もう何度も鳴っている入口の音に慣れていた千早は特にそちらを見る事は無かった。
「お待たせ千早。」
「えっ!?あっ!はい。」
千早は律子の顔を見ると少し赤くなって俯きながら答えた。
「とりあえず、ここじゃ何だから近くのマンションまで行きましょう。」
「はい。」
律子に手を取られて、それに自然と引かれていくように立ち上がって千早は着いて行った。
表でタクシーを拾って近くのマンションまでの間、二人は今までの活動や私生活の近況報告なんかを話し合っていた。

律子がさっき出てきた所とは違うマンションへ、二人で入って行った。
(何だろう・・・律子さんの様子がおかしい気がする・・・。)
玄関に入る前とは何か違うと感じ取った千早は少し怯えていた。
何となく、以前伊織を入院させてしまった後のような冷たい感覚を感じ取っていたからだった。
「さあ、上がって。」
律子の方はいつもと変わらない感じで、笑顔で千早を招き入れていた。
お互いに向かい合わせになって椅子に座った。
「久しぶりね千早・・・。」
「はい・・・。」
(この瞳・・・吸い込まれてしまいそう・・・。)
千早は自分を見つめている律子の目を見てボーっとなっていた。
「レッスンお疲れ様。喉渇いてない?」
「い、いえ、さっきの喫茶店で飲み物飲みましたからお構いなく。」
立ち上がった律子に、千早は慌てて答えた。
「そう、じゃあ早速なんだけど・・・。」
「はい。」
真剣な眼差しになる律子に、自然と千早の表情も引き締まる。
「千早・・・。今日で、私と貴方とは芸能界での先輩と後輩以上でも以下でも無くなる・・・。」
「えっ!?それって・・・。」
いきなり切り出された千早は面食らって言葉が続かなかった。
「これからは一切今までのような関係は無し。良いわね?」
「そんな、急に・・・。何故です?」
千早は困った顔になって訴えかけるように聞く。
「過ちだったのよ・・・。分かって千早・・・。」
律子は苦しそうに答える。
「分かりません!過ちなんですか?優しくしてくれたのは間違いだって言うんですか?答えて下さい律子さん!」
千早は立ち上がって、机を叩きながら詰め寄った。
「終わりなの。伊織の居る今となっては。私の気の迷いだったのよ・・・。」
律子は目を合わせられずに顔を逸らしながら言う。
「そんなの納得出来ませんっ!」
千早は興奮していて無意識の内に、律子の襟首を掴んでいた。

「ふぅ・・・。」
(仕方ないわね・・・。)
律子は軽く息を吐く。そして、おもむろに自分の襟を掴んでいる千早の両手を振り払った。
「貴方が納得するかどうかなんて聞いてないわ・・・。」
「ひっ!?」
急に雰囲気が変わって冷たい視線とその言葉に千早は思わず仰け反って驚いた。
(あの時と同じ・・・。)
思い出した千早はその場で何も言えなくなって震え始めた。
「貴方が邪魔なの。納得出来ないならそれで良いわ。それなら今後一切の関係を絶つだけ・・・。」
「そ・・・そんな・・・。」
ショックを受けた千早は目を見開いて驚いた。
「もう一度聞くわ。良いわね?」
律子の言葉だけでなく、その態度にはノーと言わせない圧力があった。
「・・・。」
千早は捨てられる子犬のような顔になって、答えずに無言のまま律子を見た。
「千早、返事は?」
ピクッ
トーンが下がって本当に冷たい言葉だった。
千早はそれの反応して何かをされる訳ではないのだが、何かを避けるように目を閉じて極端に堪能していた。
「捨て・ないで・・下さ・・・い。」
千早は俯いたまま消え入りそうな声で言った。
「【はい】か【いいえ】で答えなさい。」
見下ろしている律子は聞こえていたが容赦なく返答を求める。
「嫌・・・です・・・。」
答えている千早の頬には涙が伝い始めていた。
「良い千早?私は【はい】か【いいえ】で答えなさいと言ったのよ。」
律子はそう言いながら俯いている千早の顎を右手で持って自分の方に向かせた。
(泣いてる・・・。でもここで甘い顔は出来ない・・・。)
一瞬律子の顔と右手がピクッと動いたが、すぐに冷たい感じに戻る。

「もう・・・失いたくは無いんです・・・。折角・・・姉のように慕える人を見つけたのに・・・。」
「なら、【はい】と言いなさい。そうすれば私は貴方の姉のような存在で居続けるわ。」
泣いて訴える千早に、冷静に律子は答える。
「本当ですか?本当ですね?」
千早は泣きながら、再び律子のシャツの襟首を両手で掴みながら必死に聞いた。
「誰も貴方を捨てるだなんて言っていないでしょう。貴方は【はい】とだけ答えればそれで良いの。
これ以上は聞かないわ。逆に答えないのなら、貴方とは二度と会わない。良いわね?千早。」
少し溜息をついてからさっきまでの冷たい表情が少し緩む。そして、真顔になって再度千早に聞いた。
(伊織さんの用に相手をされなくても良い・・・二度と会えないなんて・・・絶対に嫌・・・。)
「・・・・・・は・・・ぃ・・・。」
千早はジレンマの中、ついに返事をした。
「良い子ね。これが最初で最後・・・。」
チュッ
「えっ!?」
(律子さん・・・。)
律子に突然キスをされて千早は泣き顔のまま驚いて固まっていた。
「今までもこれからも貴方と私は事務所の先輩と後輩。それ以上でもそれ以下でもない。また、明日からも頑張りましょうね。」
律子はそれだけ言うと、千早に背を向けて部屋から出て行こうとする。
「あ・・・あの・・・。」
(何で最後にキスなんて・・・。)
千早は思わず呼び止めたが、律子は止まりもせずに部屋から出て行ってしまった。
「律子・・・さん・・・。」
自分の唇に人差し指を当てて千早はその場で呟いていた。そして、止まっていた涙が再び目から溢れて頬を伝っていた。

律子はマンションを出てから、他のマンションへ移動するべくタクシーに乗っていた。
(何でキスしちゃったんだろ・・・。)
窓の外を見ながら、唇を押さえていた。
(私の方が未練があるって事なの・・・かな・・・。)
「ふぅ・・・。」
苦笑いしてから、さっきまでの事を忘れるように溜息をついた後、行き先の変更を運転手に告げた。

伊織は今日の仕事を終えて日付が変わりそうな時間に一番近くのマンションへと来ていた。
「はぁ・・・疲れた。ってあれ?」
テーブルの上には置かれたままのアイスコーヒーの飲み残しと、食べ終わって片付け終わってない食器があった。
(律子が居たのは分かるケド・・・こんなの初めて。こんなに酷く片付け忘れてるなんてどういう事?)
伊織は訝しげにその様子を見ながら、考えていた。
♪〜♪〜
「んっ?電話?プロデューサー!?」
相手先を見て面倒臭そうに言いながらも、伊織は出た。
「もしもし、もう仕事終わってるんだけど?」
通話ボタンを押した瞬間、あからさまに不機嫌そうに言った。
「「すまん伊織。実は明日のスケジュールで変更があって千早に電話しているんだが、出てくれないんだ。
マネージャーはもうかえっちゃったし、律子も電源切ってるみたいで出なくてさ。」」
「それで、なんでアタシに掛けて来るのよ。アンタプロデューサーでしょ?」
伊織は呆れ気味に言った。
「「そうなんだが、今日の午前中のレッスンで偉く機嫌が良かったから何で出てくれないのか分からないんだ。
いつもなら留守電になっているんだがその状態にもなってないから、伝えようが無くて困ってるんだ。」」
「アンタ千早のアパートには言ったの?」
流石に冗談では無さそうな、プロデューサーの言葉に伊織は真顔になって聞いた。
「「ああ、管理人さんの話だとお昼過ぎに出かけてから帰ってきてないらしいんだ。今どこに居るかも分からなくて困ってる。
俺から電話が行ってるのは分かっている筈だが出ない。伊織だったら出てくれるんじゃないかと思ってな。」」
「全くこういう時に日頃の行いが出るのよ。アンタ今まで何やってきたのよ・・・。」
(律子と会っている最中なのかしら・・・。)
内心のムカムカをぶつけるようにプロデューサーに皮肉る。
「「ぐっ・・・。とにかく頼む。駄目ならまた俺が掛け続けるから。」」
「コースは一万円以上に値上げって事で手を打ってあげるワ。にひひっ。」
「「分かった、本当にすまんが頼む。」」
「はいはい、駄目でも一回連絡入れるから正座でもして待ってなさいよ。」
伊織はそれだけ言うと、電話を一方的に切って、すぐに千早へ掛けた。

「う・・・ぅう・・・律子・・・さん・・・。」
最初は良く分かって居なかったが、言葉の意味が時間が経つにつれじわじわと染み入って来ていた。
(律子さんとは・・・もうあの温もりを感じる事は・・・二度と・・・。)
そう考えれば考えるほど、止め処なく涙を溢れさせていた。
時間が経つのも分からず、周りの音も聞こえていなかった。ただ、ただ悲しく千早は泣いていた。
♪〜♪〜
「・・・?」
初めて電話になっているのに気が付くと、周りも真っ暗だった。のそのそ動きながら電話に出た。
「・・・。」
「「もしもし?千早??聞こえてるの???」」
電話の向こう側から心配そうな伊織の声が聞こえてくる。
(伊織さん・・・。)
「うぅ・・・。ひっく・・・。」
「「どうしたの?泣いてるの???」」
千早は答えられずにしゃくりあげていた。
「「今どこに居るの?」」
「いおりひゃん・・・すてないれぇ・・・。」
伊織の問いに答えず訴えるように呟く。

「「おいて・・・いかないれぇ・・・。うぅ。」」
(冗談抜きにしてやばそうね・・・。)
「ちょっと!しっかりしなさいよ千早!今どこに居るの?それだけ教えなさい。すぐ行くから。」
緊急性を感じた伊織はとっさに聞いた。
「「あざぶの・・・マンションれすぅ・・・ひっく・・・。」」
千早は弱々しく小さな声で答えた。
「待ってなさい、すぐ行くわ。良い?どこにも行くんじゃないわよ。」
「「うぅ・・・切らないれぇ・・・。」」
(あれ?こんな時に手持ちがないじゃない。終電終わってるし・・・かといってこの時間に新堂は呼べないし・・・。
アイツ使いたい所だけど今回は止めた方がよさそうだし・・・。)
伊織は千早の言葉を聞きながら、考えを巡らせていた。
「千早、5分以内に必ず掛けなおすから待ってなさい。」
「「いおりひゃん・・・。」」
(何て切ない声で言うのよ・・・。)
苦笑いしながら伊織は切る手が止まった。
「良い千早。必ず、必ず掛け直すから。」
「「・・・。」」
伊織は真顔になって言うと、千早が黙ったので了承と取って電話を切った。
「こんな時間だけど・・・。」
そして、少し躊躇した後リダイヤルの中から選んで電話を掛けた。

「もしもし、どうしました水瀬さん?」
マネージャーは自宅で遅い夕飯を食べている最中だったが、伊織からと分かってすぐにプライベートの携帯に出た。
「「ごめんなさいこんな時間に。仕事じゃないんだけど、千早が大変そうなの。
それでこんな時間で頼れるのがマネージャーしか居なくて・・・。」」
(水瀬さん・・・随分と気不味そうに・・・。でもそれだけ大変って事ね。)
いつもとは違って、下手に出てくる伊織の様子にマネージャーはピンと来ていた。
「今日はどこのマンションに居ますか?」
「「ありがとうっ!流石マネージャー話が早いわ。今お台場なの。」」
伊織は嬉しそうに答えていた。
「この時間ですから首都高で早く行けると思いますので、待っていて下さい。すぐ出ます。」
「「分かったワ。急ぎ過ぎて事故らないようにね。」」
「はい、では後程。」
携帯を切ってマネージャーはすぐに着替えて自宅を出た。
(今日のスケジュール変更入れた方が良いかもしれないわね・・・。)
車に乗って、車内のライトで手帳を見ながらキーを回してエンジンをかけた。

(眠れない・・・。)
律子は深夜番組をぼーっと見ながら、冷え切って固くなったパスタをフォークでくるくると巻いていた。
戻ってきてから夕飯を作ったものの、喉を通らなかった。
「私って最低・・・。」
フォークを回す手を止めて、俯きながら呟いた。
(これで良かった筈なのに・・・。)
目を閉じると、千早の泣き顔のアップが自然と浮かんでくる。
【「捨て・ないで・・下さ・・・い。」】
それと一緒に、台詞が繰り返される。
「私は捨ててなんかない・・・。捨てるつもりなんて・・・無い・・・。でも・・・私には伊織が・・・居る・・・から。」
テーブルに突っ伏して、ここには居ない、浮かんでくる泣き顔の千早に向かって言う。
「こうするしか・・・無かったのよ・・・。」
律子はそう言いながら、目頭が熱くなっているのを感じていた。
(そう・・・私が悪いのよ。自分勝手な私が・・・。)
律子は自分に言い聞かせるように思って顔を上げた。
「寝ないと・・・。明日も仕事だわ・・・。」
つけっ放しのテレビとパスタを置いて律子はふらふらとバスルームへ移動して行った。

「「い・お・・り・・・さん・・・。すぅ・・・すぅ・・・。」」
電話の向こうから寝息が聞こえてきてホッとした伊織は一旦携帯を切った。
「はぁ・・・。とりあえず泣き疲れて寝てくれたみたい。」
伊織は後部座席に寄り掛かって、黙って運転してくれているマネージャーに向かって言った。
「如月さん変に取り乱さなくて良かったですね。もうすぐ麻布ですから。」
さっき会ってから黙っていたマネージャーが、初めて口を開いた。
「本当良かったワ。ありがとねマネージャー。仕事じゃないのにわがまま言っちゃって。」
「いえいえ、とりあえず現地に着いたら水瀬さんはシャワーを浴びて頂いて、その間に私が如月さんをベッドに運びますね。
起きてから電話を頂ければ、私の方でスケジュールを何とかしますので。」
「千早が起きてから落ち着いてくれると良いんだけど。ったくアイツは使えないわねえ。」
伊織は愚痴りながら、プロデューサーに電話を掛けた。
「「もしもし、どうだった伊織?」」
「とりあえず、電話は繋がったワ。ただ、暫く活動できないかもしれないからその覚悟はしておいてね。」
「「どういう事だ?」」
プロデューサーは伊織の言葉の真意が分からずに不思議そうに聞いた。
「今はそっとしておいてやって欲しいってトコかしら。」
「「そうか・・・。」」
「まあ、出来そうなら本人から電話させるように言うから。上手く行けばお昼頃には電話させられるかも。
くれぐれもアンタから電話しないようにね!」
「「分かった。すまん伊織・・・。」」
「気持ち悪いわね。ったくアンタは千早のプロデューサーでもあるのと同時に
アタシや律子のプロデューサーでもある事忘れるんじゃないわよ。しっかりしなさいよね。」
それだけ言うと一方的に携帯を切った。
「水瀬さん、もう着きますよ。」
「はいはい、これでアイツも少しは考えるでしょ。」
伊織は返事をした後、なんとも言えない顔をして言った。

「ぅ・・・んっ・・・。」
千早は差し込む朝日が眩しくて目を覚ました。
(えっ!?)
最初はボーっとしていたが、目の前に伊織の顔があるのに気が付いて驚いてその場で固まっていた。
「何で・・・伊織さんが・・・。私・・・何でベッドに???」
訳が分からずに、千早は首を傾げていた。
(そう言えば・・・。)
何となく昨日の午後から夜の事を思い出して、千早は苦笑いしていた。
(だけど・・・伊織さん・・・わざわざ来てくれたんだ・・・。)
「伊織さん・・・。」
千早は、寝ている伊織を正面から優しく抱き締めた。
(小さいけれど・・・こんなにも温かい・・・。)
その温かみに落ち着いたのか、少しして再び寝息を立て始めた。

「ねえマネージャー。伊織はどうしたの?」
律子は一緒に出るはずだった朝のTV番組のゲストコーナーが終わってから聞いた。
「少し疲れが出たみたいで昨日の夜会った様子を見て、私の方で安全を期してスケジュールをずらしたんです。
それもあって今朝は来るのがギリギリになってしまったのでお伝え出来なくて申し訳ありません。」
マネージャーは答えながら深々と頭を下げた。
「良いのよ謝らなくても。そっか、道理で今朝ギリギリだったわけだ。マネージャーらしくないとは思っていたのよ。」
律子は納得したように頷きながら言った。
「こちらが、変更になった水瀬さんのスケジュールです。」
「どれどれ・・・。」
律子はマネージャーの手帳を覗き込んで、変更になった伊織のスケジュールを頭の中に入れた。
「そっか、今日伊織は夕方からなのね。」
「はい、水瀬さんは午後からでも良いとおっしゃったのですが、
まだオフまでに日数があるのを考えて私の方から提案させて頂きました。」
「そうね、マネージャーが正しいと思うわ。今忙しいのもあるし体調不良で倒れたら不味いし大変よね。」
マネージャーのもっともな言葉に、律子はまた納得したように頷きながら言った。
「そういう、秋月さんも大丈夫ですか?あまり寝ていらっしゃらないようですが?」
「あはは・・・。マネージャーには適わないな。まあ移動中に眠らせて貰うわ。」
マネージャーの言葉に苦笑いしながら律子は答えた。
「無理はなさらないで下さいね。辛いようだったらおっしゃって下さい。
それと、3時までは私が秋月さんと同行しますが、それ以降はプロデューサーと代わって頂きます。」
「えっ!?プロデューサーと?千早はどうしたの?」
律子は千早のスケジュールを思い出して、驚いて思わず聞いた。
「さあ、今朝はギリギリだったものでプロデューサーとは殆どお話できていないんです。
ただ、今日のスケジュール変更でお手伝いして下さるとしか聞いていないんです。」
「あっ、ごめんなさい。マネージャーに聞いても分からないわよね。」
(聞く相手を間違っているわよね・・・。何やっているのかしら私。)
内心でも苦笑いしながら律子は謝った。
「いえいえ、気になるようでしたら確認しておきますよ。次は歌番組の収録で移動になりますので、準備をお願いします。」
「わかったわ。千早の件は、プロデューサーから直接聞いてみるから、気にしないで。それじゃあ、車よろしくね。」
「はい。」
微笑んでマネージャーは返事をした後、振り向いて歩き出した。
「はっ!?」
去っていくマネージャーの姿を見送っている自分に気が付いて慌てて荷物を持って楽屋を後にした。

「ん・・・。う?」
伊織が目を覚ますと何故か真っ暗で少し息苦しかった。
(一体何???)
訳がわからずに伊織は状況を把握しようと手足を動かした。
(ああ、そういう事ね・・・。)
状況を把握した伊織はモゾモゾ動いて、千早から抱かれている状況を脱出した。
「千早・・・。ちょっと千早、起きなさいっての!」
伊織は千早の肩を揺すりながら起こしにかかった。
「う・・・ん・・・。あ、伊織ひゃん、おはよ〜ごらいまふぅ。」
千早は揺すられて目を覚まして寝ぼけ眼で言った。
「アンタなに寝ぼけてんのよ。」
伊織はジト目になって呟いた。
「伊織ひゃ〜ん。」
まだ寝ぼけている千早は、にっこり笑いながら伊織に抱きついた。
「ちょっ、ちょっとアンタ何して、キャッ!?」
ジタバタと暴れる伊織を千早は押さえ込むようにしてそのまま押し倒した。
「伊織さん・・・。」
「アンタ目が覚めていたのね・・・。」
上から見つめている千早の目はさっきまでの寝ぼけ眼と違い真剣ないつもの眼差しになっていた。
伊織はその目をじっと見返しながら言った。
「何があったの?」
「・・・。」
下から聞く伊織の問いに、千早は気不味そうに顔を逸らす。
「話してくれるわよね?」
伊織はそう言って逸らしている千早の顔を見た。千早は何も言わずに小さく頷いた。
「言えるまで待ってあげるから・・・。」
付け加えるように言ってから、伊織は目を閉じて千早が話し始めるのをじっと待った。

「秋月さん。着きましたよ。プロデューサーがお待ちです。」
「んっ・・・。ごめんなさい。寝ちゃってたわね。」
律子はメガネを掛け直しながら、苦笑いして謝った。
「いえいえ、この後の仕事も無理しない程度に頑張って下さい。」
「移動中に大分寝れたから大丈夫よ。ありがとう、助かったわマネージャー。」
お互いに微笑み合いながら言葉を交わした。
「律子、行こうか。マネージャー、伊織の事よろしく頼む。」
「はい、お任せ下さい。」
そう元気良く返事をしてからマネージャーは二人から放れて言った。
「プロデューサー、千早はどうしたんです?」
「今日は休みだ・・・。」
(プロデューサー何か隠してる?いや、知らないのかな・・・。)
歯切れの悪い答えに律子は何ともいえない顔で思案していた。
「オーディション前で忙しい筈ですよね?」
「まあな、だが、千早には今日の休みが必要なんだ。もう良いだろ、律子。人の事より自分の仕事だ。」
誤魔化すように、プロデューサーは言うと先に歩き出す。
「は〜い。」
ジト目でプロデューサーの背中を見ながら、律子は後について歩き始めた。

「そう・・・。」
伊織は全部聞き終わってから、気の毒そうに千早を見た。
いつの間にか、二人は上下ではなく左右になって向かい合う形になっていた。
「伊織さん・・・。」
「んっ?何?」
伊織は不思議そうに聞いた。
「律子さんとの関係が終わった私は、もう用無しですよね・・・。」
「まあ、そういう事になるわね。」
「うっ・・・。」
あっさりと言われて、千早は何も言えなくなる。
「伊織さんも私から離れて行くんですね・・・。そして律子さんの元へ・・・。それが正しい形なんですよね・・・。」
千早は最後の方は言葉になっておらず、みるみる目に涙が浮かび始めていた。

「アンタはそれを望むワケ?」
「嫌・・・です・・・。」
「じゃあ、良いんじゃない。アタシは別にアンタを捨てようとか思ってないし、離れてくつもりも無いわ。」
泣き顔になっている千早の頭を優しく撫でて微笑みながら伊織は言った。
「えっ!?」
千早は驚いてマジマジと伊織の顔を見た。
「な〜に?」
「い、いえ・・・。」
(意外・・・。)
千早は内心で素直にそう思っていた。
「確かにね、最初は憎かったし、この泥棒猫って思ってたけど、今はそうは思ってないわ。
だって、そう思ってたらここに来ると思う?多分情が移ったのかしら。」
伊織は最後の台詞をちょっと照れ臭そうにそっぽを向きながら小声で言っていた。
(伊織さん・・・。)
千早は嬉しくなって、そのまま伊織を抱き締めた。
「ちょっと、千早!痛いわよっ!」
「す、すいません。」
伊織に言われて慌てて、千早は伊織を解放した。
「アタシは良いけどさ、千早。アンタ本当に律子の事諦められるの?」
「ぅ・・・。でも・・・伊織さんもいますし・・・。」
言葉に詰まりながらも、千早は何とか答える。
「本音を言いなさいよ、怒らないから・・・。」
「・・・。諦められません・・・でも律子さんはもう受け入れてくれませんから・・・仕方ないんです・・・」
伊織の言葉に意を決したように千早は言った。言い終わった後、涙が溢れて頬を伝い始めていた。
「そっか・・・。どうなるか分からないけど、アタシは千早との事を律子に正直に話すわ。
例えどんな結果になったとしても・・・。」
(アタシは隠してきた・・・だけど真実を語るわ。)
伊織は真顔になって、千早にではなく自分に言い聞かせるかのように言った。

「伊織さん・・・変に話さなくても・・・。」
千早は複雑な表情で言う。
「アタシも律子に捨てられたりしてね。」
伊織は言いながら自虐的な笑みを浮かべていた。
「そんな事・・・。だって、律子さんは伊織さんの事を・・・。」
悔しそうに千早は言う。
「千早、アンタが正直に話してくれたからアタシも本音を言ったわ。
本当にどうなるか分からないけれど、必ず事実を話すわ。そしたら、どんな結果になってもアンタにどうなったか話してあげる。」
「・・・はい・・・。」
意を決して真面目な表情になって言う伊織の言葉に、千早も涙を拭いてから目をしっかり見返して返事をした。
「じゃあ、アタシは仕事に行くわ。アンタはできるんならプロデューサーに電話入れなさい。」
「分かりました。お仕事頑張って下さい。」
「当然よ。にひひっ。誰に向かって言ってるの?」
伊織はウインクしながら茶化すように言って、ベッドから出て素早く着替えると一旦千早の方を見る。
「な〜に、捨てられた子犬みたいな顔してるのよ。アンタらしくないでしょ。しっかりしなさいよ。
別に独りぼっちになった訳じゃないでしょ。
それに、スーパーアイドルになるって言う目標だってあるんじゃないの。さっさと駆け上がってきなさいよ!」
最初は呆れた顔をしながら言っていたが、最後には指をさしてしっかりとした口調で伊織は言った。
「はい・・・はいっ!」
胸に湧き上がってくる感情と熱くなってくる目頭を押さえながら、千早は元気良く返事をした。
伊織はそれを満足そうに見てから寝室を出て行った。
(そうよね・・・頑張らないと。)
千早は、その場で軽く気合を入れてからシャワーを浴びて温かいミルクを飲んだ。
大きく深呼吸をして落ち着いた後、プロデューサーに電話を掛けた。
「もしもし、如月です。ご迷惑をお掛けしました。明日から行けますのでどうした良いか教えて下さい。」
いつものしっかりとした口調でプロデューサーとのやり取りが始まった。

「水瀬さん、如月さんは大丈夫でしたか?」
移動中の車内で心配そうにマネージャーは聞いた。
「うん、結構なショック状態だと思うけど落ち着いたし、アイツ何だかんだいって打たれ強いから大丈夫よ。
今頃プロデューサーに電話してると思うワ。」
「そうですか。流石は水瀬さんですね。」
「アタシ!?別にそんな事ないわよ。」
マネージャーの素直な褒め言葉に、伊織はちょっと照れながら答えた。
「それでね、マネージャー。昨日とかもこき使っちゃって悪いんだけどお願いがあるの・・・。」
流石に昨日の今日なので伊織はお伺いを立てるように言う。
「遠慮せずにおっしゃって下さい。今は仕事中ですしね。」
マネージャーは殊勝な態度の伊織がおかしくて笑いそうになるのを堪えながら言った。
「律子とじっくり話す時間が欲しいの。それも出来るだけ早い内に・・・。」
伊織は真剣な顔になって、いつになく真面目な口調でゆっくりと言った。
「構いませんよ。明日何とかしましょう。」
「ええっ!?明日!?」
あっさりと言う上にいきなり明日と言われて伊織は驚いてキョトンとしていた。
「今日これからは流石に・・・。」
「そういう事言ってるんじゃなくて・・・明日にそんな事出来るの!?」
気不味そうに言うマネージャーの台詞に伊織は更に驚きながらも聞き返していた。
「夕方くらいからフリーになれれば宜しいですか?その代わりその分のしわ寄せは後に来ますけれど。」
「構わないわ。そこはマネージャーに任せる。
今のままじゃ良くないし、ちゃんと決着つけないで後々にすればするほど響いちゃうと思うから。」
「そうですね、今日の秋月さんの様子を見ても、引き摺っている感じでしたから、水瀬さんの見立ては正しいと思います。
明日、夕方からお二人が時間を取れるようにスケジュールを変更します。」
「ほんと、無茶いってゴメンネ。アイツじゃ頼りにならないから・・・。」
伊織は申し訳無さそうに、上目遣いでバックミラーに移るマネージャーに言った。
「ふふっ、お二人の為なら。ですよ。」
バックミラーに移る伊織をチラッと見ながらマネージャーは言った。

「スケジュールの変更?」
プロデューサーは首を傾げながら携帯で話をしていた。丁度休憩時間で、律子の楽屋に居た。
「「はい、先程事務所から緊急との事でメールが行っていませんか?」」
(あ、やばい・・。)
話し相手のマネージャーに言われて、メール確認を忘れていた事を思い出す。
「うん、分かった。律子にはちゃんと伝えるから。それじゃそっちも引き続き宜しく。」
それだけ言うと、携帯を切る。
「律子、実は・・・。」
「スケジュールの変更ですよね?」
「えっ?」
いきなり言われてプロデューサーは面食らっていた。
「私の方にも小鳥さんからメール入りましたよ。何でも先方のわがままが入ったらしいです。
何本かは相手が大物なので事務所的に逆らえないみたいですね。」
律子は苦笑いしながら言った。
「大物スターを抱えていても、事務所の大小は如何ともしがたいからなあ・・・。」
プロデューサーもそう言いながら苦笑いしていた。
「このスケジュールだと・・・。」
(千早もさっき復帰するって電話が入ってるから・・・。プロデューサーには二人同時の面倒は見れないわよね。)
律子はノートパソコンを開いて、変更になったスケジュールを上書きしていた。
「なあ、律子・・・。」
「皆まで言わないで下さい。私は大丈夫ですから、千早を見てあげて下さい。あの子には支えが必要ですから。」
(そう、今のあの子には・・・。)
プロデューサーの言葉を遮って、律子は目を細めながら言った。
「分かった。どうやら、マネージャーの方で出来るだけ律子と伊織が一緒に動けるように変更してくれたみたいだから
一人になる事も殆どない。まあ律子だったら一人でも安心だけどな。」
「全くもうっ!そういうスタンスだからいつまで経っても駄目なんですよ!」
楽観的に言うプロデューサーに律子はピシャッと言った。
「すいません、収録の続きなのでスタンバイお願いします。」
「は〜い。」
外からADの声が聞こえたので、律子はノートパソコンをしまってから、プロデューサーと一緒に撮影現場へと移動していった。

「98・・・99・・・100っと。」
千早はプロデューサーに電話を掛けた後、自分のアパートに戻って来てトレーニングの一環である腹筋をしていた。
いつものジャージ姿で、長い髪はうっすらと汗で濡れていた。額にも汗の玉が出来ていたが、気にせず腹筋を黙々と続けていた。
何も考えず無心で・・・いや考えたくなかっただけかもしれない。

「いよいよ明日・・・。」
伊織はマンションの寝室で寝る前にこぶしを握りながら呟いた。
(完全決着でなくても良いワ。少なくとも今までの事は全部律子に話す。恐くないと言ったら嘘になる。
でも、今言わないとアタシは絶対後悔する・・・。)
うれちゃんをギュッと抱き締めながら、目の前に居ない律子の姿を想像していた。
「ちゃんと寝ておかないとね。おやすみうさちゃん。」
チュッ
軽くうさちゃんにキスしてから一緒にベッドの中へ潜り込んだ。

ドサッ
「流石に寝てないのが堪えたわ・・・ね。」
律子は仕事から戻って来て、シャワーも浴びる元気もなくそのままの格好でベッドに倒れ込んで眠ってしまった。

「また、明日から頑張らないと。」
千早は自分に言い聞かせるように言ってから電気を消した。
(律子さん・・・伊織さん・・・。)
真っ暗な天井を見つめながら、いつの間にか眠りに入っていた。

「昨日のスケジュール変更もだけど、今日もだなんて全く困ったものよね。」
律子は夕焼けの差し込む車の後部座席で、苦笑いしながら言った。
隣に座っている伊織は朝から様子が変で、今も自分の言葉に全く反応せず、ただぎゅっとうさちゃんを抱き締めて黙っている。
(どうしたのかしら?伊織・・・。)
「お二人のような売れっ子を抱えていても、まだ事務所としては芸能界で小さいですからね。」
黙っている伊織の代わりに運転しているマネージャーがフォローを入れるように言う。
「まあ、そうね・・・。もし事務所が大きくなっても、私はこんなわがままとか言わないようにしたいわ。」
バックミラー越しに映るマネージャーを見ながら言った。
「良い反面教師と言った所ですかね。」
「マネージャーの言う通りかも。私自身も気を付けないと・・・。」
律子はメガネを外して、レンズを拭きながら自嘲気味に呟いた。
「ねえ、伊織?大丈夫?」
メガネを掛けなおしてから、心配そうに声を掛けた。
「えっ!?あっ?うん・・・。」
伊織は気不味そうに答えると、顔を逸らして返事をした。
(これから話すって覚悟を決めたつもりなのに・・・。)
内心でそう思いながら更にギュッとうさちゃんを抱き締めた。
(本当にどうしたのかしら・・・。)
律子はそれ以上何も言わずに、心配そうに伊織を見続けていた。
そんな伊織の横顔には綺麗な夕日が差し込んでいた。

暗くなってきて、レッスン場の外の外灯がつき始めた。
千早は来週に行われる事になったダンスマスターのオーディションのエントリーで選ばれたので
ダンスレッスンを集中的にやっていた。昨日までの事を忘れるように鬼気迫る表情でステップを無心に踏んでいた。
「違う!そこはそうじゃない。こうだ!」
「はいっ!」
熱の入ったプロデューサーの指導にしっかりと返事をして、再びステップを踏み始める。
(早く・・・二人の居る場所まで・・・。)
以前ならダンスなんてと考えていた千早だったが、今はそんな事すら頭に無かった。
「よし、今日はこの位にしとくか。」
「まだ、やれます。」
プロデューサーの言葉に、千早は訴えるように言った。
「朝からずっとやってるんだ。体を壊しかねない。今日は帰ってゆっくり休んで明日に備えてくれ。
明日は今日よりハードになるからな。」
「・・・。」
千早はそれに答えずに、ただじっとプロデューサーを見ていた。
「良いか千早。一朝一夕で出来るほど甘くないのは分かってる筈だ。
お前だって、ずっと歌ってきたからこそ、今までの積み重ねがあればこそ、その歌唱力がある。
焦って体を壊したら元も子もない。分かるな?」
「くっ・・・。」
(分かっています・・・分かっているんです・・・。でも・・・。)
プロデューサーの言いたい事は分かっていたが、それでも今は何かをやって居たかった。
そんな自分がもどかしくて自然と唇を噛んでいた。
「着替えて来い千早。ここの借りる時間も終わる。」
「・・・はい・・・。」
不承不承返事をして、のろのろとレッスン場からロッカールームへと歩いていった。
「やれやれ・・・。」
プロデューサーはそんな千早を見送りながら苦笑いしていた。

「プロデューサー。」
「うわっ!?」
突然後ろから声がして驚いて振り向いた。そこにはマネージャーが立っていた。
「ああ、マネージャーか。びっくりした。どうしたんだ?律子と伊織はもう送り届けたんだよな?」
「はい。事務所に戻りまして、小鳥さんがプロデューサーの携帯に繋がらないとおっしゃっていたので、
如月さんが一緒なので掛けてみてはと申し上げたのですが、彼女の方も繋がらなかったので私が参った次第です。」
「わざわざ来るって事は急用なのかな?」
「ええ、高木社長がお話をしたいそうなので、先に携帯でご連絡を入れて頂くのが良いかと。」
マネージャーは静かにそう言った。
「おっかしいな、充電もちゃんとしてたんだけど・・・。あれ?電源が入らない!?」
「もしかして故障ですかね?私のを使って下さい。」
「ああ、悪いね。」
プロデューサーは差し出された携帯を受け取って、早速掛け始めた。
(本当にこの人は運が悪いというかなんというか・・・。)
マネージャーは慌てて掛けて間違った相手に謝っているのを見て内心で溜息をついていた。
その後掛かったらしく、内容を変に聞いていて話し難くなるのを避けてマネージャーはレッスン場の外に出た。
「ぁ・・・。」
「ん?」
小さな声がしたのでマネージャーは不思議に思ってそちらへ向いた。
「ど、どうも・・・。」
そこには千早が居た。私服姿で気不味そうに頭を下げた。
「如月さんお疲れ様です。」
「お疲れ様です。あの・・・何でマネージャーさんがここに?」
頭を下げるマネージャーに千早は挨拶した後、疑問をぶつけた。
「実は・・・。」
マネージャーはさっきプロデューサーに言った事と同じ事を話した。
「そうだったんですか・・・。私の方は電池切れだったみたいで・・・。すいません・・・。」
「何も謝る事は無いですよ。如月さんは悪くありませんしね。
あえて悪いというのなら運が悪いとしか言いようのないあの方と今日一緒に居た事位ですかね。」
最初にフォローを入れた後、マネージャーは苦笑いしながら言った。

「・・・。」
千早はそういわれて、レッスン場の中を見た。そこには、電話なのにぺこぺこ頭を下げているプロデューサーの姿が見えた。
「何か不味い事でもあったんでしょうか?」
「さあ?高木社長からの緊急呼び出しとしか私は分かりませんから。あの様子を見ると良い話では無さそうですよね。」
千早に聞かれて、マネージャーもレッスン場の中に居るプロデューサーの様子を見ながら答えた。
「あの・・・。」
「はい?」
「お二人は今日元気でしたか?」
「秋月さんはかなり元気なご様子でしたね、水瀬さんは変にぎこちない感じでした。」
気不味そうに聞く千早に、マネージャーは淡々と答える。
「そう・・・ですか・・・。」
俯いて呟く千早を、横目でチラッと見てからマネージャーはまたプロデューサーの様子を見た。
「すいませ・・・。」
「プロデューサーが来ますよ。」
消え入りそうな声で謝ろうとして、マネージャーの言葉を聞いた千早は顔を上げた。
「ありがとうマネージャー。お、千早着替え終わったな。じゃあ、また明日。」
プロデューサーはお礼を言って携帯をマネージャーに渡しながら、千早に軽く手を上げた。
「プロデューサー、私今日はもう終わりですから、如月さんを近くの駅まででも送りましょうか?」
「ああ、そうしてくれると助かる。俺はすぐ事務所に戻るからよろしく。
あ〜、もしかしたら後で呼び出す事になっちゃうかもしれないけど、その時は頼む。」
「ええ、分かりました。焦って事故など起こさないで下さいね。」
「わかった、それじゃ二人ともまたな。」
そう言うと、プロデューサーは慌てて走りながらレッスン場の入口から出て行った。
「ふぅ、全く世話の焼ける方です。」
マネージャーはそう言いながらも、少し笑っていた。
(マネージャーはプロデューサーの事が好きなのかな?)
笑っているマネージャーの顔をチラッと見て、千早は何となくそう思った。

「さあ、如月さん忘れ物は無いですか?」
「あっ、はい。」
「では、車まで移動しましょう。」
「はいっ。」
マネージャーは千早の返事を聞いてから、先に千早を促して自分は後ろから歩き始めた。
(何か・・・変な感じ・・・。)
千早は、今まで誰かの後についていく事はあっても自分が前に歩いた事が殆ど無かったのもあって違和感でぎこちなく歩いていた。
「どうぞ。」
「あっ・・・すいません。ありがとうございます。」
自然と後部座席のドアを開けられたので、思わずそう言いながら乗り込んだ。
(慣れない事をされているから・・・違和感が・・・。)
後部座席に乗った千早は、何となく小さくなっていた。
「如月さん、どうしますか?」
「えっと・・・。」
「ご自宅のアパートまで送りましょうか?」
「いえ、流石にそれは悪いので。」
いきなり言われた台詞に驚いて千早は両手をブンブンと振りながら慌てて言った。
「でしたら・・・お二人の居るマンションにお送りしましょうか?」
「えっ!?」
急に雰囲気が変わって静かに言ったマネージャーの言葉に驚いて千早はその場で固まった。
「あの・・・それって・・・どういう・・・。」
千早はそう言いながらも、あからさまに狼狽していた。
「水瀬さんを助けてあげてくれませんか。」
真面目な口調で言うマネージャーだったが、決して後ろを向きはしなかった。
「伊織さんを?」
言葉の真意が分からない千早は不思議そうに聞いた。
「面等向かって秋月さんとお話をしたら、水瀬さんには勝ち目は無いと思います。
多分それは水瀬さん自身も分かっていると思います。それでも、今夜全てを話そうとしています。」
「でも・・・私に何が出来るんでしょうか・・・。既に律子さんからは三行半を突きつけられた身ですし・・・。」
マネージャーの言葉に、千早は俯いて力無く言う。

「今夜が水瀬さんや秋月さん・・・そして、これから行く気があるのなら如月さん、貴方にとっても正念場になると思うんです。
貴方は本当に、このままで良いんですか?」
「そ、それは・・・。」
(良くなんかない・・・だけど・・・。)
千早は俯いたまま内心で葛藤していた。
「私は同じ人として、女として、そして何より若い貴方に後悔して欲しくないんです。」
「マネージャーさん・・・。」
千早は顔を上げて思わずマネージャーの方を見た。
「私にも如月さんたちと同じ年に深く悩んだ事がありました。私はそこで諦める道を取りました。
その時はそれで良いと自分に言い聞かせました。でも、それは間違いだった。今でもその事を後悔しています・・・。」
(マネージャーさん・・・。)
千早が良くマネージャーを見ていると、小刻みに肩が震えているのが分かった。
「今の如月さんを見ていると・・・昔の自分を見ているようで辛いんです・・・。
余計な事を言ったかもしれませんね・・・。近くの駅まで送ります。」
そう言って、マネージャーはエンジンをスタートさせた。
「あの・・・行って何が出来るか分かりませんけれど・・・。お二人の所へ送って貰えませんか?
いえ、送って下さい!お願いします。」
千早はそう言って、その場で頭を深く下げた。
「分かりました。途中でコンビにでも寄って飲み物や食べ物を買いながら参りましょう。」
「はい。宜しくお願いします。そして・・・ありがとうございます。」
千早は、一回頭を上げてから再びお礼を言って深々と頭を下げた。

マンションに戻ってきてからも少し変な様子の伊織だったが、一緒に夕飯を食べ始める頃にはいつものように戻っていた。
忙しいスケジュールの中で久しぶりにゆっくりと二人で食べれる夕食に二人の会話も自然と弾んでいた。
楽しい時間はあっという間に流れて・・・
伊織はオレンジジュース、律子はカフェオレを飲みながらのんびりと適当にセットしたCDを聞いていた。
コントローラーをおもむろに取って、伊織はコンポのスイッチを切った。
「ん?一緒にシャワー浴びる?」
目を閉じながら聞いていた律子は消されたのに気がついて薄く目を開けて、いつものあの妖しげな瞳で聞いた。
(うっ・・・危ない危ない・・・。)
思わずその雰囲気に飲まれそうになった伊織は内心で首を振っていた。
「あのね、律子。大事な話があるの。」
伊織は真顔になって、しっかりと律子の目を見て言った。
「うん、聞くわ。」
律子の方もいつに無く真剣な伊織の言葉にメガネを掛け直してから頷いた。
「律子は千早の事どう思ってるの?」
伊織の言葉に、一瞬だけ律子はピクッっと反応した。
「千早?可愛い後輩よ。何でそんな事聞くの?」
(伊織・・・まさか、ね・・・。)
口でそう言って平静を装っていたが、律子は内心ではかなり動揺していた。
「そう・・・。」
(律子・・・貴方も私に嘘吐くのね・・・。)
伊織は少し俯いて悔しさで唇を噛んだ。
「千早ね・・・一昨日から昨日に掛けて酷かったのよ・・・。」
「っ!?」
顔を上げて痛々しそうな顔になって言う伊織の言葉に律子は驚いて目を見開いた。
「伊織・・・貴方・・・。」
「うん、知ってる。ぜ〜んぶね。勿論千早が悪いんじゃないし、千早はそういう事を軽々しく言う子じゃないのも分かるわ。」
「じゃあ、何で・・・。」
完全に狼狽している律子は聞くしかなかった。
「アタシも千早と関係を持っているからよ・・・。」
「!!?」
律子はあっさり言う伊織の言葉にショックを受けて驚いたまま固まっていた。

「最初に偶然だったけど、律子と千早がしてるとこ見ちゃったの・・・。
いつも下げない頭を下げてまで千早に謝ったのに・・・.
悔しくて、悔しくて。それに律子を取られたくなくて引き離す意味も込めてアタシの虜にしてやったの!」
伊織は話している途中から涙ぐんでいた。ただ、その口調は強く激しくなっていっていた。
「そして、律子にはばれないように関係を続けた。
千早はああいう子だからアタシとの関係を律子に言える訳も無い。それも分かってた・・・。」
そこまで言うと一旦伊織は黙った。
(知らなかった・・・わからなかった・・・。)
律子は何も言えずにそのまま、難しい顔をして伊織の事を黙ってみていた。
「そして、アタシと千早の関係も偶然マネージャーに知られる事になった。
律子やアイツに言われる前に何とかしようと思って協力者になって貰った。」
「嘘っ!?マネージャーも!?」
流石にそれを聞いて、律子は愕然とした。
「千早から話は聞いたワ。律子ずるいじゃない。別れ話の最後にキスするなんて・・・。
あれじゃあ、未練が残るし千早が可哀想じゃない!」
「・・・。」
伊織の言葉に律子は眉をしかめながら黙り込む。
「知って欲しくなかった・・・。伊織が倒れてから私は凄まじい喪失感に襲われた。
千早から事実を知った私は怒りで千早に当った。
憎しみはいつしかぽっかり開いた穴に千早を埋める事で愛おしさに変わってしまった・・・。
最初は伊織の代わりのつもりだった、誰でも良かった・・・寂しさを紛らわしてくれる相手が欲しかったの。」
律子はうなだれながらとつとつと語る。
「アタシが戻って来なければ、そのまま千早と上手くやる。アタシが戻ってきちゃったから邪魔になった千早を捨てる。
それって自分勝手だし、現状だったら千早が余りにも哀れじゃない!」
伊織は怒りを隠すことなく吐き捨てるように言った。

「そう、私は自分勝手なのよ。貴方を最初にバスルームで押し倒した時からずっと・・・今も・・・きっとこれからも・・・。
でも伊織、何でそんなに千早の肩を持つの?私と一緒に戻れるのなら問題ないでしょ?」
律子は顔を上げながら冷静な顔つきになって言った後、伊織に聞き返した。
「・・・そりゃあ、律子との関係に戻れるのは正直嬉しい。でもね、アタシ千早に情が移っちゃったのよ。
今のままじゃ余りにも可哀想だし・・・。それにかく言う律子だってどうとも思ってないならキスなんてしないはずでしょ。
千早の話じゃ最後の最後まで体は重ねてもキスだけはさせてくれなかったって聞いたわよ。」
「・・・。」
(伊織はそこまで千早の心に入り込んだのね・・・。)
律子は黙ったまま、伊織とここには居ない千早の姿をダブらせて見ていた。
「じゃあ、伊織。貴方はどうしたいの?」
「えっ!?」
不意に聞かれて伊織は驚いた後、困った表情になる。
「私は今回の事で気が付いたの。伊織の代わりなんて居ない。
だからもし、これから同じ事があったとしても私は一人で居るって決めたの。だから、千早との関係には終止符を打った。
でも、全く関わりを持たないという事ではないわ。事務所の先輩後輩として今まで通りに付き合って行くつもりよ。」
「律子は本当にそれで良いの?」
伊織は律子を睨みながら聞く。
「良いわ。伊織、貴方こそ選びなさい。私と千早、どっちを選ぶの?色々知った今、伊織との関係を続ける千早を許す事は出来ない。
でも、私を選ぶのなら今までの千早との関係に目を瞑るわ。ただ、千早を選ぶというのなら、私にも考えがあるわ・・・。」
鋭い目付きになって律子が迫るように言う。
「アタシは・・・。」
伊織は律子の迫力に気圧されて、言葉が続かなかった。
そこから少しの間、二人は無言のまま向き合っていた。

「「最初は材料のある水瀬さんが有利に話を進められるでしょうけれど、必ずそれを秋月さんの方がひっくり返す時が来ます。
そうなってしまったら、水瀬さんに勝ち目はありません。
言い方は良くないですが、水瀬さんが心の中で不満に思っていても、秋月さんに丸め込まれて終わりになってしまうでしょう。」」
「「私は・・・どうすれば良いんでしょう?」」
「「本当に水瀬さんが駄目だと貴方が判断した時に割って入ると良いでしょう。
水瀬さん一人でも、貴方一人でも秋月さんには適わないと私は思っています。でも二人なら何とかなると思います。
少なくとも今なら・・・。」」
「「そうですね・・・一人ではどうしようもなかったですから・・・。」」
「「良いですか、タイミングを逃してはいけません。早くても遅くても駄目です。
秋月さんは強い方ですが、その反面とても寂しがり屋の面を持っています。
強硬手段だけではなく、心に訴える事をすると良いと思いますよ。」」
「「はい。でも、何でマネージャーさんは行かないんですか?」」
「「前にも言った筈です。私は水瀬さんと秋月さんのマネージャーです。
お二人の前に出たら妥当な所で手打ちをしてしまうでしょうから。私も融通が利きそうで利かない人間だから。
っと、私の事はどうでも良いですね。
如月さん、くれぐれも後悔の無いように。頑張って下さいね。」」
「「ありがとうございます。」」

千早はさっきまでのマネージャーのとやり取りを思い出していた。
最後に見た悲しそうな苦笑いをした顔が何故か忘れられなかった。
(律子さん・・・伊織さん・・・。)
合鍵を使って既にマンションの中に入っていて、部屋の中の修羅場をドア越しに聞いていた。
ドキドキして破裂しまうのではないかと思う胸を押さえながら自分の出るタイミングを伺っていた。

「無理・・・。どっちか選ぶなんてアタシには無理よ・・・。律子だって千早の事好きなんでしょ?
アタシとは違った意味で。じゃなかったら、許さなかったキスなんてしないでしょ?」
伊織は律子に訴えかけるように言う。
「そうね・・・そうかもしれない。でも割り切らないと駄目なの。千早の事をなじるなら幾らでも聞くし謝るわ。
でも、もう遅いのよ・・・。」
律子は俯きながら呟く。
「だったら・・・。」
「伊織、これ以上の問答は無用よ。選びなさい、私か千早を・・・。」
伊織の言葉を遮って、律子が顔を上げて冷たい目をして静かに言う。
「うっ・・・。」
その雰囲気に、伊織はその後続けようとした言葉を出す事が出来なかった。
「答えなさい・・・伊織。」
「あ、アタシは・・・。」
律子の豹変した姿に、伊織は自分では気が付いていなかったが、体も声も震えていた。
(アタシ・・・やっぱり・・・律子には・・・千早・・・ゴメン・・・。)

バンッ!
そこで、突然ドアが開いて誰かが入ってきた。
「えっ!?」
「誰っ!?」
律子と伊織が驚いて見るとそこには千早が立っていた。
「千早!?」
「千早、アンタ何でここに!?」
流石に二人は驚いて顔を見合わせた。
「マネージャーさんに無理にお願いして、連れて来て貰いました。」
千早は気不味そうだったが、俯かずに二人の顔を交互に見ながら言った。
「・・・。」
「マネージャーが許したの!?」
(どういう事?マネージャー修羅場になるってのは分かっていた筈なのに・・。)
律子は無言だったが、伊織は信じられないと言った表情で聞き返した。
「はい。」
千早が返した返事は力強く、さっきまでの気不味さは全く無くなっていた。
「何しに来たの千早?貴方の出る幕じゃないわ。」
驚いたものの冷静に戻って律子が冷たく言う。
「何言ってんのよ!律子。ここで、三人できちんと結論出して決着つけなきゃ。」
伊織の言葉に、律子は一瞥くれるだけで無言のままだった。
「うぐっ・・・。」
(律子・・・恐いわよ・・・。)
一瞥くれられて、伊織は思わず萎縮した。
「律子さん、伊織さん。お二人の話中すいません。
聞いて貰えるかどうかは分かりませんが、私の気持ちをお伝えしたくて参りました。」
「良いわ座って・・・。」
律子は静かに言うと、千早に席を勧めた。
四角いテーブルだったが、それぞれが視界に入るように三角形になる感じで椅子の向きを変えて座りあった。
(危なかったワ・・・。)
伊織は座りながらホッとしていた。それと同時に危うく律子の雰囲気に飲まれてしまいそうだった自分に内心で苦笑いしていた。

「私は最初、律子さんに芸能界の先輩として優しくして頂いて・・・。
伊織さんにも声を掛けて頂いて・・・。お二人の所まで駆け上がろうと今でも思っています。
最初に伊織さんを突き飛ばしてしまって、その事実で律子さんから怒りを買ったんですが、
その後伊織さんの居ない寂しさなのからか、私に色々と手解きをして下さいました。」
「・・・。」
「・・・。」
律子と伊織は黙って千早の話を聞いていた。
「その後、伊織さんにその事実を知られて、私が嘘を吐いていた事でやはり怒りを買って、滅茶苦茶にされました。
それは、私を律子さんから引き離す為に伊織さんが取った手段でした。
正気を失う程、何度も何度も激しくされて、どうにかなってしまうかと思いましたが、
それは、逆に私にとって今まで体験した事の無い甘い物へと変わって行きました。」
(そんな事があったのね・・・。)
その話を聞いて、律子はチラッと伊織を見た。
「私は最初、律子さんにだけ心を奪われていましたが、
伊織さんに無理矢理されているのもその内にそうでは無い事に気が付きました。確かに色に溺れたのかも知れませんが、
伊織さんの気持ちが変わっていくのが何となく分かりました。
そんな気持ちに気が付いた私は伊織さんにも徐々に心を奪われて行きました。」
(あんまりそういうつもりは無かったんだケド、まあそう思ってるならそれで良いワ。)
伊織は聞きながら腕を組んで千早を見ていた。
「全てを知っている伊織さんと、その事を知らない律子さんの間で苦しんだ時もありました。
いつかはこの事が表に出てしまう恐さと、その時には私は律子さんと伊織さんの二人を同時に失う事が恐かった・・・。
そして、先に律子さんからその話をされてしまった。
悲しかったし、今度は伊織さんに同じ風にされたら私はどうなってしまうのか不安で恐くて仕方なかった・・・。」
千早は言葉の最後の方で涙が目に溜まり始めていた。
「最後の最後まで私は伊織さんの代わりでしかないと思っていました。
だけど、最後でキスされてそれは違うんじゃないかって思ったんです・・・。」
「・・・。」
律子はその話ではあえて口をつぐんでいた。
「伊織さんは、夜中なのにわざわざ来て下さって、面倒を見てくれました。
そして、私の話を全部聞いた上で律子さんに全てを話すと・・・。例え結果が酷い事になったとしてもと・・・。」
「あんな状況でほっとけるワケないでしょ。」
伊織は苦笑いしながら突っ込んだ。

「前置きが長くなりましたが、結論を言わせて貰います。私は律子さんも伊織さんも好きです。
芸能界の先輩としては無論ですし、普通なら二人何ていうのは許されないのかもしれません。でも、二人とも好きなんです!」
力強く言って千早は思わず勢いで立ち上がった。
「そう・・・二人なんて許されないのよ・・・。」
律子が静かに言った。
「じゃあ、律子。もしアタシが千早と一緒になるって言ったらどうするの?」
「・・・。その時は一人で・・・。いえ、千早から貴方を奪うわ!」
何気なく聞いた伊織の言葉に、律子は少し千早を睨みながら言う。
「ひっ!?」
千早は立ったまま仰け反って、バランスを崩してジタバタしてそのまま椅子に座る形になった。
「ぷっ。何やってんのよ千早。」
「だって、伊織さんが変な事を聞くから・・・。」
笑う伊織に、ふくれっ面で千早が文句を言った。その様子を見て、律子は面白く無さそうな顔をする。
「要は皆ワガママなのよ。アタシはいつでもどこでもワガママだけどね。にひひっ。」
「そうね・・・。わがまま・・・自分勝手・・・よね。」
笑いながら言う伊織に、律子は何とも言えない顔をしながら呟く。
「ねえ、律子。こんな場面なんだから嘘は言わないで。
千早の事好きなんでしょ?アタシの代わりなんかじゃなくて、一人の相手として。」
伊織の言葉に、千早は固唾を呑んで律子を見守る。
「ふぅ・・・分かったわ。正直に言うわ。そう、私は伊織も千早も好き。だけど・・・。」
「だったら問題ないわ。私だって律子も千早も好きよ。それで良いじゃない。何が駄目なの?」
「何って・・・。」
あっけらかんと言う伊織に、律子は伊織を見て言う。
「アタシも千早も全てを知って苦しんだのよ。律子だって苦しんだじゃない。
そりゃあ、上手く行かないかもしれないけど、それまでは自分に正直になっても良いじゃない。」
「伊織・・・。」
伊織は少し微笑みながら言う。
「律子さん・・・。私じゃ駄目ですか?」
「千早・・・。」
千早は、少し涙ぐみながら訴えるように言う。
「何も知らなくて伊織にばれないようにって苦しんだ私は何だったの・・・。伊織と千早を傷つけてしまった私は・・・。」
律子は俯きながら呟く。
「全部知った上で、後は律子の答え待ちだけよ。」
「・・・。」
無言の律子を伊織と千早はじっと待った。

(伊織と千早は明らかにしたというのに、この三角関係が続く事を望んでいる。
そしてこの関係を知ってしまった私の返事を待っている・・・。)
一回伊織と千早をチラッと見て、律子は両肘をテーブルについて手を組んでからそこへ額を当てた。
(律子。私達2人を捨てるなんて事だけは嘘でも言っちゃ嫌よ・・・。)
(律子さん・・・。)
その律子を、伊織も千早も思う所はあったが、固唾を飲んで見守っていた。
(選択は私に委ねられた。ここで、また伊織だけを選んで千早を捨てる事だって出来る。いっそ2人を捨てる事だって・・・。
だけど、2人を前にして今の私にそれを言う事は嘘でも出来そうにない。)
律子は内心で苦しんでいた。それを示すかのように組んでいる手に力が入って震えていた。
(伊織はあっけらかんと認めた。千早も受け入れた。なのに私は答えを出せないでいる。
ここで嘘を吐いて一人になるのはとても耐えられそうにない。
最後まで自力で答えを出せないなんて本当にずるくて情けなくて弱い私・・・。)
「参ったわね・・・。二人なんてありなの?二人とも本当に、本当にそれで良いの?」
律子は顔を上げてから困った顔になって、二人に向かって問いかけるように聞いた。
「勿論よっ!」
「勿論です!」
二人は待ってましたとばかりにそう言ってから、椅子から立ち上がって同時に律子へ抱きついた。
「あ・・・はは。」
(色々考えていたけど・・・心の底ではこの結末を望んでいたのかな・・・。)
律子はちょっと笑って涙ぐみながら、二人を両手で抱え込むように抱き返した。

「そうだ、ちょっと待ってね・・・。」
そう言って、伊織は先に律子から離れて、自分の携帯からメールを簡単に打ち込んだ。
「「ありがとう!
マネージャー本当にありがとう。千早の飛び込みのサプライズには驚いたけど丸く収まったわ。
今度細かく話すからね。これからもよろしくネ♪」」
「これでよし、っと。丸く収まった所で、ね?」
伊織は携帯を置いてから二人の方を目を細めながら見た。
「そうね。」
律子はその視線に答えるように、いつもの妖しげな微笑を返した。
「ぁ・・・。」
千早はそんな二人を見て、少し赤くなりながらも期待の眼差しになっていた。

♪〜
「ん?」
マネージャーは高木社長から直接呼び出しを受けて事務所の会議室で待っていた。そこへメールが入ったので見てみた。
(水瀬さんから・・・。)
内容を見て、ニコニコしながら返信はせずに携帯をしまった。
ガチャッ
ドアの開く音がして、マネージャーはいつもの真面目な表情に戻って背筋を伸ばした。
「すまないね。仕事が終わった後に呼び出してしまって。」
「いえ、それでお呼び出しの件は何でしょうか?」
言葉を返しながらマネージャーは聞いた。
「実はね・・・。」
高木社長は真面目な顔をして話し始めた。

再度三人で抱き合った体勢になっていた。
「ほら、千早・・・。」
モジモジして遠慮と躊躇をしている千早を見て伊織は譲るように言う。
「え・・・でも・・・。」
それでも、気不味そうに伊織を見ながら千早が答える。
「アンタねえ・・・アタシが譲ってるんだから受けなさいよ。それとも何?律子とキスしたくないワケ?」
焦れた伊織は不機嫌そうに言う。
「そ、そんな事は・・・したいですけれど・・・伊織さんを差し置いては・・・。」
困った顔になっても、千早は尚躊躇していた。
「千早・・・ここまで来て遠慮なんていらないわよ。それとも本当に私とキスするのは嫌?」
「えっ!?」
律子に言われて驚いた千早は思わずそちらを見た。
「もう二度とこうなる事は無いと思っていたけど・・・でも・・・嬉しいわ。千早・・・。」
「ぁ・・・。」
優しく微笑んだ後、いつもの妖しい目になって律子は自分から千早を引き寄せる。
千早はその雰囲気に飲まれて小さく声を上げた後、自然と目を閉じて身を任せていた。
そして、二人の唇が重なった。
「・・・。」
(これで良かったのは分かってるワ・・・。でも正直ジェラシーよね・・・。)
伊織はキスしている律子と千早からそっと離れて見て難しい顔をしていた。
(律子さん・・・。)
千早は数日前の事を思い出していた。一時は突き放されて適わないであろう事が、今現実に起きている。
その想いが胸に大きく広がっていって、目頭が熱くなっていた。
律子は少しして、千早から唇を離してそっと両肩を持って距離を置く。
「あっ・・・嫌っ!行かないで下さいっ!置いていかないで・・・捨てないで・・・・うぅ・・・。」
千早は離れそうになるのを嫌がって、泣きながら律子へしがみ付いた。
「えっ!?」
良く分かっていない律子は目をぱちくりしていて驚く事しか出来ていなかった。

(千早・・・。思い出しちゃってるのね・・・。)
伊織の方は千早から話を聞いていた時、錯乱状態だった千早を何とかなだめすかせていたのを思い出して苦笑いしていた。
「律子・・・。千早ね、昨日の夜こんな状態だったのよ。ううん、もっと酷かった・・・。」
泣き続ける千早を見ながら、伊織は律子に静かに言った。
「そう・・・だったの・・・。」
(こんな風に・・・私が・・・傷つけて・・・。)
律子は痛い位に自分にしがみ付いて泣いている千早を見ながら呟いた。
「ごめんね千早・・・。でも大丈夫よ。私はここに居るわ。貴方の傍に、何処へも行かないわ。」
優しく言って千早を改めて優しく抱き締めながら、頭を撫で続けた。

少しして、千早は落ち着いていた。
「すいません・・・取り乱してしまって・・・。」
「ううん、私の方こそ・・・ごめんね。」
謝る千早に、律子の方も申し訳無さそうに謝り返していた。
「はいはい、これで変なわだかまりは無し。良いわね二人とも?」
軽く手をパンパン叩いた後、伊織が悪戯っぽい笑顔で二人にウインクしながら聞く。
「はい。」
「ふふっ、そうね。」
律子と千早は顔を見合わせた後、伊織の方に向き直ってそれぞれ返事をした。
「千早ってば、涙でぐちゃぐちゃじゃないの。シャワー浴びて仕切り直しましょ。」
チュッ
やれやれと言った表情で言った後、伊織は軽く千早にキスをする。
「あっ・・・伊織さん・・・。」
(やっぱり・・・伊織さん・・・優しい・・・。)
キスされて一瞬驚いた千早だったが、伊織の気遣いに、また涙が目に溜まってきていた。
「そうね・・・。って、伊織ぃ〜、私にはキスしてくれないの?」
(伊織・・・知らない間に千早の心を確実に掴んでいたのね・・・。)
律子は賛同した後、内心で感心しながらも目を細めて聞いた。
「だって、律子ってば千早と二人の世界入ってたし〜。」
伊織は頬を膨らまして不機嫌な感じで言ってから律子に背を向けた。
「あ、あのっ、す、すいません・・・。」
気不味くなりそうな律子と伊織の空気に敏感に反応して、千早がその場でワタワタと慌てながら謝る。

「ちょっと!いお・・・んっ!?」
場を折角収めたのに一転してまた乱しそうになる伊織に、律子が怒ろうとすると、
伊織が絶妙なタイミングで振り返って律子にキスして言葉を止めた。
「冗談よ、じょ・う・だ・ん。にひひっ♪二人とも早く来なさいよ〜。」
伊織はポカーンとしている千早と、ジト目になっている律子に笑って言いながら部屋を出て行った。
「ふぅ、全くもう・・・。」
律子はそう言いながらも、少し息を吐いてから笑っていた。
「あ、あの・・・。」
千早はまだポカーンとしていて伊織の出て行ったドアを見た後、律子の方へ答えを求めるように聞いた。
「私も千早も伊織にしてやられたって事よ。見てなさいよ〜。後で仕返ししてあげるんだから。」
律子は千早に答えた後、妖しく微笑えんで舌で少し唇を舐めながら言った。
「は、はぁ・・・。」
千早はそれでも、目をぱちくりしながら生返事を返していた。
「ほ〜ら、千早。伊織が待ってるから行きましょう。」
いつの間にか律子が後ろに回っていて、千早の肩を押すように促した。
むにっ
「えっ?あっ、はい。」
千早押し付けられた胸で気がついて、ちょっと後ろを振り向いて律子の顔を見て返事をしてから、
前に向き直って一緒に部屋を出て行った。

伊織がデザインした「ばする〜む」の看板の向こう側の脱衣場で三人は色々話をしながら脱いでいた。
「あら?千早。また地味なのになってるじゃない?」
うさちゃんを置いてブラウスを脱ぎ終わろうとしていた伊織は脱ぐ手を止めて、千早のブラを見て不思議そうに言った。
「あ・・・。え〜とですね、その、律子さんを忘れようと思って・・・。」
気不味そうに律子をチラチラ見ながら小声で答えていた。
「ふ〜ん・・・。」
ピクッ
律子の声に、千早は思わず反応してから固まった。
「それじゃあ、それを忘れましょう、ね?」
カチッ、シュルッ
そう言うと、律子は千早の後ろに回ってホックを外してからブラをあっけなく取り去った。
「キャッ!?」
千早は慌てて胸を隠す。
「ブラは変えられるケド・・・相変わらず貧相な胸よね・・・。」
「くっ・・・。」
何とも言えない顔でしみじみと言う伊織に、千早は悔しそうにしていた。
「千早は腹筋も含めて、筋トレのし過ぎなのよ。だから脂肪がつかないだけ。
伊織みたいに好きなもの食べて適当にしてれば少し大きくもなるわよ。」
「うぐっ・・・。」
今度は言われた伊織の方が言葉に詰まる。
「だけどね、別に女は胸の大きさじゃないわよ。」
二人がうなだれているのを見て、少し笑いながら律子は言った。
「律子みたいにスタイルの良い人間が言っても説得力無いわよっ!」
「そうですよね・・・。」
伊織はジト目で、千早もそれに賛同するように律子のブラをしている胸を見ながら言っていた。
「二人ともどこ見ながらいってるのよ。」
二人の視線の先に気がついて、律子は苦笑いしながら呟いた。
「それに、二人が私の年齢になるまでまだ時間あるんだし、そんなに気にしないの。ほら、脱いで脱いで。」
律子はそう言いながら、自分のスカートを降ろし始める。
「上手く誤魔化された感じだけど・・・良いワ。そういう事にしとく。」
伊織はぶつぶつ言いながらも、スカートを脱いでブラに手をかけていた。

千早は自分の状況に気がついて、恥ずかしさでモジモジして右腕で胸を隠しながら、
なかなか下ろせないスカートのジーッパーと格闘していた。
その間に、律子と伊織はそれぞれブラを外しあって、パンティは自分で脱いでいた。
「あれっ・・・あれっ?」
千早は周りの事など気に出来ずに、必死にスカートのジッパーを下ろそうと格闘していた。
「んふふっ。千早、私が脱がせてあげる・・・。」
「えっ!?あっ、いえ、自分で出来・・・んうぅ!?」
妖しく目を細めながら近付いて来る律子に、千早は慌てながら身をよじらせていると突然キスされていた。
「んっ・・・はむぅ。」
律子は別れを言った時の軽いキスでもなく、さっきのキスでもない、千早の首と頭を抱え込んで激しく求めるキスをしていた。
「んぅ、んぁ・・・。」
(す、凄・・ぃ・・・。)
千早はされるがままに、キスを受けて目がトロンとなっていた。
胸を隠していた腕もジッパーと格闘していた手からも力が抜けてだらんとなっていた。
(あ〜あ、律子のあの情熱的なキスにはやられちゃうわよねえ。じゃあ、アタシは・・・。)
伊織は千早の様子を見て、苦笑いしながらも伊織は千早の後ろに回りこんでしゃがんだ。
「んぷぁ・・・。可愛いわよ、千早。」
「は・・・ぁ・・・。」
ツーっと唾液の糸がいやらしく繋がって離れていく。
その糸が切れて落ちきる前に、ボーっとして目はトロンとなって力の抜け切っている千早に再びキスをする。
無抵抗な千早の口の中にゆっくりと舌を入れていく。舌の先が千早の舌に触れると無意識に千早は舌を動かして律子を迎え入れる。
(無意識でも応えているのね・・・。)
律子は嬉しくなって、そのまま舌を絡ませて更に激しくキスをして千早を求めた。
(にひひっ、今の内にっと。)
伊織は、すぐに千早のスカートのジッパーを下ろしてスカートを下ろす。
それでも、律子に激しくキスされていて全く気が付いていなかった。
そして、今度はパンティに手を掛けるが、やはり千早は全く気が付いていなかった。
伊織がゆっくり下ろしていくと、丁度蕾から離れる時にパンティとの間に糸を引く。
(うわぁ、キスされて興奮しちゃってるのね。千早やっぱり攻められるのに弱いのね。)
伊織はニンマリしながらパンティを膝の辺りまで下ろす。

「さ〜て、下からも行くわよ千早・・・。」
ピトッ、にゅちゅっ
「!?」
千早は突然蕾を触られた感触で少し爪先立ちになって我に返ったが、口が塞がれているので声が出なかった。
「あらら、千早こんなに濡れちゃって・・・。汗じゃないわよねえ。」
ぬりゅ〜、にゅちゅぅ〜
ちょっと意地悪そうに伊織は言いながら、千早の股に右手を入れて濡れた蕾を人差し指、中指、薬指の三本でなぞる様に弄る。
「んぅ〜!」
千早はキスされた状態でくぐもった声を上げる。
「体が冷えちゃうから・・・。一旦トドメよ。」
にゅる〜、クリリリッ
伊織は一旦蕾をなぞった後、中指でクリを思いっきりこねくり回した。
「んぷぁっ!ひゃうぅぅぅーーーーー!!!」
ビクビクッ
千早はボーっとしているフワフワした感覚から、
一転して一気に脳天まで来たクリからの電気ショックのような連続の感覚に我慢出来ず、
律子から口を離して仰け反りながら大きく痙攣して派手にイッた。
「おっと・・・。」
崩れ落ちそうになる千早を、律子は抱きかかえて止める。その間に、伊織はスカートとパンティを千早の足から抜いて篭に入れた。
「冷えちゃうといけないから入りましょ。ね?」
「そうね。」
「は・・ひ・・・。」
伊織の言葉に、律子だけでなく千早も半分無意識の内に答えていた。
(ここまで伊織が千早を仕込んだって事なのかしら?)
律子はポエーっとなってしまっていながらも返事をしている千早を見て複雑な表情をしていた。

伊織が先に浴室のドアを開けて、律子が千早に肩を貸して中に入る。最後に伊織が入ってドアを閉めた。
「大丈夫千早?座るわよ?」
「は・・ぃ・・・。」
律子は千早を椅子にゆっくりと座らせる。その後変に倒れないようにする為に壁に寄り掛からせた。
「ふう、これで良いわね。」
律子は安堵の溜息をついてから立ち上がった。
「はい、律子。」
「ありがとうって、伊織、いっつも千早とはあんな風なの?」
渡されたシャワーのノズルを受け取りながら律子は伊織に聞いた。
「そんなこと無いわよ。今日は律子が居るから大サービスよ。にひひっ。」
伊織は意味ありげに言いながら笑った。
「だって、千早ってばキスだけでこんなに興奮してるのよ・・・。」
続けて言いながら伊織は自分の右手を差し出して指を開くと、人差し指から中指、
そして更に薬指に掛けてツーっと蜜で出来たいやらしい橋が出来る。
「うわ・・・。」
(私のキスだけでこんなに・・・。)
律子は少し興奮気味にその様子を見て声を上げていた。
「まあ、律子の積極的なキスなんてされた事無かっただろうからね。千早も一気に落ちそうになるし興奮もしちゃうわよ。」
「そっか・・・そうよね。初めてだったのよね。」
(私ったら変に興奮して・・・。)
伊織の言葉を聞いて、律子は苦笑いしながら自分も少し暴走気味だった事を反省していた。
ぴちゅっ、ちゅぴっ、れろぉ
「んっ・・・ちょっとしょっぱいかな。今日レッスンだっただろうし綺麗にしてからベッドで、三人で。ね?」
「うんっ?・・・うん、そうね。」
一瞬、千早の蜜を舐め取っている伊織に見入っていた律子だったが、我に返って答えた。
「律子も舐めてみる?」
伊織はそう言いながら、右手を律子の前に差し出す。

「・・・。」
最初は無言でじっと見ていた律子だったが、伊織の右手首を掴んで自分の方に指を引き寄せてから、
目を閉じていやらしく舌を這わせて舐め始めた。
ぴちゃっ、れろぉ
ゾクゾクッ
伊織はその様子を見ながら、背筋がゾクゾク来ていた。
「んっ、しょっぱい・・・んっ・・・。」
一旦目を開けて、律子は伊織の目を舐めている指越しに見ながら更に舐め続ける。
「あ・・・。律・・子。」
伊織も変な気分になって来て、そのまま自分の指を舐めようと顔を近づけた瞬間、
プシャーーー
「ぶわっ!?」
突然伊織の目の前にノズルが現れてそこからお湯が勢い良く顔面に向かって飛び出した。
訳が分からない伊織は慌てて空いている左腕で目の部分を覆った。
少ししてお湯の感覚がなくなったので伊織は用心深く腕をどかして不思議そうな顔をしていた。
「あははっ、伊織ったらおかしい。さっきのお返しよ。」
律子は左手にノズルを持ったまま笑っていた。
「り〜つ〜こ〜!」
伊織はプルプルと肩を震わせて、俯きながら低いトーンの声で言っていた。
「な、何よ?」
少し構える感じだったが、律子は冷静に伊織を見ていた。
「こっちもお返しよっ!」
プシャーーーーー
そう言った瞬間、今度は伊織からメガネを掛けている状態でも容赦せずに律子の顔面にシャワーを浴びせかけた。
ポタッ、ポタッ・・・
「・・・。」
「・・・。」
お互いにシャワーのお湯が滴っている顔を見合わせて少しだけ無言の状態になる。
「ふう・・・。」
先に律子がメガネを取って横にある棚に置く。その直後、二人は向き合ってニンマリと笑い合う。
「やったわね、伊織っ!」
「律子こそ〜!」
二人はそういった後、少し笑いながらふざけてシャワーを掛け合っていた。
(ひんやりして気持ち良い・・・。)
そんな様子を千早は壁に寄り掛かりながらポーっとして見ていた。
ザーーー
すっかり落ち着いた3人のいる浴室にはシャワーの流れる音だけが静かに響いていた。
(気持ち良い・・・。)
千早は座ったまま、律子にリンスを洗い流して貰っていた。髪から流れ落ちるお湯が
胸や背中を伝って床に落ちていく。
(私は一人じゃない、二人が傍に居てくれる・・・。)
千早は嬉しいのとホッとしたので、目を閉じながらも穏やかな表情になっていた。
千早の髪のリンスを落としている律子の方は、伊織に背中を流して貰っていた。
「何だか不思議よね・・・。誰かを洗って、もう一人に洗われているなんて・・・。」
(小さい時に父さんと母さんと一緒にお風呂に入った時以来かも・・・。)
律子は独り言のように呟きながら、少しクスッと笑っていた。
「まあ、そうよね。3人で入るなんて早々無いんじゃないの?アタシも小さい時にお兄ちゃん達と入った以来だと思うワ。」
伊織は律子の言った言葉を聞いていて、背中をタオルで優しく洗いながら言っていた。
「ありがとうございました。」
「良いのよ。自分だと大変だしね。」
リンスを流し終わった千早の髪はとても綺麗で律子にはとても魅惑的だった。
律子は無意識の内に濡れた髪を指ですいていた。
「あ、あの・・・。」
「ん?何?」
「い、いえ、べ、別に。」
変に照れ臭かった千早は律子に言いかけたが、
にこやかに答える律子に何も言えずに黙り込んで固まったまま髪をすかれていた。
「律子、流すわよ〜。」
「は〜い、宜しくね。」
ザーー
伊織は後ろから良く見えていなかったので、そのまま背中の泡をシャワーで流していた。
「千早、どうしちゃったの?」
固まっている千早を見て、律子は不思議そうに聞いた。
「えっ、あの・・・。変に照れ臭くて・・・その・・・。」
千早は真っ赤になって照れてどぎまぎしながら上手く答えられないでいた。
「んふふっ、可愛い。」
律子はそう言って、髪をすいていた手で今度は千早の顎を軽く持つ。
「ぁっ・・・。」
千早は逆らう所か、自分から身を乗り出すようにして近付いて来る律子の瞳を見つめていた。

「こ〜ら〜。」
プシャーーー
もう少しでキスしそうになった所に、ジト目で伊織が律子と千早の顔面にシャワーを勢い良く浴びせた。
「っ!?」
「ぶっ!?」
二人は不意を突かれて目をぱちくりして驚いていた。
「確かにアタシは律子との事を許したけど、二人だけで抜け駆けなんてずるいじゃないの!」
伊織は座っている二人の内千早の方をジト目で見下ろしながら言った。
「伊織、別に私から迫ったんだから良いじゃない、ね?」
律子は不機嫌になっている伊織にフォローを入れる。
「だ〜め。千早、分かってるわよネ?」
「伊織さん・・・。」
ニンマリとした表情で言う伊織に、千早は自然と物欲しそうな感じで見つめ返す。
それは二人の間のいつもの合図だった。
(千早の表情が違う。嫌がってない?)
律子は眉をひそめて、二人を交互に見ていた。
「まあ、見てて律子。千早ね、凄くエッチなのよ。」
「見ててって・・・。」
(それって・・・まさか!律子さんの前で!?)
千早は焦ってその場でジタバタし始める。その間に伊織はあっけなく千早の後ろに回り込む。
「大好きな律子の前で乱れるのよ、千早・・・。」
「え・・・でも・・・そんな・・・。」
(ぁ・・・耳元に息が・・・。)
耳元で伊織に囁かれて、モジモジしながらも今までの関係が勝手に体をその場に留まらせてしまう。
「にひひっ。千早、体は正直なの。待ち望んでいるのよ。
それに、良いじゃない律子に見て貰えば・・・。そして、して貰えば・・・ね?」
ゾクゾクッ
(律子さんに見られて・・・して貰う・・・。)
伊織の言葉が呪文のように耳から入ってきて、千早は変に興奮し始めていた。

(すっかりその気になってるわね。さあ、行くわよ〜。)
ニッと笑って伊織は千早の両脇から手を入れた。それは当たり前かのように、千早は脇を開けて素直に従っていた。
「千早、いつものおねだりは?」
「えっ・・・。あのっ・・・。」
伊織の言葉に、千早は目の前にいる律子をチラチラと見ながら気にして答えられないでいた。
(こういう関係だったんだ・・・。)
律子は何とも言えない表情で二人のやり取りを見ていた。
「言わないとしてあげないわよ?」
「そ、そんな・・・。」
千早は振り向いて切なそうに伊織を見ながら言う。
「じゃあ、言いなさい。」
伊織は目を細めて当たり前のように言う。
「はい・・・。伊織さん、私を・・・気持ち良くして下さい・・・。」
律子が気になって、照れて真っ赤な顔をしながら千早は小さな声で言った。
「はい?良く聞こえないんだけど?」
伊織は聞こえていたが。わざとらしく言う。
「えっ!?そんな・・・意地悪言わないで下さい・・・。」
千早はまだ律子を気にしながらぼそっと言う。
「ちゃんと言わないとだ〜め。」
「くっ・・・。伊織さん、私を気持ち良くして下さい。お願いします・・・。」
悔しそうだったが、意を決してはっきりと言い切った。
「にひひっ。良く言えたわね。じゃあ、ちゃんと気持ち良くして上げるわ。」
伊織は満足そうにそう言うと早速宙ぶらりんだった手を動かし始めた。
(これが・・・私の知らない二人の姿・・・。)
律子は驚きながらも、思わず2人がどうなるのかをじっと見ていた。

伊織はじらすように右手でへそを中心にしてゆっくりと外側へ円を描くように滑らせ、
左手は千早の右肩から鎖骨をなぞっていた。
「くぅん・・・伊織さん・・・焦らさないで下さい・・・。」
千早は切なそうに声を上げて、首だけ伊織の方へ向いて懇願する。
「にひひっ、じゃあ色々してあげるから自分でも動きなさい。ほら、律子に見えるように股を大きく開いて・・・。」
「!?」
いつものペースになっていた千早だったが律子の名前を出されると、モジモジして恥ずかしそうになって体が動かない。
「どうしたの千早?このままお預けでも良いのよ?」
「そ・・・そんな・・・。」
(律子さんが見てる所で・・・痴態を晒すなんて・・・。)
千早は葛藤していた。伊織の方を見ながらやり取りはしていたが、律子の視線が来ている事も感じていた。
それだけに、どうして良いか分からないでいた。
「見たいな・・・。」
「えっ!?」
突然した律子の声に驚いて、千早は振り向いて律子をまじまじと見ていた。
「聞こえてたんでしょ、ほ〜ら。」
くちゅっ
伊織はそういいながら右手の指で、お湯なのか蜜なのか分からないが、少し濡れている蕾を指で不意に弄る。
「ひゃうっ!」
千早は敏感に反応して声を上げつつ少し仰け反る。
(は、恥ずかしい・・・。)
その後、恥ずかしさで赤くなって律子の事は見れずに顔を逸らしたままだったが、
ゆっくりと両膝を立てながら股を開いて行った。
「よく出来たわね。偉いわ千早。さあ、どこをどうして欲しい?」
「・・・胸をギュッてして欲しいです・・・。」
伊織に聞かれた千早はさっきまであれだけ恥ずかしがっていたのに、
別人のように物欲しそうな顔で伊織の方を向いて呟くように言った。

「良いわよ。にひひっ。」
ムギュッ!
伊織は悪戯っぽく笑ってから、両手で乱暴に胸を掴む。
「くはぁっ!」
(気持ち・・・良い・・・。)
少ししかめっ面になるが、その直後うっとりとした表情に変わっていく。
「千・・早・・・。」
それを見ていた律子は今まで見た事の無かった千早の表情に、驚きながらも興奮し始めていた。
(律子ったら、目が釘付けになっちゃって。なら、二人共もっと興奮させてあげるワ。)
伊織はニンマリしてから、胸を掴んでいた左手を開いている股へと伸ばしていく。
ぬちゃぁ
千早の蕾に触れると既に蜜が溢れ始めていて、指にぬっとりと絡みついた。
「んぁあ・・・。」
千早は敏感に反応して短く声を上げる。
「あら?いつもはこの位じゃこんなにならないのに、律子に見られて興奮してるんだ〜?」
伊織はわざとらしく、指を千早と律子の視線の間に持って行きながら言う。
「えっ!?そっ、そんな・・・見せないで下さい・・・。」
千早は伊織の濡れた左指を見た後、律子と少し目が合ってしまい恥ずかしさで、
目を逸らしながら真っ赤になって消え入りそうな声で言った。
(私が見てるから・・・。)
律子の方は、伊織の指をまじまじと見て更に興奮の度合いが高まってきていた。
「だって〜、何もしなくてもここから次から次へといやらしい証拠が溢れ出てるわよ?」
くにぃっ
伊織は左手で、蕾の周りを律子に良く見えるようにと広げながら言う。
「んぁ・・・言わないで・・・下さい・・・。」
千早は自分でその状況を見て恥ずかしくなって、両手で自分の顔を抑えて左右に振りながら言う。
その言葉とは裏腹に、千早の蕾からはトロトロっと更に蜜が溢れだしているのが、律子にも良く見えていた。

「千早ってば、強くされるだけじゃなくて見られるだけでも感じちゃうんだ〜。」
「そ、そんな事は・・・。」
(律子さんに見られてる・・・。)
伊織の言葉に千早は反論しながらも、律子の視線を感じて体が熱くなっていた。
「ねっ、律子。千早ってえっちでしょ?」
「んふふっ。千早は誰にでも見られるとこうなっちゃうの?」
伊織の言葉に律子も少し悪乗りするように千早に向かって聞く。
「聞かないで・・・下さい・・・。」
千早はいつもの声が嘘のように消え入りそうな声で何とか言う。
「誰でもじゃ無いわよね。そうでしょ千早?律子は答えを待っているわよ。」
耳元で伊織は促すように言った。
「律子さん・・・だから・・・です。」
(はっ、恥ずかしい。)
本当にこれでもかという位、耳まで真っ赤になりながらも千早は言い切った。
(千早・・・。)
「しっかり・・・見てるからね。」
律子が興奮気味にそう言うと、千早はまた恥ずかしそうにもじもじし始める。
「駄目よ、千早。足閉じちゃ。律子が見えないでしょ?」
恥ずかしいと思っていたせいか無意識に両足が閉じそうになっている千早に伊織が言う。
「は、はい・・・。」
(恥ずかしくて・・・おかしくなりそう・・・。)
そう思いながらも、再度蜜で濡れた蕾を律子に見せるように千早はおずおずと足を開いていく。
「綺麗でいやらしいわ千早。」
「・・・。」
(律子さん・・・言わないで・・・。)
しみじみ言う律子の言葉に、千早は恥ずかしさで体中が熱くなると同時にプルプル震えていて、
伊織の指によって開かれている蕾からは更に蜜が溢れ出始めていた。
(やっぱり千早はこういう気もあるのね。そして、律子はそれを見て夢中になっちゃってる。
作戦成功ってトコかしら。にひひっ♪)
伊織は内心でニマニマしながら、恥ずかしがりながらも上気している千早と、
それを見て興奮している律子を見比べていた。

(さ〜てと、次の段階に移ろうかしら・・・。)
ふにぃ、くりりっ
伊織は左手を戻して千早の両胸を優しく包み込むように親指と小指、掌で胸を揉み上げて、
残った三本の指でいつものように乳首を転がし始める。
「あっ・・・伊織さん・・・もっと・・・強く・・・。」
千早は照れ隠しもあったが、いつものような激しい攻めをして来ない伊織に言った。
「ん〜?何か言った千早?」
伊織は意地悪っぽく聞こえないふりをして手を止める。
「いつもみたいに、もっと強くギュッてして下さい・・・。お願いしますぅ・・・。」
千早は鼻に掛かった声で、伊織に懇願する。
「じゃあ・・・。律子にお願いしなさい。どうせ、いままで律子に強くされた事無いんでしょ?律子は凄いわよ〜。
アタシなんて子供騙しみたいなもんだから。」
ゾクゾクゾクッ
千早は伊織に言われて、少し体が震えた。
(伊織さんより・・・凄い・・・。)
「律子さん・・・。」
さっきまでの、恥ずかしがっていた姿ではなく、あられもなく股を開いたまま両手を差し出して律子を見ながら呼ぶ。
「な〜に、千早?」
律子は見た事のない千早の行動に興奮してドキドキしながらも、目を細めながら聞いた。
「私に、ギュッてして下さい・・・。強く、激しく・・・おかしくなる位・・・。」
「良いわよ・・・。」
律子の方が千早の雰囲気に飲まれるように、ゆっくりと近付いていく。
伊織は邪魔にならないように一旦自分の両腕を千早の体の前から引いて、自分の手前に戻した。
(千早・・・律子にされて、どうなっちゃうのかしらね。)
ちょっとドキドキしながら、伊織は少しの間見守る事にした。

「私は伊織とは違うけど、ちゃんと満足させてあげるわ。」
「あ・・・。はい・・・。」
優しく微笑みながら言う律子に、千早は少し正気に戻って照れ臭そうにしながら答えを返した。
律子はそっと、千早の胸に手を当てる。既に興奮している千早の立った乳首が掌に当る。
そして、優しく優しく手全体を使って、千早の両胸を包み込みながら揉む。
ふにぃ、むにゅぅ、もにゅぅ
「ぁ・・ふぁあ・・・あぁ・・・。」
(こんなに・・・優しい・・・でも・・・気持ち・・・良い・・・。)
少し顎が上がって甘い声を上げる千早の首筋に律子は優しくキスをする。
チュ、チュッ
「こうやって、伊織の胸も大きくしたのよ・・・。千早の胸もちゃんと大きくしてあげる・・・。」
キスしながら律子は呟くように言いながら、胸を上下左右に優しく揉んでいく。
律子の手の中にある小さな千早の胸は吸い付くように形を小さく変えていっていた。
それと同時に、敏感に立っている乳首が微妙に擦れていた。
(ふわふわして・・・気持ち良い・・・。)
伊織のように激しい感覚とは全く違い、律子の優しく包み込むような初めての感覚に、千早は少しボーっとなっていた。
はむっ、かりっ
「あっ・・・。」
首筋をキスしていた律子が、今度は甘噛みする。千早はそれに敏感に感応して短く声を上げる。
スッ、むににぃ、もににゅぅ
そして、中指と薬指の根元に乳首を引っ掛けてから、不規則に揉んでいた胸を、円を描くように揉み始める。
揉んでいる間にも、たまに乳首を挟んでいる間を狭くしたり広くしたりして刺激する。
「はぁあ・・・律子・・さ・んぅ・・・気持ちぃ・・・いぁ・・・。」
「千早・・・こっち向いて。」
顎が上がっていた千早は、下ろして正面に居る律子を見る。律子は軽く舌で自分の唇の上下を舐めながら顔を近づけて来る。
そして、その舌を真っ直ぐ伸ばしながら迫ってきていた。千早はその律子の舌に応えるように自分の舌を出して絡ませる。

その舌を絡ませたまま、キスをする2人。
「はむぅ・・・んんぅ・・・。」
(千早・・・。)
「はんっ・・・んっ・・・。」
(律子さん・・・。)
頭を動かすようにして2人は求め合うように、キスが深いものになっていく。
千早の両手は自然と律子の首に回っていて、舌も絡み合って2人はどんどんと気持ちが高まって行っていた。

(さ〜て、そろそろ良いかしらね。)
伊織は二人を見ながら、目を細めた。そして、がら空きになっている千早の下半身へ右手を伸ばしていく。
にゅちぃっ
(うわぁ・・・。)
「千早ってば、こんなに興奮しちゃってるんだ〜?」
蜜で完全に濡れ切っている蕾を触った伊織は驚きながらも、少し意地悪そうな感じで言った。
「んぅっ!?」
フワフワしていた千早は、突然の感覚と伊織の言葉に驚いて我に返った。
「大丈夫よ・・・。優しくしてあげるから・・・。アタシには出来ないその気分に酔ってイきなさい。」
そう言いながら、伊織は優しく指で蕾をなぞり始めた。
「んふぅ・・・んぅ〜・・・。」
鼻から漏れてくる千早の息と甘い声が律子を更に興奮させる。
ただ、キスと舌での攻めは激しくなるものの、胸だけは優しく丁寧に揉んでいた。
にゅるぅ、にゅちゃぁ
伊織の方も、ゆっくりと丁寧に蕾を指でなぞる。既に全部の指が、千早の溢れ出る蜜でぬるぬるになっていた。
「んぷぁっ・・・。」
「ぷぁっ・・・。」
律子はキスを止めて、舌を出したまま一旦千早から少し顔を離す。
「律子・・ひゃ・・・ん。」
お互いの伸びている舌の間にはまだ唾液の太い糸が残っていていた。
それが切れないように、千早は舌を出したままにして離れていく律子を見て切なそうな顔をする。

「んふふっ、可愛い。」
律子はそう言って目を細めてから、今度は千早の耳元へ口を近付けていく。
伊織はそれを見て、空いている左手で千早を横に向かせた。
「ぇっ?・・・んぅ!?」
「んんっ・・・。」
そして、驚いている千早に伊織は不意打ちでキスをした。
れろぉ
「んんぅ!」
ぴくぴくっ
驚いている所へ今度は律子が耳を舌で舐める。それに、敏感に反応して千早は小刻みに震える。
その瞬間、律子の首に回していた両手から力が抜けた。
千早は伊織の口の中に舌を入れようとすると、逃げるように伊織は唇を離す。
「伊織・・さ・・・ん。」
切ない顔をして、上目遣いで物欲しそうな顔になりながら千早が言う。
「大丈夫よ、ちゃ〜んとイかせてあげるから。」
伊織はそう言いながら、律子とは反対側の耳へ口を近付けていく。
千早は動こうにも体に力が入らず、伊織の左腕に固定された形になって。顔は左側を向いたままになっていた。
「くぅぅん・・・。」
切なさでいたたまれなくなって、千早は子犬のような声を出す。
「大丈夫よ千早、ちゃんと優しくイかせてあげる・・・。」
「そうそう。アタシと律子を信じなさい。」
2人の言葉を聞いて、千早は黙ったまま小さく頷く。
れろぉっ、はむぅ
左右の耳を、律子は舐めて伊織が甘噛みする。
「!!!」
そうすると、さっきまでとは全く違い、一緒に優しくもまれている胸と、弄られている蕾から一気に首筋まで感覚が上ってくる。
更にそれと両耳の感覚が後頭部で一緒になって脳天へと駆け抜ける。
今までに無い感覚に千早はどう反応して良いのか分からなく、硬直していたが頭の中が真っ白になりそうだった。

「イって千早・・・。」
「アタシ達で、ね・・・。」
はむっ、はむっ、むにぃっ、くちゅぅっ
「かっ・・・はっ・・・ぁああ・・・・。」
ピクッ・・・・ピクッ・・・ピクッ・・・
両耳を律子と伊織に打ち合わせたかのように甘噛みされると、
千早は目を見開いて顎が上がってその場で体中に広がっていく電気のような感覚と
熱い感覚に途切れ途切れに声を出して小刻みに震えながらイっていた。
そんな千早を律子も伊織も満足そうに見ていた。

「伊織、場所変わって貰える?」
「良いわよ。」
くったりしている千早の前後で2人は言い合った。
律子は全く力の入っていない千早の両腕を自分の首から外してそっと、元の位置へ戻した。
伊織の方は、ゆっくりと横を向かせていた顔を元に戻して、体を支えながら律子と入れ替わって千早の前に移動した。
「こんなにだらしなくよだれ垂らしちゃって。よっぽど気持ち良かったのネ。」
目がトロンとして口が半開き状態の千早の顔を見ながら伊織は満足そうに呟いた。
入れ替わって千早の後ろへ移動した律子は、千早の両膝の裏に腕を入れて持ち上げながら、自分が椅子に座った。
そして、自分の腿の上に千早を座らせた。
「ふぁ?」
千早は自分に何が起こっているのか分からなかったが、浮いた感じがしたので不思議そうに声を上げた。
そして、左腕で千早の両足の膝裏を抱え込んだ。力のある律子はそのままの格好で完全にロックした。
思いっきり引き寄せたので、律子の豊満な胸が千早の背中に押し付けられた。
「うわぁ、千早エッチな格好してる〜。」
「えっ!?」
伊織に言われたのと背中に律子の胸を感じて我に返った千早は、自分のしている格好を頭を下げて見てみた。
胸の少し前に両膝が合わさっていて、蕾が伊織に向かって丸見えになっていた。
「わっ!?キャッ!」
恥ずかしさで顔が真っ赤になって、
千早はその場で両腕を振ってジタバタ暴れるが律子にガッシリ抑えられて動く事が出来なかった。
「千早大人しくなさい。ちゃんとお願いされた事を実行するだけだから、ね?」
ピタッ
「は・・い・・・。」
耳元で囁かれて、千早は暴れるのを止めて静かに返事をした。その間、千早は期待感からゾクゾクしていた。
「伊織、胸は頼むわね。」
「はいは〜い。さあ。千早覚悟しなさいよ〜。おかしくしちゃうんだから。にひひっ♪」
律子の言葉に答えた後、伊織は目を細めて悪戯っぽく言いながら千早へ近付いて行った。
(私・・・どうなっちゃうんだろう・・・。)
千早は不安も少しあったが、それよりも期待で顔を赤くしながらドキドキしていた。

伊織は、千早の腿の裏に胸をつけて、千早の膝から下を自分の肩に乗せるようにしてから、
両手を左右から千早の胸に向かって伸ばす。
キュッ、キュッ
そして、さっきとは違って、一気に両乳首を持って捻る。
「んひゃぅっ!」
一気に来た強い感覚に、千早は仰け反ろうとするがガッチリ押さえ込まれているので、頭だけ後ろに反る形になって声を上げた。
ぴちゅっ
(凄い濡れ方・・・。)
律子が千早の蕾に右手を当てると、溢れ出ている蜜が手にべっとりと付いた。それは、律子を興奮させるには十分だった。
にゅぷぅ
「んぁあっ!?」
いきなり蕾に中指だけだったが沈められたので、千早は変な声を出した。
ただ、さっきまでとは違って一気に脳天まで感覚が突き抜けた。
「行くわよ千早、滅茶苦茶にしてあげる・・・。」
律子は妖しくそういうと、千早だけでなく伊織までも背筋がゾクゾク来ていた。
にゅぷぷぷっ
「あぁぁあああ。」
一気に中指に続いて薬指も一緒に蕾の中へと押し込まれていく。
ただ、濡れに濡れ切っていたので痛みは全く無かった。それよりも、その感覚が違和感ではなく千早にとって快感でしかなかった。
声を出した口からは、更によだれが垂れ初めて目が一瞬でトロンとなっていた。
クリッ、クリリッ、クニュッ
「ふぁ・・・はぁあ・・・乳首ぃ・・・。」
下からの律子の指に合わせる様に、伊織も乳首を転がす。千早は敏感に反応して声を上げる。
にゅるんっ、にゅぷぅっ
「ひゃんっ!」
奥まで入れられた、律子の指が今度は一気に引き抜かれて、再び奥まで押し込まれる。
余りの気持ち良さに、頭の中が真っ白になりそうになる。
「き・・・きもち・・・いひぃ・・・。」
千早は両腕がダランとなって、ボーっと天井を見詰めるような感じで、途切れ途切れに甘く台詞をこぼす。

(んふふっ。こんなものじゃないわよ・・・。)
律子は千早の反応を満足そうに聞いてから、目を細めた。
にゅじゅぅっ!じゅぷぅっ!ぐちゅっ!
「ひゃぅっ!あっ・・・やっ・・・はげしっ・・・あんっ。」
急に律子の指の動きが早くなって、千早は喘ぐ。
キュキュッ、ギュッ、ギュゥーーー!
「ふひゃぁっ!ちくびぃ・・・らめぇっ!なかもらめぇっ!!!」
千早は律子の膣内への指攻めと伊織の乳首攻めに首を左右に振って叫ぶように言う。
ぐちゅっ、ギュッ、ぐちゃっ、ギュギュッ
「ひゃぁぁあああ、らめっ、らめぇええ、ひっぐぅぅうううーーーーー!!!!」
曲がっていた足が真っ直ぐになって、ピンと爪先まで伸び切って叫びながら、千早は派手にイッた。
「はあっ・・・はあっ・・・。」
ビクンッビクッビクッ・・・
何回か痙攣を起こして、千早は荒い息を吐いていた。
(指に千早の熱い蜜が絡んでる・・・。)
イッた直後、蕾から律子の指にドロッと千早の蜜が流れ出していた。
にゅぽんっ
「あんっ。」
律子は、千早の蕾から指を引き抜いて、それを自分の口へ運んだ。
ぴちゅっ、ちゅぴっ
「千早の蜜・・・熱くて・・・美味しい・・・。」
恍惚とした表情で律子は嬉しそうに濡れた指を舐めていた。
その音と、声を聞いて千早はゾクゾク来ていた。伊織の方はその様子を見てうっとりしていた。
にゅるっ
「んあっ・・・。」
「ほら、千早アンタのよ。こんなにいやらしく濡れてる。」
伊織は千早の蕾を軽くなぞってから、その指を見せる。
「ぁ・・・。」
ちゅっ、くちゅっ、れろぉ
見ている千早に見せ付けるように、伊織は蜜で濡れた指を舐める。千早は物欲しそうな顔になってその様子を見ている。

「舐めたい?」
「はぃ・・・。」
伊織に聞かれると千早は素直に返事をする。
「ぁむぅ・・・。」
(伊織さんと私の味がする・・・。)
千早は目を閉じて差し出された伊織の指を丁寧に舐める。
律子はその様子を見ながら自分の指を舐めるのを止めて、再び下へと持って行く。
にゅっぷぅ
「んんぅっ!?」
一気に押し込まれた律子の指に、千早は目を見開いて声を上げる。それを見て伊織は自分の指を千早の口から抜き取る。
じゅぷっ、くちゅっ、ぐちゅっ
「やっ・・あっ・・・イッたばっかりぃ・・・ひゃうぅ。」
(イッたばっかりで、敏感になってて・・・また・・・。)
そんな千早の反応を見て、伊織も再び乳首へと両手を伸ばす。
「何度でも、イッちゃいなさい。」
ギュリリッ!
伊織はそう静かに言って、思いっきり乳首を捻り上げた。
「っ!!!ひゃぅぅうう、いっくぅぅうぅーーーー!!!!!!」
千早はさっきよりも激しく叫びながら派手にイッた。
ビクッ、ビクッ、ぴくっ
体だけでなく天井に真っ直ぐ伸びている爪先も細かく震えていた。
「・・・。」
律子は無言のまま、一旦止めた指をまた無造作に動かし始める。
キュッと締め付けられているにもかかわらず、そのまま遠慮なく千早の膣内を指で犯す。
「はっ・・・はぁ・・・らめぇ・・・りつこひゃん・・・らめぇ・・・おかひくなっひゃうぅ・・・らめぇ!」
千早はその場で、頭をブンブンを大きく左右に振って懇願するが、律子は止めなかった。
そして、伊織もまた無言で千早の乳首を攻め続けた。

「らめぇ・・・きもひいぃ・・・。」
千早はもう何回イッたか分からなかった。今は黒目が目の上に来ていた。
何回か失神したが、その度に起こされて快楽の中へと落とされていた。
律子は千早を開放して、今千早は力なく自分の方へ寄り掛かっていた。
「流石にちょっとやりすぎたかしら。」
苦笑いしながら律子は千早の様子を見て呟いた。
「そんな事無いわよ。こんなの序の口だし、内心では喜んでるわよ。暫く休めば元に戻るわ。」
伊織は千早の様子を見ながらあっけらかんと言った。
「ふぅ、全く伊織・・・知らない間に千早ととんでもない事になっていたのね・・・。」
律子は溜息をついてから、呆れたように言った。
「だって、律子から離すには本気で落とすしかなかったから。でも、律子がここまで攻めるなんて意外だったワ。」
「まあ、ちょっと調子に乗りすぎたかもって反省してるわ。」
「そんな事無いわよ。千早も凄く満足してるわ。こんな短時間でこれだけの満足そうな顔は見た事ないもの。」
「そう?素直に喜んでおこうかな。」
苦い顔をしていた律子だったが、最後には少し笑っていた。
「とりあえず、ベッドに行かないと行けないから、悪いけど伊織。バスタオル3枚持って来てくれる?」
「はいは〜い。ちょっと待っててね。」
伊織は返事をするとすぐに浴室から脱衣場へ出て行った。その間に律子はシャワーで千早を綺麗にしていた。
「りつこひゃん・・・。すごかっられすぅ。」
シャワーで体を流されている千早は呂律の回らない言葉だったが嬉しそうに言った。
「そう?良かったわ。」
(私もすっごく興奮しちゃったわ・・・。)
律子は微笑みながら答えた後、興奮した自分のものか垂れてきていた千早のものか分からない自分の蕾の周りの蜜も綺麗にしていた。
「お待たせ〜。はい、バスタオル。」
「ありがと、じゃあ先に千早を拭いてから、私が抱えていくわ。」
「2人ともあんまり動けないだろうから、アタシが拭くね。」
伊織はそう言ってから、先に律子を拭いてバスタオルを巻いた後、今度は律子と一緒に千早を拭いてバスタオルを巻いた。
そして、最後に自分を拭いてバスタオルを巻いた。
「よっと。」
軽々と千早をお姫様抱っこして、律子は立ち上がった。先行して伊織がドアを開けて寝室まで移動して行った。

「とりあえず、千早は一旦ソファに横にしておけば大丈夫。
寝室に入った後、伊織がそう言いながらソファの方を少し動かす。
「でも、ベッドじゃなくて良いの?」
律子はボーっとしている千早を心配そうに見ながら伊織に聞き返した。
「大丈夫、大丈夫。ベッドは最後に三人で寝れば良いし、アタシ満足してないし律子だってそうでしょ?」
「まあ、そりゃそうだけど・・・。」
それでも、律子は不服そうに呟く。
「そんなに心配だったらそこに寝かせておいて、少しして見てダメそうならベッドに移せば良いでしょ?」
「そうね。じゃあ、千早。横になるわよ。」
「はひぃ。」
目はうつろなままだったが、千早は返事をする。
(本当に大丈夫かしら?)
何とも言えない顔で、律子は千早をソファに静かに置いて寝かせる。
一旦伊織の方を見るが、やはり心配になって、千早の方を振り返る。
「そんなに心配しなくても大丈夫よ。千早はタフだから。
実際にそういう状態の千早を散々見慣れてるアタシが言うんだから間違いないわ。」
「それもどうなのかしら・・・。」
伊織に言われて、再度伊織を複雑そうな顔で見ながら言った。
「にひひっ。これから分かっていくわ。さっ、今度はアタシ達の番。千早もそのうち気が付いて混ざる事になるわよ。」
「全く・・・ホントに知らない内に伊織は恐い子になっちゃったわね。」
「そんな事無いってば。律子には適わないよ。黙ってたりしたお仕置きされちゃうかな?」
「んふふっ、そうね。」
2人は少し笑い合って、律子は、ベッドの上に居る伊織に近付いていく。

「ごめんね、伊織・・・。」
「ううん、アタシの方こそ・・・。好きよ律子・・・。」
「私もよ、伊織・・・。」
2人は言い終わって熱く見つめ合った後、目を閉じて唇を重ねた。
そのまま、2人はベッドに横になる。
自然と離れてから、先に律子が伊織のバスタオルをゆっくりと引いて行く。
伊織もそれに合わせるように体を自然と浮かせる。そして、それで自分の濡れた髪を巻く。
それが終わってから今度は伊織の方が律子のバスタオルに手をかける。
ぷるんっ
引き抜いていくとバスタオルの間から律子の豊満な胸が現れて揺れる。
(ムムム・・・。)
伊織は、律子の胸を見て一瞬ピクンとして止まるが、またバスタオルを引き抜きにかかる。
律子の方も体を浮かせてバスタオルを抜けやすいようにする。
少しして抜け終わると、伊織も自分の濡れた髪にバスタオルを巻く。
「さ〜て。」
「頭を浮かさずにどうするの伊織?」
(やれるものならやってみなさい。)
意気込む伊織を見て、律子は挑発的な言い方をする。
「今の体勢だと、アタシの方が有利よ。律子の弱点狙い易くて、アタシの弱点狙い難いもん。」
(今絶好のチャンス!アタシが律子を・・・。)
言っている伊織の目は、いつに無く獲物を捕らえるような光を発し輝いていた。
「それはどうかしらね?」
(伊織ったら・・・。んふふっ。)
そんな伊織の目を見ても、律子は余裕の笑みを浮かべながら言った。

2人が向き合って、距離的には近いがバスタオルを巻いた為、まともには動き難い。
この体勢のまま動くとすれば、手足の長い律子の方が有利に感じるが・・・。
(にひひっ、アタシは見逃さなかったわよ!)
伊織なにやりと笑って、右手を律子の蕾に伸ばした。
ちゅくぅ
「んぁっ。」
律子の蕾は、さっきの千早を攻めていた興奮もあってか濡れていた。
不意を撃たれた律子は小さく声を上げながら、伊織の攻撃を防ぐ為に両手で右の手首を抑えに掛かる。
「引っかかったわね、律子。」
伊織は右の手首を抑えられたが、そう言って空いている左手を胸に伸ばした。
「えっ!?。」
むにゅっ
ベッドと律子の右胸の間に手を滑り込ませて、揉み上げる。
「ぁっ・・・。」
律子はピクンと動いて、少しだったが甘い声を上げる。そして、抑えていた両手から力が抜ける。
(行けるわっ!)
にゅぷぅう
伊織はそのまま、右手の中指と薬指を律子の膣内に入れた。
「ふぁあぁ。」
律子は少し仰け反って、完全に両手から力が抜けた。
「にひひっ、律子が胸とここが弱いのは知ってるんだから。まだまだこれからよ〜。」
「い・・おりぃ・・・。」
伊織がそう言ってから、律子は言葉を続けようとしたが・・・
くにくにっ
膣内に入っている、2本の指を前後に動かす。
「くひぃっ!」
律子は声を上げて、何とか伊織の右手を止めようと殆ど力の入らない両手で掴もうとする。
「こんなに熱くてドロドロで・・・ウネウネ絡まってきて・・・。」
伊織はそう言いながら更に指で膣内を攻めて、更に胸も揉みしだく。
くちゅっ、もにゅっ、くにくにっ、むにゅぅ
「あっ・・・うぁっ・・・くぅっ・・・やぁぁ・・・。」
律子は一方的に攻められていたが、自分の弱点を確実に弄られる事で気持ち良くなっていて喘いでいた。

「悔しい位こんなにグラマーで・・・。こんなに気持ち良くなってるのに止めて欲しい訳ないわよね?」
伊織は律子を一方的に攻めている事と、目の前で喘いでいる事が嬉しくて興奮していた。
「それぇん・・・わはぁあ・・・。」
そして、答えようとしている律子の答えなど元より聞くつもりも無くニンマリ笑いながら更に攻め続ける。
くちぃ
「!?駄目ぇ!三本は・・・。」
にゅぷぷぷ
必死になって律子は言ったが、伊織は無言のまま容赦無く人差し指も膣内に沈めて行く。
「んぁぁっ・・・。あぁぁ・・・。」
(駄目・・・気持ち良過ぎて・・・。)
完全に力が入らなくなり、律子の目がトロントなっていく。

(律子さんの甘い声が聞こえる?)
ボーっとしていた千早は、意識が戻ってきて余り聞いた事のない声に内心で首を傾げていた。
更に少しすると意識がハッキリしてくる。
ふと合った焦点で見えたのはバスタオルでくるまれた髪と、時々ピクピクと動いているグラマラスな律子の後ろ姿だった。
そして、耳には律子の甘い喘ぎ声とそれよりも小さかったが卑猥な音がはっきりと聞こえた。
(律子さん・・・。)
千早は興奮気味に立ち上がって、両手を伸ばしながらフラフラとベッドの方へと歩き始めた。

(んっ?)
伊織は視界に影と、何かが映ったのでそちらに目を向けた。
そこには千早が居た。
(気が付いたのね・・・。それなら・・・。)
伊織はニッと笑って一旦動きを止めた。

「はぁ・・・はぁ・・・。」
(止まった・・・。伊織ぃ・・・。)
息を切らしながらも、快楽の渦から抜け出した律子の目に光が戻って来ていた。そして、その目は伊織を捕らえていた。
「千早、大丈夫?」
「あっ、はい。あの・・・今、律子さんが・・・。」
伊織が聞くとハッとして千早は我に返る。
そして、答えてから急に止まった律子の声や卑猥な音が消えた原因を知りたくなり聞いた。
「どう、千早?律子をイかせたくない?」
「えっ!?私がですか?」
ニヤニヤしながら言う伊織の言葉に驚いて千早が聞き返す。
「そうよ、だって、さっき一杯気持ち良くして貰ったでしょ。今度はその恩返しをしないと、ね?」
「恩返し・・・。」
ゴクッ
千早は生唾を飲んで、律子の体を見下ろした。
「千早・・・。駄目・・・よ・・・。」
「律子さんっ!?」
律子はなんとか力を振り絞って声を出す。千早はそれに驚いてびっくりする。
「そんな事言っちゃだ〜め。」
(流石は律子・・・だけど・・・。)
くににっ
伊織は感心しながらも、膣内にある3本の指を不規則に動かす。
「くっぁああ・・・。」
ビクビクッ
律子は不意に来た感覚に仰け反って声を上げる。
「伊織さん・・・律子さんが・・・。」
「良いわネ?ち・は・や。」
気不味そうに言う千早に、伊織は二人きりの時にNOと言わせない感じになって言う。
「・・・はい。」
(千早っ!?)
下から来る快楽で薄れそうな意識の中で律子は驚いていた。

「良い千早、律子は胸が弱いからよ〜く揉んで上げて。アタシはもう一つの弱点のアソコを弄るから。
遠慮なんてする事無いわよ。さっきも言ったでしょ、気持ち良くして貰ったんだから、
今度は千早が律子を気持ち良くしてあげるの。
おかしい事なんて無いでしょ?ほら、突っ立ってないでそっちに寝転がって後ろからしてあげて。」
「はっ、はい。」
どうして良いか迷っている千早に、伊織が促すと恐る恐る律子の後ろに寝転ぶ。
(律子さんの良い香り・・・。)
千早は目を閉じて鼻から息を吸い込んでいた。
そして、目を開けると目の前には律子の汗ばんだうなじ、息をして上下している背中から腰への綺麗なライン、
ひくひくと揺れているムチムチしたお尻、そして、太腿から垂れているいやらしい蜜。
(律子さん。こんなに綺麗でいやらしい・・・。)
千早は興奮して一気に頭に血が上った。
さっきまでの律子へ手を出す恐れなど吹き飛び、右手をベッドの下に滑り込ませ、左手は上から前に回す。
千早の手が目に入ると伊織は左手を律子の胸からどかして、自分の右手を抑えている律子の両手の方へ伸ばした。
むにゅぅう
(柔らかい・・・。)
「・・ぁ・・・。」
千早が律子のボリュームのある胸を包み込むと、律子から小さく声が上がる。
(律子さんが・・・感じてる・・・。)
むにぃ・・・ふにゅぅ・・・もにゅぅ
千早は興奮して、少し鼻息が荒くなって、両手から溢れ出しそうな胸を包み込んでこねるように揉む。
「はっ・・・あんっ・・・くぅん・・・。」
(駄目・・・千早・・・・上手で・・・。)
律子は喘ぎながらも下半身を攻められている伊織の右手首を放して、
何とか攻められっ放しの状況を打開しようと、胸を攻めている千早の手を抑えようと両手を上半身の方へ持って行こうとする。
(そうはさせないわよ・・・。)
伊織はそれを見逃さずに、右手はそのままで左手を重ねるようにして律子の股に滑り込ませる。

くにくにっ、くりっ
膣内を三本の指でかき回して、同時にクリを空いている右手の親指と左手の中指で挟むようにして弄った。
「ふぁ・・・ぁぁああ・・・んはぁっ。」
仰け反れずに、その場で少し前屈みなりそうな感じになって声を上げる。
両手から力が抜けてしまって完全に途中で止まってベッドの上にダランとなっていた。
千早の胸の攻めと伊織の膣内と蕾、クリの弱点攻めに、律子は完全にされるがままになって、抵抗する事も忘れて喘いでいた。
「律子・・・。ほら、自分の蜜よ。」
伊織はそう言ってべたべたになっている、左手の人差し指と中指を返事の出来ない律子の口に当てる。
律子は恍惚とした表情で自然とその2本の指を咥えて、いやらしく口で舐め始める。
ぴちゅっ、ちゅくっ、れろっ
(律子すっごくいやらしい・・・。)
自分の指が舐められているのも合ったが、その様子を見ているだけで、伊織は変に興奮していた。
(さあ、一回イッて貰うわよ〜。)
伊織は目を細めて右手を動かし始めた。
「あっ・・・いお・・りぃ・・・だぁ・・・めぇ・・・。」
「にひひっ、何言ってるかわかんな〜い。」
聞こえていたが伊織はわざとそう言って、容赦なく律子の膣内にある三本の指を動かす。
くにゅくにゅ、にゅにゅ、
「やぁ・・・らめっ・・・ひろげ・・・ないれぇ・・・。」
むににゅぅ、にゅもにゅ
「むねぇ・・・やさし・・・んっ・・・。」
下とは違い丁寧に千早から揉まれる胸も律子を確実に絶頂へ向かわせようとしていた。
(トドメ!)
にゅにゅにゅ〜、ぐにゅにゅぬ、くいっくいっ
一旦三本の指を広げていってから、それを左右交互に回転させて最後に膣内を擦るように指を曲げて、膣内を弄った。
「はぁぐぅっ!?ひぃぃいい・・・くはぁぁっ・・・ぁ・・・・。」
律子は一気に来た感覚に目を見開いて、口でも大きく息をしながら、イッた。
ビクビクッ、ビビクッ
律子の下半身が何度も痙攣して、完全に腰から中心に力が抜けていた。

「千早・・・胸とアソコ交代よ。千早も舐めさせたいでしょ?」
「はい・・・。」
伊織が言う言葉は呪文のように千早を自然と動かした。
自分から完全に体を密着させて、力の入らなくなった律子の股の間に自分の左膝を割り込ませて、律子の左足が浮くようにする。
胸を揉んでいた両手をそのまま、ツーっと指を立てながら下半身へ下ろしていく。
お腹、へそ、そしてヘア。そこから先はもう蜜でグチュグチュになっていた。
そして、伊織の手に触れると自然と伊織の手が離れて言った。
にゅぽんっ
「んはぁ・・・。」
律子はトロンとした顔のまま少しだけお尻が揺れて、甘い声が漏れた。
にゅるんっ
「くはぁっ!」
すぐに入れ替わるように、千早の右手の人差し指と中指がドロドロの律子の膣内にすんなりと入っていく。
(あったかくて・・・ぬるぬるして・・・締め付けてくる・・・。)
千早は暫く動かさずに、その律子の膣内の感触を指で感じていた。
伊織の方は、律子が一生懸命舐めていた右の指を抜いてそのまま、自分の蕾へと伸ばした。
それと同時に、左手を律子の胸に伸ばしていった。
むにっ
「あっ・・。」
「律子気持ち良い?」
「ぅ・・・ん。」
快感で半分意識が飛びそうになっている律子は何とか返事をしていた。
「アタシも気持ち良くなるよ。んっ・・・。」
ちゅくっ!
伊織はそう言いながら、興奮して濡れている自分の蕾に指を当てる。
(アタシも・・・こんなに濡れてる・・・。)
律子を一方的に攻めていた事で興奮していたが、更にそれで自分も感じている事で更に興奮が高まっていた。

「律子さん行きますよ・・・。さっきの恩返しです。乱れて下さい・・・。」
くにくにっ、くにゅくにゅぅ、ぐりぐりっ
「あっ!ひゃうっぁっ!?そっ、そんな滅茶苦茶にぃ・・・あぅぅう・・・ひっぐぅっ。」
千早の膣内への不規則で激しい攻めは、律子の脳天を直撃して意識を戻したが、それはまた違う快楽の始まりに過ぎなかった。
下半身を動かして逃げようとしたが、足を浮かされているのと、
自分の右足にも千早の右膝が載っていて逃げる事が出来ず、されるがままになっていた。
「気持ち良いですか?気持ち良いですか?」
千早は興奮気味に喘いでいる律子の耳元で聞く。
その内に、興奮して濡れている自分の蕾にも自然と空いている左手を持って来て弄り始める。
グチュッ、くちゅっ、くちゃぁ
「あっ・・・んふぅ・・・律子さん・・・私も・・・気持ちぃ・・・んっ・・・いいですぅ・・・。」
(千早乗ってるわね。アタシだって負けないわよ!)
むににぃっ、むぎゅっ、くりっ
伊織も負けじと律子の胸を強めに揉みしだきながら乳首も弄る。
「あっ・・・やぁあぁ・・・はげしっ・・・んくぅ・・・イッ・・・あっ・・・。」
律子は上下の激しい攻めに、体を硬直させて息も絶え絶えに声を上げる。
「イッて下さい。」
「イッて律子っ!」
にゅりゅっ、にゅぐぐっ!くりりっ!
千早は一回指を抜けそうになるくらいまで引いて、一気に膣内の奥まで押し込んで突き立てる。
伊織もそれに合わせるように、親指、人差し指、中指の三本で乳首を摘んで軽く捻った。
「んはぁぁあああーーー!!!イッくうぅぅうぅうーーーーーー!!!!!!」
律子はその場で大きく叫んで派手にイッた。
その後で体中がビクンビクンとなんども痙攣していた。
そして、荒めに息をしている半開きの口からシーツにかけて、だらしなくよだれが溢れ出ていた。

「よっと。」
(にひひっ、やったわ。)
伊織は体を起こして満足そうに律子を見下ろしていた。
「伊織さん・・・。」
下から伊織を見上げて千早も嬉しそうな顔をしていた。
「体起こして見てみなさい。」
「はい。」
千早は返事をしてから体を起こすと、完全にイッた後の律子が横たわっていた。
(私・・・律子さんをイかせられたんだ・・・。)
思わず嬉しくなって、ちょっとにやけてしまっていた。
「アンタも何だかんだで受けだけじゃなくて攻めも出来そうじゃないの。」
「ど、どうなんでしょう。」
伊織に褒められて、ちょっと照れ臭そうに謙遜して答えた。
「でも、ホントここまで一方的に勝てたのは初めてかも・・・。」
思い出すように腕を組みながら、伊織はしみじみと言った。
「そうなんですか?」
「そりゃそうよ。せいぜい五分に持っていくのが精一杯だもの。まあ、千早。アンタのお陰もあるわね。」
「えっ!?私ですか???」
伊織の言葉の意味が分からずに、千早は不思議そうに聞いた。
「そう、アンタを攻めに攻めたお陰でちょっとは律子にも立ち打ちできるようになったと思うわ。」
「お役に立てて嬉しいです。」
千早はちょっと照れながら答えていた。
2人がそんな話をしている間に、律子の目に光が戻ってきていた。

「さ〜て、もう一回くらい協力して律子を・・・。」
伊織は舌をぺロッと出して、少し興奮気味に呟く。
「私をな〜に?」
「えっ!?」
「!?」
突然後ろで声がして驚いた伊織は声が出たが、
少し怒っている感じのジト目をしているのが分かった千早は硬直して声が出ていなかった。
ガシッ
「よくも好き勝手やってくれたわね、伊織ぃ〜。」
「うっ・・・。千早!助けなさいよ。」
後ろから両手首を握られて全く動けない状態になってしまった伊織は目の前に居る千早に助けを求める。
「千早・・・。今度は私と協力して伊織をイかせない?」
「ちょっ、ちょっと律子、何言ってんのよ!?」
伊織はジタバタしながら何とか逃げようとするが全く動けない。
「あの・・・私は・・・。」
千早は困ったようにそっぽを向きながら言いあぐねていた。
「これ、伊織のね・・・んっ・・・。」
「ちょっ・・・律・・子・・・。」
抑えられている伊織の左手を律子が口まで持って来て舐めると、動揺してジタバタしていた伊織の動きが止まる。
「ねえ、・・・んっ・・・千早・・・ちゅぷっ。千早のも・・・んはぁ・・・舐めさせて・・・。」
「ぁ・・・。」
舐めながら言う色っぽい律子を見て。千早は自然と自分の左手を差し出していた。
ちゅぷっ、れろれろぉ、ちゅちゅっ
律子は目を閉じながら、伊織と千早のそれぞれの蜜がついた指を丁寧に舐める。
その様子に思わず伊織も千早も見入って止まっていた。
「さあ、じゃあ伊織。お返しよ・・・。」
「キャッ!?」
律子はそのまま、後ろに座って自分の上に伊織を乗せる。更に、手首を持ったまま伊織に万歳をさせた状態で寝転がった。
「ちょっ、ちょっと、律子。何て格好させるのよ!」
千早に向かって痴態を晒しているのを伊織は恥ずかしがって、再びジタバタ暴れる。
「さあ、千早。今度は伊織を好きにして良いのよ。おいで・・・。」
律子はそう言いながら、伊織の足の間に膝を立てて伊織の股を開かせて、千早が入りやすいようにする。

「伊織さんを・・・好きに・・・。」
あられもない姿の伊織を見て、生唾を飲んでから律子の言葉に導かれるようにしゃがんで、
膝を立てながら伊織の上に重なるように体を預けていく。
「千は・ゃ・・ぁ・・・。」
れろぉ
伊織が言おうとした時に、律子がすかさず首筋を舐めると、
伊織の体から力が抜けて言葉も止まって少しだけ甘い声が最後に漏れた。
(や、ヤバイ・・わ・・・。)
伊織は力が入らないなりに何とかしようとしたが、体に力が入らない。
「駄目よ伊織、抗うのは・・・。」
はむぅ
律子は伊織の内心を見透かすかのように耳元に囁いて、そのまま耳たぶを甘噛みする。
「だぁ・・めぇ・・・んくぅ・・・。」
伊織は甘い声を上げながら、顎を少し上げて身をよじる。
(い、伊織さん・・・。)
その様子を見て、千早は興奮して一気に伊織に覆い被さる。
「千早、首筋にキスしてあげて・・・。」
「はい・・・。」
チュッ
律子の言葉に、興奮はしていたものの千早は伊織の少し上気した頬を両手で撫でながら、
上がっている顎の右の首筋へ優しくキスをする。
「は・・ぁ・・・。」
(気持ち・・・いぃ・・・。)
伊織は耳と首から来る感覚に、完全に体から力が抜けてくたっとなって、ボーっとなり始めていた。
律子は握っている手をそっと離すと、伊織の腕は力なくベッドの上にだらんとなった。
千早は無意識の内に右手を伊織の胸に伸ばす。
むにぃ
「あんっ・・・。」
伊織は可愛い声で短く声を上げる。
(私より大きい・・・。大きくなってる・・・。)
手で感じたボリューム感とさっき律子が行っていた言葉が重なって、嫉妬心が大きくなっていた。

むぎゅっ!キュッ!
両手で伊織の胸を力強く握って、指で乳首を捻っていた。それは無意識の内に、気持ちが手の動きに出ていた証拠だった。
「くひいっ!?」
伊織はボーっとしていたのから痛みで仰け反りながら一気に現実へ引き戻されていた。
反射的に両手が動きそうになるのを、律子は再び押さえ込んだ。
「駄目よ千早。伊織は私や貴方と違って優しくしてあげないとイけないから、ね?」
「あっ、はい・・・。」
律子の言葉に興奮状態から戻った千早は、返事をしながら手や指から力を抜いた。
「千早・・・覚えてなさいよ・・・。」
伊織は痛みで少し涙目になって、千早を睨みながら言った。
「す、すみません・・・。」
千早は気不味そうに、目線を逸らしながら謝った。
「ほらほら、伊織。怒った所で貴方の立場が変わった訳じゃないのよ。ねえ、千早。
お詫びにちゃんと伊織を気持ち良くしてあげなさい。」
「ちょっと律子!」
「はい・・・。」
伊織は再びジタバタするが、律子も千早も意に介さなかった。
チュッ、ふにっ、くりっ
「なっ・・・やぁ・・・あぁぁ・・・。」
律子に首筋をキスされて、さっきとは全く違い優しく乳房を揉みながら乳首を弄る千早。
「もっと・・・感じて下さい・・・。伊織さん・・・。」
れろぉ・・・はむぅ、れろっ、はむっ
千早は囁いてから、首筋を舐めつつ耳たぶの所までくると、そこを舐めたり甘噛みしはじめる。
律子はそれに合わせるように反対側の耳を優しく舐める。
「ぁ・・・ら、らめぇ・・・ふたりれ・・・みみらめぇ・・・。」
伊織は再びボーっとしてきて、頭にピリピリとする感覚と背筋からも上がってくる快感に呂律が回らなくなっていた。
ふにぃ、むにぃっ、もにゅぅ
千早は、更に優しく優しく乳房を揉んでいた。
「ふぁ・・・ぁ・・・。」
(ふわ・・ふわ・・・するぅ・・・。)
伊織は気持ち良さにピクピクして、口元からよだれがツーっと垂れていた。

千早は両胸を弄っていたが、右手をそっと伊織の下半身の方へと伸ばす。それと同時に耳を攻めていた頭を胸の方へと移動させた。
(伊織さんの胸・・・小さいけどふっくらした膨らみ・・・。)
はむぅっ
千早はまじまじと見た後、伊織の左胸を頬張った。
「はっ・・・んぅ・・・。」
伊織はピクッと反応して声を上げる。
舌で大きく外側から、内側に向かってゆっくりと円を描きながら舐めていく。
れろぉ、ツーー
声にならない声で、伊織は体をくねらせながら感じていた。
小さな乳輪を舐め終わると、舌でコロコロと乳首を転がす。最後に舌を引いて唇だけで乳首を咥えた。
それと同時に、下に伸ばした右手で伊織の蕾を触ると・・・
ぬちゅぁっ
(凄い濡れてる・・・本当に首とかだけでこんなになっちゃうんだ・・・。)
千早は驚き半分感心半分の状態で軽く蕾を弄った。
くちゅっ
「ひんっ!」
伊織は、二人に攻められた事が無かったので、首、耳、胸、蕾と四点から同時に来る感覚にちょっと戸惑いを覚えていた。
「大丈夫よ、伊織。これからは当たり前になっていくから、ね?」
「ぅ・・・ん。」
変化に気がついた律子の耳元で囁く言葉に、伊織は短く返事をした。
「自然に・・・感じて・・・。」
チュッ
そう言うと、律子は優しくうなじにキスをした。
「こんなぁ・・・アタ・・シ・・・すぐにぃ・・・イッちゃぅ・・・。」
伊織は途切れ途切れに言いながら、体中を駆け巡っている感じた事の無い新しい感覚にイきそうになっていた。
チュッ、チュッ、ふにぃっ、くちゅっ
「あっ・・・らめっ・・・らめっ・・・らめぇぇぇええええーーーー!!!!!」
優しく首筋にキスされ、乳首を吸われ、胸を揉まれ、蕾を弄られて伊織は身を強張らせて叫びながらイッた。

「はあっ・・・はぁ・・・。」
(二人に・・・イかされちゃった・・・。)
伊織は脱力していたがイッた後、余韻もあって満足そうにしていた。
「んふふっ、伊織。まだよ・・・。」
「ふぇっ!?」
妖しく笑いながら言う律子の言葉に、伊織は驚いて声を上げる。
「千早・・・。伊織のあそこ丁寧に舐めてあげて。溢れ出して止まらないだろうから。」
「はい。」
素直に千早は返事をして、すぐに頭を伊織の胸から股の位置へと下げていく。
目線がおなか、へそ、薄いヘアーを通過して濡れ切った蕾に移っていく。
「ちょっ・・・んくぅぅ・・・。」
ちゅくっ、ちゅるっ
伊織が言おうとした瞬間に、千早は伊織の濡れた蕾にキスしながら舐め始める。
(舐めても溢れてくる・・・。)
じゅるっ、ぐじゅっ、ちゅくぅ
その溢れている蜜を少し吸いながら、卑猥な音を立てて舐める。
「ひぁ・・あっ・・・あんぅっ・・・。」
伊織は少し仰け反って、逃げるように腰を上の方へずらそうとするが、千早はガッシリと両腕で腿を抱え込んで逃がさなかった。
抑えている力は強かったが、ひたすら優しく伊織の濡れた蕾を舐め続けていた。
律子の方は、完全に力の入らなくなった伊織の両腕を放して、自分の両手を伊織の胸へと持って行った。
もにぅ、むにぅ、ふにぃ
「・・・ぁ・・・。」
(いつもの優しい律子の・・・。)
伊織は蕾から来る快感に支配されていたが、律子が自分の胸を弄り始めるといつもの感覚にホッとして身を委ね始めた。
(んふふっ、安心したのね。)
変に動かなくなった伊織を感じて、律子は胸を弄りながらうなじから右の首筋、またうなじに戻って左の首筋。
そして耳も片方ずつ確実に舐めて攻めて行った。
「は・・・ぁ・・・・いぃ・・・。」
伊織はさっきとは違うが、やはり今までに無い二人からの攻めに甘い声を上げていた。

(もっと・・・気持ち良くなって貰いたい・・・。)
千早はそう思って、舐め続けていたが、その内に目の端にクリが入ったのでそちらに上唇を軽く当てた。
ぷにっ
「だっ・・・らめっ・・・そんなぁん・・・ちは・・・やぁっ・・・クリ・・・んぅう・・・。」
今までとは違い、少し強めの感覚が着たので悶えながらも伊織は少し腰をくねらせながら言った。
ぷにぷにっ、くりくりっ
千早はさらに唇だけで刺激した後、舌を寝かせて伊織のクリをまわりから刺激した。
「クリぃ・・・ばっかぁぁ・・・らめ・・・ぇ・・・。」
伊織はそう言ったが、千早は止めようとしなかった。
それどころか逆にクリを中心に蕾と一緒に舐めていた。どんどんと止め処なく伊織の蕾からは熱くいやらしい蜜が溢れ続けていた。
(トドメ、かな・・・。)
かぷっ!キュッキュッ
律子は優しく舐めていたのを辞めて、少し強めに伊織の首筋を噛みながら、両方の乳首を中指と親指で強めに摘んだ。
「ダメェぇーーー!!!イッくくうぅぅうぅううーーーー!!!!!」
プシャッ
伊織は全身に電撃が走った感覚に襲われた後、
快感が律子に噛まれた首筋に集中して一気に頭の中に広がったかと思うと、それが全身にも駆け巡った。
両手でシーツを掴みながら派手にイって、潮を吹いていた。
それが千早の顔に掛かっていた。ちょっと驚いた千早は目をぱちくりしていたが、それを自分の指でとって見ていた。
(こんなに・・・伊織さん・・・感じてくれたんだ・・・。)
そう思うと変に興奮して、自分の指を丁寧に舐めていた。

「よっと・・・。」
ヒクヒクしている伊織をそっと律子は自分の上から右隣に下ろした。
「はっ・・はぁっ・・・。」
伊織は目がトロンとした状態で、息が途切れ途切れになって天井を見上げていた。
(これは暫く復活は無理かな?流石に二人からの攻めなんてされた事無いから派手に乱れちゃったわね。でも・・・可愛かった。)
律子は伊織の横顔を見ながらにこやかに微笑んでいた。
「律子さん、伊織さんは大丈夫でしょうか?」
千早は我に返って、心配そうに聞いた。
「大丈夫よ。さ、千早。どうする?私は今下になってる。私を一人で攻めてみる?出来ればだけど、ね。」
律子は挑発的な口調で、自分の股を開いて千早に見せながら言う。
(私が律子さんを・・・。今の私なら・・・。)
千早は意を決して、律子の左足を取って股を更に開かせる。そして、右足に乗りながら、自分の蕾と律子の蕾を合わせに入る。
(ふ〜ん。そう来るんだ。)
律子はニッと口元だけ笑って、千早のされるがままに体を動かしていた。
ぬるぅ
千早は律子の右腿に濡れた蕾を当てて、そのまま自分の蕾と律子の蕾を合わせるべく押し付けた。
ぐちゅぅっ
「んんぅっ。」
(やだ、これ・・・気持ち・・・良い。)
「んっ。」
(初めてにしては、合わせ方そこそこ、かな。)
千早は合わさった瞬間の感覚にうっとりしていた。律子の方は冷静にその状況を判断していた。
律子の左足を方に抱え込んで、千早は繋がりを深くする為に腰を振り始めた。
くいくいっ、ぐちゅっ、ぬちゅっ
「あっ・・・きもちぃ・・・いぃ・・・。律子さんは・・・どう・・・ですか?」
「んっ・・・くぅ・・・いぃわ・・・。」
うっとりしている千早に律子は少し上気した顔で色っぽく微笑みながら答える。
その後も絡み合う卑猥な音と、喘ぐ声が暫く部屋に響いていた。

「千早・・・。もっと良くしてあ・げ・る。」
「はひぃ?」
腰を振って夢中になっている千早は、不思議そうに律子の方を向いた。
くいっ、くちゅっ、すりっ
律子は一旦腰を引いて、くっついていたお互いの蕾を離してから、再び合わせる。蕾だけでなく、クリまで少し擦れる感覚になる。
「っ!?」
(さっきまでと全然違う!?)
千早はさっきまでとは違う感覚にびっくりして、動きが止まった。
「んふふっ、さあ、千早行くわよ。」
ぐちゅぅう、にゅりゅぅっ、くりっ
「はぁあ・・・くはぁ・・・これ・・・すごひぃっ・・・。」
軽く合わせられただけで、今までに無い感覚に千早は体から力が抜けていって、抱えていた律子の脚がベッドに落ちた。
律子は、少し強めに押し付けながら逆に千早の足を持ちながら起き上がってくる。
「ぁ・・・はぁぅ・・・。」
千早は腰から上がってくる感覚に、全く反応出来ずにそのまま律子に倒されてさっきとは全く逆の体勢になっていた。
「さあ、千早行くわよ・・・。」
律子はニッと笑いながら目を細めて、腰をグラインドさせ始めた。
「あっ・・・だっ、だめっ!」
千早は抗おうとするが、お互いの蜜で濡れている蕾とクリの合わさり擦れる感覚に何もすることが出来なかった。
ただ、甘い声を上げる以外は・・・。

「ぅ・・・ん?」
(千早の・・・・声?)
伊織は千早の喘ぎ声で目を覚ました。体を寝返らせてみると、見事に律子が上になった松葉崩しの状態になっていた。
(あ〜あ。これじゃ千早に勝ち目無いわね。)
少し苦笑いしながらそれを見て、ゆっくりと起き上がった。
「あらら、千早ってばあんなに気持ち良さそうに喘いじゃって。」
更に快感を求めて、千早は右手の人差し指を咥え、左手で自分の乳首を弄っていた。
「あら?伊織気が付いたのね。大丈夫?」
伊織が体を起こした事に気が付いた律子は少し心配そうに聞いた。
「うん。アタシも千早みたいに気持ち良くしてくれる?」
「勿論よ。」
少し上目遣いで聞いてくる伊織を見て、目を細めながら律子は答えてから、伊織を空いている右腕で自分の方へ引き寄せた。
「伊織・・・。」
「りつ・・・んっ。」
律子は少し強引に伊織の唇を奪う。
伊織の方はキスしながら、両手を律子の胸の方へ持っていく。
はむぅ、むにっ、ぐちゅっ
キスして絡んでいく舌と唾液。少し強めに揉まれて変形する豊満な胸。
それに反応して小刻みに震える感覚が伝わって更に敏感になる、濡れて合わさって擦れる蕾とクリ。
それぞれが、それぞれの興奮をどんどんと高めていく。
それは、気持ちだけでなく快楽という名の甘い甘いものもそれぞれに与えていた。
「んぁっ・・・。ちゅっ。」
「んぱっ・・・あっ・・・。」
キスしていた律子は唇を離して、唾液を滴らせたまま伊織の首筋にキスをする。それで、一瞬伊織の動きが止まる。
「伊織・・・揉んで・・・。」
「ぅ・・・ん。」
自分の揉まれている気持ち良さが引いていくのが嫌だった律子は、伊織にねだるように甘い声で言う。
伊織は途切れ途切れになりながらも返事をして止まった手を動かし始める。

「気持ち・・・いぃ・・わぁ・・・ご・褒美・・・。」
律子はそう言うと、伊織を抱いていた右腕を解いてその手を下から伊織の蕾へ持っていく。
「ご褒美?んきゃぅ!?」
にゅぷぷぷぅっ
不思議がった伊織の膝立ちになっている蕾へ一気に下から律子の人差し指を膣内にねじ込まれて軽くイきそうになった。
力が抜けて体を支えていられなくなって、伊織は律子の胸を揉んでいた両手を離して律子に抱きついた。
くにくにっ
「きゃふぅっ!膣内でくにくにしないでぇ。」
伊織は腰ががくがくして、上半身もぷるぷる震わせながら言う。
「聞こえないわよぉ?」
律子はちょっと意地悪な口調になって聞こえないふりをする。
そして、更に伊織の膣内を人差し指でこねるように指を回しながら犯していく。
「らめぇ・・・らめ・・・やぁ・・・。ゆびらめぇ!」
伊織がそう言う度に、律子の人差し指は伊織の膣内でキュッと締め付けられていた。
「駄目じゃないんでしょ?もっとして欲しいんでしょ?私の指をキュッって締め付けてくるわよ。」
「違うもん・・・。キャン!こねないれぇ・・・。」
赤い顔をしながらもいじけるように言う伊織を見てから、無言で律子はまた指で伊織の膣内をこねくり回す。
(伊織・・・可愛いわよ・・・。)
律子はどんどんと突き上げる感じで指を入れていくと、ガクガクしながらも、
伊織はその指から逃れようとして段々と立ち上がり始める。
(駄目っ、気持ち良過ぎておかしくなっちゃう・・・。)
それを見透かすかのように律子は確実に抜けないように、手の位置を合わせて上げていく。
それと同時に、ちゃんと下半身の方はゆっくりとグラインドさせて千早を攻めていた。
千早と伊織の喘ぎ声が部屋中に響いて、それぞれの耳にも入って興奮を更に高めていた。

(さあ、二人とも・・・行くわよ・・・。)
律子は薄く笑った後、メガネの奥の目が細まって光った。
つぷっ!
「あっ・・・かはっ・・・。」
まず、伊織が完全に立ってしまっている状態の所に中指も沈めて行く。伊織はその感覚に仰け反って爪先立ちになる。
くいっくいっ、ぐちゅっ、ぬちゅっ、にちゃっ
「やっ・・・はやぃい・・・らめぇ・・・くりぃ・・・こすれるぅ・・・。」
ゆっくりと動かしていたグラインドを早く小刻みなものに変えて行く。
千早は乳首を弄っていたが、その急に変わった感覚に耐えられずに両手でシーツをギュッと握る。
くちゅっ、くにぃ、くにくにぃ
「ひぃぃ・・・らめぇ・・・くにくに・・・らめらのぉ!」
伊織は爪先立ちの状態でそれ以上逃げられなく、
力の入らない両手で律子の右手首を掴もうとするがガクガクしていて全く出来ていなかった。
そこへ律子は容赦無く突き上げるように人差し指と中指で激しく犯す。
「くにくにが駄目なんだ?じゃあこれなら良いわよね?」
くにぃ、ぬぷぷぷぷ
律子は両手で伊織の膣内をすこし広げた後、一気に奥へと指を突き入れる。それを今度は繰り返し始める。
「うひゃうぅぅ・・・ひろげひゃ・・らめぇ・・・つきあげらいれぇ・・・。」
千早も伊織も限界を迎え始めていた。それは、律子も一緒だった。それぞれの繋がっている所で感じていた。
「もう、らめれすぅ・・・ひっ、ひくぅ・・・。」
千早は体全体をヒクヒクさせながら、小声で言う。
「らめぇ、もうらめぇ!」
伊織の方は、頭をブンブン左右に振って叫ぶように言う。
「私も・・・もう・・・。」
律子も目を閉じながら、上がってくる波を感じて呟くように言う。
「ひっくぅぅううーーーーー!!!!」
「らめぇえぇーー!!!ひぃっぐぅぅううううーーーー!!!!!」
「んくっ・・・はぁぁああああーーーー!!!」
三人は同時に声を上げて派手にイッた。
伊織は完全に力が抜けて倒れ込みそうになるのを、律子が慌てて抱き込んだ。
後は三人で倒れ込んで余韻に浸っていた。

少しして律子がゆっくり起き上がると、千早は既に寝息を立てていた。
(まあ、無理も無いかな。あれだけ攻め立てちゃったし。レッスンもあっただろうから。)
絡んでいる足を外してから、枕を頭の下に滑り込ませて足元にあった毛布をそっと掛けた。
「りつこぉ・・・。」
「ん?」
小さな伊織の声が聞こえて、今度はそっちを向いた。
今にも閉じそうな目で、伊織はうっつらうっつらしていた。
「眠いのなら寝て大丈夫よ。千早ももう寝てるから。」
「ちはやねたんら?」
「うん、もうぐっすり寝てるから安心して寝なさい。」
呂律は回らない、今にも寝そうな伊織を見て律子は優しく頭を撫でながら言った。
「ぅ・・ん・・・。」
返事が完全に終わる前に、伊織は寝息を立て始めた。
律子は伊織を抱えて頭の位置を移動させて、横の棚に置いてあったうさちゃんを同じ枕に乗せて毛布を掛けた。
(流石に私も限界・・・。)
律子も自分で千早と伊織の間に枕を置いて、
先に自分の毛布を引っ張って最後に大きな布団で千早と伊織に掛かったのを確認してから
自分も枕に頭を置いて布団を被りながら目を閉じた。そして、あっという間に眠りに落ちた。

「んっ・・・。」
律子はカーテンの隙間から差し込む朝日で目を覚ました。
二人を起こさないようにそっと体を起こしてから、始めに右側を見ると静かに寝息を立てている千早が居た。
(良く寝てるわね。)
微笑んで少し見てから、今度は左側を見る。寝る時には持っていなかったうさちゃんをしっかり抱えて寝ている。
(ふふっ、全くこの寝顔とかいつもに騙されちゃうのよね。全く色々とやってくれたわよね。)
少し笑いながら伊織を見ていた。
(最初に私がシャワールームで押し倒して・・・まさかこんな風になるなんてね。)
今まであった事を思い出しながら、律子は無意識に伊織の頭を撫でていた。
「・・・ぅ?」
伊織は頭を触られている感触で起きて薄く目を開けた。
「おはよう、伊織。ごめんね起こしちゃって。」
そこには、優しく微笑む律子の顔があった。
「ん、おあよ〜りつこ。」
伊織は寝ぼけ眼で挨拶を返して、目を擦りながら欠伸をした。
「ん〜、まだ仕事まで時間大丈夫?」
「うん、大丈夫よ。」
「千早の方は?」
「そっちも大丈夫。」
「そっか。じゃあ、おはよ〜のきす〜。」
安心した伊織はまだ寝ぼけている感じで、両手を律子の方へ伸ばす。
「良いわよ。」
チュッ
軽く上から律子が唇を重ねる。
「くっ・・・。」
「ん?」
千早の声がして、律子は振り向く。伊織はもぞもぞと布団から出て律子にもたれ掛かるようにしてそちらを一緒に見る。

「お、おはようございます・・・。」
今の自分の声が聞こえたのが恥ずかしかったのと二人の仲良さそうなのに嫉妬していた千早は、
少し照れ臭いのと気不味いので顔を背けながら挨拶をした。
「おはよう、千早。」
「おあよ〜、ちはや〜。」
(律子さん、綺麗。伊織さん、可愛い・・・。)
チラッと見た微笑む律子にドキッとすると同時に、ちょっと寝ぼけ眼の伊織を見て違う意味でドキッとした千早だった。
「おあよ〜のちゅ〜してほしいなら、いえばいいのら〜。」
「えっ、いやっ、そのっ・・・。」
伊織があっけなく言うので、千早はしどろもどろになりながらどうして良いか分からずにモジモジしていた。
「じゃあ、また、あたしりつことちゅ〜らもんね。」
「えっ!?」
そう言って、伊織は律子を引き寄せて自分からキスをする。それを見て驚いた千早は二人をまじまじと見ていた。
「そうね、言わなくても行動に移せばいいのよね。」
チラッと横目で千早を見ながら律子は一旦離れていってから、再度伊織にキスする。
「う゛〜〜。」
千早はその様子を見て、右手の人差し指を口に咥える感じで羨ましそうな顔をして、上目遣いで二人を見ていた。
「にひひっ、千早ってば可愛い。ほ〜ら。こっち来なさいよ。アンタは一人じゃないんだから。アタシ達がいるのよ。」
伊織はさっきまでの寝ぼけが嘘のようにしっかりとした口調で言いながらウインクする。
「そうよ千早。伊織の言うとおり。ほら、いらっしゃい。」
律子は左手で伊織を引き寄せながら、右手を千早の方へ向けながら広げて促した。
「伊織さん・・・律子さん・・・。」
千早は目に涙を浮かべながら呟く。
「泣いてる場合じゃないでしょ。ほら、アンタの場所はここよ。」
伊織は律子に合わせるように、右腕を律子の腰に回して左手で千早を迎えるように促す。
「はぃ・・・はいっ!二人とも大好きですっ!」
千早は堪え切れなくて、涙が溢れながらも二人の胸に飛び込んだ。

それから半年余りが経って、律子と伊織のデュオは解散したが再結成し、更にそれぞれソロでも芸能活動に勤しんでした。
律子はアシスタントや司会、コメンテイターと幅広く活躍していた。
伊織はアーティストとしてTVやラジオから引っ張りだこの毎日だった。
そんな中、千早は大きく成長してラストコンサートを迎えていた。その会場には律子と伊織も来ていた。

そして、ラストコンサートが終わった次の週・・・
「さってと、呼び出しって何なのかしら?」
律子は765プロダクションの階段を上りながら、呟いていた。
「この分だと約束には間に合いそうに無いわね。マネージャーあとどの位?」
「そうですね10分で到着させます!」
「よろしくね、にひひっ。」
伊織とマネージャーは車の中で会話をしていた。
「私に話・・・。先週引退したばかりなのに何なのかしら・・・。」
千早は怪訝そうな顔をしながら、会議室に一人で座って待っていた。

三人とマネージャーが会議室に揃ったのはそれから20分後だった。
三人は近況報告をしあいながら雑談で盛り上がっていた。マネージャーはそんな様子を微笑ましそうに見ていた。
コンコン
「どうぞ。」
ノックされて、マネージャーが答えた。
「あ、マネージャーちょっといいかな?」
プロデューサーが顔を出して手招きしながら言う。
「はい?私だけ・・・ですか?」
マネージャーは不思議そうに三人の方を見てから聞き返す。
「そうそう。ああ、律子、伊織、千早は悪いけどもうちょっと待ってくれ。」
「はい。次の仕事には差し障らなければ構わないですよ。」
「そうね、ただ、あんまりダラダラ待たせないでよねっ!」
「私は特に何も無いので、構いません。」
三人が答えたのを確認してから、プロデューサーはマネージャーを連れて会議室から出て行った。

「どういう事かしら?」
「アイツが何か企んでるとか?」
律子と伊織は訝しげにぼそぼそと言う。
「まさか、私達の関係が・・・。」
「しっ!」
心配そうな顔になって言う千早の口を律子が押さえて、伊織が人差し指を口に当てて言う。
千早は言われてその場でコクコク頷く。

「あの、今日はどうしたんですか?急に呼び出しだなんて。」
マネージャーは不思議そうにプロデューサーに聞く。
「高木社長からの呼び出しだよ。俺は行かないけど、マネージャーが一人で行く事になる。」
「そうなんですか?」
良く分からないマネージャーは不思議そうに言う。
「あのさマネージャー。」
「はい・・・。」
立ち止まってから急に真面目な顔になって言うプロデューサーに、マネージャーはただ事では無いと悟って静かに返事をする。
「律子と伊織と千早の事頼むよ。」
「えっ!?おっしゃってる意味が分かりませんが?」
マネージャーは驚いた後、怪訝そうな顔になって聞き返す。
「社長からも同じ事言われるだろうからさ。マネージャーなら上手く三人を引っ張っていけるだろうからね。今までみたいにさ。」
少し笑いながらプロデューサーは言う。
「秋月さんと水瀬さんはそれなりに上手く付き合ってこれたと思いますが、
如月さんについてはプロデューサーが見ていらしたから私は何もしていませんよ。」
マネージャーは冷静に答えた。
「ああ、そうだっけか。やっぱ、情け無い異性のプロデューサーよりも頼りになる同性の方が懐くのかもしれないな。
最近じゃ俺は邪険にされっぱなしだったからな。その点、マネージャーには懐いてたっていう印象だったからね。」
頭を掻きながらプロデューサーが言う。

「それは、失礼な言い方かもしれませんが、如月さんを大切にしているというお気持ちが届いていなかっただけかもしれませんよ。」
「そうだなあ。マネージャーの言う通りかもな。
でもさ、マネージャーや律子、伊織に好意を持たせる為に、俺がドジなふりしてたのならアカデミー賞ものだと思わない?」
ちょっとニンマリしながらプロデューサーが言う。
「そうですね。そうだったらアカデミー賞ものかもしれませんね。オスカーを渡してくれる方が居ないでしょうけれどね。」
マネージャーも少しニコッと笑いながらあっさりと言い返す。
「はぁ、参ったね。やっぱ、マネージャーは優秀だわ。俺は適わんよ。ドジな俺に代わって三人を頼むよ。
俺にゃあの三人は重荷だからさ。」
「今の本気で言ってます?聞こえてたら三人から怒られますよ。」
「良いの良いの。いっつも怒られてるからね。今更だよ。じゃ、俺他の子のレッスン行かないとだからさ。
じゃあね。新プロデューサー殿。」
「えっ!?」
驚くマネージャーに軽くふざけた敬礼をしてからプロデューサーは離れて行った。

マネージャーは高木社長からの辞令に驚きながらも、拝命して会議室へと戻ってきた。
「ただいま。」
「おかえりマネージャー。それで、どうだったの?」
伊織がまず最初に聞いた。
「これから話す事には三人のご協力が必要です。どうするかは最後に三人で決めて下さい。」
真剣な言葉に三人は黙って頷いた。
「秋月律子、水瀬伊織、如月千早の三人でトリオユニットになり、私がそのプロデューサーになる。
というのが最善と思われる事象です。」
「えっ!?」
三人は驚いて声を上げた後、まじまじとマネージャーを見る。
「私は先程、高木社長から新しいプロデューサーに任命されました。
以前のプロデューサーは他の子達を見るという事で私はいわば三人のプロデューサーという事になります。」
三人は真剣な顔つきになって、小さく頷きながら話を聞いていた。
「一人ずつソロでもいいのですが、ここで如月さん、水瀬さんのソロ活動を一旦終わらせて、
三人で再デビューをさせたいと私は考えています。
そうすればスケジュール管理も簡単ですし、三人で居る事で大きな力となり多くのファンを惹き付ける事が出来ると思って居ます。」

「質問。それじゃあ、アタシや律子の今の入ってる番組とかのスケジュールはどうなるの?」
伊織はそこで鋭くツッコム。
「ご安心下さい。そこには枕詞としてトリオユニットの、水瀬伊織になるだけで活動は変わりません。無論秋月さんも同様です。」
「あの、私をそこにあえて入れる理由があるんでしょうか?」
千早は何とも言えない顔をしながら聞いた。
「勿論です。平成の歌姫といわれた如月さんのカムバックは多くの方が望んでいる事です。」
「最後に私から。何でトリオなの?ソロでも良い訳でしょ?
スケジュール管理が楽になるって言うけど、ソロ部分もあるから逆に大変じゃないの?本当の理由を聞きたいな。」
律子は真面目な顔になって、メガネを直しながら聞いた。
「ふぅ、やっぱり秋月さんは押し切られて貰えませんでしたか。」
マネージャーは溜息をついた後、苦笑いしながら言った。
「はっきり言わせて頂くのなら皆さんの為です。これからの為にもそれが最適だと私が判断したからです。
これで分かって下さいますよね?」
三人はマネージャーの言葉に顔を見合わせていた。
「そういう事だったのね。アタシは良いわよ。っていうか、むしろその方が良いかもネ。」
伊織はうさちゃんを抱えながら、少し微笑んで言う。
「回りくどく言うから何かと思ったけれど、私もその方が良いと思う。
二人と一緒に居れる訳だし、マネージャーの負担も少しは減らせるだろうしね。」
律子は納得したように頷きながら言った。
「私は伊織さんと律子さんが賛成なら反対する理由はありません。ご迷惑をお掛けすると思いますが宜しくお願いします。」
千早はそう言って、マネージャーに頭を下げた。
「皆さんありがとうございます。では、早速高木社長に申し上げて、記者会見をセッティングして頂きます。
水瀬さんと秋月さんのスケジュールの変更も一緒にやっておきますので、記者会見で話す事でも考えておいて下さい。」
マネージャーはにこやかにそう言うと、会議室から出て行った。
「アタシ達がトリオかあ。」
「まあ、悪いけど現時点じゃ三人合わせたら敵は居ないも同然ね。」
「そうですね。私は嬉しいです。」
それぞれの言葉が会議室に響いていた。

・・・三時間後・・・
記者会見は急なものだったが、多くのマスコミ関係者が押し寄せていた。
丁度夕方のニュースの時間帯で生中継をしているTV局もあった。既に会見は終わりに差しかかろうとしていた。
「今回の急なトリオユニット結成という事ですが、それぞれ今後の活動について豊富を聞かせて頂けますか?」
これが最後の質問だった。
「私は今まで通りソロの活動もさせて頂きますし、年長者として二人を支えて行きたいとも思ってます。
これからも秋月律子共々こちらの二人も宜しくお願いします。」
律子はそう言ってから、立ち上がって軽く頭を下げた。
「アタシも今までと変わらずだけど、新しいファンが一杯出来るように三人で力をあわせて頑張って行くわ。
だから、今まで通り・・・。ううん、今まで以上に水瀬伊織だけじゃなくてトリオの応援宜しくねっ。にひひっ♪」
伊織は言った後、ウインクした。
「皆様が今まで応援して頂いて、今回このような大役を仰せつかりました。
益々歌に磨きをかけて二人の先輩に負けないように頑張りますので、応援宜しくお願い致します。」
千早は最後に頭を深々と下げた。
「最後に秋月律子と水瀬伊織のマネージャーだった私が新プロデューサーとして如月千早を加え新たな活動を指揮して参ります。
これから新ユニットとなるトリオ、そして秋月律子、水瀬伊織、如月千早を個人としても宜しくお願い致します。」
新プロデューサーがそう言って四人で頭を下げると、自然と拍手が巻き起こった。
「それでは、皆様お忙しい中お集まり頂きましてありがとうございました。
これで記者会見を終わらせて頂きます。今後の活動等の詳細はホームページをご覧頂くか765プロへお問い合わせ下さい。」
最後に高木社長が締めて緊急記者会見は終わった。

「これから宜しく頼むよ四人とも。」
「はいっ。」
高木社長の言葉に四人は同時にはっきりと返事を返した。
「それでは、私はこれで失礼する。後は任せたよ。」
社長はそれだけ言うと、四人の前から去って行った。
「かしこまりました。お疲れ様でした。」
新プロデューサーは言った後頭を下げて、社長が居なくなると頭を上げる。
「それでは参りましょうか、律子さん、伊織さん、千早さん。」
初めて名前に「さん」付けで呼ばれた三人はちょっと驚いてキョトンとした顔になる。
「どうしました?呼び捨ての方が慣れていますか?」
そんな三人に間髪居れず聞いてくる新プロデューサー。
「あ〜、今まで苗字でしか呼ばれていなかったから驚いちゃってね。どう呼ぶかは任せますよ。」
律子の言葉に伊織と千早も合わせて頷いていた。
「では。律子、伊織、千早。参りましょう。」
「んふふっ、宜しくお願いしますね、プロデューサー。」
「頼りにしてるんだからねっ。」
「宜しくお願いします。」
改めて言われた新プロデューサーの言葉に三人はそれぞれ言った。
それを聞いて満足そうに微笑んでから振り向いて歩き出す。
そして、三人それぞれ顔を合わせて頷いた後、彼女について横並びになって一緒に歩き始めた。

その夜・・・
「んふふっ、伊織と千早が目の間にこうして居るなんて夢みたい・・・。」
律子は嬉し泣きをしながらも、二人を熱く見つめていた。
二人に魔法をかけた本人は、孤独に怯えながらも自らが魔法にかかった・・・

「あったり前でしょ、律子も千早もアタシのものなんだから。にひひっ♪」
伊織は律子の言葉を聞いて、いつものように腕を組みながら言い終わると、最後に満面の笑みを浮かべる。
「私」一人でも良いと思っていた本人は、魔法を掛けられて「私達」二人になり、
自ら策を講じて結果三人になる事を一番に望んでそれを叶えた・・・

「律子さんと伊織さんが目の前に居る・・・。」
千早は万感の思いを込めて呟くように言った。
孤独と自由の翼を持った蒼い鳥は、魔法を掛けられ違う翼を得たと思い込み解かれそうになった時、
両翼を奪い空から堕としたものと魔法をかけたものから、再び違う「共存」と「束縛」の翼を得た。

律子と伊織と千早は、それぞれを確かめ合うようにキスをして・・・
求め合い溺れて行った・・・。

交わった三つの孤独な運命は、これから絡み合い何処まで続くか分からない新たなる未来へ向かって歩み始めた。





おわり

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