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前編:Just a kiss (伊織編)

「ねえねえ、プロデューサーさんは担当アイドルとチューしたことってあるの?」
「……俺は大事な担当アイドルにそんなことしません」
「なんで? デコちゃんたちはチューしてたよ?」

この事務所ではプロデューサーとアイドルが仲よくなる事が多く、春香や千早のように
担当Pと恋人関係に発展するケースもままあるから、伊織たちがそうだとしても不思議はない。
決して業界ルールや職業的倫理を軽視しているわけではないのだが、このあたりの微妙な事情を
どう説明したものかと考え……思いとどまった。この娘にそんな建前の話をしても仕方がない。
下手な理屈より直観に訴えるほうが効果的なのは分かっている。つまり……

「じゃあ美希に聞くけど、恋人同士でもない二人がキスすることをどう思う?」
「んー、美希的にはそーゆーのってなんかイヤかも」
「そんじゃ恋人関係じゃなくて、外国人の挨拶みたいにチュってするのは?」
「それは…イヤじゃないけど、美希日本人だもん。あーゆーのって照れくさいよ」
「でも親近感があって人からみたら仲良さそうって思うだろ?」
「うーん、それはそうかも」
「伊織たちがキスしてたのも、多分そういうことなんじゃないかな」
「そっか、うん。そだね」
「じゃ、そろそろミーティング初めていいかな」
「ちょっと待って。仲がいいのはいいことでしょ? でも仲が良くなりすぎたらどうするの?」
「良くなりすぎたらって……好きになったらってこと?」
「うん」
「それはそれでいいんじゃないかな」
「でもプロデューサーさん、美希に『アイドルは恋人つくっちゃだめ!』っていったよね?」

確かにそういう話をした。それでなくても学校、芸能界問わずもてまくりの美希なのだ。
担当プロデューサーである俺には頭の痛い話である。

「ひょっとして、恋人にしいた男の子ができたとか?」
「ううん、そーゆーのじゃないの」
「じゃあ別に気にすることないと思うんだけど」
「だって……好きな人いなくても、あんなラブラブ見せられたら、キスとか気になるよ?」
「キスが気になるって……ひょっとして美希はまだ?」
「……うん。したことはないよ」
「なら、好きな人ができたときまで大事にとっとけばいいと思うけど」
「でもプロデューサーさんは彼氏つくっちゃだめっていうでしょ?」
「い、いやそれはあくまで立場とか建前とかの問題であってだな」
「じゃあ美希が本気で好きになったとしたら、OKしてくれる?」
「ま、待ってくれよ。今のは例えばの話だろ?」
「ちゃんと答えてほしいの。美希が本気だったら、ちゃんとOKしてくれるよね?」
「あ、ああ……約束する。美希の気持ちはちゃんと尊重するから」
「よかった。じゃ言うね、気になる人はいるよ」
「えっ?」
「あは、そんな驚いた顔しなくていいよ。だってまだ好きかどうかはわかんないし。
でもかなりいい人だから、美希的にはその人ならキスしてもいいかなって思うの」
「あっ、あのな……そういうこと思うのはいいが絶対に他所で言っちゃだめだぞ」
「むうっ……分かってるよ、そんなことくらい」
「もういいから、ミーティング始めるぞ」
「ねえねえ、プロデューサーさん、ホントは気になるんでしょ?」
「当たり前だろ。なぁ、誰だよその相手は。内緒にするから教えてくれ」

「だめ。やっぱ恥かしいもん……でも絶対誰にもいわないから、安心していいよ」
「そ……か。ま、いいよ。美希のこと信じているから」
「うん、ありがとうなの」
「じゃ、そろそろミーティング始めていいかな」
「おにぎり食べながらでもいい? ムツカシイこと考えたからお腹すいちゃったよ」

もちろん彼女は俺が返事をする前に、バッグから持参のおにぎりをだしている。
ホッペに米粒をくっつけて、美味しそうにおにぎりをほお張る美希をみているだけで
こっちまでほんわかと幸せな気分になれるからいいんだが。

「さて、今週の予定だけど」
「ねえ、少しだけ分けてあげようか?」
「これは珍しいな。そんなら一口もらおうかな」

次の瞬間、美希は半分ほど食べかけたおにぎりを、テーブル越しに俺の口に押し込んできた。
「んぐっ……んむむ」
「あは、食べながらしゃべっちゃだめなの」

そうはいっても、いきなりおにぎりを突っ込まれたら喉がつまるだろうが。
慌てて湯飲みに手を伸ばそうとした瞬間。
「プロデューサーさん、お弁当つけてどこいくのかな♪」

テーブル越しに身を乗り出してきた美希の唇が迫ってきて、ああ、ご飯粒ついたままだろうが
と思った瞬間、思った以上に柔らかい唇が俺の唇をふさぎながら、舌先がぺろりと唇についた
ご飯粒をさらっていった。
「んっ、んんー、んんん!!」

美希には食べる時と同じで、キスするときは喋っちゃだめだって教えないといけないな。

あと、キスの時は目をつぶれって。
いやそれはいいか。こうして美希の奇麗な瞳を見つめながらのキスっていうのも
ありっちゃありだし……


「ねえねえ、どうだった? おいしかったでしょ?」
「……おかかより梅の方が好みなんだ」
「むー、ちがうよぉ。そっちじゃなくて」
「あのな、おにぎり食べながらのキスなんて初めてだよ。美希はファーストキスがそういうので
よかったのか?」
「モチロンだよ! あぁ、なんかキスっておいしいものなんだね」
「多分それはおにぎりのせいだと思うけど」
「ううん、おにぎりもおいしいけど、やっぱ好きな人とするキスっていいものだったの」

「あっ、そうだ。今日のこと、響と貴音に自慢しちゃっていいよね?」


おしまい。


続編:(未完成)

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