『魔砲少女まじかる☆りぷるん』






オープニングテーマ『Stellar Shooter』
・作詞 ☆すもも☆
・作曲 魔砲少女まじかる☆りぷるん制作委員会
・歌 超諸島アイドルほしみちゃん






第5話(笑) 少女が怪獣を倒せたら






遠い遠い昔、2人の神様がいました。
いぢめる神といぢめられる神。2人はお互いを必要とし、毎日ムチを振り振られ。それは楽しい日々を送っていたそうです。
しかしある日。ムチを振りすぎたいぢめる神は、けんしょーえんとかいう病に侵され天に召されてしまいました。
いぢめられる神はひどく悲しみました。放置されることだけは好きではなかったのです。
毎日いぢめる神のことを考えていたいぢめられる神は、突然こう思いつきました。
「私はいぢめられたい。だから他のものをいぢめる側にする」
いぢめられる神は人もモンスターも全て、いぢめるのが好きな性格に変えていったからさあ大変。
いぢめられる神の力から逃れた人とモンスターは、数多の苦労の果てにいぢめる神の体を見つけることが出来ました。
彼らはその体を銀色の石へと変え、いぢめられる神へと投げつけます。
こうしていぢめられる神はいぢめる神との思い出に包まれ、共に封印されて世界は再び平和になりました。


「…」
昼より少し前。穏やかな風が吹き込む部屋の中で、リプルはぽかんと口を開けて呆けていた。
立ち上がる、でも言葉が出ない。腕を振ったりして意思を伝えようとする、けど何を伝えればいいかわからない。
考えても何も思いつかないので、目の前にいる仮面の男をを長杖で一殴りしてからとりあえず叫んでみた。
「何が!」
「それはこっちの台詞だ!」
最近学習してきたらしいシュマは、今読んでいた分厚い古書で殴られるのを防ぐ。
「君がイダルの事について詳しく知りたいと言うから、文献を探してようやく見つけたというのに」
「その中に出てきた銀色の石がイダルですか!?設定が残念すぎるでしょうそれは!」
シュマも石についての調査を続けていたのだが、長老達が使う部屋に呼ばれて読まれたのがこれだ。
「要約すると、スケールの大きなドSとドMの痴話ゲンカに巻き込まれてるだけじゃないッ!」
「そうとも取れるな」
「SFは!前回の『さいえんすふぃくしょん』的なノリはどこいったんですか!あれだけ無理して展開したのにこの様!?」
「さいえんすふぃくしょん?」
言葉を知らないシュマを気にせず、続けて質問を叩きつける。
「イダルでモンスターが凶暴化するのは?」
「彼らがドSになったからだろう」
「イダルで月が落ちてくるのは?」
「月もドSになったからだろう」
変に納得できてしまう回答に愕然とするしかなかった。
「いーやーだぁー!私イダル集めるのやめるーッ!」
改めて、自分のやっている事の不条理と馬鹿らしさを感じるリプルだった。
「まぁ落ち着きたまえリプル君」
「何だヘンタイ仮面!」
「頼むからその呼び方をまずやめてくれ!」
シュマは噛み付いてくるリプルをどうにか宥め、ソファに座らせる。
「伝承と言うのはあくまで伝承でしかない」
「それは、まぁ…」
「もちろん事実に基づいた伝承もあるだろう、しかしそれだって全てが真実なわけではない。だからこそ、1つの事柄に色々な伝承があるのだろう」
そして持っていた本を、他の多くの本が並ぶ棚の中へとしまった。
「数多の話の中から、君は君の事実を探せばいい」
「お、おー…ヘンタイがカッコいい事言ってる…」
「だからそうではないと何度…」
本棚にならぶ、リプルはきっと読む事のない本を眺めながらふと呟く。
「じゃあお姉さまは、いったい何でイダルを集めてるんだろうなー…」
先ほどの本がどれか、もうリプルにはわからなかった。
「そういえば、なんでシュマさんは違えたイダルを集めだしたんですか?」
「もちろん、危険な力を拡散させないためにだな…」
仮面の向こうの目をじっと見つめる。それが事実なら、こんな仮面をつけて裏でやる必要はない。
シュマは風を通す窓の外へと向き直る。両手を後ろで組み、声色を落として真剣な雰囲気で言った。
「やはり人間であれば、魔砲少女と言うのは一度見てみた」
「リアルソニックシュート!」
変身もしないまま、リプルはその背中をとび蹴りで強襲。シュマは清々しい風とは逆に窓の外へ吹っ飛んだ。






「イダルが見つからない?」
いつものようにイダル回収へ向かうため、船着場で出航申請をしていたリプル。しかしそこではとある話で騒がれていた。
「何なに、どういう事ですか?」
「あぁリプルか。聞いた事そのままだ」
外野に居た先輩ブリーダーを捕まえ話を聞く。
「正確には見つからなくなったわけじゃないんだ。誰かが先回りして、そのイダルだけを乱獲しているらしい」
「誰か、ですか」
「現場で青い服を着ているのを見たやつもいるんだが…この街では見た事もない服だそうだ。おまけに緑の鳥みたいな奴もいたらしいな」
お姉さまと…コノハとか呼ばれてた使い魔か。
「どうしてイダルだけを持って行くんだろうな。どうせならカルカの欠片でも持って帰りたいもんだがな」
「先輩も貢ぎ勢ですか。ミリーアさんとルィーゼさんのどっちですか?」
「そういう言い方はやめてくれないか。男が女性にプレゼントするのはおかしい事じゃない」
「じゃあ私にも何かください。『ユタトラSEED』のでぃーぶいでぃーぼっくすとか」
「リプルが女性?ははは、その平面しかない体に凹凸が出来たら話を聞い」
「リアルレーザーブレード!」
長杖を高く掲げ、そのまま先輩の脳天に振り下ろす。乙女のハートは傷つきやすいのだ。
まだ噂が飛び交う船着場のロビーを一旦離れ、真実を知る少女は考察する。
「違えたイダルだけじゃなくて、普通のイダルも必要なんだ。お姉さま」
一般ブリーダーには「イダルモンスターから取れる珍しい石で、研究中のもの」としかイダルの力は知らされてない。
実際その程度のものだろう、以前の暴走ギモのような事は数回しか起きた事がない。
にしてもこれは想定外。今後のイダル探索方針を再検討する必要があるか。
「あれ?」
しかしふと思いつき、リプルは立ち止まる。
「冒険地でイダルが見つからない。それはもうお姉さまが回収してしまっているから。じゃあ、まだお姉さまがイダルを求めるとすれば…」


その時、港にある倉庫のひとつが崩れ落ちるのが見えた。


「…相変わらず。大事な物を雑に保管するなーヘンタイ仮面さんは…」






海は大荒れ。暗雲立ち込める空からは大量の雷が降ってくる。
「どうしてこうなった…」
定番の言葉を呟いてもどうともならない様子なので、とりあえずリプルは状況を整理する事にした。
まず、今手元で暴れているこのおチビさん。
「おチビさんじゃないです!ミズキです!」
そのミズキさんは魔砲少女らしい。それっぽい格好をして、元気に炎の長杖をぶんぶん振り回してるから。
そしてミズキ曰く、
「倉庫のイダルを取ってきて欲しいと頼まれたから、私はそれを実行したまでです!」
ここまでで裏の犯人はお姉さま達、そして管理能力不足なあの仮面にもイダル奪取の責任があるのがわかる。
まぁそこまではよかった。
この魔砲少女からイダルを取り返せば一件落着。そう思っていた時期がリプルにもあった。


だって、誰も取り返されそうになったイダルの袋を無意味に海へ投げるとは思わないから。


「何で投げた?ねぇ何で投げた?」
「だ、だって。自分の手に入らないのならば!という勢いでごめんなさい、怖いです…」
リプルは少女から顔を離す。お仕置きより前にこの現状に対処するのが先だ。
一本の雷がリプルに襲いかかる。アーモンドが電光を相打ち、行き場を失った電撃は飛散し爆散した。
大量のイダルがどうなったかと言うと…


全てそこらへんを泳いでいた一匹のシエルレに取りつき、全長数十メートルの巨大なエイの怪獣が誕生した。


「どうするのさコレ!ホントどうしろと!?」
数回しか起きた事のない状況が、ここで来るとは思わなかった。
「私に言われても困ります!それに第三者視点で、私の行動を止められなかった貴方にも責任が痛い痛い」
余計な事を言う子には、長杖の先でぐりぐりしておいた。
うるさくしたのが気に触ったか。巨大シエルレは大量の雷を落とし、その太く長い尻尾を大きく水平に振る。
「あーあ。ろぼっとでもあったらいいのに」
声は今リプルがいた場所の上から。なぎ払われた岩の上にすたりと着地した魔砲少女は長杖を軽やかに回し決めポーズ。
「魔砲少女まじかる☆りぷるん、只今登場よ!」
怪獣は魔砲少女の管轄ではない気もするが、仕方ない。
「やれるだけはやってみますか…そこのおチビさん!」
「だからミズキです!」
別の場所に投げた、もう一人の魔砲少女に声をかける。
「こうなった以上は手伝ってもらうよ!敵の敵は味方!」
「いえ、私正直イダルがどうなろうと関係ないんですけど怖い怖いやりますやりますってば」
アーモンドの閃光で威嚇射撃、ミズキの足元を削りきる前に従わせる事に成功した。






「行くよ!アーモンド☆シューター!」
戦いの基本は速攻。崖の上から、大きな図体めがけて5本の光を放つ。
が、全て周囲の雷にブロックされて届かない。
「あぁもう雷が多すぎる!曲げられる回数が足りない!」
「だらしないですねぇ。それでも魔砲少女ですかってわかりました口がすぎました」
要らない事を言う子を一睨み。そこでようやく彼女はライガーを召喚し、海面を凍らせてエイまで一本の道を作り出す。
「コールドスラッシュ!」
雷雲を潜り抜けエイの足元へ、そして上空めがけて氷の刃を突き立てる。
「簡単です。こんなデカいだけの雑魚は…あ」
シッポを縦にアッパーされていた。
衝撃。殴り飛ばされたミズキは海の彼方へ…
「っつ!もう危ないなぁ、ちゃんと攻撃みてから行動する事!」
その前にリプルが受け止めた。
「あ、はいすいません…」
大口叩いて情けないのか、リプルの腕の中で頬を赤くし丸くなる。
飛ばされつつも体勢を立て直したミズキのライガー。皆一緒に氷のプレートへ着地した。
「さて、真面目にどうしたもんか…」
エイはそれを見つけて、口から大量の水を吐き出す。
「おっと!アーモンド、電撃で」
「任せてください!」
咄嗟にミズキが指示を出すと、その水は瞬間で氷の塊に固化し落下。海を大きく揺らした。
「なるほど…コレ使えるんじゃない?」
そしてふと思い付いた作戦をミズキに伝えた。
「はい!了解しましたお姉さま!」
「よしじゃあ頼んだ…って、え?」
跳躍して囮になる直前、変な言葉を聞いた気もするが…
凍った水面を蹴って飛びまわり、牽制する。エイはそれが気になるようで、体に纏った電気を飛ばしてきたり、また水を掛けてきたり…
「凍れこおれ!結べ水!」
吹かれた水は氷に。
「超雷撃!」
氷の塊は空中で細かく砕き。
「ミズキちゃん制御!」
「はい!」
氷の粒はエイの周囲を囲み。
怪物の正面に対峙したリプルとアーモンドは光を収束する。
「細い線でも、いっぱいあれば何とかなるでしょ!」
そして5本に拡散させた。
「アーモンド☆シューター!」
5本がエイの大きく動くひれを貫く。
そしてその5本が宙に舞う氷の欠片で跳ね返り、またひれを貫く。
光は反射されエイを貫通し、その光はまた反射され。
最後に雲を掻き消し日光を注がせた5本の線は、数百の閃光となって巨大エイを突き刺した。






「あー…嬉しくないなー…」
怪獣を倒したリプルもミズキも、氷の上で服がびしょ濡れである。
腐ってもシエルレ、その大きな体が爆発し噴出したのは大量の森水だった。
「森水って、結局何なの?」
「それはやっぱり、シエルレの体え」
「あーいい聞きたくない」
ほとんどが海水に混ざってしまって持って帰れないが。いや労働と報酬が見合ってないのが悔しいので、一滴も持って帰ってやらないけど。
元の大きさに戻ったシエルレは、何事もなかったかのようにふよふよと泳いでいってしまった。
「ま。いっか…」
「優しいんですね、お姉さま」
「優しいっていうか、何もなければそれでいいっていうか…って」
「私知りませんでした。お姉さまみたいな人が」
「お姉さま言うの禁止」
「ええっ!?」
隣の少女の頭に、軽く手を乗せる。
「その呼び方が合うのは、世界で一人だけじゃないかな」
その素敵な人に逢うため、リプルは少女からイダルを受け取った。
「おーい!大丈夫かー!」
そこでようやく、シュマが船で迎えに来た。
「シュマさんのザル管理のせいと言えなくもないですけどねー…まぁ迎えに来ただけ良しとしますか」
彼らに拾われ毛布を掛けられた時、
「あ…」
シエルレに取りついていたイダルが群れをなし、紫の粒子を撒き散らしながら水平線へと飛んで行く。
それはこの場所にあるイダルだけではなく、色んな場所から現れる。
いくつもの紫の帯が、どこか一点へと集まるように…
「お姉さま…」
誰に言われなくてもわかる。何かとてつもない事が起こるのだと。
それでも不思議と恐怖は感じない。
船の全員がその光の彼方を見つめる中、必ず止めてみせるとリプルは合間に見える星に誓った。






「次回最終回の予感!?」
「わん」
「折角の雰囲気を台無しだな君は!」






エンディングテーマ『潮風のそよぐ場所』
・作詞 ☆すもも☆
・作曲・編曲 魔砲少女まじかる☆りぷるん制作委員会
・歌 水月華

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