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事件

 「悪魔の九姉」の初期の活動のうち、最も有名でかつ最も大規模なものが、「パレルノ山?六千人殺し」である。
 当時リクシャマー帝国領土内最大の鉱山であったパレルノ山では、マグドール商会による大規模な坑道の中に、鉱山で採れる貴重な鉱物を用いた錬金術研究所が密かに設けられていた。
 ここで行われていたのが、キュトスの48番目の姉妹ミュリエンティと70番目の姉妹カスミストを用いた人体実験である。
 度重なる薬物の投与と、副作用に対抗するための魔術による強制的な肉体補強により精神崩壊寸前にまで陥っていた二人を救ったのは、「九姉」第三位の歌姫カタルマリーナと第七位の白炎のビークレットであった。
 アーズノエルに報を届けられ、ヘリステラシャーネスの助けによりこの地に辿り着いた二人は、白昼堂々と真正面から襲撃を行った。
 まず朝方に発掘物輸送の拠点であった山麓の街が、続いて抗夫たちのねぐらである山中の小村がビークレットによって焼き討ちにされ、女子供を含む三千人が死亡した。
 麓の村から異様な白い炎が噴水のように燃え上がったのを目撃した発掘監督官は、すぐに坑道の抗夫たちを呼び寄せ、それを見た抗夫たちは急いで山道を下っていった。
 そして夕方、山道で二人と抗夫たちが鉢合わせし、山彦に響くカタルマリーナの歌によって二千人が発狂死。狂気と戦いながらかろうじて逃げ延びた少数の抗夫は、帝国の役人に二人の恐るべき力を上告し、翌々日付けで帝国軍部は「単眼神の群」百人を含む軍隊千人をパレルノ山に派遣した。
 一方、「九姉」の二人は坑道に進入し、外の騒ぎに無関心だった哀れな抗夫を殺害しながら研究所に突入。暢気に研究に没頭していた錬金術師を弱火でじっくりとあぶり殺し、囚われていた二人を救出。そのまま山中で一夜と一日を明かし、ミュリエンティとカスミストの介抱に専念したが、容態は芳しくなく、カタルマリーナとビークレットは二人を背負って下山することを決意した。
 明朝。帝国軍は、まず山道を封鎖し歩兵による山狩りを行った。山中に潜伏し様子を伺っていた二人はまもなく三人の歩兵と遭遇し、ビークレットが歩兵を炎で瞬殺。炎を目撃した帝国軍司令官はその近辺に向けて弓による射撃を行うも、狙う対象が森の中で直接見えないことと山の下から上へという無理な地勢、それにカタルマリーナの歌による弓兵の混乱によって攻撃は失敗、まんまと四人を包囲網から取り逃がしてしまう。その後、救出した二人を山中の安全な場所に安置し、奇襲による各個撃破を行いながらカタルマリーナとビークレットが麓に下りた時には、帝国兵の数は五百人に半減していた。そして麓の平原での正面衝突で、帝国側は虎の子の「単身眼の群」を含む残存兵力による突撃を敢行、結果は全滅。山中の二人の妹を回収し、「九姉」の二人はようようと引き上げていった。

 この事件は大陸全土に衝撃を与えた。「キュトスの魔女に手を出してはならない」という通達が各国で出され、しかし圧倒的な魔女の力に恐れおののいた人々はますますキュトスの姉妹を迫害することをやめなかった。そのおかげで、この事件の後しばらくは、人里にいたキュトスの姉妹の大半が身を隠し、その中には「九姉」を逆恨みするものもいたという。
 しかし、この一件の後もキュトスの姉妹が不逞の輩によって拉致監禁されては九姉に報復されるという事件が後を絶たず、姉妹は自分たちが九姉の庇護を必要としていることをまざまざと認識させられ、また人々はキュトスの姉妹たちを本格的に忌み嫌い遠ざけるようになった。
 このような事態が緩むのは、やっと大暦が三つ下った頃、西域にトロス三国が興る時代に入ってのことである。
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