判決後コメント・会見内容

判決後の弁護団のコメント 及び 記者会見概要 (平成20年10月2日)


原告弁護団からのコメント


今回の橋下弁護士の発言は,当時の感情的な批判の流れに乗って,誤解に基づいた懲戒請求を促すものでした。刑事裁判における弁護人の職責に対して,橋下弁護士は弁護士なのですから理解をしていたはずです。しかし,社会の誤解や無理解を解くことなく,逆に助長する行為に至ったことは,非常に残念でした。

この裁判の目的は,中立で公開された裁判所から,橋下弁護士のした発言及びその後の言動が誤りであるとの判断を受けることによって,社会の皆さんに対して刑事裁判における刑事弁護人の役割を正しく理解していただくこと,そして,懲戒請求の制度趣旨について誤解を解消していただきたいということにありました。

光市事件の弁護人は,社会から脅迫やバッシングを受け続けており,その中には事実誤認に基づく非難や,制度に対する無理解から生まれている批判も多くありました。
そのような中で,橋下弁護士の言動は,刑事弁護人の職責についての理解を妨げ,誤解や偏見を助長するものであり,刑事弁護人の職務遂行に萎縮効果を生じさせ,ひいては刑事被疑者・被告人の権利保護の実効性を妨げかねない行為でした。極論すれば,光市事件に限らず全ての刑事弁護活動に対する業務妨害行為であり,これまでの刑事裁判と刑事弁護の歴史を唾棄するものでした。

刑事裁判では,検察官が被害者遺族と公益の立場を代表し,弁護人が被疑者・被告人の利益保護のために全力で防御活動をし,公平な第三者としての裁判所と裁判員が客観的に評価・判断することで,刑事司法による社会正義が実現するのです。
そのためには,刑事弁護人はまず被告人の利益擁護を最優先にしなければなりません。そのことによって,当事者主義の刑事司法の構造を通じて社会正義を実現するという制度なのだということを,原告はこの裁判で主張してきました。
今日の判決では,当然のことではありますが,この点に関する原告の主張が全面的に認められました。裁判所は刑事弁護人の役割と職責について,判決文32〜35ページにおいて指摘しています。

今回,橋下弁護士は,弁護士会への懲戒請求は誰でも簡単に立てられる,何万何十万と請求があれば弁護士会も処分せざるをえないと述べて,光市事件の弁護団に懲戒請求をかけるよう,テレビを通じ視聴者に呼びかけました。しかし,弁護士に対する懲戒請求は,誰にでも開かれた制度であるというのは事実ですが,告訴・告発に類するような手続であり,署名活動のように気軽にしてよい手続ではありません。
懲戒請求を受け付けた弁護士会では,裁判官・検察官を委員に含む綱紀委員会で1件1件の請求を検討し,必要に応じて申立人や対象弁護士の出頭を求めて事情を調査します。対象弁護士は,弁明をする書面の作成・提出や,聴聞を求められるなどの負担を負うことになります。

原告らは,橋下弁護士によって「被告人の言い分を捏造した」「死刑廃止のために被告人を利用している」「懲戒請求されるべき非行弁護士」というレッテルを貼られ,次から次へと届く懲戒請求への対応をせざるをえず,嫌がらせや脅迫の手紙や電話も相次いで受けました。このことは,光市事件の弁護活動にも少なからぬ影響を与えたかもしれません。
橋下弁護士が本当に原告らは懲戒されてしかるべきだと考えていたなら,視聴者に懲戒請求を働き掛ける必要はなく,自身が1件のきちんとした懲戒請求をすればよかったのです。非難・論評をするための手段としても,明らかに誤っていたといわざるをえません。

先行行為により危険を創出した者は,その危険状態を払拭する作為義務があるといわれています。被告橋下弁護士に対しては,自らの発言によって播いた種が非常に大きく生い茂ってしまったことを認識していただき,その誤解を解き,刑事裁判や刑事弁護の意義について正しい理解が得られるように,その発言力と権限を積極的に生かされるよう希望しています。



記者会見での主な質疑応答


<作成中>





2008年10月08日(水) 01:36:58 Modified by keiben




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