当wikiは、高橋維新がこれまでに書いた/描いたものを格納する場です。

 本稿は、2016年7月23日から24日にかけて放映されたFNS27時間テレビ内の1コーナー、「ホンマでっか!?生人生相談スペシャル」(23日21時頃〜23時頃)の感想を記すものである。

 このコーナーは、「ホンマでっか!?TV」の出張版であり、27時間テレビでは恒例の企画である。筆者は「ホンマでっか!?TV」の通常放送回は見たことがないので、そちらの方は詳しいことは分からないが、少なくとも27時間テレビでの出張版では、「笑い」が第一に志向されている。
 笑いの中核を担うのは、「専門家」と呼ばれている人たちの極端な発言である。この「極端さ」がズレになっており、このズレに対して司会のさんまがツッコミを入れることで(たまに、ブラマヨやマツコもこのツッコミ役を担っている)、笑いが生まれる構図が出来上がっている。例えば2011年の27時間テレビ内における「ホンマでっか!?TV」では、専門家席にいたテレンス・リーが中居や稲垣に対して「このままいくとあなたは独裁者になる」とか「テロリストになる」とかいったアドバイスをしており、これが笑いにつながっていた。

 この専門家たちは、そういう意味では笑いのエンターテインメントを生み出すための一装置に過ぎない。学問的な正確さに気を付けると、発言内容がどんどん穏当になってしまうため、そこは取っ払ってでも極端なことを言うことが求められる(筆者は、番組側がそういう発言をするように演出しているのではないかとさえ考えている)。「あなたの発言には学問的に厳密に考えると一部間違いがあります」と言うより、「何を寝言を言ってんだ」と凄んだ方がセンセーショナルである。「今の生活を続けていると寿命が縮む可能性があります」と指摘するより、「あんたこのままだと死ぬよ」と言った方が聴衆の耳目を引けるのである。
 結論の穏当さ・正確さと内容の極端さとは、不可避的にトレードオフの関係にあるのである。

 そしてこのように、彼らが学問の皮をかぶって極端な発言をすることで、「専門の学者がすごく極端なことを言っている」あるいは「専門の学者が考えても何らかの極端な事態が生じる」というズレが生まれ、それが笑いの種になるのである。非専門家だと、ここまでのズレは生まれない。非専門家が極端なことを言っていても、間違いであったり冗談であったりする可能性が大きいと聴衆は無意識に感じてしまうからである。専門家が同じことを言えば、それは真実なのだろうなと(やはり無意識に)視聴者は考える。内容が極端なのに、真実である(かのように聞こえる)からこそズレが生まれるのである。

 そうなると、この番組でいの一番に大事にすべきは専門家たちの極端な発言である。
 番組は、ゲストからのお悩み相談という体裁をとっている。ゲストが吐露した悩みに対して、専門家たちは「早死にするからすぐなんとかしろ」とか「芸人をやめろ」とか「コンビを解散しろ」とかいったすごく極端なアドバイスをする。これに対して主にさんまがツッコミを入れることで笑いが生まれる。
 またこういう極端なアドバイスを言われたゲストは、ムッとしてはいけない。ムッとすると笑いを阻害するので、素直に聞き入れてさんまのツッコミに任せておけばよい。あるいは、自分でツッコミを入れたり、キレ返して喧嘩をしたりすると別の笑いが生まれるので、自信があればその道をとってもよい。

 さて、今回のゲストは古舘伊知郎だったのだが、正直に言えばこのような番組のコンセプトには余り合っていないゲストだった。まず、古舘は専門家たちの極端なアドバイスに対してムッとして反論していた。これだと視聴者は古舘が怒っているというのを敏感に感じ取ってしまい、「笑ってはいけないのではないか」と思ってしまう。古舘も彼らが「マジで極端なことを言っている」ととるのではなく、エンターテインメントのために敢えて極端なことを言っているのだというのを理解したうえで、笑って聞き流すかキレ返すかのどちらかをとらないといけない。古舘は、怒って反論する場面もあったが、怒り方の程度が足りずコミカルなキレ芸として昇華しきれていなかった。
 古舘に、専門家たちの発言がおかしいと感じるだけの知性があったのが良くなかっただろう。
 そのうえ古舘は自分がしゃべりたがりであるために終始しゃべりつづけていたが、この番組でおもしろいのは専門家の発言とそれに対するレギュラー陣のツッコミなので、古舘があんなに喋ってはダメである。ゲストは、あくまで専門家とレギュラー陣がやりとりをするための題材(=悩み)を提供するだけなのである。その後は、その題材に沿った会話を円滑に促す程度のしゃべりはしてもいいが、あとは自分でおもしろい発言ができなければ黙っていないといけない。古舘のしゃべりは、語彙に溢れてはいるが、特別笑えるものではない。

 結論から言うと、過去の27時間テレビで放映された「ホンマでっか!?TV」の出張版よりおもしろくはなかった。ひとえに、古舘というゲストの人選が原因である。再考が、必要であろう。

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