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Firewatch

 暇だったのでやりました。
 主人公のヘンリーはとある理由でロッキー山脈の山岳監視員のバイトをすることになるわけですが、ヘンリーがそのバイト中に起きた事件の真相を探るというゲームです。ゲーム上に再現されたロッキー山脈のオープンワールドを主観視点で歩いて巡りながら、気になる場所を調べて手掛かりを探っていくわけです。主人公をアクションゲーム的な操作で動かせるミステリーという意味では、L.A.ノワールとも似ています。
 ただ、ミステリーの内容は薄いです。真相が分かっても何でそんなことになっていたんだということがイマイチ腑に落ちません。起きている事件の内容もそんなに大きなものではないので、ひたすら山の中を歩いていると「何でこの程度のことの解決に躍起になっているんだろう?」「というかそもそもなぜ一山岳監視員に過ぎない主人公がターゲットにされているんだろう?」といったことに言い知れぬ不安や焦燥を覚えます。
 主人公は若年性認知症になってしまった妻(やその実家)との関係に疲れてこの仕事に逃げてきたという設定であり、人間関係に嫌気がさした主人公の心情を反映してかゲーム内に主人公以外の人間はほとんど出てきません。ゲーム中はデリラという女上司と無線で頻繁にやりとりをすることになるのですが、デリラも声が聞こえるだけで顔は最後まで見ることができません。姿かたちがはっきり見える人間は主人公本人だけであり、主観視点のゲームである以上その主人公の顔や体を見る機会もほとんどありません。グラフィックも若干トゥーン調で絵本みたいだし、人間以外の動物もほとんど出てこないので、精神と時の部屋みたいなだだっ広いお伽の国の空間に主人公が一人迷い込んだみたいな感覚になって、すごくフワフワとした感じを味わえます。このゲーム全体を通したフワフワの雰囲気作りはすごく上手くいっていると思うので、多分狙ってやっていることなんでしょうね。ただ、真っ当なエンターテインメントではないので、人をかなり選ぶと思います。前述のとおりエンディングで明らかになる真相もピシャリと合点がいくものではないので、最後までフワフワした感じが消えないままにスタッフロールを眺めることになります。それでもいいという人は、やってみてください。
 ただ、少なくともインタフェースはもっと練ることができると思います。分かりやすい目印の少ない山の中を延々と彷徨うことになるので地図が手放せないのですが、その地図を簡単に見ることができないうえに見ながら移動することができません。ワープもないし。
 あとやっぱり筆者は北米の哺乳類が好きなので、もっと動物をたくさん出して欲しかったです。

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