28-321
321 名前:1/6[sage] 投稿日:2009/10/19(月) 16:52:55 ID:fD6PXYgW
SS4本目です
イメージとしては>>229の続きですが、べつに続編てわけではない微妙な感じです
「実家に帰らせていただきます」
そう書置きを残して、私はヴィヴィオを連れて家を出た。
今は、これ以上この家にいるのはつらかったから。
朝一で出した休職願いは、急だったこともあってとりあえず1週間の休暇扱いとして処理されるらしい。
とにかくしばらく頭を冷やす必要がある。私も、フェイトちゃんも。
それは、結婚してから始めて迎える、私たちの危機だった。
昨夜フェイトちゃんは、私とヴィヴィオが夕食を食べ終わった頃に帰ってきた。
「おかえり、フェイトちゃん」
「た、ただいまぁ」
出迎え、玄関でいつもどおりおかえりなさいのキスをしようとすると、スッと顔をそむけられてしまった。
「フェイトちゃん?」
「ん? な、なに?」
「……ご飯は?」
「あ。ごめん。ちょっと、出先で食べてきちゃったんだ」
「そう」
違和感。
なんだろう。何か、隠してる?
言いたくないことなら、べつに詮索したりしないのになぁ。
私の横を通り抜けるフェイトちゃんからは、一瞬だけ、いつも彼女が使っているのとは違う香水の匂いがした。
どこかで嗅いだことがあるような、そんな匂いだった。
「フェイトちゃん、お風呂わいてるよ」
「ありがと。それじゃ、入ろうかな」
322 名前:2/6[sage] 投稿日:2009/10/19(月) 16:53:25 ID:fD6PXYgW
フェイトちゃんが脱いだコートを受け取り、ハンガーにかける。
と、不意にそのポケットから何かが転がり落ちてきた。
「あ!」
小さく叫んで、フェイトちゃんは慌てたようにそれを拾いあげた。
とりつくろう余裕もないのか、後ろ手に隠して、そのまま自室に引っこんでしまう。
よくは見えなかったけど、手の平に乗るくらいの四角い箱だった。
綺麗に包装されて、リボンがかけられていた。
フェイトちゃんだって、プレゼントを贈る相手くらいいたっておかしくない。
でも、なんで隠すんだろう。
まさか、浮気相手に贈るつもり……とか? まさか。
でももし、もしもだけど浮気なんてしてたら私…………何するか、わかんないかも。ねえ、レイジングハート。
……なーんて、ちょっと怖い考えが浮かんでしまった。
私と、ヴィヴィオと、フェイトちゃん。いつもどおり三人川の字になって眠る至福の時。
でも、ふと気がつくとフェイトちゃんの姿はベッドになかった。
おトイレかな?
そう思って首を動かすと、フェイトちゃんの自室から明かりが漏れているのが見えた。
誰かと通信でもしているのか、かすかに話し声がする。
お仕事かな。大変だなと思いながらも、私は起き上がっていた。
それまでのフェイトちゃんの言動が引っかかっていたせいだろう。
息を殺して、耳をそばだてる。
「……なのはには、バレなかったと思う。危ないところだったけど。うん。ありがとう……ティア」
ティ、ティア!?
な、ないないない。それはないよね。だってティアにはスバルがいるし。
そう思った。
だけど翌朝、「ゆうべ、ティアとお話してたの?」って聞いたらフェイトちゃんは目を泳がせながら答えた。
「し、してないよ」
323 名前:3/6[sage] 投稿日:2009/10/19(月) 16:54:00 ID:fD6PXYgW
なんてウソの下手な人だろう。
そして私は、フェイトちゃんを見送ってすぐに管理局へ休職願いを出したのだった。
私はなにも、浮気を疑って怒ってるわけじゃなかった。
ただ、それを隠されるのが悲しくて。それでたまらなくなって飛び出してきてしまったのだ。
だけどこれからどうしよう。
離婚となると手続きもあるし、ヴィヴィオも学校に通わせなくちゃいけないし。
思案してると、インターホンが鳴った。
お客さんかなと思ったら、ドアを開ける音。続けて、駆けてくるけたたましい音。
「なのは!」
視線を向けた先には、息を切らせたフェイトちゃんが立っていた。
書置きを見たのだろう。
「な、なにしにきたの」
「迎えに来たんだよ」
「ヴィヴィオを?」
「なのはもだよ。決まってるじゃない」
「どうかな」
「ねえ……なんで怒ってるの? 私、何かした?」
「わかんないの!? いっぱい隠し事してるくせに!」
「なのは、き、気づいてたの?」
「あたりまえだよ……」
青ざめるフェイトちゃんが、力なく肩を落とす。
それで私は、今までの三人の幸せな生活が、もう終わってしまうのかなって思った。
しかたない。人の気持ちが変わるのは、誰にもどうにもできないから。
浮気だったら絶対許せないけど。
もしフェイトちゃんに本気で好きな人ができたなら、私は笑って見送ってあげたい。
324 名前:4/6[sage] 投稿日:2009/10/19(月) 16:54:53 ID:fD6PXYgW
「内緒にしとくつもりだったのになぁ」
顔を上げたフェイトちゃんの表情は、開き直ったのか、もう晴れ晴れとしていた。
「ティアのこと、好きなの?」
「……え?」
「だから、ティアのこと」
「好きだけど、それがどうかした?」
「どういうって……ひどいよ、フェイトちゃん」
「ちょ、ちょっと待って」
フェイトちゃんは両手を振って、否定のポーズをとる。
この状況でなにを言い訳するつもりなんだろう。
「ティアのことは、部下として、仲間として普通に好きだよ。それがなにかいけなかった?」
「仲間……? それだけ?」
「それ以外に何かあるの?」
「だ、だってフェイトちゃん、浮気してたんじゃ?」
「浮気!? 私が!?」
自分を指差して、フェイトちゃんは今始めて知りましたみたいに驚いている。
とぼけてる……って感じでもないよね。
戸惑うフェイトちゃんに、私は一から説明した。
それを聞いたフェイトちゃんの反応はと言えば――
「し、してない! 私浮気なんてしてないよ!」
「じゃぁどうして、ただいまのキスしてくれなかったの?」
「そ、それは、あの……」
「フェイトちゃん。もう全部正直に話して」
「う、うん。あの、ティアとね――」
326 名前:5/6[sage] 投稿日:2009/10/19(月) 16:55:19 ID:fD6PXYgW
ティア。やっぱり、ティアなの?
「餃子、食べちゃったの」
「……は?」
「だから、餃子食べたから、臭うかなと思って、恥ずかしくて」
「な……」
なにそれ!
「そ、それじゃ、あのプレゼントみたいな箱は?」
「それはね……」
フェイトちゃんは懐に手を伸ばすと、あのリボンのかけられた箱を取り出した。
「はい、開けてみて」
「いいの?」
フェイトちゃんは無言で頷く。
私はリボンをほどき、包装をといて、恐る恐る箱を開いた。
中に入っていたのは、綺麗な紅い色をした玉に飾られた指輪だった。
「フェイトちゃん、これ?」
「結婚1周年記念、のつもり。ホントはちゃんと記念日まで隠しておきたかったんだけど」
「私、に?」
「もう。他に誰がいるっていうの?」
そう言って笑うフェイトちゃんの指にも、おそろいの指輪が光っていた。
「じゃあ、ティアと話してたのは。私に、バレてないって」
「うん。ティアにも一緒に選んでもらったんだ」
「そ……なんだ」
327 名前:6/6[sage] 投稿日:2009/10/19(月) 16:55:43 ID:fD6PXYgW
腰が抜けた。
私は立っていられなくてその場に尻もちをついた。
「ごめん、フェイトちゃん。私、フェイトちゃんのこと疑ってた。最低だよ。ごめん。ごめんね」
後悔の涙が、後から後から溢れて止まらない。
こんなにも私を想ってくれてる人を、私は信じきれなかったんだ。
なんてひどい。
「ううん、私こそ。なのはのこと、不安にさせてごめんね」
子どもみたいにしゃくりあげる私のことを、フェイトちゃんは屈んで抱きしめてくれる。
優しい……。
「私が好きなのは、なのはだけだよ」
「うん……。私も、私もフェイトちゃんだけだよ」
「ホント? 浮気なんてしたら許さないからね」
「うん……うん!」
「帰ろう、なのは。私おなかすいちゃった」
私は大きく頷いて、フェイトちゃんにしがみついた。
フェイトちゃんの好きなもの、なんでも作ってあげよう。
「なにが食べたい?」
「そうね。いろいろあるけど、まずは……」
私の問いに、フェイトちゃんは囁いた。
「なのはかな」
328 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2009/10/19(月) 16:57:50 ID:fD6PXYgW
以上です
話としてはものすごいベタですが、思いついちゃったら書かなくてはいけません
だからしょうがないのです
つづき
SS4本目です
イメージとしては>>229の続きですが、べつに続編てわけではない微妙な感じです
「実家に帰らせていただきます」
そう書置きを残して、私はヴィヴィオを連れて家を出た。
今は、これ以上この家にいるのはつらかったから。
朝一で出した休職願いは、急だったこともあってとりあえず1週間の休暇扱いとして処理されるらしい。
とにかくしばらく頭を冷やす必要がある。私も、フェイトちゃんも。
それは、結婚してから始めて迎える、私たちの危機だった。
昨夜フェイトちゃんは、私とヴィヴィオが夕食を食べ終わった頃に帰ってきた。
「おかえり、フェイトちゃん」
「た、ただいまぁ」
出迎え、玄関でいつもどおりおかえりなさいのキスをしようとすると、スッと顔をそむけられてしまった。
「フェイトちゃん?」
「ん? な、なに?」
「……ご飯は?」
「あ。ごめん。ちょっと、出先で食べてきちゃったんだ」
「そう」
違和感。
なんだろう。何か、隠してる?
言いたくないことなら、べつに詮索したりしないのになぁ。
私の横を通り抜けるフェイトちゃんからは、一瞬だけ、いつも彼女が使っているのとは違う香水の匂いがした。
どこかで嗅いだことがあるような、そんな匂いだった。
「フェイトちゃん、お風呂わいてるよ」
「ありがと。それじゃ、入ろうかな」
322 名前:2/6[sage] 投稿日:2009/10/19(月) 16:53:25 ID:fD6PXYgW
フェイトちゃんが脱いだコートを受け取り、ハンガーにかける。
と、不意にそのポケットから何かが転がり落ちてきた。
「あ!」
小さく叫んで、フェイトちゃんは慌てたようにそれを拾いあげた。
とりつくろう余裕もないのか、後ろ手に隠して、そのまま自室に引っこんでしまう。
よくは見えなかったけど、手の平に乗るくらいの四角い箱だった。
綺麗に包装されて、リボンがかけられていた。
フェイトちゃんだって、プレゼントを贈る相手くらいいたっておかしくない。
でも、なんで隠すんだろう。
まさか、浮気相手に贈るつもり……とか? まさか。
でももし、もしもだけど浮気なんてしてたら私…………何するか、わかんないかも。ねえ、レイジングハート。
……なーんて、ちょっと怖い考えが浮かんでしまった。
私と、ヴィヴィオと、フェイトちゃん。いつもどおり三人川の字になって眠る至福の時。
でも、ふと気がつくとフェイトちゃんの姿はベッドになかった。
おトイレかな?
そう思って首を動かすと、フェイトちゃんの自室から明かりが漏れているのが見えた。
誰かと通信でもしているのか、かすかに話し声がする。
お仕事かな。大変だなと思いながらも、私は起き上がっていた。
それまでのフェイトちゃんの言動が引っかかっていたせいだろう。
息を殺して、耳をそばだてる。
「……なのはには、バレなかったと思う。危ないところだったけど。うん。ありがとう……ティア」
ティ、ティア!?
な、ないないない。それはないよね。だってティアにはスバルがいるし。
そう思った。
だけど翌朝、「ゆうべ、ティアとお話してたの?」って聞いたらフェイトちゃんは目を泳がせながら答えた。
「し、してないよ」
323 名前:3/6[sage] 投稿日:2009/10/19(月) 16:54:00 ID:fD6PXYgW
なんてウソの下手な人だろう。
そして私は、フェイトちゃんを見送ってすぐに管理局へ休職願いを出したのだった。
私はなにも、浮気を疑って怒ってるわけじゃなかった。
ただ、それを隠されるのが悲しくて。それでたまらなくなって飛び出してきてしまったのだ。
だけどこれからどうしよう。
離婚となると手続きもあるし、ヴィヴィオも学校に通わせなくちゃいけないし。
思案してると、インターホンが鳴った。
お客さんかなと思ったら、ドアを開ける音。続けて、駆けてくるけたたましい音。
「なのは!」
視線を向けた先には、息を切らせたフェイトちゃんが立っていた。
書置きを見たのだろう。
「な、なにしにきたの」
「迎えに来たんだよ」
「ヴィヴィオを?」
「なのはもだよ。決まってるじゃない」
「どうかな」
「ねえ……なんで怒ってるの? 私、何かした?」
「わかんないの!? いっぱい隠し事してるくせに!」
「なのは、き、気づいてたの?」
「あたりまえだよ……」
青ざめるフェイトちゃんが、力なく肩を落とす。
それで私は、今までの三人の幸せな生活が、もう終わってしまうのかなって思った。
しかたない。人の気持ちが変わるのは、誰にもどうにもできないから。
浮気だったら絶対許せないけど。
もしフェイトちゃんに本気で好きな人ができたなら、私は笑って見送ってあげたい。
324 名前:4/6[sage] 投稿日:2009/10/19(月) 16:54:53 ID:fD6PXYgW
「内緒にしとくつもりだったのになぁ」
顔を上げたフェイトちゃんの表情は、開き直ったのか、もう晴れ晴れとしていた。
「ティアのこと、好きなの?」
「……え?」
「だから、ティアのこと」
「好きだけど、それがどうかした?」
「どういうって……ひどいよ、フェイトちゃん」
「ちょ、ちょっと待って」
フェイトちゃんは両手を振って、否定のポーズをとる。
この状況でなにを言い訳するつもりなんだろう。
「ティアのことは、部下として、仲間として普通に好きだよ。それがなにかいけなかった?」
「仲間……? それだけ?」
「それ以外に何かあるの?」
「だ、だってフェイトちゃん、浮気してたんじゃ?」
「浮気!? 私が!?」
自分を指差して、フェイトちゃんは今始めて知りましたみたいに驚いている。
とぼけてる……って感じでもないよね。
戸惑うフェイトちゃんに、私は一から説明した。
それを聞いたフェイトちゃんの反応はと言えば――
「し、してない! 私浮気なんてしてないよ!」
「じゃぁどうして、ただいまのキスしてくれなかったの?」
「そ、それは、あの……」
「フェイトちゃん。もう全部正直に話して」
「う、うん。あの、ティアとね――」
326 名前:5/6[sage] 投稿日:2009/10/19(月) 16:55:19 ID:fD6PXYgW
ティア。やっぱり、ティアなの?
「餃子、食べちゃったの」
「……は?」
「だから、餃子食べたから、臭うかなと思って、恥ずかしくて」
「な……」
なにそれ!
「そ、それじゃ、あのプレゼントみたいな箱は?」
「それはね……」
フェイトちゃんは懐に手を伸ばすと、あのリボンのかけられた箱を取り出した。
「はい、開けてみて」
「いいの?」
フェイトちゃんは無言で頷く。
私はリボンをほどき、包装をといて、恐る恐る箱を開いた。
中に入っていたのは、綺麗な紅い色をした玉に飾られた指輪だった。
「フェイトちゃん、これ?」
「結婚1周年記念、のつもり。ホントはちゃんと記念日まで隠しておきたかったんだけど」
「私、に?」
「もう。他に誰がいるっていうの?」
そう言って笑うフェイトちゃんの指にも、おそろいの指輪が光っていた。
「じゃあ、ティアと話してたのは。私に、バレてないって」
「うん。ティアにも一緒に選んでもらったんだ」
「そ……なんだ」
327 名前:6/6[sage] 投稿日:2009/10/19(月) 16:55:43 ID:fD6PXYgW
腰が抜けた。
私は立っていられなくてその場に尻もちをついた。
「ごめん、フェイトちゃん。私、フェイトちゃんのこと疑ってた。最低だよ。ごめん。ごめんね」
後悔の涙が、後から後から溢れて止まらない。
こんなにも私を想ってくれてる人を、私は信じきれなかったんだ。
なんてひどい。
「ううん、私こそ。なのはのこと、不安にさせてごめんね」
子どもみたいにしゃくりあげる私のことを、フェイトちゃんは屈んで抱きしめてくれる。
優しい……。
「私が好きなのは、なのはだけだよ」
「うん……。私も、私もフェイトちゃんだけだよ」
「ホント? 浮気なんてしたら許さないからね」
「うん……うん!」
「帰ろう、なのは。私おなかすいちゃった」
私は大きく頷いて、フェイトちゃんにしがみついた。
フェイトちゃんの好きなもの、なんでも作ってあげよう。
「なにが食べたい?」
「そうね。いろいろあるけど、まずは……」
私の問いに、フェイトちゃんは囁いた。
「なのはかな」
328 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2009/10/19(月) 16:57:50 ID:fD6PXYgW
以上です
話としてはものすごいベタですが、思いついちゃったら書かなくてはいけません
だからしょうがないのです
つづき
2010年02月10日(水) 18:58:12 Modified by ami_solger