304 名前:ウィンドウズ さんてんに 1 [sage] 投稿日:2010/06/17(木) 22:05:37 ID:SkgvYuog [2/12]
305 名前:ウィンドウズ さんてんに 2 [sage] 投稿日:2010/06/17(木) 22:06:33 ID:SkgvYuog [3/12]
306 名前:ウィンドウズ さんてんに 3 [sage] 投稿日:2010/06/17(木) 22:07:24 ID:SkgvYuog [4/12]
307 名前:ウィンドウズ さんてんに 4 [sage] 投稿日:2010/06/17(木) 22:07:58 ID:SkgvYuog [5/12]
308 名前:ウィンドウズ さんてんに 5 [sage] 投稿日:2010/06/17(木) 22:08:40 ID:SkgvYuog [6/12]
309 名前:ウィンドウズ さんてんに 6 [sage] 投稿日:2010/06/17(木) 22:09:16 ID:SkgvYuog [7/12]
310 名前:ウィンドウズ さんてんに 7 [sage] 投稿日:2010/06/17(木) 22:09:52 ID:SkgvYuog [8/12]
311 名前:ウィンドウズ さんてんに 8 [sage] 投稿日:2010/06/17(木) 22:10:48 ID:SkgvYuog [9/12]
312 名前:ウィンドウズ さんてんに 9 [sage] 投稿日:2010/06/17(木) 22:11:29 ID:SkgvYuog [10/12]
313 名前:ウィンドウズ さんてんに 10 [sage] 投稿日:2010/06/17(木) 22:12:03 ID:SkgvYuog [11/12]

 巡航艦アースラの廊下は高い。
 巡航艦という性質上、長期の単独航行任務をする事が多い為、
乗員の感じる閉塞感を少しでも緩和しようという配慮により、廊下に限った事ではないが天井は高く、そして広い。
 この高い天井を実現していているのは、
定常魔法空間学においてフラクタルラーメンと呼ばれる空間操作魔法と魔力結晶加工の高度な複合技術だ。
 そのお陰でアースラ付執務官であるクロノは、
誰かと擦れ違うたびに背中を壁に押しつけたりせずに、トレーニングルームへと歩いていく事が出来た。
 そして緩やかな彼の足音とは別に、小気味よい駆け足が廊下に響く。
 火災対策の為にむき出しの複合セラミックで作られている艦内では、足音はどうしても甲高いものになるが、
どんどんと鋭くなっていくその音から彼女が近づいてきている事が判る。
 そう、彼女である。
 振り向かなくとも判る。
 士官学校時代からの腐れ縁で、最も信頼している部下エイミィの駆け方だ。
但し、艦内風紀に関して言えば、彼女は余り信頼できない。
 だからクロノは振り返る。

「エイミィ!」

 普段だったら彼女はそこで急制動をかけるはずだった。
 しかし今日、この時に限って言えば彼女は止まらなかった。
 己の脚力のみで彼女は、高々と放物線を描いてクロノ目掛けて飛び込んだ。

「わ、こ、こら! エイミィ!」

 叫びつつもクロノはエイミィを受け止める。
 身長差プラスジャンプによる高低差によって、クロノの顔面をエイミィの柔らかな腹部が被う。
 艦長の暴力的なまでのボリュームを持つ胸とは比べられないが、
柔らかな双丘は、額からつむじの辺りに載っかった。
 バランスをとるのに五秒、名残惜しさに二秒を費やして、クロノは抱きかかえてエイミィを床に降ろす。

「エイミィ、仮にも他の乗員の模範となるべき立場の君が……」
「ごめん、ごめん。でも急いでクロノ君に伝えなきゃいけない事があってね」

 小言を述べるクロノをエイミィは遮る。
 単に急ぎの用事というならば思念通話で事足りるはずだ。
 それなのに直接口頭で伝えねばならない事となると、かなり秘匿性が高いという事だ。
 即座に思考を切り替えるクロノの耳元に、エイミィは唇を寄せる。

「チャック、空いてるよ」

 一瞬の沈黙の後、グルンと一八〇度背を向けたクロノは、自らのズボンに手をかけた。



 巡航艦に置いて各種資材の積み込みとチェックはそれぞれの部門長の職掌である。
 例えば燃料は航海科、カートリッジは武装隊、
食料や水は主計課。甘味についてはリンディ提督と言った具合である。
 しかし、新人艦長であるクロノがこれらの積み込み作業を全て部下に任せるという事はない。
 万年人手不足の管理局はこれらの資材管理に置いても、各艦の艦長に手腕を発揮する場を提供しているからだ。
 クリップボードに挟まれた無数の紙の束をめくりながら、
クロノは員数外で調達した様々な物資を照らし合わせていく。

「クロノ、まだ頑張っているの?」

 その声は、数年前に家族となった妹のものであった。

「あぁ、三日後には出港だから、今日中に漏れがないか確認しないと間に合わない」
「そっか、手伝おうか?」

 フェイトの申し出は成る程有難いが、この手の作業は責任を分散させるとその方が間違いが起きやすい。

「有難う、気持ちだけ貰っておくよ。フェイトはそろそろ休んでおくんだ。
明日になったら休む間もなく仕事を頼むかも知れないからな」

 クロノ流のジョークにフェイトは苦笑する。
 彼は冗談抜きでそう言う事を強要するし、こんな冗談を言っている時はその必要が全くないからだ。

「折角だから少し見学するね」
「面白くも何ともないぞ」
「飽きたら戻るよ」

 そして、フェイトが来てから三つ目のコンテナの確認が終わった後に、フェイトはその事に気付いた。

「あ……」
「どうしたフェイト」

 手元のリストをもう一度確認しながら、クロノは問い掛ける。

「クロノ、ちょっとだけ動かないでいて」
「? あぁ」

 蜘蛛の巣か何か付いているのだろうか?
 そう思っている間にフェイトは跪くと、両手の塞がっているクロノの股間に手を伸ばした。
 とっさに飛び退く。

「フェ・フェイト!?」
「ファスナーが降りてたから、あげようとしただけだよ」

 何故兄がこんなにも動転しているのか判らずフェイトは不思議そうに首をかしげる。

「やるから、自分でやるから! こういう事は教えてくれるだけで十分だから!」

 顔を真っ赤にして、クロノは叫んだ。



 次元世界の名でもある惑星ミッドチルダ。
 その中心都市クレナガンから五〇〇リーグほど北北西進んだ内陸部に、
次元世界五大宗教の一つ聖王教の最上教会であるハイリゲ・シュタットがある。
 多くの聖王はゆりかごの中で生まれ、育ち、治め、死んだ。
しかしゆりかごを建造した三代聖王を含め、八人の聖王がゆりかごの外で育っている。
 そして、ハイリゲ・シュタット教会とは、ゆりかごの外で育った聖王の、
今日に残る数少ない城と同義であり、聖王教徒にとって宗派を問わず最も重要な聖地の一つである。
 クレナガン北方に位置するハイリゲ・シュタット教会は、聖ヒルデの生地であり、
聖王朝の築城思想に従って、敵から臣民を守るべく街を囲む様にして作られた。
 故に厳密にかつ控えめに定義するならば、このハイリゲ・シュタット教会は、実に〇.六リーグもの面積を持つ。
 尤もその歴史的理由から、一般にザンクト・ヒルデ・ハイリゲ・シュタット教会と称する場合、
都市全体ではなく、中枢たるベルクフリートを含む内郭を指して言う。
 そのベルクフリートの三階、かつての大臣室の一室で、
クロノは騎士カリムと先頃始動した機動六課のサポート、そしてその先にある予言対策について会談を持っていた。
 ミッド地上本部崩壊の予言が初めて為された、その更に一〇年も前まで遡り、無数の事件や政変について調べた結果を語り合い、
そして何度もジェイル・スカリエッティという男に辿り着く。
 やがて、この日語り合える限りの事を語り尽くすと、クロノは立ち上がった。

「長い時間有難うございます、騎士カリム。お陰で次の捜査方針が見えてきました」
「いえ、こちらこそ有難うございます」

 立ち上がり、転送室まで送ろうとしたカリムは
「ア」と小さな悲鳴を上げた。

「どうしました、騎士カリム」
「その、クロノ提督…社会の窓が開いています」

 白い肌を朱に染めながら、カリムはその事実を伝える。

「これは、失礼しました」

 照れ隠しに苦笑いを浮かべ、クロノはカリムに背を向ける。
 その後ろ姿にカリムはふとイタズラ心が湧く。

「よろしければお手伝いしましょうか、クロノ提督」
「いえ、騎士カリムの手を煩わせるようなことではありません」

 しかしクロノの手はチャックに触れる寸前で止まっている。

「手を、使わなければよろしいのですね?」
「手を煩うようなことではないとおっしゃるのなら」

 言いながらクロノは振り返る。
 これから起こる事への期待からか、さっきまで何ともなかった彼のズボンは窮屈そうに張っていた。

「勿論です、クロノ提督」

 ゴクリと唾を飲み、カリムはクロノの前で四つん這いになる。
 一歩、二歩と這って進み、クロノの股間に顔を近付ける。
 鼻先が隙間から顔を出している下着に触れるかどうかという距離でカリムはスゥと息を吸う。
 久しく吸っていない性臭が肺の奥まで達し、心が酔う。
 下着の合わせ目を軽く噛み、首をふるうとペチンと熱いものが彼女の頬を叩いた。
 黒いクロノの化身は、強く己が雄である事を匂わせる。

「騎士カリム、僕はチャックを上げていただければそれで十分なのですが?」

 形ばかりの言葉を紡ぐ。

「こんなに張っていては、チャックが閉まりませんよ」

 レロリと、根本から先端まで裏筋に舌を這わせ、肌の味を堪能する。
 それから、亀頭を口に含んだ。

「ん、しかし一度出したものをしまうのは、大変ではありませんか?」

 鈴口から零れる体液を吸われながら、クロノはカリムの繊細な髪を指で梳く。

「うぃふふぁら……」

 クロノをくわえている為に、口をついて出る言葉が、言語としての原形をとどめていないと気付くと、
カリムは気の利いた答えを返す事を止め、むしゃぶる事に専念する。

「何を言っているのか判りませんよ、騎士カリム」

 クロノの批判に応えるにはくわえているものを放さなければならない。
それならば答える必要はない。

「そんなにおいしいのですか?」
「ふぁい」

 この問いには、唯一言で言いと言う事もあり、カリムはすぐさま返事する。

「淫乱ですね、騎士カリムは」

 くすくすと笑いながら、告げられた事実にカリムの体は熱くなる。
 やがて、カリムの髪を玩んでいたクロノは、一房すくい上げ、香りを吸い込んだ。

「ああやっぱり、香りが前と違う。これは、ランですね」

 カリムの使うシャンプーは、内郭に設けられた修道院で作られた伝統的なものだが、
季節に咲く花を練り込む為に、一年の間にその香りは移ろいゆく。
 それはつまり、二人がこのような行為におよんだのは久しぶりの事だという証拠だった。
 騎士の誓いは、疼く体を一人慰める事さえ躊躇わせる。
 にも関わらず貪欲にクロノを求めるのは、それほどまでに彼に対する愛が業の深いものだからに他ならない。
それを知っていながら、さもこともなげに語るクロノを、カリムは恨みがましく見上げた。

「大丈夫ですか。たかがファスナー一つです、無理をなさる事はありませんよ」
「ふぁいひょーふふぇふ!」

 意地の悪いクロノへの仕返しは、いまだ冷静なクロノの余裕を奪い尽くす事で果たそうと、
クロノの分身を喉の奥に達するまでくわえ込んだ。



 時空管理局査察官であるヴェロッサは、同時に聖王教会騎士団に名を連ねる騎士の一人でもある。
 その為、ハイリゲ・シュタット教会ベルクフリート内の一般非公開区域を通行する権利が認められている。
 尤も、管理局員としての彼の立場を考えると、何でいつもこんな所にいるのだろうと不思議に思わないでもない。
 まぁ、その辺は慣れというもので、騎士も司祭も誰もかも「あの人だから」で納得してしまっていた。
 だが、それで納得しない人物がいた。
 自他共に認めるロッサの教育係、シスター・シャッハである。

「あぁ、シャッハ、今日は学園で説法を行う日じゃなかったかな?」

 目が泳いでいるのは、彼女がヴィンデルシャフトを顕現している理由に、思い当たる節があるからだ。

「幾つか言いたい事がありますが……身だしなみには気を付けてくださいと、いつも言っていますね?」

 抜き打ちの服装検査。
 サボリの件なのか、観光客を軟派した件なのか、それとも報告書の裏に書いたマンガの件なのか。
はたまたその他に十二件ほど隠しているどれかの事かも知れないが、
本命の事案に入る切っ掛けとして、或いは怒りに相応する分の理由を累積させる為に
シャッハは身だしなみに関わる問題を指摘する事がある。
 無論、シャッハが何に怒っているのか判らない以上、下手に悪事を自白するとやぶ蛇になる。

「髭も剃っているし、ちり紙もハンカチも持っているよ」

 だからロッサは、何食わぬ顔で、ほら、とジャケットのポケットから取り出してみせる。

「そうじゃありません」

 怒りを押し殺したシャッハの答え。

「えっ……と」

 ネクタイは曲がっていないし、シャツもクリーニングから戻ったばかりのものだ。
 身嗜みというキーワードに置いて一体何がシャッハの逆鱗に触れているのか解らない。
 解らない事は恐怖だ。
 何しろ敬虔な聖王教徒であるシャッハは、非殺傷設定を解除して攻撃するという事はなく、
それはつまりヴィンデルシャフトなら殴り放題という事でもあるからだ。
 ロッサが慌てふためく内に、シャッハの怒りは爆発した。

「チャックが開いているんです!」

 彼女は叫び、ズボンに開いた小窓を思いきり蹴り上げた。



 クレナガンにほど近い海浜公園は夕日の色に赤く染まっていた。
 もうすぐ終わる休日を謳歌する人々の中を、
ユーノとなのはは一種独特の気恥ずかしさにさいなまされながら無言の内に歩いていた。
 ユーノは幼馴染みであるなのはとの関係性について、新たなステップを踏み出そうとしていた。
 なのはに己の思いの丈を告白するのだ。
 失敗すればこれまでの暖かな関係は壊れてしまう。
 しかしそれでも、彼は前に進みたいと願っていた。
 なのはの養子であるヴィヴィオも、
きっと古代ベルカの風習なのだろう、
親指を人差し指と中指の間に入れた握り拳をつくって「頑張って」と応援してくれている。
 幼い少女の励ましに答える為にも、自らの勇気のなさに決別するのだ。
 その覚悟を決めた矢先だった。

「ねぇ、ユーノ君」

 まるで沈黙に耐えられなくなったかの様になのはが口火を切る。

「なに、なのは?」

 冷静に、冷静に。
 ユーノは自らに語りかける。
 夕日だけではない理由でなのはの顔は赤く、伏し目がちに、そして呟く様に告白した。

「社会の窓、開いてるよ」



 ユーノは夕日に向かって駆け出した。




著者:超硬合金

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