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作者:名無し

 月を背にドラゴンに乗って飛んでいる最中、エルシャドール・ミドラーシュは自らの異変を突如察知した。

 どういうわけか、創星神tierraとのリンクが間もなく切れようとしていたのだ。

 不測の事態だが、ミドラーシュには原因は分からないし対処のしようもない。
 ただ一つ確かなのは、仮に次の瞬間にでもリンクが切れれば、ミドラーシュは地面に叩きつけられて看過できない程度には破損してしまうことだ。

 まだ成さねばならないことの道半ばである現状、それは許されない。

 ミドラーシュは眼下に見えていた街の外れにある林に身を隠すことを選択する。
 創星神tierraとのリンクがいつ復帰するか。それはミドラーシュには分からなかったが、現状は身を隠すのが最善だと判断したのである。



 彼が酒場から出て何気なく夜空を見上げたそのとき、流れ星らしきものが街外れに落ちるのが見えた。
 酔った頭で好奇心に誘われるまま足を向けてみれば、林の奥にそれはあった。

「うおっ……、び、びっくりした。何だ……龍と女の子の人形?」

 紫色を基調としたドラゴンが眠るように横たわっており、それにもたれかかるようして緑色の髪をポニーテールに結った女の子がくたっと座り込んでいた。
 遠目から見ればドラゴン使いの少女が休んでいるようにも見えるのだが、近づいてみれば明らかに違うことが分かる。
 少女の関節が明らかに人形のそれだったからだ。

「等身大の人形? 精巧って言えば精巧だけど、明らかに人形って分かるのはちょっとなぁ……」

 だが、じろじろと人形を観察している内に男の内で好奇心が掻き立てられつつあった。
 この人形が女の子をどこまで模しているのか、気になってきたのである。
 彼自身は純粋な好奇心のつもりだったが、いつの間にか酔いが回って自制心が機能しなくなっていたのだろう。彼のモノがズボン越しにも存在が窺えそうなほどに膨らみつつあった。

 男は少女に顔を寄せて口づけをするが、思い描いていた感触とあまりに違っていたのか、すぐに顔を離して顰めた。

「一応口内まではきちんと造ってあるみたいだけど、やっぱ硬いなぁ。まぁ、人形なんだから当たり前と言えば当たり前なんだけど――」

 彼にとってはただのキスのつもりだったかもしれないが、ミドラーシュの内側では大きな変化があった。

 本来の人格であるウィンダが目覚めたのだ。

 それはミドラーシュが創星神tierraとのリンクが切れているからこそ起きたあり得ないはずの奇跡。

 喜ぶべきことだったはずなのに、ウィンダはただただ驚いていた。

(えっ、えぇっ、な、なに……っ!?)

 目を覚ましたら酒臭い赤ら顔の異性に自分の身体を弄り回されていたのだから、すべての先に驚きが来るのは当然と言えよう。

 しかし、ウィンダの困惑は男には届かない。
 ミドラーシュもウィンダの意思とは裏腹に表情一つ変えず眠ったままだ。

 男は手を伸ばすと、ミドラーシュのささやかな膨らみを撫でるように触った。

「おっぱいは……柔らかいけど、これじゃあなぁ……」

(……ひゃっ。ななっ……なっ、なんで身体が動かないの……っ!?)

 ウィンダは身体を動かそうと試みるも、指一本望むようには動かない。
 そもそもエルシャドール・ミドラーシュとして復活して以降初めて自我を取り戻したばかりの彼女が、自分の状態について理解できているかは怪しかっただろう。
 彼女にあるのは身体を無遠慮に触ってくる男への嫌悪ばかりだった。

「お、穴っぽいのは……ちゃんとあるのか。これで楽しませてもらうか。こんなところに落ちてきた理由は分からないけど、そういう用途のためのものだろうしな」

 男は人形の股間にそれらしい機構を確認し、ニヤニヤと笑みを浮かべる。
 その手が下半身に伸び、多少もたついた後で屹立したモノが姿を現した。

(ひっ……ゃ、やめて……私、まだしたことなんて、ないのに……)

 分からないことだらけのウィンダだったが、男が何をしようとしているのかだけは理解できてしまって懇願するような悲鳴が喉奥から零れた。

 だが、男にそれは届かない。
 何故なら彼の前にいるのはエルシャドール・ミドラーシュなのだから。

 男は人形の膝裏に手を回して抱えるように持ち上げると、彼女の細い腰を覆うベルトを手で押さえる。そうなれば人形の上半身は自然と男にもたれかかり、その手も彼の背へと回される。
 その動きがまるでしなだれかかってきてくれているかのようで、背徳的な刺激が男の全身を駆け抜けて理性をドロドロに溶かす。
 そうなってしまえば、もう止められるはずもない。

 男は勃起したモノを人形の体内に挿入し、彼女の身体全体を揺らすように腰を打ちつける。

(ひぐぅ……ゃ、ん……ぐぅ……、やめて……あぐっ……、おねがいだから……ゃめてぇ………っ)

 ミドラーシュとしての身体が痛みを遮断しているので彼女はそれを感じなかったが、不快なまでの圧迫感と膝の辺りから響く金属が揺れる音がウィンダに悲鳴を上げさせる。

 ウィンダは絶望していても、ミドラーシュは顔色一つ変えずピクリとも反応しない。

 しかし、男はだからこそいいと言わんばかりに力強く腰を振り続け――ミドラーシュの体内に白濁液を放った。

「こういうのって初めて使ったが、やっぱ自分でするのよりも何倍もいいもんなんだな。せっかくだからこれを持ち帰って――――あ?」

 射精した余韻に浸りながら滔々と喋り続ける男だったが、突如として辺りが暗くなった。

 怪訝に思って振り返れば、寝ていたはずのドラゴンが大きな口を開けていて――それが男の見た最後の景色だった。



 かくしてウィンダの意識は悪夢の底に沈み、ミドラーシュが覚醒を果たす。

 ミドラーシュは倒れようとしていた男の残骸から離れ、地面の上に軽やかに降り立つ。
 自らの動作に支障をきたす肉片を捨て、創星神tierraとのリンクを確認する。

 それらが正常化されているのを確認し、彼女は傍に控えているドラゴンに跨る。

 成さねばならないことは道半ば、こんな場所にいつまでも留まってなどいられないのだから。

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