2ちゃんねるBBSPINKのエロパロ板にある緋弾のアリアでエロパロの保管庫です。

 六月某日、私ことジャンヌ・ダルク30世はバスに乗り、とある場所へ友人と共に向かっていた。

 「……今日は悪いな。でも、こういうのならお前も嫌じゃないと思ってさ」

 ほら、とつきだされたディスプレイにはこんな文章が表示されている。

 『港区 ウエディングパーク「シーサイドハウス」の警備〈強襲科(アサルト)、探偵科(インケスタ)、他、応相談〉1.2単位』

 携帯のメールボックスから任務(クエスト)の資料を見せてくるのは遠山キンジ。
 武偵高での友人の一人で、今日一日限り私のパートナーになる男だ。
 私は今日、彼の単位稼ぎに付き合っていた。

 「……まあ、お前になら構わないか。確かに、私はフリルのついたドレスのような格好が好きだ。だから、今回の任務(クエスト)も……うん、悪くはない」

 間近でウエディングドレスを見ていられるからな、と私はそんな本音を遠山に語る。これは事実だ。私は可愛いものに目がなく、そんな私にとって今回の任務(クエスト)はうってつけのものといえる。

 それに……例え任務(クエスト)という形とはいえ、同年代の男子と丸一日行動を共にするというのは初めてのことだ。
 正直、その相手が遠山というのは……

 「……嫌ではない。むしろ嬉しくすらあるな」
 「え? なにがだ?」

 呟くような私の言葉に問いを投げる遠山。
 私はそんな遠山の台詞を無視しながら、彼の手を取り立ち上がった。

 「港区シーサイドハウス前……ここだな。遠山、降りよう」
 「あ、ああ」

 先導するようなかたちで遠山の手を引きながらバスから降りる。
 右手先に感じる彼の体温。初夏にもかかわらずその温もりは決して不解なものではない。

 「えっと……ジャンヌ、その……」
 「え、ああ。そうだな、すまない」

 遠山の視線が私の手に向いていることに気づき、私は遠山の手を離した。

 離した、のだが。

 「いや、いいんだ」

 そんな言葉と共に。

 「ここまできてはぐれたりしてもあれだしな。このままいこう」

 私の手を取り、指同士を絡めあわせる俗にいう恋人繋ぎをやってきた。
「…………」

 心拍数があがる。体温があがる。平静を保てない。顔が赤くなるのを止めることができない。嫌だな、こういう私は好きじゃないのに。

 「……ジャンヌ?」

 訝しげな表情で私の顔を覗きこんでくる遠山。その行為がかえって私の心をかき乱す。

 「ど、どうした遠山。早くいこう。依頼人を待たせるわけにはいかない」
 「あ、ああ。そうだな。そうしよう」

 遠山を握る手、そこに少しだけ力をこめる。このまま、手を繋ぐことを許可する私なりのサイン。
 それを心のどこかで理解したのか。
 目的地につき、依頼人に指摘されるまで、遠山が手を放すことはなかった。

        ■■■

 「二人には……モデルをやってもらおうかしら」

 依頼人であるウエディングパークの支配人。その彼女が、開口一番にそんなことをいってきた。

 「モ、モデルですか……?」

 支配人の言葉をあたふたとおうむ返しする遠山。その様子にクスクスと笑いを漏らしながら、彼女は一冊の本を差し出してきた。
 十数ページほどの薄い小冊子。純白のタキシードとドレスに包まれた男女が表紙に掲載されたそれは、式場のパンフレットのようだ。
 私達が依頼人に頼まれたのは護衛ではなくパンフレットに使われる写真のモデルらしい。

 「……二人みたいな美男美女がモデルをしてくれたなら、それなりにお給料はずんじゃうんだけどな〜」

 お給料、という単語に遠山の心が揺れたことが繋いだ手から感じられる。
 遠山は常に金欠みたいだからな。反応しても仕方ない。

 『どうする、ジャンヌ』

 遠山がマバタキ信号で私に訪ねてくる。モデル……か。ということは、私があのドレスを着るわけで……

 「お前がいいのなら、私は構わない」

 遠山の問いに答える。っと、マバタキ信号で返すつもりがつい口に出してしまった。

 「そっか……じゃあ、その依頼、お受けします」
 「ええ。ありがとう、二人とも」

 明るい笑顔を浮かべ、遠山の言葉に依頼人が礼をのべる。

 「……いい予行練習になると思うわよ、二人とも」

 ウインクしながらそんなことをいってくる支配人。私と遠山はこの人は何をいっているんだ? といった風に互いに顔を見合わせた。

 その次の瞬間、支配人がとんでもない爆弾発言を投げてきた。

 「あれ? 二人は恋人同士じゃないの? 仲良く手を繋いでるからてっきりそうだと思ったのだけど」
わ、私と遠山が恋人……か。支配人には私達がそう見えたのか。確かに……手の繋ぎ方こそ恋人同士がするものだが。

 「え、えっとですね……」

 言葉を濁す遠山。視線で私に助けを求めてくるがそれはあえて見なかったことにする。
 遠山は意外に思うかも知れないが、こういう勘違いも、相手が遠山なら悪くはない。
 まあ、こうしていてもらちが明かないし、そろそろフォローしてやるか。

 「支配人さん。私達はどうすれば?」

 あ、忘れてたというような表情を浮かべる支配人。まあ、確かに遠山をいじるのは面白いだろうな。

 「そうね。ジャンヌさんは私についてきて。遠山君は向こうの部屋でタキシードに着替えて、ホールで待っててちょうだい」
 「あ、はい。わかりました」

 そう支配人に答え、遠山はそこでようやく私の手を放した。

        ■■■

 「ジャンヌさんは遠山君のことが好きなの?」

 お色直し用の部屋で二人きりになったその瞬間、支配人さんがそんなことを聞いてきた。

 「……どうでしょうね」

 嫌いでないことは確かだし、好感を抱いているのもまた事実だ。だからといって、それが異性に対する好意かどうかまでははっきりしない。

 「少なくとも遠山君はそうでしょうね」

 そう……なのだろうか。確かに彼が私を嫌悪しているようには思えない。

 「……わからないなら、一度告白してみたら? どちらに転んでも自分の気持ちがわかると思うわよ?」

 告白…………か。
 まさか、私が異性にこんなことを考える日がくるとはおもわなかった。
 そういう機会を作ってくれたのが、遠山なんだよな……

 「……そうですね」

 当たって砕けろという言葉もある。
 一か八か。やって見るのもありだろう。
 「うんうん。素直なのはいいことだ」

 そんな満足気な口調で手際よく私にウエディングドレスを着せてくる。
 遠山がタキシードで、私がドレス……
 つ、つまり……

 「私達が夫婦ということか……」

 さ、流石にそれは気恥ずかしいというか……
 意識すると……中々にくるものがあるな……
 ■■■

 結論からいうと、任務(クエスト)は大成功だった。
 支配人さんからは、今度はお客様としてきて欲しいとまでいわれてしまった。まったく、気が早いというものだ。

 「ジャンヌ、今日はありがとうな。おかげで助かったぜ」
 「そうか。それならよかった……遠山」

 帰りのバスを武偵高前で降り寮へと帰る道すがら、私は件の話を遠山に切りだそうとしていた。

 「ん? どうした?」
 「お前に、二つほど頼みたいことがあるんだ」

 立ち止まり、あらためて遠山と向きあう。夕暮れ時、夕日の逆光で私の顔は遠山にみえていないことだろう。
 私は今泣いているだろうか。それとも笑っているだろうか。
 できることなら、こいつにみっともない姿を見せたくないものだ。

 「ん、なんだ。お前には大きな借りがあるからな。俺に出来ることならなんでもするさ」

笑いながら私の目を見てくる遠山。そんな彼に、私は今から告白―――

 「そのな、遠山。お前のことを、これからキンジと呼んでも構わないか?」
 「なんだ、そんなことか。別にお前がそう呼びたいなら構わないぜ?」
 「そんなとはなんだそんなとは。私にとっては……だ、大事なことなんだ」

 これから告白する人間を苗字で他人行儀に呼ぶのもおかしいからな。

 「そうなのか。で、二つ目の頼みはなんだ? もしもの時のためにとっておくか?」

 お前が俺を頼ることなんてありえないと思うけどな、などと自重げに呟く遠山。

 「―――」

 なるほど。
 私は、遠山―――いや、キンジの、自分の実力を絶対に自慢しない一面に惹かれたのか。

 「キンジ。私は、お前が好きだ」
 「……え?」
 「私と……付き合ってほしい」

 唐突な告白に驚きを隠せないキンジ。当然だろう。私も、こんなことをあっさりといえてしまう自分自身にびっくりしている。

 「……な、なんで俺なんだよ」
 「私はな、決して自分の実力を誇ったりしないお前が好きだ」
いくら銃弾が切れようと。いくら氷を操れようと。
 そんなもの、誇らしげにするようなことではない。
 戦技を磨くのは悪いことではない。だが、それが何か人の役に立つものかと問われれば、答えは否だ。

 「ジャンヌ……」
 「私はお前が好きだ。ヒステリアモードを嫌悪し、普通の学生生活を望む、素の遠山キンジを私は愛している」
 「……わかったよ。ったく、お前も物好きだな」
「まったくもって、その通りだよ」

 反論する気にもならない。

 「……俺は決してお前と釣り合う男じゃない」

 私はそんなこと気にしない。

 「でも、いつかお前の隣に立てるよう少しでも努力するから」

 そんな気遣いは必要ないのに。

 「だから、俺と付き合ってくれ」

 ……あのな。

 「告白したのは私のほうなんだが」
 「そ、そうだな……てことは……」

 ということは。

 「今日から私達は、恋人同士だな」
 「……ああ、そうだな」

 とはいっても、いきなりすべてが変わるわけじゃない。
 まずは―――

 「キンジ。お前の手は温かいな」

 手を繋ぐことから始めたい。
 これは、昼間までのものとは違う意味を持つ―――私とキンジの最初の一歩だ。

 「そうか?」
 「ああ」

 この人肌のぬくもりが、銀氷の魔女と呼ばれた私には心地いい。
 この暖かさをもう少し味わうために、私はキンジの肩へと身体を預ける。

 夕日に伸びた赤い影が、一つになった私達をうつし出していた。

 Fin or Go For Next!!!

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