最終更新:ID:ZZmXL7YO8A 2012年02月28日(火) 22:58:26履歴
「師匠! 某と夏祭りに行くで御座るよ!」
夏休みも半ばをすぎたある日。呼んでもないのに風魔がやってきた。
「理由を十秒以内に簡潔に述べろ。はい、スタート」
「今日は夏休み最終日で御座る。某、今年の夏は修業が忙しかったゆえ、夏休みらしいことを何一つしていなかったので御座る。
そうして迎えた夏休み最終日。偶然修業が休息日になり、さらに近くで夏祭りがあることを耳にしたので御座る。
これは師匠と夏祭りをエンジョイしろという啓示に違いないと思い至り、こうしてお誘いに馳せ参じた次第に御座る」
「なるほど。ご苦労だったな」
「感謝の極み」
「もう帰っていいぞ」
「――なっ!?」
ガビーンといった表情を浮かべる風魔。が、そんなもんはしったこっちゃない。
というか俺の睡眠時間を返せ。せっかく気持ちよく眠れてたのにお前がやってきたせいで起きちまったじゃねえか。渡しといた合鍵で勝手に入ってきやがって。
「い、いつもにまして冷たいで御座るな師匠」
「……俺の寝起きの悪さはお前も知ってるだろ」
何度か実習で寝食を共にしたからわかってるはずなんだがな。
「も、申し訳ないで御座る……師匠! 某に名案が!」
「なんだよ」
「某が師匠を寝かしつけて差し上げるで御座る!」
「ちょっとなにいってるかわかりませんね」
「そうと決まれば……さあ師匠、某の膝の上に頭を置くで御座るよ!」
布団の上に正座した風魔が寝転がった俺の頭を持ち上げ自分の膝枕に乗せる。
「あー……」
確かにいい感じの心地よさだ。ただ脂肪が柔らかいだけじゃなく、うっすらとついた筋肉の弾力がちょうどいい感じをしている。
なるほど、枕にするには最適だな―――
響くような花火の爆裂音に意識が覚醒する。
壁にかかった時計を見ると、すでに寮の門限である22時を越えていた。
「風魔。おい風魔。起きろ」
正座したままソファーに頭を預けて眠る風魔の肩を軽く叩いて起こしてやる。
「ん……はっ、師匠!? 今何時で御座るか!?」
「22時15分で御座るよ」
さてこれからどうするかな。まあ幸い朝五時から寮は開くから、今日はうちで泊めてやって朝一で女子寮に戻せばいいか。
「そ、某としたことが……今年最後の夏祭りを逃すとはなんたる不覚……!」
「いや、お前はだいたいそんな感じだろ」
「しかし師匠、安心してくだされ! 某こんなこともあろうかと着替えを持ってきていたので御座る!」
夕方やってきた時に手からぶら下げていた紙袋から防弾制服・黒(ディウィーザ・ネロ)を取り出す風魔。七分丈のジャケットとチューブトップ、ショートパンツはきっと彼女に似合うだろう。
「そうか。なら問題ないな。今日はうちで泊まってけ。明日は一緒に学校でようぜ」
「了解で御座る。師匠、今夜の夕食は某が腕を振るうゆえ、楽しみにしてくだされ!」
長い黒髪をポニーテールに束ねていた紐をほどき、その紐で紺地に赤い花柄がはいった浴衣の袖をたすき掛けに纏めた風魔が台所に立つ。
「おう、悪いな。かわりといったらなんだが、一番風呂貰っていいぞ。着替えのTシャツとジャージ置いとくからな」
タンスから取り出した服を風呂場にある洗濯機の上に置きながら俺は風魔に声をかける。
正直なところ。髪を下ろした風魔の姿にドキっとしたのはここだけの話だったりする。
Fin.
夏休みも半ばをすぎたある日。呼んでもないのに風魔がやってきた。
「理由を十秒以内に簡潔に述べろ。はい、スタート」
「今日は夏休み最終日で御座る。某、今年の夏は修業が忙しかったゆえ、夏休みらしいことを何一つしていなかったので御座る。
そうして迎えた夏休み最終日。偶然修業が休息日になり、さらに近くで夏祭りがあることを耳にしたので御座る。
これは師匠と夏祭りをエンジョイしろという啓示に違いないと思い至り、こうしてお誘いに馳せ参じた次第に御座る」
「なるほど。ご苦労だったな」
「感謝の極み」
「もう帰っていいぞ」
「――なっ!?」
ガビーンといった表情を浮かべる風魔。が、そんなもんはしったこっちゃない。
というか俺の睡眠時間を返せ。せっかく気持ちよく眠れてたのにお前がやってきたせいで起きちまったじゃねえか。渡しといた合鍵で勝手に入ってきやがって。
「い、いつもにまして冷たいで御座るな師匠」
「……俺の寝起きの悪さはお前も知ってるだろ」
何度か実習で寝食を共にしたからわかってるはずなんだがな。
「も、申し訳ないで御座る……師匠! 某に名案が!」
「なんだよ」
「某が師匠を寝かしつけて差し上げるで御座る!」
「ちょっとなにいってるかわかりませんね」
「そうと決まれば……さあ師匠、某の膝の上に頭を置くで御座るよ!」
布団の上に正座した風魔が寝転がった俺の頭を持ち上げ自分の膝枕に乗せる。
「あー……」
確かにいい感じの心地よさだ。ただ脂肪が柔らかいだけじゃなく、うっすらとついた筋肉の弾力がちょうどいい感じをしている。
なるほど、枕にするには最適だな―――
響くような花火の爆裂音に意識が覚醒する。
壁にかかった時計を見ると、すでに寮の門限である22時を越えていた。
「風魔。おい風魔。起きろ」
正座したままソファーに頭を預けて眠る風魔の肩を軽く叩いて起こしてやる。
「ん……はっ、師匠!? 今何時で御座るか!?」
「22時15分で御座るよ」
さてこれからどうするかな。まあ幸い朝五時から寮は開くから、今日はうちで泊めてやって朝一で女子寮に戻せばいいか。
「そ、某としたことが……今年最後の夏祭りを逃すとはなんたる不覚……!」
「いや、お前はだいたいそんな感じだろ」
「しかし師匠、安心してくだされ! 某こんなこともあろうかと着替えを持ってきていたので御座る!」
夕方やってきた時に手からぶら下げていた紙袋から防弾制服・黒(ディウィーザ・ネロ)を取り出す風魔。七分丈のジャケットとチューブトップ、ショートパンツはきっと彼女に似合うだろう。
「そうか。なら問題ないな。今日はうちで泊まってけ。明日は一緒に学校でようぜ」
「了解で御座る。師匠、今夜の夕食は某が腕を振るうゆえ、楽しみにしてくだされ!」
長い黒髪をポニーテールに束ねていた紐をほどき、その紐で紺地に赤い花柄がはいった浴衣の袖をたすき掛けに纏めた風魔が台所に立つ。
「おう、悪いな。かわりといったらなんだが、一番風呂貰っていいぞ。着替えのTシャツとジャージ置いとくからな」
タンスから取り出した服を風呂場にある洗濯機の上に置きながら俺は風魔に声をかける。
正直なところ。髪を下ろした風魔の姿にドキっとしたのはここだけの話だったりする。
Fin.
このページへのコメント
これはこれで最高ですね!