No.344 黄泥街

作品基本情報

原題

同上

作者

残雪

発表年

1986年

媒体

小説

原語

中国語

あらすじ

空から黒い灰が降り、ゴミと糞で溢れ、様々な奇怪な噂が流れる幻の街の出来事を、黒い笑いと圧倒的な文体で描いた世界文学の最前線。
黄泥街は狭く長い一本の通りだ。両側には様々な格好の小さな家がひしめき、黄ばんだ灰色の空からはいつも真っ黒な灰が降っている。灰と泥に覆われた街には人々が捨てたゴミの山がそこらじゅうにあり、店の果物は腐り、動物はやたらに気が狂う。この汚物に塗れ、時間の止まったような混沌の街で、ある男が夢の中で発した「王子光」という言葉が、すべての始まりだった。その正体をめぐって議論百出、様々な噂が流れるなか、ついに「王子光」がやって来ると、街は大雨と洪水に襲われ、奇怪な出来事が頻発する。あらゆるものが腐り、溶解し、崩れていく世界の滅びの物語を、言葉の奔流のような圧倒的な文体で語った、現代中国文学を代表する作家、残雪(ツァンシュエ)の第一長篇にして世界文学の最前線。残雪研究の第一人者でもある訳者の「わからないこと 残雪『黄泥街』試論」を併録。(白水社当該ページより)

奇書性・実験性・特殊性概要

かみあわないまま進む物語

特筆すべき点

中国の女流作家残雪の小説。
登場人物たちの会話が一切かみ合わないまま進む小説。
小説内に登場する問いかけに対して明確な答えが得られることは一度もなく、読者も登場人物も状況を全く把握することなく話が進んでいく。
読破にはかなりの体力を使うが、それに見合う読書体験を提供してくれるだろう。
地獄的な黄泥街の描写そのものも魅力。
その雨降りの日、老郁はずっと、委員会から来る人を待っていた。きじるしの楊三が老郁にたずねた。「委員会というのはいったいどんな機構なんだ?」「委員会?」老郁は測りしれない表情を浮かべ、もう一度くり返した。「委員会だって? いいか、あんたの出したこの問題は、きわめて重大な問題だ。その関係する面たるや不可思議になほどに広い。まあ、ひとつ喩えを出して、大まかに理解できるようにしてやろう。昔、この通りに張というものがおってな、あるとき一匹のきちがい犬がやって来て、豚を一頭と鶏を何羽か噛み殺したんだが、その犬が通りで暴れまわっている折も折、張がいきなり戸をあけ、ばたりと道に倒れて頓死してしまった。その日、空はしらじらとして、カラスは天地をおおって飛んできて……実際のところ、黄泥街にはまだ未解決の案件が山とあるんだが、あんたは自己改造を強化することについて、どう思っとるんだ? ええっ?」

入手するには

白水Uブックスより邦訳が刊行中。

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