FFシリーズ総合エロパロスレのまとめ

 両脇を兵士に囲まれ、重い歩調で艇内を進んでいく。囲まれているのは人であって、限りなく
人ではない存在の男。
「まるで人の扱いじゃねえな」
 黒髪に青衣の女──ファングの隣に立つ男、リグディが言った。
「これじゃ、捕まった野獣だ」
 男は手錠をされた上、武装した兵士に囲まれて、お世辞にも丁寧な扱いとはいえなかった。
 だが、護送される男自身にも、何処か獣のような印象があった。
 まずその身体だ。周りの兵士と比べても、ゆうに頭一つ分大きい。男を獣と表現したリグディも、
平均値を上回る長身の男だが、それでも少しばかり目線の高さが違う。
 無造作に伸びた薄金色の前髪と短髭が、頑丈そうな体躯とあわさって、荒々しい古代の軍馬
を思い起こさせた。
 競り市に出される家畜の種牡だったら、さぞ高値がつくに違いない。それくらい見事な体格の
男だった。
「だったら、何でこんなことするんだ!?」
 男が腕を振り上げ、両手首を繋ぐ手錠が悲鳴を上げた瞬間、兵士達が一斉に身構えた。
 すかさずファングは、手をかざして武器を引かせた。
「これからもっと扱いのいいところに連れて行ってやる。だから、もうしばらく我慢しな」
 そう言って、男にも構えた腕を下げるように促した。
 男の名前はスノウ。
 シヴァに選ばれるルシは代々色男が多いとは聞くが、言い伝えに漏れず、スノウもなかなかの
美丈夫だった。
「その前に、あんたの検査が先だ」
 リグディの先導で通されたのは、ベッドの足に車を着けたような台と、複雑そうな機械が幾つか
並んでいるだけの殺風景な部屋だった。
「解剖して腹の中まで見るってか……?」
「ボディスキャンと採血だけさ。どっちもすぐに終わる」
 リグディはスノウの手錠を外し、横にある車付きの台の上に置いた。
「まずは、着ているものを全部脱いでここに置くんだ」
「へえ。野郎のストリップをご希望とは、聖府の軍人様はいいご趣味をしてらっしゃる」
「これからうちの隊長と顔をあわせるってのに、汗臭えまんまじゃ失礼だろ? 検査のついでに
上から下まで全部洗濯して、あんたも丸洗いだ」
 リグディはそう言いながらスノウに歩み寄り、これを脱げ、とばかりにコートの襟を引っ張った。
「それに、あんたのコレには非合法のAMPギアが組み込まれてるんだ。しかも骨董品同然の
旧式パーツを、素人が強引にクロックアップした無断改造品だ。スキャナで誤作動起こして
丸焦げになっても知らねえからな」
 リグディの言う単語の意味はわからなかったが、ともかく服を着たままでは検査が出来ない
らしい。
「減るもんじゃねーし、とっとと脱いじまいな」
「だからって、全部はないだろ。全部は……」
 やや間を置いて、スノウは渋々とコートの袖を抜き、手荒く台の上に落とした。
 続いて革の手袋と、思い切ったかのように次々と服を脱ぎ捨てていく。スノウの肌は思いの
ほか白く、筋肉を包む静脈が、壁を這う蔦のように青く透けて見えていた。
「ったく、何でこんなこと……」
「所謂『検疫』って奴だよ。相手方に取ったデータ見せないと母艦にも帰れないんでね。大人しく
協力してくれよな」
「ルシは伝染病じゃねえって……」
 スノウがリグディに向って発した単語に、ファングの聴覚が敏感に反応した。
「あんたのデータを見せれば、上もそう気付くだろうさ」
「……わかったよ」
 厚みのある胸元に、力強く盛り上がった肩と腕。絞り込まれた腰周り。
 無駄な誇張のない、実戦向きの完成された肉体が露わになっていく度に、周りの兵士からも
感嘆のざわめきがこぼれた。
 もっとも、それは肉体だけではなく、その身体の一部分に対しての反応であったのかもしれ
ないが。
「へっ、いいブツ持ってんじゃねえか……」
 堂々たるサイズもさることながら、くっきりと浮き出た括れが、ファングの情欲をくすぐった。
 頭部は半分ほど皮に隠れていたが、変色した剥き出しのものよりも、初々しい肉色をした切っ先
の方が、ずっと好みだった。
 屹立すれば、さらに高く盛り上るだろう返しの部分が、内側の襞をえぐる様を想像すると、独りで
に溜息が漏れた。
 次の瞬間、ファングの夢想を断ち切るように、強い調子の声が響いた。
「ほら! これで全部だ」
 そう言って、スノウは頭に巻いていた黒いバンダナのような布を台に置いた。
 半端に伸びた黄金色の髪が、額にこぼれ落ちている。
 ますます、好みになった。
「いや、まだだ」
 リグディは、手のひらに乗るくらいの、小さな箱を差し出した。
 虫の標本でも入れて飾るような、白い綿を敷いた透明なケースだ。
「そのネックレスと、手に持ってるお宝をここに出しな」
「これは……」
 スノウの右手は、何かを硬く握り締めているようだった。
「大切なものなのはわかってる、後でちゃんと返してやるさ」
 苦々しい表情で、スノウは雫の形をした水色の結晶を置いた。
 続いて二本のネックレスを外すと、中央の結晶を太さの違うチェーンで囲むように、ケースに
収めた。
「セラ……」
 クリスタルとなっていた、少女のルシとの思い出の品、といったところだろうか。
 スノウが手を広げ、中に何もないことを示すと、ようやく検査が始まった。
 担当の兵士が手持ち型の機械を身体中に当て、表示される数値が事細かに記録されていく。
同時に、少量の血液も採取された。
「……何だよ」
 ファングの視線に気付いて、スノウが口を開いた。 
「見惚れちゃ悪いかい?」
「俺は見世物じゃねえ」
 怒りと興奮のせいだろうか、スノウの全身を包む筋肉は膨張し、一回り大きくなっているように
見えた。
 その熱帯びた身体に、今すぐにでも触れてみたい。湧き上がる思いを抑え切れず、ファングは、
傍らの武器に指を絡ませていた。
「気に入ったのか?」
 リグディが言った。
 スノウに向けた視線の正体を見抜いたのだろう。鈍そうに見えて、察しの鋭い男だ。
「へっ、別にいいだろ」
 そう言った後で、ファングは、スノウの耳に届かないよう、声を小さく絞って答えた。
「ああいうの見ると、疼いちまって仕方がねーんだよ」
「俺よりもデカイからか?」
「……馬鹿言ってろ」
 ファングは、リグディの身体も知っていた。
 だからといって恋人ではない。ただ身体を重ねた経験がある。それだけの話だ。
「検査、終了しました」
「おう、ご苦労さん」
「なあ? もう服着てもいいよな?」
 採血の跡を擦りながら、スノウが言った。
「まだだっつーの」
 兵士の一人が、スノウの腕に再び手錠をつけた。
「これからお前のことピッカピカにしてやんだから、黙って私に着いてきな」
「案内だけしてくれりゃ、俺一人でも出来るって」
「監視役は必要だろ?」
 ファングは、手錠の間の鎖を掴むと、強引にスノウを連れて歩き出した。
「おいおい、素っ裸で歩かせる気かよ!」
「別にいいだろ? 見られてどうなるもんじゃねーんだから」
「勘弁してくれよ……」
 共用のシャワールームまで、歩きでも一分と掛からない距離だったが、ファングに連れられて
いる間、スノウは長身を縮ませ、顔を下に伏せたままだった。
「人権侵害だぁ……」
「腐った靴下みたいな臭いさせて言うんじゃねえっつーの。ったく、ほら! 入った入った!」
 スノウをシャワールームに押し込むと、ファング自身も、着衣を脱ぎ捨てていった。
 ベルトを外し、結びを解いたサリーは、瞬く間にサファイヤ・ブルーの一枚布に戻っていく。
「なっ、何でお前まで脱ぐんだよ!」
「一緒に入るんだから、当たり前だろ? それに、私の服これしかないんだからよ、濡らしたく
ねえし」
 そう言って最後の下着を脱ぎ捨てると、スノウの視線が真後ろを向いた。
 少年かと思うほどの純朴な反応に、ファングは、つい唇の端を吊り上げてしまった。
 脱ぎ終えた服は、まとめてランドリーボックスに押し込んだ。
 洗濯が済むときちんと乾かして皺を落とし、さらに畳まれた状態で自動で自室に配達される
という魔法の箱だった。
 シャワーには個々に仕切り板が設置され、十分な広さを持ってスペースが区切られていたが、
大柄な男女二人が一度に入ると、流石に狭かった。
「いいって! 頼むから一人にさせてくれっ!」
「ったく、図体の割りにちっちぇえ奴だなぁ」
 壁に手を着けた格好で、スノウをシャワーの下に立たせた。
 絵文字を頼りにパネルを操作すると、二人の上に温水が降り注いだ。
「うわっ!」
「ほーら、気持良いだろ?」
 肌を打つ水滴が、二人を分け隔てなく濡らしていく。
「お、おい! ちょ……! 耳に入ったぞっ!」
「じっとしてろって!」
 丁度よいスポンジやブラシが見当たらなかったのが残念だったが、ファングは、スノウの頭を
押さえながら、手のひらで念入りに身体を洗い、髪を濯いでやった。
 広い背中に水滴が弾け、明るい麦藁色の髪が、水を含んでしな垂れている。
 流石に諦めたのか、されるがままに大人しくなったスノウが、不意に口を開いた。
「……あんた、何で俺にこんなことするんだ?」
「うん? 大した理由なんてないさ」
 ゆっくりと、スノウの背中に手を這わせた。
 胸も厚いが、背筋もまた見事だ。
「強いて言えば、ルシ同士、絆を作っておきたかったってとこかな。その方が、こいつの進行も
遅くなる」
 次にファングが触れたのは、スノウの左腕に黒々と浮き上がった刻印だった。
 中心の文様から伸びる矢印は、両端から天と地を指すかのように鋭く伸びている。やがて
歪な円が現れ、赤い眼が開き切れば、それで最後だ。
「それには、互いに肌くっつけ合うのが一番なんだよ」
 随分強引な話だな、とスノウが言った。
「もっとも、あんたの身体に惚れたのも嘘じゃねえけどさ」
 深く吐き出した吐息は、シャワーの湯気に滲んで消えた。
「ほら、こっち向きな」
「う……っ!」
 力任せに身体を反転させ、スノウと向き合った。
 短髭に覆われた頬に髪が張りつき、先ほどまでの荒っぽさとはまた別の、艶を帯びた雰囲気
を感じた。
「よせよ! お前……」
「ファング、だ」
 髭だらけの顎を掴み、そう言った。
 二人の視線が、初めて真正面から交わった。
 興奮に色付いたスノウの瞳。白毛の狼のような、氷原の青を宿した眼差しが、ファングを貫いた。
 充血した器官が、きゅう、と縮んでせり上がっていくのを感じた。
 見る度、触れる度に、ファングの身体は、甘く切ない欲に染まっていく。胸の膨らみの先はきつく
尖り、内腿の奥で火照り始めた亀裂からは、今にも蜜液が滴り落ちそうだった。
「女が男を欲しがっちゃ、駄目かい?」
 ファングは、硬く緊張した筋肉の谷を伝う温水の、流れ落ちる先を指で追っていった。
 その先にある、重力に逆らい、直立しつつある塊に触れると、ゆっくりと裏側の部分を撫で上げた。
 つぼまっていた先端部は、既に殆ど剥けて露出している。赤みの差した粘膜部に、疼き始めた
唇を当てたくてたまらなかった。
 残りの包皮を指で摘み下ろすと、同時に、スノウの身体が小さく震えた。
 指先に絡み付く粘っこいものは、明らかに温水だけの感触ではなかった。
「おい、何する気だよ……」
「何って……、わかってるから、ここが、こんなことになってるんだろ?」
 立ち呆けるスノウに歩み寄り、腕の下へ潜り込むように、正面から抱きついた。
「違うかい? ん? 色男さんよぉ……」
 ファングは、そう言ってスノウの厚い胸板に頬を当てた。
 温水を通じて、二人の肌が密着する。下腹部に当たる硬い感触が心地良い。
 頭の後ろの方で、スノウの手錠が、がちがちと騒がしく音を立てていた。
 ファングは、無言でスノウに腕を回し、腰を押し当て、言葉よりも激しく、身体で語りかけていく。
 何時、組み伏せられて構わない。むしろ、そう望んでさえいた。
「あ……」
 予想と反して、先に唇を向けてきたのはスノウの方だった。
 ゆっくりと絡ませながら、徐々に重なる粘膜の面積を増やしていく。
 熱い温水の中で、一つの塊になったように抱き合った。
 時々、口元に髭が刺さるが、大して問題ではなかった。
 流石に苦しくなって、荒い呼吸と共に、二人は顔を離した。
「スノウ……?」
「こんなことであんたの気が済むなら、幾らでも相手してやる」
 うまく息が吸えないのは、充満した蒸気のせいでも、スノウの両腕に強く抱き締められている
からでもなかった。
「俺の身体が欲しいなら、好きなだけ持っていけ。けどな……俺の心は、セラのものだ!
それだけは、絶対に譲れねえ」
 今まで聞いたことのない、低い声色で、スノウは言い放った。
 急に見せた真剣な表情が、とてつもなく艶っぽい。
 心臓へと繋がる血管を、指で直接摘まれたように、胸の奥が苦しくなった。
「……わかった。今だけ、私のものになってくれればいい。それ以上は望まない」
 スノウの手を取り、強く指を絡ませる。
「あんた、やっぱりいい男だな」
 ファングからの最初のキスは、精一杯背伸びして、ようやく唇に届けることが出来た。
 故郷の女集の中でも特に長身だったファングだが、スノウは男集の誰よりも大きかった。
 優しく腰を撫でる手のひらも、すっぽりと肩が納まる広い胸板も、とても大きい。
 無論、ファングの手に包まれて、熱く脈を打つその部分も。
「で、どうするんだ?」
 ファングの胸に指先を重ね、硬くなった先端を捏ねながら、スノウが言った。
 その声と行為には、何処かやんちゃな、子供っぽい色が混ざっていた。
 鋭い牙を露わにしたかと思えば、突然腹を出して寝転がって見せる、気まぐれな猛獣。
 油断すれば、喰らい返される。
 だが、こういう狩りは嫌いではない。
 ファングの胸は、熱く高鳴っていた。
「決まってんだろ……。でも、その前に──」
 そう言いながら、スノウの前で腰を落とし、立て膝の格好になった。
「──ここも、きれいにしてやらねーとな」
 ファングは、天を指す剛直に手を伸ばし、つるりと剥けた先端部を口に収めた。
 大きくて、太いそれを、唇を目一杯広げて包み込む。
 舌に触れる熱い温度を、ファングの味覚は甘いと受け取った。
 シャワーに洗い流されていた先走りの味が、後を追って湧き上がってくる。どちらも、例えようも
ない美味だ。
 温水の雨に打たれながら、無心で肉茎にしゃぶりついた。
 丸々とした先端の形を舌先でなぞり、太い血管が浮かんだ胴体を扱き上げていく。
 スノウが深く息を吐く度に、形よく発達した腹筋が、目の前でぐっ、と収縮する。
 そこがまた、色っぽい。
「なぁんだ、感じてんのか?」
 黙ってろ、とでも言いたげに、スノウの大きな手が、濡れた黒髪を掻き乱す。
「いいから……早いとこ済ませてくれよ」
「そんなに私との本番が楽しみかい?」
 唇を離した果実の先端を、円を描くように指で捏ね回す。指と粘膜の間に、じわりと熱いものが
滲み出た。
「こんな格好、他の連中に見られたらたまんねえからな。さっさと終わらせようぜ」
「強がりやがって……」
 台詞とは裏腹に、スノウのものは痛々しいほど充血し、張り詰めている。根元の袋にそっと触ると、
皮膚の張り具合から、絶頂が迫りつつあることを感じた。
 口腔に唾液を溜め、ファングは、行為を再開した。
 分泌された液を丹念にまぶし、硬く尖らせた舌先を裏側の筋に当て、擦り付ける。目を細め、感覚
を口と指先に集中させていった。
「く……ぁ……」
 スノウの分身は、刺激を受ける度に跳ね上がり、愛らしいくらいに素直な反応を見せた。
 ファングは、口と手で愛撫を続けながら、また身体が熱くなっていくのを感じていた。
「ぁはむ……んうぅ……」
 唇をきつくつぼめ、肉茎を強く吸い上げた。
 口に入ってくる、温水交じりの体液を飲み下す。
「はぁ……ん、スノウ……スノウぅ……」
 吐息の合間に、ファングは男の名前を呼んでいた。
 逞しい身体、雄々しい逸物。そのどれもが魅力的で、心を掴んで放さない。
 込み上げる欲に耐えられず、ファングは、左の手でスノウの幹を握り、もう一方の手で、自分
自身の硬くなったものを慰め始めた。
「んんっ……!」
 突き出た先端に触れただけで、腰が引くほど強く反応した。
 ファングは、ぷっくりと熟れた核を摘み、左右から小刻みに揺さ振った。
「はぁ……んあぁ……!」
 独りでに腰を動かし、淫らに震える肢体を、スノウの前に晒すことになった。
 シャワーにかき消される、二つの淫らな水音。
 自身を刺激するよりも強く、左手で肉茎を扱く。
 温水と唾液と体液の混合物が、何度もファングの喉を通過していった。
 やがて、それぞれの肉体に、最大の波が押し寄せてきた。
「うぉぅぅぅ……っ!」
 低い唸りと同時に、スノウの放った情熱が、ファングの口腔に溢れ出した。
「んくぅっ、んぅ……ん! んぐぅ……! はぁっ! ああぁ……っ!」
 押し寄せるものを飲み下しながら、ファングも絶頂に達した。
「はっ……はぁっ……」
 息を乱しながら、スノウがシャワーの停止スイッチを押した。
 水音が止み、耳に入る音は、二人の吐息だけになった。
 ファングは、脱力し、床に座り込んでいた。
「おい、大丈夫か……?」
「あ、ああ……」
 心配したスノウの手が、ファングの肩に触れた。
 それだけでも、怯えた子供のように身体が震えてしまう。身体のあちこちで、快感の残り火が
燻ぶっていた。
 体液特有の苦じょっぱい味が、ねっとりと舌に纏わり付いている。
 口いっぱいに広がる、美味ならざる美味。
 スノウが感じ、達したという事実そのものが、ファングにとっては一番の褒美だった。
「……よかった。一発でこんだけ出るなら、心配要らねぇな」
「何が……だよ」
 ゆっくりと手を引かれながら立ち上がり、再びスノウの腕の中に納まった。
「ルシになるってのは、意外と身体に負担がかかるんだ。男だと、ここが使い物にならなくなっ
ちまうこともあるんだからな?」
 ファングは、今もなお屹立し続ける肉茎を撫でながら言った。
 それを早く体内に迎え入れたくて、秘部の入口が疼き続いている。欲求を押し止めるのも、既に
限界に近付いていた。
「あんたなら、大丈夫だ」
 額をスノウの胸に寄せ、ファングは、そう言った。
「ファング……」
「私の部屋に来い。……続き、しよう」
 部屋に戻るまでの間のことは、あまり頭に残っていない。
 気付いた時には、二人の身体は、真っ白なシーツの海に沈んでいた。
「うぅ……! ぁうん! あっ、あぁ……っ!」
 ベッドの縁から投げ出した脚の間に、スノウの身体が割り込んでいる。
 蜜を含んだ花弁に口を着け、厚い舌の先で亀裂を舐め回している。犬か猫が水を飲んでいるよう
な音を立てて、亀裂から湧き出す愛液を味わっているのだ。
「あうぅ……! よ、よせ……っ!」
 押されているのはファングの方だった。
 つぼまった入口には太い指が進入し、唇がひくつく蕾を吸い上げる。
 シャワールームでの仕返しとばかりに、スノウの前戯は激しく、一方的だった。
「もう……いい、だろ……っ?」
 ファングは、全身をよじるようにして、スノウの拘束に抵抗した。
 全ての血液が下腹部に集中してしまったのか、腰から下が重くて動かない。
「んじゃ、いくか……」
 スノウの手が左の膝の下に潜り込み、ファングの片足をより高く広げさせた。
 湿り気のある雌の臭気が漂い、鼻腔の裏の薄い粘膜を刺激する。口を開いた空洞に、ひやりとした
外気が入り込むのを感じた。
 その後を追って、巨大な熱源が秘裂に押し入ってきた。
「うああぁぁぁん!」
 最も奥の場所に、最初の一突きで達してしまった。
 最初の見立ての通り、反り返った括れの部分が、ごりごりと粘膜に食い込んでくる。だが、激しく
強引なスノウの行為は、全くの予想外だった。
 スノウの吐息が耳に当たる。髭が頬に刺さる。分厚い筋肉を纏った、重い身体がのしかかり、
ファングの肢体に絡み付いて放さない。
「よせ……止めてくれ……っ!」
「おいおい何だよ……そっちから、誘ってきたくせに!」
 振り上げた右腕の手首を掴まれ、熊の如く巨大な手でベッドに押し付けられた。
 突然の仕打ちに驚き、反射的につぼまった蜜穴を、強引に貫かれ、突き上げられる。内側の襞を
押し退けて、スノウの分身が、ファングの肉を食らい始めた。
「いやっ! 嫌だぁ……!」 
 喉から搾り出すように言い終えると、それと同時に律動の波が静まり、ファングの身体はシーツから
浮き上がった。
「嫌、って言ったか?」
 ファングを抱き上げながら、スノウは言った。
「嫌ならやめるぞ」
「……っ! スノウ……!?」
「……抜くぞ」
 ずっ、と体内で硬い塊が動いた。
 言葉は本当のようだ。
「ま、待ってくれ!」
「嫌なんだろ? もうやめるんだろ?」
「ちが……う……」
 冷たい手錠の鎖が、背中に当たっていた。
 両腕を拘束されていながら、スノウは巧みにファングの抵抗をあしらう。
 正直なところ、イニシアチブを奪われ、苛立っていた。
 だが、下手に挑発するのも危険だ。スノウは本気で行為を中断し、ファングを放り出すことも
厭わないだろう。
 そういうことも、やりかねない男だと思った。
「嫌じゃねえよ……」
「本当か?」
 アイスブルーの瞳が、止めを狙うナイフの切っ先に見えた。
 見詰め合う間も、身体の奥深い部分で、脈打つスノウを感じていた。
 押し倒し返してやることも出来るはずなのに、苦痛と紙一重の快楽が、抵抗への意思を打ち消し
てしまった。
「当たり前だろ! あんたの、その……」
「何だ? 言ってみろよ」
 じりじりと鈍いスピードで、スノウの肉根が内側を擦っている。脅迫のようにゆっくりとした動きで、
ファングの性感を苦しませる。
「……あんたの、でっけえやつがよぉ……私の中、ぐちゃぐちゃにして……! 熱くて、硬くて、
すっげえ気持良いんだよぉ……!」
 腕も、脚も、逸物を包む淫裂の筋肉も全て使って、ファングは、全身でスノウを抱き締めた。
「あんたに好きな女がいるのもわかってるさ! ……だから、 私をイかせようとか、感じさせよう
なんて考えなくていい。あんたの、好きにして……滅茶苦茶にしてくれてかまわねえ……! 
私を……犯してくれっ!」
 骨盤の底に溜まった、汚泥の如き欲望を吐き出すように言い放った。
 酷い告白だ。自分でもそう思った。
「……馬鹿なこと言ってんじゃねえよ」
「ああ。本当に、馬鹿だよな……私……」
 何故、こんなに必死になっているのだろう。単純に肉欲と好奇心を満たせればいいという、軽い
気持で誘ったはずなのに。
「お前、意外と攻められると弱いんだな」
「……うるせえ」
 そう言ってスノウが笑う。
 心底悔しいが、反論出来なかった。
 歳もそう変わらないはずなのに、妙に余裕なのが腹立たしい。
「ところでさ」
「何だよ」
 ファングの背中が、再びシーツに下ろされた。
「これ、どうにかなんねえか?」
 スノウが目の前に示したのは、手錠に繋がれた両手首だった。
「悪ぃ、そいつは私にはどうしょうも出来ねえんだ」
「マジかよ……」
「仕方ねえだろ……」
 ファングが言い終えると、スノウは派手なため息を吐きながら、上体を起こしていった。
 一部はまだ体内に留まっているが、急に身体の接触部が少なくなり、心寂しさを感じた。
「スノウ……っ!」
「少し体勢変えるだけだから、そんな切ない声出すなよな?」
 再び隆起する苛立ちの波。
 気に食わない。
 ちょっと誘ってやれば、後は勝手に飛びついて腰を振ってくると思っていた。
 その予想は外れてはいなかったが、荒々しいスノウの振る舞いも、それに抵抗せず、されるが
ままに受け入れてしまっているファング自身も、全て想定の遥か外にあった。
「畜生……」
 ぎこちなく身体を入れ替え、うつ伏せになったファングは、ベッドに胸を預け、背後のスノウに腰を
突き出す格好になった。
 ファングの腰の上に、スノウの手が乗っている。丁度、背中をマッサージする時のような格好だ。
 浅く収まっていた感触が、ゆっくりと内側に戻ってくるのを感じて、背筋に心地良い痺れが走った。
「うぁあ……んっ!」
 ファングは、目の前のシーツをくしゃくしゃに掴んでいた。
 スノウが再び動き出し、先程とは違う角度と感触で突き入れられる剛直が、肉壁を押し返しながら
往復を繰り返していく。
 内部で膨らんだ弱点を擦られる度に、腰が振るえ、嬌声を漏らしてしまう。内腿に当たる種袋の
感触さえ、電流の如き快感の一部となって、ファングに襲ってきた。
「ぁんっ! はぁううぅ……!!」
 シーツごと身体を丸め、悦楽に泣き叫び続けた。.
 指の届かない肉核に自ら手を伸ばし、あふれる蜜の中で掻き回す。
 すぐ近くで蜜裂を犯す茎にも触れ、自身が分泌した体液に濡れる凶器の熱さに、目を細めた。
「へっ……ガチガチになってらぁ……」
「お前のも、なぁ……!」
 一際強く、スノウが腰を突き入れた。
「ぉううっ!」
「ここ、気持良いんだろ? 当たる度に中がキュッってきつくなるぜ」
「あんただって……さっきから、ビクビク震えちまってんじゃねえか。……もう、限界か?」
「あぁ、今にもぶちまけそうだ」
「おいおい……」
 ファングが言うと、背中越しに男の笑い声が聞こえた。
「スノウ、頼む」
「ん?」
「その、もう一回変えてくれ……」
「バックじゃ物足りないってか?」
「ちげーよ……、あんたがイク時の情けねぇツラが見たいだけさ……!」
 大きく身体を反転させ、スノウの腰に脚を絡ませた。
 ファングの要求を理解したのか、スノウは引き寄せられるままベッドに傾れ落ちていった。
 ひとしきり絡み合った後、二人は対面座位の格好で落ち着いた。
 深々と結合部を押し当てながら、ファングは上からスノウの肩に腕を絡ませ、スノウの両手が
ファングの尻を抱えている。どちらからともなく唇を許し、舌と唾液を啜り合っていた。
「……どうだ? ずっぷり根元まで咥えてよぉ」
 熱っぽい声色でスノウが言う。
「ああ、最高だぜ……」
 顔を間近にくっつけて話していると、曲がりなりにも恋人、もしくは愛人という感じにも思えなく
もなかった。
「さっきはあんなに嫌がってたくせに」
「あ……あれは、少し気が動転してただけだって!」
「じゃあ、そういうことにするか」
 抱き寄せた身体を揺すりつつ、満足そうに笑うスノウ。
 両手を自由に出来ない代わりに、唇でファングの上半身をくまなく愛撫していた。
「ひぅん!」
 振動に揺れる胸の蕾を吸われ、反射的に身体が小さく痙攣した。
「んあっ……あっ、スノウ……ぅ」
「悪いな。お喋りは、お仕舞いだ……」
 言い返そうとしたファングの言葉は、込み上げる歓喜の悲鳴に掻き消されていった。
「はぁっ、はぁん! スノ……ぉん!」
 ベッドの反発を利用した、真下からの激しい突き上げ運動。
 種を吸い上げようと収縮、降下していくファングの器官に、最大にまで膨張した肉柱が突き刺さる。
 眉間に皺を刻み、スノウは律動を加速させていく。
 互いに汗ばんだ背中を抱き、ついに、絶頂の壁を突き破ろうとしていた。
「ぅおおおおーーーっ!!」
 獣の如き雄叫びと同時に、解き放たれた灼熱が腹腔に溢れ出した。
 脈打つ部分を交わらせたまま、二人は動きを止め、ベッドに倒れ落ちた。
 スノウの吐精が終わった後も、ファングは、体内で蠢く快感の余韻に、全ての神経を集中させていた。
 とろりと甘い満足感が、全身を支配している。それは、スノウも同じだった。
 労わるようにファングの髪を撫でる、穏やかな指使いが心地良かった。
「……悪くなかっただろ?」
「まあ……な」
 力なく答えるスノウ。
 先に身体を起こしたファングは、秘裂から抜け落ちた逸物に手を伸ばし、口に含んだ。
 二人分の愛液に汚れた部分を舐め、管に残った生温いものを吸い上げる。
 ふざけ半分に胴体を扱いてみるが、スノウの半身が再び首をもたげることはなかった。
「なあ、もうお仕舞いか?」
「……あぁ。今日は色々ありすぎて、疲れちまったよ」
 そう言って、スノウは寝返りを打った。
「悪い、ちょっとばかし寝かせてくれ」
「ああ、わかった」
 ファングは、目の前に現れた巨大な壁のような背中に寄り添い、自身もゆっくりと瞼を伏せた。
 恋人を失ったこと。ルシとなり、召喚獣を得たこと。ファングと身体を交わらせたこと。それらが
全て、今日の半日の中でスノウの身に降りかかったのだ。
 今更ながら、せめて今は、静かに休ませてやろうと思った。
 温かいまどろみに身を任せ、ファングは、意識が水没していくのを感じていた。
 だが、休息の時間は、長くは続かなかった。
 傍らの通信機が甲高い呼び出し音を発し、ファングは、ベッドを抜け出して応じた。
 相手はリグディだった。
「済まねぇ……、時間か?」
「いや、まだ余裕はある。それより……」
「何だ?」
「これから、俺もそっちに行って構わないか?」
「……ったく、勝手にしろ」
 微かに聞こえるリグディの微笑を聞きながら、ファングは、通信を切断した。
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