FFシリーズ総合エロパロスレのまとめ

 シュッシュッシュッシュッ……規則正しく、音が続けられる。
人の何百倍の重さであろう鉄の塊が、レールを伝い目の前で止まった。
安堵の息のように煙を出す――すぐに出発せんと汽笛が鳴った。
「すっげ!」
 ヴァンはうさぎのように飛び跳ねた。
「なあネギぼうず! あいつと競争しようぜ!」
「無理だよ。列車と勝負するなんて。それと、僕はネギぼうずじゃなくてオニオンナイト」
 オニオンナイトの言うとおりだった。ヴァンが競争しようとした相手は世界の一つとすら言える、
魔列車というものだ。終着点を知るものがいないのでどこに連れて行かれるかは分からないが、
時折ゆうれいが姿を見せるので、きっとろくなところではない。
この列車と行きたいという奴は、死人か馬鹿だけだ。
「少しは不安だけどさ、どんな所か楽しみだよな?」
「遠慮するよ。一人で行って来れば」
「あ! 出発しそう!」
 乗り気ではないオニオンナイトをおいて、ヴァンは魔列車の前にいき、走りだした。
同じ速度になってから、レールに移る。何秒見ていても、列車をリードしていた。
「意外と、どうにかなるな!」
「うそ……」
 オニオンナイトは驚いてヴァンを追おうとしたが、今更追いつけない。
何しろ彼の体は身の丈と同じぐらいの鎧かぶとに覆われている、
気がついたらポケットの中にもずっしり物が入っていて、重くてしょうがない。
「あんまり遠くに行くと迷子になるよー!」
 とだけ、手をメガホンのように丸めて言う。徐々に遠ざかる声で、
「来た道を戻っていけばいいんだろ」と返ってきた気がするが、上手く聞き取れない。
レールも残っているんだし、そうだね、と頷いた。ヴァンが死ぬという想像は頭に無かった。
死にかけても持ちこたえる葉っぱを持っているというのもあるが、死にそうにない気がした。
「待ってても時間の無駄だし、そろそろ聖域に戻ろうかな」
 どうせヴァンもそこに来ると、のんきに考えていた。
 歩くこと数分。聖域も近いというとき、自分たちの姿を模した謎の物体、イミテーションがいた。
イミテーションには、宝箱を守っている奴、立ち塞がっていてどかない奴など色々あるが、
今居るのは放浪タイプだ、倒しても何もない。いつもは見つからないように移動するのだが、
既に何かを攻撃していて、こちらには見向きもしない。ちらっと見ると、モーグリを攻撃していた。
シンプルな線に、黒ずんだ怪我が映っていて、飛ぶこともできなくなっていた。
攻撃しているイミテーションの姿は、魔女のように分厚いドレスを着ている。
胸元からへそにかけて大きく開いており、攻撃のたびにめくれて、
半透明ながらも色がついていると分かる突起が現れる。決して性に無頓着ではないが、
(見とれてる場合じゃない!)と判断すると、重心を前にして駆け、背中から切りつけた。
全然堪えない。むしろ、こっちが弾かれる。危ないと思った瞬間、考えるよりも先に召喚石を掴んだ。
「オルトロス!」
 振り向いた魔女めがけて、召喚石を投げつける。と、石は巨大タコに姿を変えた。
8本の足を動かし、相手を幻惑すると、墨を顔にブッとかけた。相手の顔が墨塗れになり、
斧や矢をやたらめったら放出してくるが、オニオンナイトとモーグリはその間に逃げ切った。
「ああいう人に付きまとわれたら大変だよね」
 モーグリと共に聖域まで逃げ切ると、途端に力が抜けた。緊張して出た汗は、
服に染みが出来るほどあった。イミテーションとまともにぶつかっても勝てるかどうか、
という実力の彼では仕方が無いことだった。
「コスモスはどこかな?」
 白い衣装に金色の髪の毛と、清楚を絵に描いて額に入れたような美しい姿は、秩序の神に相応しい。
すぐに見つけた、くつろいでいるらしく、大きめの椅子で横になっていた。その側には、
巨大な、やたら曲がった握りをした剣を持った男が本を読んでいた。
「うーん、スコールがいるみたいだし、問題ないか」
 聖域の床で常に流れる水で体を洗っていると、腹がだらしなくグゥ〜と鳴った。
モーグリも同じく。顔を合わせ、くすくす笑った。
「お腹すいたね。ちょっと待ってて、何かもらってくるから」
 と言うと、秩序の主コスモスと、その横で座っている男スコールのところに行った。
遠めで見るとくつろいでいるようであったコスモスは、目の下に隈を作って眠っていた。
スコールは、眠っているコスモスを起こさないように少しこっちに寄ってきた。
「ねえスコール、パンないかな?」
「腹が減ったのか?」
 事情を聞いたスコールは、ため息をつきつつも、頷いてパンを一つ渡した。引き換えるように言った。
「パンが底を尽きた。予備を持ってくるから、コスモスのことを頼む」
「どこに行くの?」
「緊急ボックスに回収しておいたパンがある。
シークレットシューダーの底に格納してあるから少し時間がかかるが」
「うん、行って来て! 食料は大事だからね」
「もうじきセシルとプリッシュが来ると言っていた。それまでコスモスを頼む」
「信用ないなぁ〜、大丈夫だよ! 僕だって戦士なんだからね」
「ふぅ……」
 スコールは否定も肯定もせずに出て行った。
「本当に大丈夫だってば!」
 と言いながらまたお腹を鳴らす。走ってモーグリのところに戻り、パンを半分にして渡した。
空きっ腹ゆえにすぐに食べてしまったが、パンそのものが大きく、揃って満腹だった。
「クッポッポー!」
 モーグリはコーンのような手を出した。先には、どんぐり大の赤い実があった。
モーグリの大好物、クポの実だ。人間が食べても大丈夫。
「ありがとう」
「クポポポポポポポポクッポ」
 お礼を言いたいのはこっち、とでも言いたげに頭を下げると、ぱたぱた飛んでいった。
手を振って見送る。聖域から出て行く直前、ぐるんと縦に一回転した。
「気をつけるんだよ」
 モーグリのいた場所まで見送ってやりたいが、コスモスを守らなければならない。
彼女が消滅すると、自分たちも消滅してしまう。
 コスモスのすぐ近くに座る。ちらと見上げると、彼女のスカートの裾がめくれ、
覗き込めば見えそうだった。が、神様相手にそんなことを考えるなんて、と我慢して、
拳を作って鎖骨に当てながら、ごろごろ転がって、頭を水に浸して冷静になった。
「ああ言っちゃったけど、一人は初めてだから……早くセシルとプリッシュ、来てくれないかな。
さっきみたいなイミテーションがいっぱい来たらどうしよう」
 考えると、不安に押し寄せられたため息が出た。
「ひと皮剥ければ」という可能性を込めてのオニオンナイトの称号、
今はまだまだ子供だ。一人で重責を背負うのは厳しいものがあった。
(来るなよ、来るなよ)と祈ること数十分、戦士が二人、ほぼ同時に帰ってきた。
「よぉ〜、コッスモス! あとネーギーぼーず! 帰ったぞぉ〜!」
 騒がしく帰ってくるプリッシュとは対照的に、セシルは落ち着いた雰囲気を持ち、
割れた装備を引き摺りながらコスモスに礼をした。
「コスモス、僕たちは特に負傷もないから、心配はしなくていいよ」
 二人に話しかけられ、コスモスも目を開けた。微笑みを二人、そしてオニオンナイトに向ける。
「ま、僕が居ればイミテーションが来ても問題ないってね」
 いつもの調子に戻った彼は、フフンと鼻を鳴らした。
「護衛ついでに見回りしてくるよ」
 返事も聞かないうちに、オニオンナイトはコスモスの守護を押し付け、逃げるように離れた。
途中、イミテーションを見つけた。ほかの戦士なら目を瞑っても負けないような相手だった。
だが、手がぷるぷる震えて、行くぞ、行くぞ、と念じても一度背を向け、
新呼吸をしてから攻め込んだ! 不意を疲れた相手は瞬く間にオニオンナイトの下に果てたが、
少年は歯噛みした。うずくまって拳をダンダンと床にたたきつけた。
「いくじなし! 弱虫! あれぐらいので緊張してどうするんだよ!」
 同時に溢れてきた涙を袖で強く擦った。
 秩序の神コスモスが鎮座する聖域。いくつもの光が道となり地と地をアーチ状に結び、
病魔も消し飛ばす清浄なる空気が満ちる。神の場として寸毫の不足もない美しさ
「腹減ったァアア!」……には相応しくない、プリッシュの俗塗れの声がこだました。
 コスモスとセシルは呆気に取られたように目をぱちぱちさせていたが、
やがてセシルがこほんと咳払いをした。職業が暗黒騎士兼聖騎士ゆえに、礼儀には厳しい。
「プリッシュ、場をわきまえた発言をしてくれないか?」
 神の前で、というのはもっともだが、彼女は世界最強の魔道士をおばちゃんと呼ぶ豪胆の持ち主。
水着と黒のズボンという活発的な外見に違わない性格で、声を収めることは無かった。
「こんな場所でも貢物はあるだろ? なあ女神様、恵んでくれよぉ。ハンドパワー込めてさ」
「でも、私は料理をしたことがありません」
「真心が込められたものを食べたいんだ!」
 コスモスは困った、というように顔を斜めにして、目を閉じた。その姿に、
セシルが過敏に反応し、プリッシュとコスモスの間に入った。
これ以上迷惑をかけるようなら武力も辞さない、とでも言いそうな表情だ。
プリッシュは態度を少し軟化させ、セシルを見た。
「うふふ、貴方の手料理でもいいのですよ」
 口調と共に、二の腕を寄せて胸元を強調する。といっても、塵山のような平坦なものでは、
セシルの固い表情は崩れない。睨みつけられること1分弱、舌打ちしながらその場を離れ、
聖域にいくつもある白い座席に、どたーんと豪快に座り込んだ。あぐらを掻きながら寝転んだ。
「はぁ、モーグリはいねぇ、蓄えていたはずの食い物は根こそぎなくなった。
このまま飯にありつけねーんだ。だーれも奢ってくれねーしなーァ!」
 後半、やたらと感情を込めたが、コスモスもセシルも関係ないそぶり。
彼らだって、あげられるようなものなど持っていない。
襲ってくる敵はイミテーション、作り物のような体だ。倒しても食べる部分はない。
ただでさえ戦士がそれぞれ持ち寄った料理や食材を分けているのだ。
モーグリがいれば食材を買うことは可能だが、ぼったくりのお値段である。
プリッシュは体技を駆使して戦う上に肉体年齢が食べ盛りのため、
非常に腹が減る。拾って食べる量では到底足りないのだ。
 ストレスのあまりゴロゴロゴロゴロ、三半規管が狂うほど回っていると、
遠くから「コスモスー!」と声が聞こえた。高い男性の声に、プリッシュの、
エルヴァーン独特のやや長めの耳がピンと上向く。
 地平線から、オニオンナイトが来た。コスモスに会うなり、ぺこっとお辞儀をする。
角度がきつすぎて、手裏剣のように広がっている大きな装飾をつけたかぶとが脱げかけた。
顔を起こすなり、きらきら光る瞳でコスモスを母のように見る。
「イミテーションが二体いたから、倒してきたよ(レベル1だったけどね)!」
 凄いでしょ! とでも続けそうな少年の笑顔に、コスモスはにこっと笑顔を見せる。
「強くなりましたね……他の戦士たちを追い抜くのも遠くなさそうです」
「へへーん!」
 胸を張る彼は、背筋を伸ばしても小さかった。ましてや、隣に比較的ガタイのいいセシルがいる。
どうしても小さく見えてしまうので、オニオンナイトは拒むようにセシルから離れた。
「ところでヴァンはどうしたんだい? 一緒に行動していたんじゃないのか?」
「トレーニングだって言って、別の世界に行ったきりだよ」
「ついて行かないのか?」
「ついて行けると思う? 元の世界からか分からないけど、寄り道しすぎだよ。
一緒にいても、疲労より気苦労の方が溜まっちゃってさ」
「気持ちはよく分かるよ。だけど、彼はキミのことを弟だと思っているんだから」
 と、敵であるカオス勢に実の兄がいるセシルは、仲良くするように言うが、
「……全く、手のかかる兄だよ」
 口を尖らせ、不満だらけのように言った。
言い終わると、コスモスがいることを思い出し、二人揃って背筋をピンと伸ばした。
「ご、ごめんなさい! 変な会話を聞かせてしまって」
 影も踏まない距離にいるオニオンナイトに、コスモスはくすりと笑う。
「いいのですよ、語りは体を癒し、気を楽にします。それに、貴方たちが楽しそうにしている姿が、
どれだけ見ていて微笑ましいか……例える言葉も思い浮かびません」
 コスモスの笑顔に、二人は顔を見合って頷いた。
「今度の戦いは、絶対に僕たちが勝ちます!」
「コスモスは安心して見てて!」
「ええ、期待していますよ」
 コスモスの返事を受けると、オニオンナイトはセシルを残して離れた場所で座った。
聖域の、常に濡れている床のせいで服が濡れるが、気にしないように考え込んでいた。
「どうしたんだろう……最近のコスモス、すっごい綺麗に見える」
「うん。そうだよね」
「そりゃヴァンに『何歳?』って聞かれれば若作りするようになるって。
最近、ご機嫌斜めみたいだから気をつけろよ」
 オニオンナイトの後ろで、プリッシュが呟いた。オニオンナイトは驚いて、
魔法を唱えられるほどの距離をとった。彼女の顔をよく見ると、
ニヤニヤしつつ唇を舌で舐めるという、あまり嬉しくないタイプの笑みを浮かべていた。
水着のような衣装なのに色香を持たないプリッシュは、
大変にお腹をすかせているらしく、露出している腹をぽんぽんと叩いた。
「何か奢ってくれよ」
「はぁ? なんで僕がプリッシュに奢らなきゃいけないの?」
 喧嘩腰のオニオンナイト。対してプリッシュは返事をせずに、すっと間合いを詰めて、
少年の後ろに回りこんだ。かぶとの装飾をぎゅっと掴み、こすって、匂いをかいだ。
「ふむふむ、鰹節みたいだから出汁が出るって思ったけど、そんなことなさそうだ。
でも、炒めてテキトーに味付けすりゃ食えるかも。お好みに焼いちまうか」
 独り言を頭の上でされるという体験、オニオンナイトは何だかとても怖くなり、
かぶとを脱いで、逃げた。プリッシュはかぶとに噛み付いて、すぐにぺっと吐き出すと、
視線を少年の顔に向けた。目がきゅぴーんと、悪巧みをするように光った。
「オレンジ色の髪に整った顔立ち、長―いお下げ。なかなか将来有望な顔つきじゃねーか」
「今は有望じゃないんでしょ。というわけで、ご飯なら一人で勝手にやってくんない?」
 立ち去ろうとするオニオンナイト、後を追おうとするプリッシュ……その彼らの動きは、
一度止まった。錆びた滑車のような鈍い音が、地平線の方から聞こえる。イミテーション、
それも相当な量の足音だ。その先頭にいるのは、さっきまで一緒に行動をしていたヴァンだった。
「あのアンポンタン……何連れてきてるのさ」額に手を置いてあきれるオニオンナイトに、プリッシュは言った。
「また失礼なことでも言ったんだろうな」
 というと、指をぽきぽき鳴らし、軽い屈伸運動をした。
 襲ってくるイミテーションは全て女性型。すらりとした足を覆う斑模様のストッキングが美しいが、
目元が軽く吊って怒りが見える。一体だけ魔女のように長いドレスを着ているものがいて、
大勢コスモスへと向かう中オニオンナイトへと一直線に向かってくる。
「ご指名だぞ」プリッシュの言葉に「こいつは僕に任せて!」と返す少年。
プリッシュは少年の頭をぽんと叩くと、コスモスへと走る。
 ヴァンは手を振りながら、こっちを見ている。
「おーい、コスモスー! セシルー! 適当にあしらってずらかれ!」
 この言葉を聞いて、コスモスを守っているセシルが首を横に振った。
「コスモスはここにいることに意義がある。逃げるわけにはいかない。コスモス、僕の後ろに!」
「セシル、そんなひび割れた装備で大丈夫ですか?」
「大丈夫だ、問題ない」
 聖騎士としての姿のまま敵陣へと突っ込む。剣の一振りでイミテーションが弾け、
散らばり、破片が更に被害を拡大させる。だが、その働きも矢の如き一瞬。囲まれ、
振り切った剣が割れるように折れ、イミテーションの纏う氷塊、竜巻、黒い重力、
破滅的な音と共に銀髪が踏み荒らされ、顔が血と青痰で塗られていく。
「しっかりしろー!」
 プリッシュが、イミテーションを砕き散らしながらセシルの眼前に現れた。
イミテーションは蹴りを受けたもの、あるいはその破片を受けて怯む。
そのとき空いた場所に、プリッシュが入った。鼻の下を擦りながら、啖呵を切った。
「おらおらおらァ! 相手はこのプリッシュ様だッ!」
 言うなり、プリッシュの石のような拳が一発ごとに敵を砕き散らしていく。
蹴り、短剄、バックブロー、繰り出す攻撃の一つ一つが次々とイミテーションを葬っていく。
 プリッシュは敵をなぎ払いつつ、遠くを見た。
オニオンナイトは一体のイミテーション相手に手間取っている。
イミテーションに目潰しをしたらしく、攻撃をあまり食らっていないが、苦戦気味。
コスモスは落ち着きのない表情で戦士たちを見ている。セシルは敵に踏まれていて見えない。
そしてヴァンは、プリッシュめがけて走ってくる。
「俺が連れてきたんだ、俺も活躍しないとな」
 ヴァンは炎を纏いながらイミテーションを吹き飛ばす。
イミテーションがトンネルを作るようにヴァンに弾かれた。着地のとき、
プリッシュの近くに寄った。プリッシュはヴァンの顔も見ずに言った。
「どーいうこった? こんなに同じ奴らが来るなんてよ」
「綺麗な足の割には老けてるよなって言っただけだ」
「やっぱりお前が悪いんじゃねーか!」
「プリッシュより若くてスタイルいいってフォローしたけどな」
 槍を出して振り回した。
ヴァンを台風の目とするようにイミテーションが吸い上げられていく。
悲鳴をあげているが情け無用。プリッシュは腰を落とし、拳に力を込めた。
モンクの奥義といわんばかりに拳でイミテーションをかち上げると、ブワッと衝撃波が走った。
「爆っぜろォ!」
 耐えようの無い勢いに、固まっていたイミテーションもひとたまりもなく崩れ、消えていく。
 欠片をぱっぱっと取りながら、汗もかいていない額を拭った。
「あ〜、食前運動にはいい感じだったぜ! セシル、立てるか? 手ぇ貸してやるよ」
「これぐらい……」強がるセシルと、「風が少ないからいけるな!」ボウガンを構えるヴァン。
方向はオニオンナイトと戦うイミテーション。ボウガンの引き金を引くと同時に、「よし!」と叫んだ。
命中した矢が、イミテーションの体勢を崩した。「チャンス!」小さな体から放たれた火球により、
イミテーションは炎上、ふらついた後、消滅した。剣を指先でゆらゆら浮かせながら、
「一応、お礼は言っておくよ。ありがとうッ」
 と言うオニオンナイト。戦士たちの勝利にコスモスは安堵したらしく、微笑んでいた。
「見通しが甘かった」というセシル。体だけは一丁前に光っており、リジェネの効果で回復していく。
「俺様がいてよかったな」と、セシルを見ながらプリッシュは笑う。
コスモスは、「お疲れ様」と戦士をねぎらいつつ、セシルの額に手を置きながら言った。
「少し休んでよいのですよ」
「主を守らなければならない、そんな気がするんです」
 どうしても、ここにいるといって譲らない。この世界に召喚される前に、
余程責任が重い職でもやっていたのだろうか。そんなセシルに、ヴァンが近寄った。
「俺がここでコスモスを守るから、お前は寝てろよ」
「しかし、ヴァン一人では」
「さっきみたいに返り討ちにするって」
「なら、せめて武具だけでも渡しておく」「いらない!」「よしなさい!」
 立て続けに否定されたセシルは、顔面から落ちるように倒れた。
コスモスが、聖域の水で溺れないように上を向かせた。
 女神の優しさが目立つ中、オニオンナイトはプリッシュとヴァンを交互に見ていた。
二人とも、頭も態度も軽いから、重責の伴う光の戦士失格なんじゃない? と思っていた。
勘違いだった。プリッシュは拳の一つ一つが重く、体の動きにはついていけそうにない。
ヴァンは年上の弟のように思っていたが、一度に大勢を相手にする力、
かつ離れたところにいる相手にボウガンを正確に当てるというのは見たこともない技術が伺えた。
オニオンナイトという称号と資質だけにかまけていた自分とは違う。
本当に強い。それに、なんだかんだで周りを心配している。
「ちょっと、見直したかな」
 感心していると、プリッシュが鼻をすんすん鳴らして寄ってきた。
「お前、いいにおいすんなぁ〜」
「え?」
「何かあるだろ!」
 耳がぴんと伸びているからといって、鼻が悪いわけでもない。
オニオンナイトの髪、鎖骨、胸、へそと来て尻で止まった。
「ここだ!」
 尻ポケットに手を突っ込み、さっと盗んだ。モーグリが大好きな赤いクポの実があった。
「へへへ、もーらいっと!」プリッシュは即座に逃げる。
「返せよ! 僕のだぞ!」
 オニオンナイトは小さな体らしいすばしっこい動きでプリッシュを追うが、
プリッシュも実力をほんの少し発揮してそそっと逃げる。速度は互角だったが、
すぐにスタミナに差が開いてしまった。
「はぁ、はぁ……もう、むりだ」
 膝から崩れ落ちるオニオンナイト、彼が視線を地面へと向けている間に、
プリッシュの咀嚼音が聞こえてくる。見上げると、案の定、クポの実はプリッシュの口の中に。
「あああ! せっかくモーグリからもらったのに」
「あとで倍返しにしてやるから、落ち込むなよ」
 と言いながら、彼の両肩に手を置く。ごそごそと尻ポケットを探る。
「まーだあるかな〜?」
「な、もう無いってばッ!」
 怒って突進する彼、と、彼の頭に手を置いて突進を止めるプリッシュ。
手足をじたばたさせるだけのオニオンナイトは見ていておもしろいが、
(足りねえ!)ふんっと押し返してでんぐり返しさせると、
プリッシュは口笛を吹きながらコスモスの方へ向き直した。
「なあ〜コスモス、ちょっと見回り行ってくんな!」
 見回りと言うと、この辺に怪しい奴がいないかどうか見てくる、という意味になりそうだが、
実際は他の世界へと向かう口実。コスモスは、いつもは認めているが、「いいえ」と首を横に振った。
「今は怪我人も出ています。私だけならヴァンで十分ですが、
セシルも守るとなると、戦士は多い方がいいでしょう」
「大丈夫だって〜、あの坊主を残すからさぁ〜」
 と、今にも走り出しそうなプリッシュに、コスモスは、
弱くも、重みと含みのある、怪談でも聞かせるような声を出した。
「シャントットがこちらに向かっていますけれど、それでも、貴方は行きますか?」
「NO、有り得ねェ!」
「最近、ぶち切れていないらしいですから、イーファの葉を貴方に渡した上で、二度の地獄を」
「それは有り得る!」
「では、ここに残りますね?」
 プリッシュは「ぅぅぅ」と小さく唸った後、無言でオニオンナイトの方へと戻った。
彼は逃げるようにプリッシュの視界から離れていくが、余計に興味をそそられた。
「ん〜、どうした、これ以上一緒にいるとパックン食われそうだって顔してよぉ」
「してないよ! これ以上いると変なことに巻き込まれそうだってことは考えたけどさ!」
 怒っても童顔ゆえに迫力の無いオニオンナイト。かぶとを外しているため、
背丈の割り増しができていないのも一因。それでも小さいなりにいらついた態度で、
歩くたびに水を余計に撒き散らし、聖域にいくつかある椅子に座る。
ユリのような形の椅子がガタンと揺れ、ギシギシと反動を残していた。
 空腹中のプリッシュは、オニオンナイトの気持ちも分からないでもないが、
木の実一つで済まされるわけもなく、コスモスをちら見して危険がないことを確かめると、
「ダァー! やっぱり足りねぇって!」と拳を床に叩きつけて叫んだ。
コスモスに直訴して食材を頼んだ、断られセシルに向かったらポーションをせがまれた。
ヴァンには「プリッシュは何歳だっけ? 忘れちまったんだ」何も期待できない、
期待の全てが無に還る、まやかしの希望なんかいらない。空腹が笑えないほど高まり、
聖域に流れる水を飲んでも大して満たされなくなってきた頃には、目がすわっていた。
 御しやすいオニオンナイトのところに向かうと、背もたれ越しに言った。
「なあ、オルトロスの召喚石を持ってないか?」
「持ってる」
 そっけなく答えたオニオンナイトは、プリッシュに聞き返した。
「何に使うのさ?」
「焼いて食う! あれなら食っても誰も文句言わないだろ?」
 凄い理由。
 オルトロス、見た目はタコ。焼いたことはあるが、
なぜか「茹でタコ!」と言っていたこともある(どう考えても焼きタコ)。
食べちまおうぜ、と言い出すプリッシュに、オニオンナイトは首を横に振るだけだった。
「無理だよ、今チャージ中。さっきのイミテーションで使い切っちゃった」
 力をなくしている召喚石を見せると、彼女はがくりとうなだれた。
「ヂグジョォ〜! タコにまで馬鹿にされるのかよぉ!」
(こんなの欲しがるなんて、意地汚い奴だけだよ)
「俺は足4本でいいのに! ヴァンみたいに全部と言わねえのに! ああ、神様!」
「……食い意地張り過ぎだよ。ますます兄としては見えないや」
「はぁ〜ぁぁぁ」
 プリッシュは力尽きるように顔から水に浸かる。しばらくそのままで、
ちょっと心配になってきた頃、悟りを開いたような穏やかな顔つきになっていた。
「お前がいたなぁ……この際栄養一番、味は二番……うふふ!」
 睨付ける。目向きは顔から、ずんずん下がり、ズボンで止まった。
獲物を狙う肉食の視線。オニオンナイトは視線の異様さに気付いて、
逃げるように跳ねたが、プリッシュはそれ以上の速度で背後に回り込み、
脇から肩にかけてがっちり捕らえた。バックアタックだ! そのまま椅子に座る。
「セイツウしているよな?」
「……忍者と賢者とかなら精通してるけど、関節技にはまだ」
「確かめてみりゃ分かるか。おらー、全部脱げ!」
「は? あ、なにさ! わわ、だめ、こんなの……ーッ!」
 声変わりしたばかりの絶叫が響いた。
「本ッ当に召喚石使いきってんなァ〜」
 プリッシュは呆れるように、力を失っている石を見た。
「つーかオルトロスにも使い道があったんだな」
 感心するプリッシュに、少年は背中を見せて泣いていた。
「もう、伝説の勇者なんて言えないよ……」
「弱い奴は奪われて当然」
 プリッシュは、彼の上着をぽいと投げ捨てた。ゴチンッという有り得ない重量の音がした。
「服の中に拳装備を99個持ってる伝説の勇者がどこにいるってんだ?」
「身に覚えがないよ!」
「尚更おかしいだろーがッ!」
 だから体が重かったのか、などと思っていたが、軽やかな今の体は、屈辱的だった。
「僕は、最低だ……」
「ほらほら、下着を返して欲しけりゃこっちに来いよ」
 服を旗のように振ると、少年は獲物を見たように勢いよく襲い掛かってくるが、
軽くいなして額をパチンと叩いた。また距離を広げる。
「ここまでおいで、甘酒進上」
 逃げるプリッシュ、追いかけるオニオンナイト。だが、実力差は歴然。
追いついても拳一発で吹っ飛ばされる。繰り返す間もなく、諦めがついた。
「無理だ……強すぎるよ……」
 呆然とする彼に、プリッシュは後ろから抱きついた。
「わっ! や、やめてよ! 僕は裸なんだよ!」
「お前なあ、服が無いからってなんだよ! 俺だって似たようなもんだろ」
 プリッシュは軽装の上に水着を着るという、ズボンの上にスカートを履くような服装をしている。
手足はすらりと出ているのだが、似たようなとは言い難い。ただ、布自体はとても薄い。
何も自慢にならない胸のふくらみが、少年に押し当てられていた。
不思議な感触に、落ち込んでいた少年も「あ」と声を漏らした。
「よーしよーし、いい子だ」
 急に静かになった少年の、股間に手を伸ばした。小さな男性器を手のひらで軽く押した。
脱がされて以来黙っていた少年も、目を丸くして驚いた。
「うわッワワッアア!」
 アヒルみたいに巻いた絶叫。同時に身の危険が再来したらしくもがく。
だが、がっしりとロックされていて動けない。手の動きは止むことなく、
ふにふに、むにむにと強弱をつけながら揉まれる。
「ほーら、こんな美人にされてんだからとっとと気分よくなれよ」
「そ、そんな、の、無理だよぉ」
 股間もそうだが、後ろから押し付けられるプリッシュの胸に神経がいってしまう。
既に腫れた程度に硬くなった股間、これ以上は駄目だと理性で考え、
歯を食いしばって堪える。プリッシュが普段とは違う、女性らしいしなやかな手つきで、
小動物を愛でるように撫で回す。小指も埋まらぬ胸といえども、
慣れていないものにとっては性を昂ぶらせる。必死に堪える少年だったが、
耳にふぅと吐息をかけられた瞬間、頭の中が真っ白になった。
性欲が我慢を通過してしまい、もう止められなかった。
「う、ぁ……わ」
 声が漏れて、小さなものが角度を持った。
「へへ、やっとか!」
 プリッシュは少年の前に回り、硬くなったものを右手で包んだ。
まだ包皮が目立ち、ちょんと先端が見えている程度だった。
刺激に慣れていないらしく、全体的に肌色に近かった。
「なんだ、被ってら」
「な、コスモスに仕える側なのに、そういうこと言ったら駄目だろ!」
 怒号を飛ばす彼だが、「うるせえ」プリッシュが指先で亀頭を突いた瞬間、悲鳴をあげた。
プリッシュは股間を押さえている少年を見てくすくす笑った。
「ま、これぐらいじゃ終わらないって。気持ちよ〜くしてやっからなァ」
 少年の足を開き、体を入れる。彼の手をどけると、上向いた男性器の先端を、にゅるりと舐めた。
「ギャッ!」
 体が震えて、手足が一瞬地面を離れる。プリッシュは「ふふん」と笑うと、
舌全体で包皮を這いずる。皮の上から亀頭、溝、竿と、唾液を塗りつける。
 少年の声が舐められるたびに小さく出る。舐めたところに手を当て、愛撫らしく触れる。
唾液でぬるぬるになったところが次々と指の刺激を受けて、ひくひくと動く。
少年は苦しげに目を閉じ、唇を噛んで堪えている。プリッシュは構わず、
いやらしく出した舌で閉じかけの皮を舐め上げ、覆いを外していく。
触れる痛みが香辛料のようになったのか、少年は我慢し切れなかった。
「あ、あう、うわあ!」
「ほらほら、もっともっと」
 悲鳴のような声を楽しみながら、彼の肉棒を舐め、広げ、捲くる。溝まで出させると、
初めて外気に触れたばかりの全体をはむっと銜えこんだ。生えそろっていない陰毛が鼻に当たる。
「はまんふんんあよ(我慢すんなよ)」
「……え?」
 荒い呼気の少年が、「な、なんていったの?」と聞き返した瞬間、体が跳ねた!
「うわわああ、あっあァ!」
 今まで感じたこともないであろう性感に、体がピンと張ってしまう。
 空気に触れることすら慣れていない場所が、唾液によって羊水のように覆われ、
ぐにゅっと動く舌で自由に扱われる。根元は指に包まれ弱くも確かな刺激を受ける。
「こんな、の、いやだよ。だれか、た、たすけ……て」
(我慢すんなっての)一層、動きを速める。
「う、うぁ……あ!」
 背筋を伸ばしても消えない快感を、声として吐き出し、それでも体を巡って、溜まっていく。
時と共に動きを強めていく。舌の虜になったように膨らんだ亀頭を、
じゅるじゅるっと音を立てて吸い出す。淫らな音が続くと、
遂に少年の我慢が壊れ、彼女の口の中に己の精を吐き出してしまった。

「やっぱ、この食感って慣れたもんじゃねえな」
 プリッシュは放たれた精液を飲み込みながら、顔をしかめて愚痴をこぼす。
オニオンナイトは聞いていられなかった。体育座りで、唾液でべたべたになった股間を見ていた。
圧倒的な実力差でいいように扱われたのに、一概に嫌だとも言い切れなかった。
 100mも離れていないところにコスモスとセシルとヴァンがいるのに、助けを呼ぶことも、
これからどうしたらいいのかと相談することもない。何か、とんでもないことをされた気がするが、
正体が分からない。悪いことをしているという気がするものの、また味わいたい、
もっと気持ちよくなりたい、という思いがあり、それが自分の道徳との間で揺れていた。
ただの村人であれば躊躇いなく欲に身を任せていたのだが、光の戦士というブレーキがあった。
「ネギぼーず」
 プリッシュが後ろから抱き付いてきた。
「離してよ!」振り払うように手をばたつかせるが、
決して本心からとは言えず、どさくさに紛れて自分から背中をプリッシュに当てた。
ふにっと何かがへこんだ気がするが、小さな変化すぎてよくわからない。
無意識に、ぐいぐい押し付けるが、プリッシュが「おいコラ」と頬を抓ったのをきっかけに、
プリッシュから全力で離れた。
 プリッシュは胸をほぐすように自分でなでまわすと、「ったく最近のガキは」と呆れた。
 それでも、一度女性を求めてしまった体は、自分では止められそうになかった。
「プ、プリッシュ!」彼が欲のままに求めようとしたとき、「何だよ!」と睨まれた。
オニオンナイトの行動と決意が、アーリマン以上の強烈な視線と言葉に止められた。
いやがおうにも黙らざるを得ない。口を開いたらぶち殺される気がする。
よくて半殺し。大元となっている性欲をとにかく消そうと思い立ったが、残った性感で、
いけないと思っても性器がまた上向こうとしている。もし彼女に見つかったら、
よろしくない結果になりそうなので、鎮まって! と祈った。
(頼む、頼むよ!)
 両手を合わせ、小さく声に出る。甲斐あって、しゅんと小さくなった。
(よかったぁ〜)
 頭を垂れ、心の底からほっとする。っと、プリッシュの体が、下げた視界に入った。
「え、えーっ!」
 顔をあげて見ると、位置関係が、プリッシュがオニオンナイトを背負っているようになっていた。
手をつかまれ、二人羽織をするような姿勢になっており、しかもその力がものすごいものだった。
髪の毛の香りに意識が朦朧としていると、
「せっかくだから、お前の筆下ろししよーぜ」
「え?」
 言葉の意味が分からず、沈黙そして混乱。プリッシュの手が、彼の手を胸に誘導した。
それぞれの指が同じ指に当てられ、傀儡のように動く。胸をぷにっと潰すと、
少年は目をぱちくりさせて、顔を見る見る紅潮させているものの、拒む様子はなかった。
 ふにふに、くにくに、しばらく不思議な感覚に神経を奪われていると、突然大声を出した。
「変だよ! こんな、胸を触らせるなんてさッ!」
 怒ったというよりは焦ったときに自己防衛のために出たような、上擦った声だった。
プリッシュは目立つ反応は見せず、彼の手をぎゅうと胸に押し付ける。
動きは両手に及び、褐色のふくらみが歪なものとなる。次第に、
少年は自分の意思で力をこめるようになった。ほんの少しの力で一大事のように形をゆがめ、
すぐに元の形に戻る。柔らかさと温かさ、それに布越しに分かる小さな突起。
触れるたびに顔から汗が伝う。感覚の琴線に触れたらしく、
男性器が膨らみ、プリッシュの腰に当たった。
「お〜準備できたか〜?」
「い、嫌だよ!」相変わらず上擦った声。一度退くことを決意した心は変わっていなかった。
「俺が相手だから、か?」
「そうじゃない! そうじゃないけど……」
 なんとも説明しがたい、倫理や道徳では、住む世界の違いもあるし説明は無理だった。
元の世界に別に想う人がいたのかもしれない。「とにかく変なことは避けたい!」
としか説明ができなかった。しかし、そんな理由で、プリッシュが止まるわけが無い。
「ふ〜ん」と鼻で言うと、目を猫のような形にして見上げた。
「嫌だって言うんなら逃げてもいいぜ!」
 鼻の下をこすり、にかっと歯が見えるほど大きく笑顔を見せた。
大人の女性、といよりはいらずら好きな子、という顔だったが、免疫のない少年なら魅了される。
「ど、どうしたらいいんだ」
 様々な記憶や倫理観が渦巻く混沌の中で表れた苦悶の表情とは裏腹に、
下半身は単純で素直。プリッシュの腰に、先走り汁をつけて、軌跡をつけていた。
「やる気あるんだな」
「あう……ぅ」
 諦めたように、少年の手が、プリッシュの誘導なしに、つつましい動きながらも胸を味わった。
目は彼女の顔に完全に固定されている。嫌ならやめてもいい、という言葉を忘れたようだ。
むしろ、健康的な肢体に吸い寄せられているようですらあった。
「プリッシュ……僕、は、やってみたい」
 プリッシュは筆下ろしと遠まわしに言ったのに、彼は本能で知っているようですらある。
どこか罪悪感を漂わせていたが、まごうことなき本音。胸をわしづかみにしてきた。
「わわ!」
 突然の積極性に、プリッシュは握りこぶしを作ったが、すぐに拳を解いて、
彼女らしからず淑女のように、両手を重ねて膝に置いた。
「や、やわら、かい! すごく、ぷにって、すごい!」
 咽るような呼吸と共に喋る。慣れていない動きそのもので、胸に指を埋めているだけだった。
乳輪や乳首ということすら分かっていそうにない。プリッシュは物足りなさそうにした顔で、
彼の視界に入らないようにため息をついた。
「(ま、しょーがねーよなー。せっかくだからサービスしてやっか)……あっ!」
 わざと甘い声を出した。少年は気付いていないのか、動きを大して変えていなかった。
相変わらず押すだけの手の動きを導くように、プリッシュの手が伸びた。
「なぁ、ここ、突起あんだろ。そこが気持ちいんだ」
 肌の色と似ていて目立たない、ましてやプリッシュの後ろにいる少年からは見えないが、
触れば分かる。まだまだ小さいが、重点的にこねて、潰して、まわして、
と思考抜きにひたすらやられると、さすがに肥えた。
「お、大きく?」
「ああ、お前のと一緒だよ」
 プリッシュは、腰に当たっている男性器を見た。露出した亀頭の先には白い液体が滲んでいた。
(ったく。慣れていないと勝手に出ちまうもんなのか? 急ぐか)
 後ろの少年の手を強引に体から離すと、振り返った。こちらの視線は顔に、
あちらの視線は胸と突起向きだったが、プリッシュは目の前で水着と下着を脱いだ。
少年の目線が下へと向かった。
「ジロジロ見んなよ」
 下着を脱ぐと、毛と一緒に、うっすらと滲んでいる割れ目が見えた。
当然、彼の視線はそこに釘付け。まばたきも忘れて見入っている。
「見るなって、言ってんだろ?」
「む、むむむ、無理です! どうしても目を離すことなんて!」
 いつもは生意気な彼も咄嗟に敬語になって、震えながら首を振る。
プリッシュは笑いながら小さく舌打ちすると、彼の肩を掴み、押し倒した。
首筋に軽いキスをすると、ビクンと大袈裟なぐらいに震えた。首から顔を離し、目をあわせる。
「筆下ろししてやるって言った手前、俺が入れてやるからな」
「いれて、って、なにが」しなる中指が顔面を弾いた!
「……言わせんなよ」
 プリッシュは仏頂面で腰を上げた。足を大きく広げ、割れ目が更に広がる。
指先を男性器に向けると、できものを扱うみたいに優しくつまんで、上向かせた。
腰を動かして微調整。小陰唇の段差に触れると、そこで止めて、少年を見た。
驚きか緊張か、まばたきをするだけで呼吸すら止まっているようだった。
「さぁてぇ、覚悟しろよ」
 ケケッと笑うと、腰を下ろした。二人の触れる場所が徐々に広がっていく。
「覚悟ってどん……な……あ、ああ……うわぁあああーッ」
 全部入りきらないうちから、犯されたような大声だった。小さな男の小さな生殖器は、
年上の生殖器に挟まれた。捕まったように動けず、もたらされるのみだった。
 少年は目を大きく広げ、唾液を出すほど大きく口を開けて呆然としていた。
手は足元に流れる水を掴み、何かを訴えているようであったが、
びくびく痙攣するようにしているので手の隙間からぼとぼと漏れた。
「痙攣すんのは、普通俺だろうが!」
 またも機嫌悪そうに言うと、彼の頬をぎゅうと摘んだ。
はっと目の色を戻した彼は、露天を見ているような目で言った。
「し、しし、死ぬかと思った」
「うおりゃ!」
 少年の言葉が終わった瞬間、プリッシュは尻に力を入れた。柔肉が男性器を抱き抱えた。
体の若さは本物、瑞々しくも痛いほど熱い肉壷、抱かれた男性器は悲鳴を上げるように、
元々あった白濁液を少々放出した。
 硬度はまだ保っているものの、それも風前の灯火といったところ。
少年の顔は、既にナイトと言う呼び名に相応しくないほどぐちゃぐちゃになっていた。
「あう、あ、ふ、うう」
「死にたくなかっただろ?」
「う、うぐ、はい、ひぐっ、し、しにたく、ない、です」
 何度も頷く純粋な反応に、楽しそうにしていた表情を改めて、優しげに言った。
「ほら、泣くなよ。みっともないだろぉ?」
「ええ、うく、そう、ですね」
 彼の目元に溜まった大量の涙を、プリッシュは優しく拭った。
「ったく、目ェ腫れるだろ?」
 と言いながら、彼の鼻の頭をぷにっと押す。
「ほら、勝手に動け、どんな動きでも俺は感じられるからさ」
 こくんと頷いた。締められているため、動きはゆったりとして弱い。
しかし、動くだけで少年は喘ぎ声を出す。プリッシュは動いているのは彼、
楽しんでいるのも彼、という状況を苛立ちつつも喜んでいた。
 言葉は返ってこなかったが、首が僅かに縦に動いた。くに、くに、と僅かに押し上げているが、
締めている状態であるため動きは弱い。だが、動くだけで少年の喘ぎ声が聞こえてくる。
「へ、俺のおかげで、こんなになってんだな」
 体を前に倒し、目線をほぼ同じ高さにした。乳房を彼の顔にぺたっと当てた。
顔を挟み込むなんてことは到底思い浮かばないサイズだったが、頬に押し付けるぐらいのことはできた。
ぴたぴたと叩きつけるように音を出すと、子犬のような声が返ってくる。
顔は眠っているように可愛らしく、感触に浸っていた。ちょっと押すと小さな声が漏れてくる。
何度も押していると、ちらりと彼の目が開いて、胸が当たっていることに気付いた。
自分から胸を求めて顔を動かし、突起を口に含んでちゅうちゅうと吸い始めた。
他に行動もなく、吸うだけなのは彼の幼さだろう。拙いながらも女性の性感帯をついた行動。
だが、プリッシュは今更すずめの涙のような性感などどうでもよく、
むしろ彼の表情に胸を弾ませていた。産着に包まれた赤ん坊のように愛らしい。
茶化すことも悪戯することも忘れる可愛らしさ。
 プリッシュの方から彼の額にキスをすると、彼の顔を引き寄せ、抱きしめた。
膣も同時にぎゅうっと締める。彼がびくんと跳ねると、呼気が熱くなり、間隔が短くなった。
自分では何もできない彼に、世話をするように何度も腰を下ろした。小さな男性器を上下させる。
体が動かない少年は、やがて悲鳴のような大声をあげると、動きを極端に静めた。
「う、う、ああぁ……」
 力尽きるような声を出して、手足が水面に伏した。
プリッシュは、中に何かが出されたと分かると、すぐに彼から離れた。
聖域の水を手で掬い、自分の股間に塗りたくる。ついで、彼の体を綺麗に濯いだ。
「おーら、綺麗になったぞ」
「う、うん」
 目に力が無い。今すぐに寝てしまいそうだった。
「おいおい、何て顔してんだよ。男になれたんだぞ?」
「……うん……うん」
 プリッシュを見上げながら、ふっと微笑む。襲われたというのに、少しも不安げではない。
「ったく。安心しきった顔しやがって! それでも男か?
絶対に許さないとか、この借りは必ず返す! とか言わないのかよ。
次は俺を襲うぐらいのことをしろよ! 舐められたままでいいのか?」
「……ううん」
 といったきり、目を閉じた。すぅすぅ小さな呼吸が、規則正しく聞こえてくる。
椅子に寝せると、お姫様のベッドで眠っているように気持ちよさそうだ。
剥ぎ取った衣服をかぶせて、体が隠れるようにした。自分も衣服を整えると、
コスモスたちのいるところへ走った。

 ヴァンはコスモスにスリーサイズを尋ね、コスモスはヴァンをあしらおうと遠まわしに喋っている。
セシルは、傷が癒えたのか怒ったように目に力が入っている。
「プリッシュ! 彼がああいうことを望んでいなかっただろう!」
「おいおい、今更止めんのか? ちょっと遅すぎるって」
 お手上げポーズをとった後、言った。
「チャンスはやったぜ。嫌なら逃げてもいいってな。ちゃんと待ってやったし、文句はないだろ。
あいつは据え膳を食いたかっただけだ」
「だが、セックスは本来婚姻」
「うっせぇ! あいつは俺より弱かったから食われた! それで十分だ!」
 セシルは、先ほど酷くやられたためか、口をつぐみ、肩を下ろした。
 黙ったところで、ヴァンがやってきた。収穫ありだったのか、口元が笑っていた。
「なあ、セシル! コスモスってああ見えてけっこう」
「もういい! 僕が君たちから離れるよ!」
 というと、コスモスのところへ走っていった。
一方、コスモスは髪の毛をいじって、暗闇の雲のように尖らせていた。
いい加減にしないと怒りますよ? という無言のメッセージなのかもしれない。
「終わったのね?」と一番に言うあたり、どうも無関心に思えるが。
「なんだか、疲れんな〜」
 プリッシュはポケットからポーションを取り出すと、ぐいっと一気に飲み干した。
炭酸が体を駆け巡り、セックスで使った体力を一気に取り戻す!
「っぷはぁ〜、生き返るぜェ〜!」
 空き瓶をばりばり潰して、踏んでも大丈夫なサイズにしていると、
「あ、腹減りなら最初っからこれ飲んでればよかったかな?」と思っていると、ヴァンが寄ってきた。
「俺もやる!」
 無邪気になってガラスを踏む。
 ゴリゴリゴリゴリ、中毒性のある音の中、プリッシュが言った。
「ヴァン、あの子のことだけど、ちゃんと鍛えてるか?」
「やってるよ! 断られるけど」
「やれてねえじゃねーか。次からは首に輪かけてでもやれよ。
イミテーション一体にだって苦戦してんだぜ? 本物が出てきたらどうなるんだよ」
 やたらと気にかける彼女に、ヴァンは溜めもなしに言った。
「あいつに惚れたのか?」
「ばーか。資質はあるんだから、今のうちに子分にしておこうって思っただけだ。
せっかくやったのに、死なれたら困るだろ」
「うん」
「やらずぶったくりって訳にもいかねえだろ」
「うんうん(ゴリゴリ)」
「……この野朗」
「うんうんうん(ゴリゴリゴリゴリ)」
 怒ったプリッシュと、既に話よりもガラスを潰すことに熱中しているヴァンとあっては、
この場も聖域らしい静かなものとなった。
「まだちょっとチクチクするな」
「じゃ、面倒だからこうすっか!」
 プリッシュが拳に力を込めて、落す! 破片が細かく潰され、さらさらになる。
「う〜。力が有り余ってんなぁ〜」
特に、体力を完全にしたプリッシュは、力の発散所を探していた。
「もう一回あいつとセックスでもして……て寝てるか。カオス勢とでも戦ってくっかな」
 といっていると、シャントットが遠くから歩いてくる。
さすがに彼女の目の届くところでセックスする勇気は無い。皮切りに、
やたらと大きな箱を持っているスコール、口を膨らませているラグナなどがやってきた。
これだけ居るなら、コスモスの守りをしなくてもいいか、と喜び出かけようとしたとき、
ヴァンが、眠っているオニオンナイトになにやら話していたのを見つけた。
「おい、起きろよ。トレーニングしようぜ! オイ(ピシ)、オイ(ピシン)、オイッ(バチィン!)。
……ダメか。なんだろうなぁ、この疲れよう。まるでセックスした後みたいだ」
 おいおい、と戦士たちが白い目を向けていると、
プリッシュはにやにやしながら彼のズボンに手をかけた。
「なぁ〜ヴァン。ちょっと俺に付き合えよ」
「ん、いいけど何だ?」
「ちょ〜っとした運動だよ」
「運動かぁ、やる、やるよ! 少しでも鍛えておかないと、弟に抜かれちまうからな!
そうだ、いい場所見つけたんだ! 列車から逃げる場所なんだけど」
「おっしゃ! 場所は決まったな!」
「こっちこっち!」
 ヴァンは何の疑いもなく、トレーニングという言葉を信じてプリッシュの誘いに乗った。
全てを知っているセシルはヴァンを引きとめようとしていたが、コスモスが彼の口を手で塞いだ。
「好きなようにやらせて」とでもいいたげだった。セシルは自分の意思を殺すように頷いた。

 数時間後、オニオンナイトは恍惚な表情で目を覚ました。いい夢を見ていたようで、
起きてきょろきょろ見回すと、ため息と共にうな垂れた。が、それでも笑みはすぐに出てきた。
「……えへへ」
 凄いことをした、という記憶はあるのだが、おぼろげにしか覚えていないらしく、
はにかんでもそれ以上は無かった。
「何をしたんだろう……って、うわぁあ!」
 裸になっていることに今更気付き、きょろきょろ見回して、椅子を遮蔽にして着た。
転がっている鎧もかぶともきちんと身につけ、何事もなかったようにいつもの格好になる。
足元の水を取って顔を荒い、寝癖を直すと、椅子の背もたれから辺りをちらちら見た。
「あれ? フリオニールにバッツにスコールだ。もしかしたら……皆揃って、は、いないか。
ヴァンとプリッシュがいないや。全く、もう少し協調性ってものを」
「プリッシュなら休んでるぞ」
 と、オニオンナイトの後ろからヴァンが言った。「うわわわ」と過剰な反応をすると、ヴァンに向き直した。
「さっき来たんだけどな」
 パンを丸ごと口にくわえていても、腹話術士のように普通に声が聞こえてくる。
 なぜだかプリッシュのことが、良くも悪くも気になって仕方が無い少年は、
もう一度聖域を注意深く見る。ずっと遠い椅子にプリッシュがいた。
何があったのか、下半身を中心にあちこちが痙攣していた。
自分で歩くこともできそうにない。口が小さく動いているが、言葉になっていない。
「プリッシュ、どうしちゃったの?」
「列車内で勝負してたらさ、4時間ぐらいでああなった。
危なそうだったからコスモスに診てもらったんだ。命に別状はないって」
 プリッシュが一体何をされたのか、少年の想像の及ばない世界に思えた。
「魔列車で、ど、どんなことをしたの?」
「駅弁」
「……食い過ぎだだけか」
 拍子抜けしたように、オニオンナイトは椅子にもたれた。その後ろで、
ヴァンは何かを抱きかかえるように腕を曲げ、腰を振っていた。バグったように速い。
 少年はそんなことは露知らず、ふわぁと欠伸をした。
「ま、プリッシュもちょっとは思い知ったんじゃない?
自己中もホドホドにってね。旅をするなら、おしとやかな人の方がいいや」
 背を向けたまま、オニオンナイトは、(自分にも当てはまるや)と思うと、そろ〜と声を出した。
「あ、あのさ、ヴァン……次にトレーニングいくときは声かけて。僕も行くから」
「いきなりどうした?」
 オニオンナイトはかぶとを脱いで、ぬいぐるみのように抱えた。
「強くないと、ナイトとして恥ずかしい気がして。守りたいものも守れないかもしれないし」
「守りたいものほど守れずに失う……誰かがそんなことを言っていた気がする。
よし、血反吐吐くぐらい鍛えてやるよ!」
「げっ」
 オニオンナイトの顔が引きつった。だが、それぐらいしなければ強くなれないと思うと、強く頷いた。
すぐに二人は腰をあげた。聖域を離れ、足を降って水を払う。
「まずは体力だな!」
 駆け足で、別の世界へと向かうヴァンに、オニオンナイトは慌てて着いていった。
引き離されないように必死になっている様を見て、セシルが呟いた。
「本当の兄弟でなくても、あんな風に走れて羨ましいや……」
 どんどん遠くなっていく二人に、見えなくなっても目を向けていた。
タグ

コメントをかく


「http://」を含む投稿は禁止されています。

利用規約をご確認のうえご記入下さい

どなたでも編集できます