FFシリーズ総合エロパロスレのまとめ

ライトニングは迷っていた。
クリスタルになったセラ、ルシになった事、そして使命。
軍人として、またセラの姉として強く生きてきたライトニングでも、立て続けに起こった
この過酷な命運をそう簡単に呑み込むことはできなかった。
しかし立ち止まって考えていたら絶望に囚われてしまう。突き進まなければいけない。
他人にかまっている余裕など無く、自分のことで精一杯だ。そう思いってつい先刻、
ライトニングは少年を一人この地に置きざりにした。
ヴァイルピークス。下界の残骸があふれる荒んだ土地を、ライトニングは一人歩いている。
注意深く周囲に目を配りながら、廃棄物の間を縫うように進む。後方の空を仰ぐと、低いエンジン音を
打ち鳴らして飛びかう飛空挺が見える。PSICOMが血眼になってルシを探しているのだ。
この地にいつまでも留まっていれば追いつかれる。先を急がねばならない。
しかしそんなライトニングの思いとは裏腹に、その足どりは重かった。
一人になって冷静さを取り戻したのと同時に、罪悪感が沸いてきたのだ。
「……少し休憩するか」
そう呟いて周囲に視線を動かす。座れそうな高さの残骸を見つけると、その上に腰を下ろした。
ふぅ、と一息ついて、ライトニングはおもむろに思考をめぐらせた。
別に自分は迷っているわけでも、ホープを待っているわけでもなく、疲れたから休息をとっているだけなのだ。
そんな風に自分に言い聞かせる。そして再び考える。セラの事、ルシの使命の事――――。
すぐに行き詰まり思考を停止する。希望など一欠けらも見えてこないのだ。止まって考えれば迷ってしまう。
やはり先を急ごう、ライトニングは心を切り替えて立ち上がると、
ふと自分が来た方向に人の気配を感じ取った。
「ホープか?」
呼びかけてすぐ、安易な予測の間違いに気づく。
肌を突き刺すような明確な殺意。気配は複数。
「PSICOM!!」
考えるより早く体が動いた。咄嗟に後ろへ跳び退き、ホルダーから銃剣を引き抜く。
敵との距離を確認しつつ――――瞬間、背筋に悪寒が走る。
反射的に上体を捻り真後ろの空間を薙ぎ払った。
刃物がぶつかり合う耳を裂くような高音。剣を弾かれてたたらを踏む兵士の姿が見えた。
背中を狙って振り下ろされた剣を防いだのは奇跡に近い。
すぐさま手首を返し、その兵士に刺突を一撃見舞う。そして銃剣を大きく振り、牽制しつつ距離をとった。
「……囲まれてる……か」
クッと唇をかみ締める。兵士の数は視認できるだけで軽く二十を越えている。
なぜ自分は戦地で気を抜いたのか。分かっていたはずだ、迷っていたら絶望に捕まると。
迷わなかったから生きてこれた。迷ったからこうなったのだ。
だが今この状況で悔やんでる暇など無い。瞬時に思考を戦闘モードに切り替える。
ふっと強く息を吐くと、弾けるように地面を蹴った。
疾走するライトニングの左腕が風を巻く。魔力の収束。
「はあああああああ!!」
迷いを振り払うように吼えた。砂埃を撒き散らしながら稲妻のごとく兵士の群れに突進する。
距離が詰まる。目測――最寄の兵の切っ先が届く距離まであと1間弱。
ライトニングは半円を描くよう左手を振った。圧縮された魔力が閃光とともに解放される。
矢のごとく放たれた光は正面の兵士を吹き飛ばした。
勢いそのままに兵の群れに飛び込むと、一息のうちに左右の兵士を斬り伏せた。
もはやライトニングは完全に兵士達の間合いの中だ。すぐに四方八方から刃が迫る。
前から来る打突を身体を捻ってかわすと、その突き出された腕を左脇に抱え込んだ。
同時に右から振り下ろされた剣を、銃剣で受けて絡め、下に払い落とす。
そして綱引きのごとく、座り込むように後ろに体重をかけると、
腕を抱え込まれて前のめりになる兵士を思い切り後方へ引っ張った。
前と後ろ。同時に兵士の悲鳴を聞く。
前の兵士はライトニングの背後にいた兵士の一撃で肩を割られ、背後の兵士は前からの剣に足を突き刺された。
即座に沈んだ体勢から反動をつけて、起き上がりざまに右の兵士に銃剣を振り上げる。兵士の腕が剣とともに吹き飛んだ。
電光石火の立ち回り。わずか数秒たらずでPSICOMの兵士6人が戦闘不能に追い込まれた。
状況に圧倒された兵士達が思わず数歩後退する。
倒すべき敵を目の前に、兵士がひるむことなど本来あってはならない。
だがPSICOMは対下界を名目に活動する組織だ。何百年と下界との戦争の無い今、下っ端の兵士は実戦経験に乏しい。
警備部隊として常に戦いの中に身を置いてきたライトニングからすれば素人同然だ。
そんな敵の一瞬の隙は見逃さない。ライトニングは体を翻し深く腰を落とす。
弾けるように体ごと高速回転。銃剣を持つ右腕がしなるように円を描く――エリアブラスト。
遠心力を乗せた一撃は、水面に重石を投げ入れたかのごとく周囲の兵士達を跳ね上げた。
たった一人にPSICOMの兵が次々となぎ倒されていく。
目を疑うような光景に兵士達は慌てふためいて散り散りに後退し始めた。
こうなればライトニングの独壇場だ。統率もなくただ恐れおののく兵士達を一人残らず切り伏せてしまった。
――――なんとか切り抜けたな、そう思いながら銃剣をたたんでホルダーにしまい込む。
大きく息を吸って呼吸を整えていると、少し離れた崖の方から話し声が聞こえた。
際まで行って下を覗き込むと、ヴァニラ、サッズ、そしてホープの姿を発見する。
「……無事だったか」
そう呟いて、崖の縁から飛び降りると3人の前に綺麗に着地した。
一瞬3人の表情はこわばったが、こちらの姿を確認すると、安堵した様子で声をかけてきた。
「おっ、待ってたぜ」
「一緒に行こ!」
ふんっと鼻を鳴らして返事にする。待っていたのはこっちのほうなのだ。
「素直じゃねえな」
やれやれ、なんて風に大きく手を広げてアフロがほざく。
会ったときから思っていたが、この男は身振り手振りがいちいちうっとうしいな。
そんなアフロの影に隠れるように佇むホープの顔を見やる。
罰が悪そうに黙ってただうつむいている。
むむ、なんなのだ。私に、ついて行きます、と言っていたくせに。
誰でもいいのか。それともあれか、やっぱり若い子と一緒のほうがいいのか。
こっちはお前が追いつくのを待っていて、死ぬかという思いまでしたというのに。
ちくしょう、やっぱり追いていってやろうか。
なんて考えながらしばらく睨んでいたからだろうか、ホープはおろおろしたような
表情でこちらをじっと見上げていた。
ええい、そんな子犬のような潤んだ瞳で私を見るんじゃない。
プィっとホープから顔を背けると、「行くぞ」とだけ声をかけ、すたすたと歩き出した。
背中に『はい!』と嬉しそうに返事をする声が聞こえた。

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