高等学校の「生物基礎」「生物」に関する教材、発問、小ネタ等のまとめwikiです。

代謝と酵素

基本事項

過酸化水素が水と酸素に分解される反応を例に、酵素の性質について学ぶ。
酵素反応こそ生命の根幹であり、酵素の設計図はDNAにある。2章の遺伝子の話につながるように話をする必要がある。

扱う内容、レベル

有名なカタラーゼの実験があるが、生徒実験として行うかは授業計画とこちらの余裕と生徒の理解度と相談すること。とくに進学校の場合、実験をするまでもなく実験結果について正しく整理・解釈できる生徒が多い。センター試験の実験考察問題対策を見据えて、ていねいに生徒実験を行ったうえで整理のしかたを誘導してもよい。

過酸化水素の分解については、一つの例というのではなく、化学反応式自体が出題されることがある。覚えるものとして教えたほうがよい。
反応式 2H2O2 → 2H2O+ O2 について、日本語で教えてもよいが、化学反応式自体は中学校でも扱うので、生物基礎の入試で化学式で出題されてもおかしくない。
化学基礎では最後のほうの単元である酸化剤還元剤で過酸化水素が目立つ存在であるため、学習済みかどうかで扱いが変化する。

発問案

酵素って聞いたことがある?どんなものに書いてあった?
酵素はからだの中にある? → 具体例が出てこればよいが、「ない、特別な成分だ」という自然観が出てくることがある。大チャンス。
(復習として)過酸化水素の分解は異化?同化?
触媒と酵素、どっちが種類が多い? → 同じような用語の違いを明確化させる発問。酵素は触媒の概念に内包されている。

トピック

実験室にてデンプンをグルコースにまで分解しようとすると、塩酸に入れて沸騰(還流)させて半日程度反応させないといけない。
これに対して酵素が反応する条件はマイルドである。(体温何度?何時間でおなかすく?などと発問してもよい)

演示実験を行う際には、過酸化水素を3%にまで薄めて使用すること。レバーやブロッコリーは冷凍したものでもカタラーゼの活性を保っている。
過酸化水素もフタを開けたまま長期保存(1年)すると、ただの水になっていることがある。カタラーゼは1年かかる反応を縮める物質をして紹介するとよい。
過酸化水素は発生する酸素により殺菌作用があり、傷薬に使われている。
体内でも呼吸をおこなう際に活性酸素などを分解するためにカタラーゼは広く体内に分布している。

細胞内や体内ではたらく酵素

基本事項

細胞内ではたらく酵素については、細胞小器官などの働きが酵素によって作られていると確認する。簡単なので一瞬で終わる。
体内で働く酵素については問題集では具体的な酵素名を聞いてくる問題もあるが、教科書にあまり載っておらず、生物基礎の範囲では出題も限られている。
ただ、かといって理系生物の酵素の単元の教科書に載っているわけでもない。授業で説明するか悩む。

扱う内容、レベル

中学校では、栄養成分の分解として、
デンプン→グルコース、タンパク質→アミノ酸、脂肪→脂肪酸+モノグリセリドを暗記させており、また、アミラーゼ、ペプシン、トリプシン、リパーゼなども登場している。
そこから発展させて、カタラーゼ、アミラーゼ、マルターゼ、ペプシン、トリプシン、プロテアーゼ、ペプチダーゼ、リパーゼなどが登場する。多い。
ただ、基質特異性の説明や、酵素の命名法は一般常識として知っておいたほうが良いので、説明している。

発問案

(復習)ミトコンドリアは何をするところだった?(葉緑体も同様)
中学校で何か唾液をつかった実験しなかった? → 中学校で唾液アミラーゼを用いたデンプンの分解をやっているところがある。
デンプンは体内に吸収されるとき何に分解される?(タンパク質、脂肪も同様)
デンプンはアミロースとも言われる。それを分解するのがアミラーゼ。マルトースができて、マルトースで分解される。酵素はどんな名前の付け方?
タンパク質は英語でなんて言うか知っている? → プロテイン。プロテアーゼの誘導に。

トピック

原核細胞を扱ったとき、呼吸を行うのに、ミトコンドリアを持たない、またシアノバクテリアは光合成をおこなうのに葉緑体を持たないことを学んだ。
ここでもう一度扱う。原核細胞は呼吸に関する酵素、光合成に関する酵素を持つが、細胞が小さいため細胞小器官にパッキングされてないのである。

酵素の名前なのに、「-ase」で終わっていないペプシン、トリプシンは酵素の発見初期に名付けられた酵素。なので命名法の規則ができあがる前に命名されている。
規則性を重んじる理科の授業では、2つまとめてプロテアーゼって言ったほうが納得感が得られると思うが・・・。
脂肪は英語でlipid なのでリパーゼ。

有名な「ペプシコーラ」が開発されたときには、材料にペプシンが含まれていた。だからペプシコーラ。

モノグリセリドは2005年ごろまでは、グリセリンとして教わったもの。Eの形をしているグリセリンに3本の脂肪酸がくっついたものが脂肪だが、このうち真ん中の脂肪酸が切れずに体内に吸収されることがわかった。なのでモノグリセリドに名称が変わっている。

タンパク質を分解するプロテアーゼ系酵素は、もちろんタンパク質からできている。自己分解されないよう、はたらく場所以外では活性が抑えられている。チモーゲンという概念である。

基質特異性、最適温度、最適pH

基本事項

どの教科書でも「発展」扱いになっており、理系生物で扱う。
ただし、タンパク質からなるの性質をよく表現しているので、軽く扱うことがおおい。

扱う内容、レベル

最適温度、最適pHと酵素活性についてのグラフを用意し、グラフの読み取りを行う。
pHと酸、塩基の関係(7が中性、小さいと酸性、大きいと塩基性)は中学で習うが、確認しないと忘れていることが多い。
唾液アミラーゼー口内−中性、ペプシンー胃―酸性、リパーゼ―膵液−塩基性の対応関係は理解を深めるが、生物基礎の入試では出題されることはない。

発問案

(グラフ見ながら)無機触媒のはたらきが最も強いのは何℃?(酵素も同様に) → 恒温動物は酵素活性を最も高める体温に保っている。(酵素活性が高く立体構造が保たれやすい36℃付近が多い)
pHって何だったか覚えてる?どっちが酸性?
アミラーゼの酵素活性が一番高いのはpHがいくつのとき? アミラーゼってどこで働くって書いてある?(リパーゼ、ペプシンも同様)
アミラーゼを胃の中のような強い酸性に入れるとどうなってしまう? → 壊れてしまう

トピック

タンパク質の変性については、卵の白身を加熱すると色が変わる(性質が変わる)のは常識であるが、酸や塩基でも白く変わるのはあまり知られていない。

タンパク質からなる酵素は胃酸で変性して失活し、アミノ酸まで分解されて吸収される。このことから、酵素サプリなどを摂取しても酵素活性は期待できないことがわかる。
これはコラーゲンなども同様である。牛肉を食べたら、体が牛になっていく(牛の筋肉がつく)のと同じぐらい、おかしな論理である。
タンパク質からなる健康成分の摂取についてはほぼ全て同じ事が言えるので、知っておくと便利な教養である。
(整腸薬などは、酵素が被膜で保護されており、胃や腸で働けるようになっている。)
教員側が市販されているものの有効性を否定することは勇気がいるが、「健康食品」の安全性・有効性情報〔国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所〕https://hfnet.nibiohn.go.jp/
で明らかにされていることなので、自信をもって有効性は確認されてないといえばよい。

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