2ch.netオカルト板で2016年8月20日と8月27日に行われた百物語のまとめです。

【第九十六話】『黒電話』 もち ◆m2nIThBwKQ


327 :ななほし@代理投稿 ◆YJf7AjT32aOX @無断転載は禁止:2016/08/28(日) 02:39:32.19 ID:l/IPK0LS0
【第九十六話】もち ◆m2nIThBwKQ 様
『黒電話』

(1/3)

学生時代のことです。
大学近くのアパートで一人暮らしをしている友人から突然電話がありました。
同じ大学に通う友人からの電話に「突然」とつけるのには理由がありまして
時間が深夜3時を過ぎた頃だったんです。

私はオンラインゲームに夢中になっていて、その時間もまだ起きていたのですが
いくら個人の携帯電話に、とはいえこんな時間にかかってくることはありません。
充電ケーブルに繋がれたケータイが突然バイブと共に着信音を鳴らしたもんですから
私は飛び上がるくらいびっくりしました。

折り畳まれたガラケーの外側液晶に表示された「着信 O(友人の名前です)」に
「え、なんかあったんか」と、Oが事故かなにかに巻き込まれたのかもしれない
という不安を感じつつガラケーを開いて通話を始めました。

「もしもし、どした?」
「すまん、俺。寝てたよな?」
「いや、起きてたよ。どうした? なんかトラブル?」
「いや、その、そういうわけじゃないんだが」

328 :ななほし@代理投稿 ◆YJf7AjT32aOX @無断転載は禁止:2016/08/28(日) 02:41:18.84 ID:l/IPK0LS0
(2/3)

どうにも歯切れがよくありません。私はOが寝ぼけているんじゃないかと思いました。

「なんだ。寝ぼけてんの?」
「いや、違う。違うんだが。あー……。すまん変なこと聞くが、昔の黒電話あるじゃん
 あのリリリーンっていう着信音って、赤ん坊の泣き声と似ているよな?」

意味がわかりません。ダイヤル式の黒電話なんて小学生の時に実家にあったのを
覚えている程度です。かといって着信音の記憶も定かではありません。

「んーよくわからんが、似ているっちゃ似ているかもしれない……かな」
「だよな。そうだよな。似てるよな?」

Oは何故か同意を急かして求めるようにそう言いました。

「なに、そんなことで電話してきたんか」
「あー。うん。ま――ぁそうだな。すま――ん」

「起きていたからいいけど、寝ていたら明日学食おごらせてたわ」
「すまんすまん。ほん――とごめんな。んじ――ゃ明日」
「お−。俺ももう寝るわ。おやすみ」

そう言うと私達は通話を終えました。

329 :ななほし@代理投稿 ◆YJf7AjT32aOX @無断転載は禁止:2016/08/28(日) 02:43:05.13 ID:l/IPK0LS0
(3/3)

パソコンの電源を落として部屋の灯りを消してベッドに潜り込んだところで
私はふとOの声に混ざって『なにか甲高い音』が聞こえたような気がしました。

Oのアパートには何度も遊びに行ったことがあります。
ケータイがあるので、彼の部屋には据え置き電話はありません。
もちろん黒電話なんて古いものがあるわけもありません。当然赤ん坊もいません。


そしてOの住むアパートは築二十年以上の2階建て。

彼の部屋は2階の角部屋。

玄関から向かって右は在来線の線路。

左は空き部屋です。


Oが深夜3時過ぎに聞き、そして私がケータイ越しに聞いたような気がした
あの『甲高い音』は、一体どこから聞こえた、なんの音だったのでしょうか――。



【了】



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