2ch.netオカルト板で2016年8月20日と8月27日に行われた百物語のまとめです。

【第百話】 『おかえり』 るしふぁー ◆CS/orwC/9AZj


339 :るしふぁー ◆CS/orwC/9AZj @無断転載は禁止:2016/08/28(日) 03:01:06.41 ID:WswBOqP00
【第 百 話】るしふぁー ◆CS/orwC/9AZj
『おかえり』


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私は今、親父とその親兄弟がかつて生まれ育った土地で暮らしている。
そして今年の七月下旬に叔父(親父の兄)が他界した。6人兄弟だった親父の最後の兄弟だった。
親世代は短命で20代から50代で亡くなっているが、叔父だけは79歳まで生きた。ほぼ平均寿命だ。
ちなみに祖父母世代、特に母方の親世代は長寿で、90代から100歳越えである。
この人は本当に頑固で気難しく、私もこの血を引いたのか常々衝突していた。
ただ、私は子供の頃に両親と死別し、叔父が後見人になって学費を出してくれていたので、
感謝の気持ちは持っていた。

葬儀は近年にしては珍しい大きなもので、3人の和尚さんを呼び派手にやっていた。
木魚に銅鑼とポクポク・ドンドン・シャンシャンと2時間近い読経、派手好きな叔父は喜んだだろう。
先週、継母との確執については書いたが、やっぱり通夜に何食わぬ顔をして来ていて、久々にご対面!
事情を知っている親族はハラハラ…。私の親族は今まで継母とその男、娘を大切にしてきていた。
本家の血を一番濃く受け継ぐ私は悔しいやら惨めやら、複雑な気持ちでいつも二歩も三歩も退いていた。
だから、直面した継母に一言放った、「まだ生きとったん?あんたも一緒に焼いてもろたら?」と…。
不謹慎だとは解っていたが、ついつい口が滑ってしまった。

340 :るしふぁー ◆CS/orwC/9AZj @無断転載は禁止:2016/08/28(日) 03:02:27.95 ID:WswBOqP00
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従妹は「あんたは本家やから堂々としとったらええねん!なんで他人にデカイ顔されなアカンの?」
…とズバッ!継母はおずおずと引き下がった。翌日の葬儀は「身体の具合が悪くなって…」とドタキャン。
親族は驚きあたふたしていたが、従妹は平然と「これで元のさやに収まったな。おっちゃんのギフトや!」
と言った。満面の笑みを浮かべて…。

それから火葬、初七日法要、三十五日法要、四十九日法要、精進落としと順調に進み、葬儀は終了。
私はこの叔父の家に泊まり、叔母と語り合うことにした。継母はこの叔母にいつも接近し私の悪口を言っていた。
理由は判っている。叔父は不動産業を営んでいて、けっこうな財産があったから"おこぼれ"を狙っていたのだ。
「お葬式に出たら"お年玉"がもらえる!」と、通夜の日に継母が口にしたらしい。
従妹が近くにいて聞いたと言っていた、。叔父の子は自分の家に帰って独りになりたいとのこと。なんだかなぁ…。
「ゆっくり話せるのは、○○(私)君の高校以来やねぇ…」と叔母。
従妹:「おっちゃんからの最後のギフトやで!ゆっくり話しや…。あんたの親もここに来てるで。」
私:「うん。なんか全員来てる感じ。お経の時にフワフワして靄がかかってたもん…。」
こうして叔母と私はタクシーで家へと向った。
家ではお骨を前にして懐かしい話しをし、これまでの私の人生の真実を語った。まさか、こんな日が来るとは!

341 :るしふぁー ◆CS/orwC/9AZj @無断転載は禁止:2016/08/28(日) 03:03:44.55 ID:WswBOqP00
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叔母は涙を浮かべて「苦労ばかりかけて…」と言った。祖母が亡くなる前の言葉と全く同じだった。
私は、目の前にいるのが叔母というより、祖母が還ってきてるように感じていた。
いや、この温もりは祖母以外の何者でもない。
その後シャワーを浴びたのだが、ずっと背後に何かの気配を感じていた。時折ゾクッとする感じのアレだ。
身体を拭きながら無意識に「ばあちゃん…」と呟いた。
葬儀というものは本当に疲れる。深夜になったので布団に入った。特に何を起こらなかった。
次の日も、そしてまたその後も不思議な現象は起こらず、珍しいな…とさえ感じていた。

数日後、私は自宅へ帰り我が家の仏壇に御供えをして、この数日の出来事に感謝して手を合わせた。
帰宅した日の夜中、突然金縛りに遭い誰かの気配を感じた。いつもなら「ばあちゃん!」となる瞬間。
この日は違う。「誰?」といった感じ。いつも私は南枕で寝ている。目を開けたら北枕になっていた。
同時に祖母ではなく母親でもなく、親父でもないことも感じた。目を閉じるととても明るく感じた。
そして視界の外から誰かがやってきて姿を現した。叔父だ。「何故ここに?」…慣れているはずの金縛り、
今回はちょっとパニックになりかけていた。叔母に自分のことを話したことに怒っているのかと思った。
でも、いつもと様子というか表情が違う。しかめっ面じゃなくて穏やかな顔。決して笑顔じゃないが…。

342 :るしふぁー ◆CS/orwC/9AZj @無断転載は禁止:2016/08/28(日) 03:05:07.68 ID:WswBOqP00
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「よう家を守ってくれとる。大丈夫や。」と言い残して何処かへ行った。やっぱり笑顔は見せずに…。
次の日の夜、南枕にすると目が冴えて眠れず、故意に北枕に変えてみたらすぐにウトウトし始めた。
すると金縛りこそないが半分夢の中で叔父が現れ、また安堵した顔でしばらく見つめ、何も言わずに消えた。
そして、その次の日も…。この状況で祖母が来ないなんて未だかつてないことだ。

私は昨年から年明けにかけて、再発予防のための抗がん剤治療を受け、その副作用と後遺症に悩まされていた。
この冬は低温状態における手足の痺れと突発的に起こる麻痺、味覚の完全喪失等、とても不便な生活をしていたが、
暖かくなりだんだん症状が和らいできて、何とか事務的な仕事から再開していた。しかしまだ完全ではなかった。
夏になっても冷房の風に当たると足が痺れ、歩きにくさを感じていた。だが叔父が現れるようになってから、
この症状がほとんど消えた。そしてある朝、味噌汁を飲んだら「しょっぱ〜い!」…鈍くなっていた味覚が復活!
病院側に話すと「あり得ない。前に説明した通り、完全に戻るのは奇跡でも起きない限り無理だと…。」と…。

今、まさにこういう現象が現在進行形で起きている。素人のくせに百物語の語り部や運営をしたいと思ったのは、
不自由になった身体でも何か楽しい思い出づくりに…という気持ちからだった。〜もしかして来年は…?〜
でもね、今は違うんだ。もっともっと話が上手くなって、来年も語り部やりたいと思ってる。ではまた来年…。

【おしまい】

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