2ch.netオカルト板で2016年8月20日と8月27日に行われた百物語のまとめです。

【第十一話】『仏事と神事』 るしふぁー ◆CS/orwC/9AZj


38 :るしふぁー ◆CS/orwC/9AZj @無断転載は禁止:2016/08/20(土) 20:19:33.12 ID:UEO0zg090
【第十一話】るしふぁー ◆CS/orwC/9AZj    
『仏事と神事』


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私が住んでいる所は山と海に囲まれた、良く言えば豊かな自然でのんびりした毎日、悪く言えば何にもなく退屈な毎日の暮らし。
人が亡くなった時はご近所総出で協力し合い、参列者も多い昔ながらの葬儀、そして地域一番のイベントが秋の祭りだ。
ある年、仲良しの近所の友達のお兄さんが、長い闘病の末亡くなった。その年はお母さんの十三回忌とお父さんの一周忌。
全てが重なり友達と障害を抱えた弟さんだけでは、なかなか葬儀の準備も進まない。
そこで私に何とか手伝って欲しいと相談に来た。
しかも一大イベントの秋祭りは4日後で、私は神社の氏子で神様に扮して神輿と共に20件近くの家庭を回らないといけない。
祭りの準備と本番、葬儀の手伝いがほぼ同時にやってきたのである。引き受けると友引を挟んでるから祭りに間に合わない…。



いつも持ちつ持たれつやっているので、無碍にできずできる限り手伝うと約束した。
まずは葬儀屋の手配は私の身内の一族が使っている業者と契約。そして
菩提寺の大和尚に直談判、若和尚じゃなく大和尚できっちり話しをつけ、お布施は半額にしてもらった。
続いて役場で火葬場を押さえ、死亡届を受理してもらって地固めはできた。
葬儀は都会で主流の家族葬で執り行うことにした。2年連続で大きな葬儀は家計を圧迫するから、この方式にしたのだ。
通夜は近所の人にお願いし、私は神主さんをメインに各地域の氏子や神輿担ぎの人達と打ち合わせ。

その途中でも葬儀屋さんや菩提寺から連絡が入り、仏事と神事がごっちゃになってきた。
神様仏様と言うが、お願い事をするのは神様、感謝の気持ちで供養するのが仏様。
仏様にお願い事をするものじゃない。が、同時にきたもんだから、ちょっと混乱していて、
帰宅してから仏壇に線香をあげ仏様にお願いしてしまった。
「どっちも上手くいくように力を貸してください!」と…。

39 :るしふぁー ◆CS/orwC/9AZj @無断転載は禁止:2016/08/20(土) 20:21:30.83 ID:UEO0zg090
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どさくさに紛れて、友達の親戚の高齢のおばあさんの一言で、我が家の祭壇と仏壇に活ける花1万円分も友達の家の葬儀代に乗せて注文。
「なんと罰当たりな!」と思ったが、おばあさんの気持ちを有難く頂戴した。友達の家の準備が終わってから、
葬儀屋さんと花屋さんが我が家に来た。
新しい祭壇と豪華な花をセットしてくれて、法事じゃないのに何だか我が家も葬儀のよう…。
なぜか御供え物も届いて、もう開き直って仏壇にもう一度お願いした。お盆用の蝋燭を点し本格的!



もう一日でクタクタになっていて、祭りをキャンセルしたい気分にすらなっていた。
なんせ、真夜中3時前に入院先から連絡が入り、ずっと同行していたのだ。
他人の葬儀は一層気を遣って疲れる。自宅は寝室の隣が仏間。扉を開け放してベッドに横たわった。
するとウトウトし始めたかと思えば金縛り。やっぱり…といった感じ。
親父が亡くなってから金縛り体質になっていたので、身体の感じでくることが分かるのだ。
そして今回は久々に幽体離脱つきのスペシャル・バージョン!これは激しく体力を消耗してしまう。
こういう時は真夜中でも煌々と灯りを点しているように明るい。
魂が仏壇の中に入ろうとしている。そして遮断される。決まって祖母だ。「ばあちゃん、日にちが足らんかも…。」
「大丈夫、世話にもなってるから助けてあげなさい。」と言われた気がした。知らぬ間に眠っていて、気付けば朝。

通夜が終わっても友引のため、火葬も葬儀もできずに一日が過ぎた。途中に祭りの打ち合わせを挟んで…。
祭りは朝の御神酒に始まり、各家庭の御接待で夕方まで飲み続ける。
かなりハードなのだ。その後、神輿の慰労会と地域全体の慰労会があり、更に深夜まで飲み続けるのが風習だ。
しかも神様不在はあり得ない。
翌日の葬儀は滞りなく終わり、精進落としも済ませた。終わると日付が変わっている。
次の日は早朝から神主さんの御祈祷を受けなければならない。
しかも葬儀の事後処理も友達一人では難しい。ヘトヘトになって帰宅した。
シャワーを浴びていたら、背筋がゾクッとして早々と切り上げた。もしかして二日連続!?
3時間後には起きないといけないので、サッと髪を乾かしベッドに入った。
その夜、金縛り一歩手前で解けて、安心したのか少しだが眠れた。

40 :るしふぁー ◆CS/orwC/9AZj @無断転載は禁止:2016/08/20(土) 20:22:44.39 ID:UEO0zg090
(3/3)
翌朝、衣装を着て足袋を履き、フワフワした感覚で神社へ行った。
着くと神主さんが来て祭壇を組み、米・野菜・果物・鯛・日本酒を御供えしている。
しばらくすると空が曇ってきて、長老たちが慌て始めた。地区長はスマートフォンで天気予報の確認。
ちなみに、秋祭りが雨で中止になったことはないという。
前夜に雨が降っても、朝までには必ず天候回復するらしい。しかし、雲行きはどんどん怪しくなり、とうとう本降りの雨となった。
慌てて祭壇を神社の本堂へ入れ、衣装が濡れるといけないので私も入った。
御祈祷まで30分もなく、止む気配もないので初の中止となった。
過去に例がないということで皆が慌て、役員が手分けして各家庭に中止の案内に出向き、
公民館で慰労会だけ行うと伝え、それぞれが用意した料理や飲み物を運んだ。
公民館のステージに神輿を上げ、そこで神主さんと私が一言述べて一旦終了、後は慰労会のみ夕方から開始となった。
一旦帰って着替え昼過ぎまで寝て、友達に付き添い葬儀の事後処理も済ませ、夜は軽く飲んで食べ早々に帰宅。
手土産のお菓子を仏壇に御供えしてお礼の言葉を唱えた。
その夜は何も起こらず熟睡した。今回は仏様の勝ち!?…ちょっと、いや、かなり不謹慎ではあるが、これが本音だ。





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