2ch.netオカルト板で2016年8月20日と8月27日に行われた百物語のまとめです。

【第十四話】『パワーストーン』 50(ななほし) ◆YJf7AjT32aOX


48 :進行役 ◆YJf7AjT32aOX @無断転載は禁止:2016/08/20(土) 20:50:13.15 ID:5kSLWVsx0
【第十四話】『パワーストーン』

(1/2)
天然石が嫌い、苦手だという人はいないだろうか。
趣味的な問題ではなく、生理的に受け付けない、近くにあるとピリピリして嫌だとか、石自体を嫌悪する類の苦手。
そんな人はひょっとしてひょっとするかもしれない。
僕も天然石は胡散臭いと思っていた側の人間なのだけど、つい最近、そんなことを言えない状況になった。
僕は1年ほど前にとあることをきっかけに天然石のストラップをもらい、石は持ち主を守るという話を聞いてそれをネックレスに加工して常時身につけていた。
いわれはあまり信じていなかったけれど、とても綺麗な石だったこともあり気に入っていた。
仕事の時も目立たないよう、服の中に隠して身につけるほどには、だ。

先日久しぶりに友人と会い、地元の大きな神社の祭りへ出かけた。
長らく会っていなかったので話に花が咲き、夕飯に入ったファミレスだけで飽き足らず、
ドライブをして帰ることにした。
昔よく利用した、一旦他県に出て、街道をぐるりと大回りして帰る道だ。
いつもナビを設定する場所までは普通に運転し、いつもの場所で『自宅に帰る』を選択し、
いつものように推奨ルートを選択した。
その時気づいていれば良かったのだ。ナビが『冬季通行止区間を通行します』という、いつもなら絶対に言わない言葉を言ったことに。

ナビを設定し、話に花を咲かせたまま夜中の道をひた走る僕ら。
いつもなら気にする周りの景色も、今思えばほとんど気にしていなかった。
気づいた時には引き返すのも不可能な細道の峠を走っていた。
一歩間違えば谷底へ真っ逆さまのS字カーブの続く悪路。そして真っ暗で最高に気持ち悪かった。
真夜中に走る道では当然ない。本当に死ぬかと思った。
帰宅後調べたところ、地元じゃ超有名な心霊スポットだったのは別のお話。

49 :50(ななほし) ◆YJf7AjT32aOX @無断転載は禁止:2016/08/20(土) 20:51:40.23 ID:5kSLWVsx0
(2/2)

何とか峠を越え麓へ辿り着いたところで、僕と友人はやっと一息ついた。
笑顔で話しつつ、僕は何気に「この石が守ってくれたのかもしれないな〜」と言って、服の中にあった天然石を取り出した。
その瞬間、さっきまで笑顔だった友人の笑顔と声がキツくなった。
「ごめん、しまって」
どうやら手がピリピリするそうで、手をしきりに振っていた。
自分は一切そんなことがないのでふーんと流し、ハンドルを握りなおしたその瞬間、自分の左側だけ
言い知れぬ悪寒に襲われた。
そしてとっさに本能で思った、「怖い、やられる」と。
さっきまで最悪な悪路を通っていたというのに、自分の左側からくる圧迫感と恐怖のほうが優っていた。
つまりは助手席側から、だ。
運転しつつ、友人と和やかに話してはいたが、内心はそれどころじゃなかった。
そうしている間にも左側の腕は痺れ、苦しくなって呂律が回らなくなってきたからだ。
なんとか友人を送り届けて別れたが、その時にはどっと一気に疲れていた。
ふと思い立って、石を服の中から出して光にかざしてみると、あんなに綺麗だった石の表面には引っ掻いたような傷ができ、表面が剥離したようになっていた。さらに別の石の中には奇妙なブツブツが浮いていた。
後日、別の友人に会って話したところ、こう言われた。
「石はご主人様を助けた時、ヒビが入ったり割れたり変色したり、何らかの変化が起きるよ」
そしてもう一言、「何かに憑かれてる人なんかはピリピリして綺麗な石のことを綺麗と思えないし嫌って感じるらしいよ」
それを聞いて初めて、石が持ち主を守るという意味を思い知った。
一体この日の何が原因で石がそうなったのかはわからない。ただ、それ以来その友人には会っていない。
どうなっているかわからないのが不安である。

【了】



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