The Japan Association for Transnational Studies

第1報告


中国企業M&A活動に関する一考察
 その特徴及び問題点を中に

 報告者:馬 大衛氏(桜美林大学大学院博士 後期課程)
 司会者:岩井 清治氏(桜美林大学教授)

報告要旨

 2008年9月15日、米国のリーマン・ブラザースの経営破綻により未曾有の世界的金融危機が発生した。その影響を受け、これまで盛んだったM&Aブ─ムも大きな衝撃を受け、世界全体のM&Aの総金額及び件数は減少する傾向が強く見られた。
 しかし、その中にあって新興国、特に中国企業の一連のM&A活動は、まったく今回の金融危機の影響を受けずに、逆に大幅な増勢を維持し、世界中の注目を浴びた。

 中国企業によるM&A活動が近年増え続ける原因としては、筆者から見れば、これを支援する中国政府の一連の政策及び国際市場からの競争圧力が原動力になっていることである。

 改革開放以来経済発展が著しい中国市場においては、一連の経営活動によって莫大の利益を手に入れた中国企業がこの手持ち資金を活用して、より早く成長するためM&Aという選択肢を利用したことも無視できない原因と考えられる。

 しかし、中国企業のM&A活動が大幅に増加する一方問題点も数多く見出される。中国におけるM&Aの歴史は、欧米及び日本より遥かに短く、経験不足が齎す様々な未熟な部分、例えば直接金融市場の未発達、M&Aに伴う組織統合などの問題点が中国企業のM&A活動を阻害している。

この問題への対応策として筆者が提案したいのは
  1. M&Aをスムーズに進行できるような市場環境の涵養に注力すると同時に、
  2. 欧米及び日本企業のM&Aに関する経験を学習し、必要な知識に長けた人材の育成に力点を置くことである。
(馬 大衛記)


関連ページ:2010年度研究会第1回-32010年度研究会第2回-2

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