28無題Nameとしあき 20/04/22(水)14:26:41No.12918072そうだねx4
「ジュラにゃんが当選した暁には、徴兵制度を義務付けるまし!」
一匹のジュラにゃんが、大見得切って舞台の上で吼えていた。
「皆も呼んでね! せーの、助けてー! 純狐サウルスマーン!」
「ジョウガァァァァァッ!!」
顔にダンボール箱を被った純狐サウルスが舞台上に現れた。
ジュラにゃんはいわゆる、やられ役のスーツアクターだった。
「いたいまし、やめるまし。 こんなのもうこりごりましー。」
悪役のジュラにゃんが迫真の演技をして、退場していった。
「ありがとー! 純狐サウルスマン! 拍手をお願いしまーす!」
人間やジュラシックの拍手や鳴き声が舞台を締めくくった。
ジュラにゃんは、控室で汗臭いダンボール箱を投げ捨てた。
「…悪役なんて、イヤまし。 こんなのもうこりごりまし…。」
ジュラにゃんマンは、悪役ばかりやるのは嫌だと白状した。
ジュラにゃんは、自分が正義の味方役に成れないか、と
舞台のオーナーに訊いてみた。 しかし返ってくる言葉は同じだ

29無題Nameとしあき 20/04/22(水)14:27:14No.12918074そうだねx3
ついにジュラにゃんは、逆ギレした。 ああ、それならば
ジュラにゃんが主役の劇を、考えてやるまし。 本気まし!
ジュラにゃんは、自分ならどんなヒーローになって、
どんな悪役と戦うか、考えた。 悪は、麻薬密売組織。
自分はインターポールの敏腕刑事だ。 二丁のマシンガンを
遠慮なく撃ちっぱなし、犯罪者を撃ち殺してハッピーエンド。
これこそが自分の痛快な快進撃、いや会心の劇だ! と
ジュラにゃんは思った。 しかし、オーナーの顔はどこも
ピクリとも動かずに、冷たく企画書を突き返されてしまった。
「…お前は、何の為に舞台の上に立っているつもりなんだ?」
ジュラにゃんは逆ギレに逆ギレを重ねた。 楽屋で大暴れした。
ヒーロー役の純狐サウルスにのしかかられ、身動きできなく
なるまでの数十秒間に、楽屋にあるほとんどの物は壊れてしまった。
「ジョーガ…ジョーガ…。」
ジュラにゃんは、涙を零している純狐サウルスを見て驚いた。

31無題Nameとしあき 20/04/22(水)14:27:54No.12918076そうだねx4
純狐サウルスは、ジュラにゃんに謝っているようだった。
そんなに感情を乱しているのは、自分のせいであると。
「違いましよ…。 ジュラにゃんの方がおかしいだけまし。」
だが、純狐サウルスはジュラにゃんの言い分を認めなかった。
純狐サウルスは、ジュラにゃんに退治される芝居をする事を
提案した。 もう誰も見ていない、夕暮れの舞台の上で。
「ジョウガアァァァァッ!」
ジュラにゃんの真似をして、純狐サウルスが吼えた。
そして、ジュラにゃんが腑に落ちない気持ちで、そこに
割って入る。 そして、普段自分が舞台の上でされている事を
やった。 何故、そんな事をするのかも納得してない内に。
「ジョウガ… ジョウガ…。」
やがて、攻撃の演技を受けた純狐サウルスは、舞台から
転がり出るように、退場していった。 独り残して。
勝ったジュラにゃんが、独りだけ舞台の上に残っていた

32無題Nameとしあき 20/04/22(水)14:28:39No.12918079そうだねx9
誰も見ていない。 誰も褒め称えない。 静寂だけがあった。
『…うわあああああああああああああああ!!!』
ジュラにゃんは、ただひたすらに己の孤独を思い知った。
そこには、誰もいなかった。 勝った自分独りだけが存在した。
舞台の上の仲間だった、純狐サウルスさえも、追い払ったのだ。
ジュラにゃんが悲しみの慟哭を挙げると、純狐サウルスが
ひょっこりと顔を見せた。 そして、ジュラにゃんは悟った。
「なんて、この世界は… 虚しい世界ましか。」
純狐サウルスは黙って頷いた。 そしてジュラにゃんは、
舞台の上で、最も尊いものが何であるかに気が付いた。
観客? 賞賛の拍手? 違う。 …目の前の純狐サウルスだ。
そして、彼はいつもこの『虚しさ』と戦っていたのだと。
ジュラにゃんは、純狐サウルスの事を初めてわかったのだ。
「…ハラへったまし。 一緒に食べに行きましか?」
ジュラにゃんは純狐サウルスと一緒に、飯屋に行った。(終

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