151無題Nameとしあき 23/10/03(火)05:22:41No.16557596そうだねx9
鈴瑚トプスは丈夫だった。今日も健康診断で異常なしの結果を受け取って家に帰る。
お医者さんとの問診では食べすぎ、とは言われたが数値に異常は見られなかった。
という訳で今日も持ち帰りのピザを三枚とナゲットを二箱買ってテーブルに置いた。
トプスは礼節を忘れない、ちゃんと「いただきます」をしてから食べ始めた。
やはりピザは美味い、チーズとサラミがおりなす旨みの協奏曲が素晴らしい。
冷蔵庫に入れておいたコーラを取り出して、スマホで動画を流しながら食べるこの瞬間がたまらない。
怠惰の極みだ。この時間が永遠に続けばいいのに…そんなふざけた事を考えながら動画を見ていた。
「この世界は突然、収縮が始まって一週間後には消滅するという専門家の意見が…」
ふざけた陰謀論だ。こういう如何にも低俗なものを見ながら食べる飯は美味い。

152無題Nameとしあき 23/10/03(火)05:23:05No.16557597そうだねx9
翌日、通り道を歩いているとラプトルが急に抱き着いてきた。
ついに自分にも春が来たか!?と思ったが何かに怯えている様子だった。
こういうときに格好いいところを見せればメスはホイと落ちるってどっかの本か動画で見た。
出来るだけ落ち着いた声で、目線を合わせて「どうしたプス?」と語り掛けてあげた。
「キュイキュイ…」どうやら世界が終わるらしい。この前、自分が見た動画でも見たのだろうか。
ラプトルは臆病な癖に好奇心旺盛なところがある。うっかり変な動画を見てしまってもおかしくない。
「大丈夫プス。トプは死なないからトプが守ってあげるプスよ…?」「こらっ!何してんだトプス!」
声に振り向くとジュラポ警察がいた。しまった、この場面は傍から見たら事案だ。
走って逃げれば人間は追いつけない。まぁ捕まっても大丈夫だろう、程度に考えていた。

153無題Nameとしあき 23/10/03(火)05:23:35No.16557598そうだねx9
捕まった。事情を説明したが納得して貰えなかった。これは深刻なジュラ権侵害だ、法廷で会おう。
ジュラシック専用の牢屋はそれなりに広くて退屈ではなかった。トイレがない…その辺でしろって言うのか。
それともこんなところに捕まるのはうんこだからこの牢屋自体がトイレだとでも言うのか。
むしゃくしゃしたら適当に脱糞したくなった。処理に困るところにおいてやろう。
ベッドの下にそっと隠した。自分が出ていく頃には臭いを発してさざ困るであろう。
やる事が他にないから寝ていたらうんこの臭いがほんのりと漂ってきた。ダメだったなこれ。
どうせ数日で出られるだろう。そう思っていたら警察の人がやってきた。ほれみろ、ちゃんと掃除しといてね。
だが、ちょっと様子がおかしい。誰かを連れてきているようだ、後からついてきたのは白衣を着たどっかで見た人だった。

154無題Nameとしあき 23/10/03(火)05:24:10No.16557600そうだねx9
目がやつれている、どうやら非常に疲れているようだ。羽根も生えてるし、休んだ方がいいよ。
「やっと見つけた…!あなたで完成するわ!」
何のことだかさっぱりだ。研究のし過ぎでおかしくなったのだろうか。それで羽根生えたんだな、成程。
「いい?あなたの健康診断の結果から重要な遺伝子情報を得られたの!」
そんな大したことをやった覚えはない。いつも通りに体重計乗ったり検尿したり採血したりしただけだ。
「それによるとギャグ補正と呼ばれる特殊因子が強く出ていて…、それで今はそれが必要で…」
適当に付けたにしてはふざけた名前の専門用語を出してきたものだ。丁重にお帰り頂きたい。
「今すぐ、研究所まで付いてきて貰うわ!じゃないと世界が…!」
息が荒く、こちらに縋ってくるように見上げるその様は見方によってはエロい。
でも人間はノーサンキューだ。そこに手を出してしまったらトプはもう後戻りできなくなる。

155無題Nameとしあき 23/10/03(火)05:24:53No.16557601そうだねx10
「何をしているの!?早くこのトプスを牢から…ってくさ!?」
やばい、うんこの臭いが予想より早く充満してしまったようだ。恥ずかしくなってきたのでシーツで体を隠した。
「こんなふざけたトプスが世界を救う鍵だなんて大袈裟にもほどがありますよ…。お帰りになって休まれた方が…」
「…!不味い!い、今すぐに考えを改めて!?ほら!ちょっと研究に付き合ってくれるだけで可愛いラプトルを…・」
可愛いラプトル…魅力的な提案だ。でもトプはうんこたれだ…。きっとこの痴情も知られてしまうに違いない。
でも生物は誰でもうんこするし…。そんなもんかな、いや恥ずかしいもんは恥ずかしいわ。
「ああもう!生のラプトルが怖いなら特製オナホールでもなんでも作ってあげるから!」
オナホには苦い思い出しかない。ちゃんと毎日、丹精込めてお手入れしてきたモノが気付いたら臭かった。
臭いを染みつくまでこきつかってやると扱いてきたけど実際に染み込むとテンション下がるわ…。いい匂いしてほしい。

156無題Nameとしあき 23/10/03(火)05:25:29No.16557603そうだねx9
「ほら、博士…。いつもオナホ呼ばわりされてイライラしてるのは知ってますから休みましょう」
「誰が月のsenkaオナホだ?!…はっ!ダメ!お願い!あと一匹で完成するの!!」
大体、トプスの遺伝子が欲しいなら他にいくらでも候補はいるだろう。それでいいじゃん、そう思った。
今は何よりうんこを片付けてほしい。警察の人は博士を引きずっていったあと戻ってこなかった。掃除してよ。
こういうのは監視カメラで見られてたりとか…、そう思ったがこの部屋にはないようだ。よかった。映像に残らなかった。
もっかい部屋を見回すと砂がこんもり積まれているのを発見した。…これかぁ〜…。
今更うんこをこの中に埋めるのはかわいそうなので一緒にいてあげることにした。お前も寂しいもんな…。
誰かと一緒ならこの牢も寂しくない。流石に会話するほど精神は病んでないが愛着は湧いた。
ベッドは彼に譲った形にして部屋の片隅で寝る事にした。なるべく遠くで、ごめん、距離だけは取らせて。

157無題Nameとしあき 23/10/03(火)05:26:11No.16557604そうだねx9
目が覚めると何かがおかしい事に気が付いた。なんだろう…何かがおかしい。
胸騒ぎを覚えたトプスは牢屋の鍵を開けて外に出た。あれ?出られるじゃん。でもバレたら面倒だな…。
ちょうどいい紙があったので「出かけてきます。冷蔵庫のおにぎりをチンして食べてください」と書いた。
どこに置こうかな…うんこの近くでいいや。嫌でも目に付くだろう、あとコレ片付けといてね。
留置所の外に出た。なんか謎壁がそこら中に生えていた。こんなのあったっけ?
まぁ謎壁だしな…。いつもなんか気づいたらそこにある、うんこみたいな存在…それはちょっとネタ擦りすぎだな…。
とりあえず外に出てはみたもののどうすっかな…。いったん家に帰るか、そう思ったら謎壁に道を塞がれていた。
こういうのはコツがある、この辺を押しておけばトプスが通れるくらいの穴が開く…。開かない。
いつものヤツとは違う…。迂回してみるか、回り込もうとしても気付いたら最初の位置に戻っている。

158無題Nameとしあき 23/10/03(火)05:27:01No.16557605そうだねx9
…今日はそういうネタか。ここで変に外してスベるのも嫌だしなぁ…。お約束には従うのがトプスの流儀だ。
他に行ける場所は…。謎壁だらけでこれ以上、外には出られそうにない。なんかどっかで聞いた事あるな…。
「この世界は突然、収縮が始まって一週間後には消滅する…」
通れない謎壁で囲まれるなら確かに収縮だ。このまま謎壁に押し込まれて世界は消える…。
まぁそういうネタだろう。深く考えた方が負けだ、なんでそうなるかを考えてはいけない。
ジュラシックの世界では常識だ、トプスもそれに従う事にした。なんか変なこと言ってた博士もいたな…。
「ギャグ補正と呼ばれる特殊因子が強く出ていて…、それで今はそれが必要で…」
トプ程のギャグ補正があればこんな世界で生きていく事など苦ではない。いや、本当は苦しい。
もっと可愛いもの扱いされたい。最近のぞんざいな扱いにはこりごりしている。マスコット枠だろ?愛せよ。
これ以上、外にいても何も起きなさそうなのでうんこの元へ帰る事にした。帰る場所があるというのはいい事だ。

159無題Nameとしあき 23/10/03(火)05:27:40No.16557606そうだねx9
一日が過ぎると、これは正確ではない。日が昇って日が落ちたかどうかですら定かではない。
トプスの腹時計が明確に過ぎた時を示していた。お腹なったもん、もう朝だよ。そういや飯食ってないな…。
今日も牢から出ようと扉に手をかけたあたりで気が付いた。謎壁が目の前にある。
もっと正しく言えば謎壁に扉の模様が描かれている。扉だと思っていたものは謎壁だった。
何を言っているのかわからねーと思うがトプにも何が起こったのか分からなかった。このネタ古いな…。
え?出らんないじゃん。どーすんの。どどどどーすんの、どーすんの。こっちは新しすぎるな…。
自分の攻撃が効かないタイプのスタンドなのでこのまま謎壁が去ってくれるのを待つしかない。壁が去るってなんだよ。
そうだ、壁なら壊してしまえばいい。トプスは全身全霊の力を込めて腰を深く落としまっすぐについた。
いってぇ!!めっちゃ痛い!ダメだ…謎壁は強すぎる…今は勝てない…。寝るしかないか?

160無題Nameとしあき 23/10/03(火)05:28:22No.16557607そうだねx8
気付いたら白い、白い空間にいた。ここどこだ?トプは遂に死んだのか…。
しゃあない。で、天国ってどっち方面よ?こういうのは案内してくれる人がすっと降りてくるもんなんじゃないの?
そう思っているとスーっと何かが降りてきた。トプスだ、傍らにはラプトルもいる。彼女持ちかよ…。
何?マウント?そういうのいいから…。どうせ神的な何かでしょ?神だからって理由だけで彼女出来るのおかしいだろ…。
「いいから話を聞くプス。ここは終わった空間、ここにはもう君とそのうんこしかいないプス」
終わった空間?ちょっと視線を逸らすとここ数日、寝食…食は共にしてないけど一緒だったあいつがいた。
「残念ながら、この世界は終わってしまったプス…。世界は折りたたまれ、存在するスキマがなくなったプス」
陰謀論は本当だったのか…。実際に起こる事だと思うとなんか自分でも何かでっち上げられる気がしてきた。
この記憶は大切に来世に持っていき、生まれ変わったらこれで稼ごう。ジュラポよりは健全な商売だろ。
「君は…あと少しでこの世界を救えるはずだったプス。あの博士の要求に応じてさえいれば…」

161無題Nameとしあき 23/10/03(火)05:29:03No.16557609そうだねx9
あの博士…。羽根生えてる変な人か。でも怪しい人についていくなってポスターで見かけたから…。
「そのなんでもギャグに変換出来る、彼女も言っていたギャグ補正が重要だったプス」
ふざけた名前だったけどそんな重要だったの?※か赤字かで強調しておいてよ。そういうの大事だよ?
「君単体ならこうして生き延びれたプス。でも世界規模に影響を及ぼすには数が足りなかったプス」
あと一匹って言ってたな…。でもそれくらいなら見つけられるもんじゃないの?同じ人間は世界に三人いるっていうし…。
「…まぁそのギャグ補正が強く出過ぎた結果が、コレともいえるプスな…。あの時、考えを改めて、と言われたプスな?」
そういえば言われた。でもよくある言葉だと思う。これと「私を好きにしていいから!」で覆った所を見たことがない。
「彼女は君の能力に気づいていたプス。君のギャグ補正は周りを巻き込む…。君の思考が断るという流れを作ってしまったプス」
確かに。あの博士なら無理やりにでも入ってくる感じはした。でも入ってほしくはなかった。うんこあるし。

162無題Nameとしあき 23/10/03(火)05:29:40No.16557610そうだねx9
「ほんの少し、受け入れる方向に考えを改めてくれていれば君は連れていかれたプス。そして…」
…そして?
「世界を救う救世主になり得たプス。でもまぁ、なりきれないのがトプスの定めなのかもしれないプスなぁ」
そのトプスはいろいろ、諦めたような顔をしていた。ここ一番で力を発揮できないのがトプの欠点ではある。
でも最後の最後に言わなくったっていいじゃん。通信簿に書くより前に言ってよ。先生には言われたけど神に言われなきゃさぁ…。
「まぁ君が望むのならこの世界は再開できるかもしれないプス…。どうするプス?」
再開…?どういう事だろう。言う事を整理してみると、自分には思考で周りを巻き込む事が出来る能力があるらしい。
じゃあ光あれって言ったら世界が生まれるのか。光よりもおっぱいのほうがいいかな。最近はケツもいいんだよな…。
「自分に都合の良い世界は禁止プス」
妄想の中くらいいいだろ…。まぁでもちょっと都合悪いくらいがちょうどいいっていうのもあるかな。
催眠モノも「はい…お嫁さんになります…」よりも「誰があんたなんかに…!」の一語があるだけで全然違う。
そうだな…。どうするかな…。それなら…。

163無題Nameとしあき 23/10/03(火)05:30:06No.16557611そうだねx10
「キュイキュイ?(本当によかったキュイ?)」
神であるトプスは空から地上を眺めていた。それは壁に折りたたまれていく、一つの世界。
「なんでも救えばよくなる、というものでもないプス。辛いかもしれないプスけど、エラーが出るのを待つしかないプス」
トプスから手当たり次第に血を引き抜き、狂ったように笑う白衣の女性。
交代の時間になっても誰も来ないから外に出たら壁に巻き込まれていく警察の人。
それは世界が終わっていく様。ついちょっと前にも同じ終わり方をした世界が、同じように終わっていく様。
彼だけが知らない、外では悲鳴が飛ぶ暇もなく、悲しみに満ち溢れていく。それを彼は知らない。
同じ事を繰り返すだろう。壁へ向かって拳を突き立てるトプスを見て、神であるトプスは溜息を吐いた。
「きっと、彼の力は世界を守るためとかじゃなく自分を守るためだけのものだったプスな…」
「キュイ…(だったら…)」
「上位存在が捻じ曲げてしまうのはいけない事プス。それだったらトプがなんでもしてしまえばいいになるプス」

164無題Nameとしあき 23/10/03(火)05:30:47No.16557612そうだねx11
「もっかいあの世界に戻って、今度こそ救世主になるプス!」
そう答えたのは彼自身だった。その時は出来ると思っていた、なった後は陰謀論で稼ぐ気だった。
でもいざ帰ったら自分の体が不安になってお医者さんに診てもらおうと健康診断に行くことになった。
待合時間にいろいろ考えていたが、採血の時に思わず目を瞑った時に全て忘れてしまった。
朝ごはん食べてなかったし、腹が減ったのでピザを多めに買って腹いっぱいになったら眠くなった。
寝て起きたら頭の中はさっぱりだ。散歩に行った頃にはそれまでの記憶は忘れてしまっていた。そういう力だから。
「こんな世界があるからこそ、ハッピーな世界も生まれるプスな。ここが不幸を引き受けている、そう思うプス」
神であるトプスはもうすぐ来るであろう、彼を迎えるべくその重い腰を上げた。
立ち上がるとふと、においがする。それは彼の相棒でありながら、置いていかれてしまった寂しいヤツ。
「…こいつも誰か引き受けて欲しいプスな」

おわり

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