無題 Name としあき 19/10/02(水)23:33:06 No.12160279 del そうだねx3
「お前の父さんはトプスなんよ」 15歳の誕生日、母から告げられた言葉を私は一生忘れることはないだろう。
私の母は臆病で要領が悪く、どちらかというと生きるのに苦労するタイプであった。なけなしの賃金を子供服や生活用品に散在し、自身の食事を切り詰めて娘を腹一杯食わせていた。疲れた笑顔の母を見て私は、こうはなりたくないものだと思ったことを覚えている。
ある夜のことだ。私は部活動の大会を終え上機嫌で帰宅した。そのまま居間で母が倒れているのを発見し、私は半狂乱で病院に連絡した。幸い一命を取り留めたものの、右半身に軽い後遺症が残った。
どうしてもっと早く病院に行かなかったの。私がそう問い詰めると母はいつもの疲れた笑顔で、
お前今日大会だったんでしょ。と答えた。
あきれ返った。なんて馬鹿な女なんだ。同時に涙が止まらなかった。
私はこの人の娘でよかった。心からそう思った。

無題 Name としあき 19/10/02(水)23:33:31 No.12160283 del そうだねx3
「お前の父さんはトプスなんよ」15歳の誕生日。安物ケーキの蝋燭に照らされながら母は呟いた。
頭が白くなった。しばらくしてから心にどす黒い感情が沸き立つのを感じた。15年分のアルバムがトプスの精液で穢されたようだった。誰か嘘だと言ってほしかったが、沈黙が残酷なまでに肯定していた。
安物ケーキを踏みつぶし、私は家を飛び出した。
それからのことはあまり覚えていない。いつのまにか月都の兵士に志願して、厳しい訓練を終えていた。考えたくなかったのだ。私の体にトプスの血が流れていることを。考える暇を与えないよう、私は我武者羅に突き進んだ。
 皮肉にも努力が功を成したのか、私は稀神サグメ直属部隊、イーグルラビィに抜擢された。ほどなくして地上浄化作戦の先遣隊として、地上に派遣されることとなった。
 月にはもう帰れないかもしれない。私は作戦の前日に暇をもらい、あの人に会いに行くことにした。
なじみの道を通り抜け、あの日のままの扉をたたく。
「…母さん」
母はそこにいた。母はいつもの疲れた笑顔で
「ああ、鈴瑚、鈴瑚や…」

無題 Name としあき 19/10/02(水)23:34:02 No.12160290 del そうだねx10
「あの人に似てきたわね…」

「…ねえ清蘭」
「なあに鈴瑚」
「私この戦争が終わったらダイエットするんだ」

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